2025/01/05に投稿した、極限\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\pi}\min\{|\sin nx|, |\sin (n + 1)x|\}dx\]を計算してくださいという動画への補足です。$($内容的にはここだけで完結してるので、動画は見る必要ないです。$)$
ここでは動画内で提示した定理1および定理4をもう少し一般化した事実を示します。
一応、問題のネタバレではあるので、解きたい人は解いてから続き見てください。
まず、いくつか記号を導入しておきます。
次がここで示したいことです。
周期 $T$ を持つ非負値可測関数 $f, g : \R\to [0, +\infty]$ が与えられ、一方は区間 $[0, T)$ 上でLebesgue可積分とする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy\]が成立する。
例えば、冒頭の問題に適用すれば\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\pi}\min\{|\sin nx|, |\sin (n + 1)x|\}dx = \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{1}(\pi - 2\arcsin y)^{2}dy\]が分かり、あとは $y = \sin t$ で置換積分すると $dy = \cos t dt$ から\begin{eqnarray*}\dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{1}(\pi - 2\arcsin y)^{2}dy & = & \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi/2}(\pi - 2t)^{2}\cos t dt \\& = & \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi/2}(2u)^{2}\sin u du \\& = & 4 - \dfrac{8}{\pi}\end{eqnarray*}と計算できます。(動画の最初の解法よりはるかに簡単かつ汎用的になってるわけです。)
補題を準備します。以下、区間 $[0, T)$ の部分集合 $A$ に対し、その定義関数を周期 $T$ を持つように拡張して得られる関数を $\varphi_{A}$ で表すとします。
$A, B$ を区間 $[0, T)$ に含まれる区間Riemann体積確定集合で置き換えても証明上手くいきます。とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。
いくつか記号を導入します。
まず、$f = \varphi_{A}$, $g = \varphi_{B}$ に注意して、常に\[\varphi_{P_{n}}(x)\leq f(x)\leq \varphi_{Q_{n}}(x),\]\[\varphi_{R_{n}}(x)\leq g(x)\leq \varphi_{S_{n}}(x)\]が成立することから\[m(\varphi_{P_{n + 1}}, \varphi_{R_{n}}; n)(x)\leq m(f, g; n)(x)\leq m(\varphi_{Q_{n + 1}}, \varphi_{S_{n}}; n)(x)\]です。一般に $0$ または $1$ のみを値に取る関数 $\xi(x), \eta(x)$ に対して\[\min\{\xi(x), \eta(x)\} = \xi(x)\eta(x)\]なので\[\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)\leq m(f, g; n)(x)\leq \varphi_{Q_{n + 1}}(nx)\varphi_{S_{n}}((n + 1)x)\]です。
常に $\varphi_{P_{n + 1}}(x) = \sum_{k\in C_{n + 1}}\chi_{n + 1, k}(x)$, $\varphi_{R_{n}}(x) = \sum_{l\in E_{n}}\chi_{n, l}(x)$ であることから左辺の積分について\[\int_{0}^{T}\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)dx = \sum_{(k, l)\in C_{n + 1}\times E_{n}}\int_{0}^{T}\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)dx\]ですが、ここで\[\int_{0}^{T}\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)dx = \dfrac{T}{n(n + 1)}\]と計算できるので区間 $[0, T)$ 上に限って考えるとして、$\chi_{n + 1, k}(nx)$ は $i\equiv k\mod n + 1$ を満たす $0\leq i < n(n + 1)$ に対する $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。同様に、$\chi_{n, l}((n + 1)x)$ は $i\equiv l\mod n$ を満たす $0\leq i < n(n + 1)$ に対する $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。よって、中国式剰余定理より $\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)$ はある唯一の $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。\begin{eqnarray*}\int_{0}^{T}\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)dx & = & \sum_{(k, l)\in C_{n + 1}\times E_{n}}\dfrac{T}{n(n + 1)} \\& = & \dfrac{1}{T}\dfrac{T|C_{n + 1}|}{n + 1}\dfrac{T|E_{n}|}{n} \\& = & \dfrac{1}{T}\mu(P_{n + 1})\mu(R_{n})\end{eqnarray*}です。同様に右辺の積分について\[\int_{0}^{T}\varphi_{Q_{n + 1}}(nx)\varphi_{S_{n}}((n + 1)x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(Q_{n + 1})\mu(S_{n})\]です。よって、\[\dfrac{1}{T}\mu(P_{n + 1})\mu(R_{n})\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \dfrac{1}{T}\mu(Q_{n + 1})\mu(S_{n})\]です。ここで、明らかに極限 $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(P_{n}) = \mu(A)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(Q_{n}) = \mu(A)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(R_{n}) = \mu(B)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(S_{n}) = \mu(B)$ が成立するので、$n$ に関する極限とはさみうちの原理より\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]です。
$A, B$ を区間 $[0, T)$ における開集合とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。
$A$ は可算個の区間 $I_{0}, I_{1}, \dots$ たちの直和として表し、$B$ も可算個の区間 $J_{0}, J_{1}, \dots$ たちの直和として表すとします必要であれば便宜的に空集合を加えてちょうど可算個にする。ちなみに、実数体の開集合は開区間の直和として表され、各開区間に対してそこに属する有理数を選ぶことで高々可算個の直和であることが分かります。。よって\[m(f, g; n) = \sum_{k, l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)\]と分解できます。まずは、これと単調収束定理を用いて\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}\sum_{k, l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \lim_{n\to\infty}\sum_{k, l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx\end{eqnarray*}と変形できます。続いて、Lebesugue収束定理を用いて\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\sum_{k, l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k\in\N}\lim_{n\to\infty}\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k, l\in\N}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\\end{eqnarray*}と変形できます総和を数え上げ測度に関する積分と思ってLebesgue収束定理を適用しています。総和 $\sum_{k, l\in\N}$ を $\sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}$ に崩しているのは、優関数をいきなり取れるか定かでないためです。$2$ つ目の等号は $\underset{n\to\infty}{\lim}$ と $\sum_{k\in\N}$ の交換で、単調収束定理より\[\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx = \int_{0}^{T}\sum_{l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx = \int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{B}; n)(x)dx\]であることに注意すれば優関数 $a : \N\to\R$ は $a(k) := \mu(I_{k})$ に取ればよいと分かります。当然 $\sum_{k\in\N}\mu(I_{k}) = \mu(A) < +\infty$ なので可積分性もよいです。。最後に補題B.3.2を適用して\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \sum_{k, l\in\N}\dfrac{1}{T}\mu(I_{k})\mu(J_{l}) = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]です。
$A, B$ を区間 $[0, T)$ に含まれる可測集合とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。
各正整数 $k\in \Np$ に対して区間 $[0, T)$ における開集合 $U_{k}, V_{k}$ を次の条件を満たすように取ります。
まず\[m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n) = m(\varphi_{A}, \varphi_{B}; n) + m(\varphi_{A}, \varphi_{V_{k}\setminus B}; n) + m(\varphi_{U_{k}\setminus A}, \varphi_{B}; n) + m(\varphi_{U_{k}\setminus A}, \varphi_{V_{k}\setminus B}; n)\]と $f = \varphi_{A}$, $g = \varphi_{B}$ より\[\int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx + \dfrac{3}{k}\]と評価でき、よって\[\int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx - \dfrac{3}{k}\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx\]が分かります。補題B.3.3を適用して\[\dfrac{1}{T}\mu(U_{k})\mu(V_{k}) - \dfrac{3}{k}\leq \varliminf_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \varlimsup_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \dfrac{1}{T}\mu(U_{k})\mu(V_{k})\]であり、$k$ について極限を取ることで\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が従います。
では、定理B.3.1を示します。
補題B.3.4より各 $y\in [0, +\infty]$ に対して\[\lim_{n\to\infty}L_{m(f, g; n), y} = \dfrac{1}{T}L_{f, y}L_{g, y}\]です。関数列 $\{L_{m(f, g; n), y}\}$ に対して $L_{f, y}$ もしくは $L_{g, y}$ が可積分な優関数として取れるので、Lebesgue収束定理より\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\infty}L_{m(f, g; n), y}dy \\& = & \int_{0}^{\infty}\lim_{n\to\infty}L_{m(f, g; n), y}dy \\& = & \dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy \\\end{eqnarray*}です。
定理B.3.1は $f, g$ が両方とも可積分でない場合には反例があり、例えば、区間 $[0, T)$ において\[f(x) = g(x) = 1/x\]であるように取ればこれが反例になります。
$L_{f, y}L_{g, y} = \min\{y^{-2}, T\}$ なので\[\dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy < +\infty\]です。しかし、$x\in [0, \tfrac{T}{n + 1})$ に対して $m(f, g; n)(x) = 1/(n + 1)x$ であることから\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = +\infty\]となり、よって、定理B.3.1の等式は成立しません。
以上です。
一応、自分で考えた結果で参考文献とかはないです。そう変なことはしてないので大丈夫とは思うけど。
参考文献
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