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数学ノートについて
B.3 積分極限問題の動画への補足
B.3.1 導入と主張

2025/01/05に投稿した、極限\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\pi}\min\{|\sin nx|, |\sin (n + 1)x|\}dx\]を計算してくださいという動画への補足です。$($内容的にはここだけで完結してるので、動画は見る必要ないです。$)$

ここでは動画内で提示した定理1および定理4をもう少し一般化した事実を示します。

一応、問題のネタバレではあるので、解きたい人は解いてから続き見てください。





しばらくネタバレ防止の改行











































































まず、いくつか記号を導入しておきます。

正実数 $T > 0$ を固定する。
補完実直線 $\R\sqcup \{-\infty, +\infty\}$ を $\overline{\R}$ で表す。
関数 $f, g : \R\to \overline{\R}$ と正整数 $n\in \Np$ に対して関数 $m(f, g; n) : \R\to \R$ を\[m(f, g; n)(x) := \min\{f(nx), g((n + 1)x)\}\]により定める。
関数 $f : \R\to \R$ と拡張実数 $y\in \overline{\R}$ に対して区間 $[0, T)$ の部分集合 $K_{f, y}$ を\[K_{f, y} := \{x\in [0, T)\mid f(x)\geq y\}\]により定義し、もし $K_{f, y}$ がLebesgue可測であればそのLebesgue測度を $L_{f, y}$ で表すとする。
一般に、Lebesgue可測集合 $A$ の測度は $\mu(A)$ で表すとする。

次がここで示したいことです。

定理B.3.1

周期 $T$ を持つ非負値可測関数 $f, g : \R\to [0, +\infty]$ が与えられ、一方は区間 $[0, T)$ 上でLebesgue可積分とする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy\]が成立する。

例えば、冒頭の問題に適用すれば\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\pi}\min\{|\sin nx|, |\sin (n + 1)x|\}dx = \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{1}(\pi - 2\arcsin y)^{2}dy\]が分かり、あとは $y = \sin t$ で置換積分すると $dy = \cos t dt$ から\begin{eqnarray*}\dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{1}(\pi - 2\arcsin y)^{2}dy & = & \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi/2}(\pi - 2t)^{2}\cos t dt \\& = & \dfrac{1}{\pi}\int_{0}^{\pi/2}(2u)^{2}\sin u du \\& = & 4 - \dfrac{8}{\pi}\end{eqnarray*}と計算できます。(動画の最初の解法よりはるかに簡単かつ汎用的になってるわけです。)

B.3.2 証明

補題を準備します。以下、区間 $[0, T)$ の部分集合 $A$ に対し、その定義関数を周期 $T$ を持つように拡張して得られる関数を $\varphi_{A}$ で表すとします。

補題B.3.2

$A, B$ を区間 $[0, T)$ に含まれる区間Riemann体積確定集合で置き換えても証明上手くいきます。とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。

証明

いくつか記号を導入します。

区間 $[0, T)$ を $n$ 等分してできる右開の半開区間を順に $J_{n, 0}, J_{n, 1}, \dots, J_{n, n - 1}$ とおく。
各 $n$ に対し、$J_{n, k}\subset A$ となる $k$ 全体からなる集合を $C_{n}$ とおき、$P_{n} := \bigcup_{k\in C_{n}}J_{n, k}$ とおく。
各 $n$ に対し、$J_{n, k}\cap A\neq \varnothing$ となる $k$ 全体からなる集合を $D_{n}$ とおき、$Q_{n} := \bigcup_{k\in D_{n}}J_{n, k}$ とおく。
各 $n$ に対し、$J_{n, k}\subset B$ となる $k$ 全体からなる集合を $E_{n}$ とおき、$R_{n} := \bigcup_{k\in E_{n}}J_{n, k}$ とおく。
各 $n$ に対し、$J_{n, k}\cap B\neq \varnothing$ となる $k$ 全体からなる集合を $F_{n}$ とおき、$S_{n} := \bigcup_{k\in F_{n}}J_{n, k}$ とおく。
周期 $T$ を持つ関数であって区間 $[0, T)$ への制限が $J_{n, k}$ の定義関数になるものを $\chi_{n, k}(x)$ とする。(もちろん $\chi_{n, k} = \varphi_{J_{n, k}}$ です。)

まず、$f = \varphi_{A}$, $g = \varphi_{B}$ に注意して、常に\[\varphi_{P_{n}}(x)\leq f(x)\leq \varphi_{Q_{n}}(x),\]\[\varphi_{R_{n}}(x)\leq g(x)\leq \varphi_{S_{n}}(x)\]が成立することから\[m(\varphi_{P_{n + 1}}, \varphi_{R_{n}}; n)(x)\leq m(f, g; n)(x)\leq m(\varphi_{Q_{n + 1}}, \varphi_{S_{n}}; n)(x)\]です。一般に $0$ または $1$ のみを値に取る関数 $\xi(x), \eta(x)$ に対して\[\min\{\xi(x), \eta(x)\} = \xi(x)\eta(x)\]なので\[\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)\leq m(f, g; n)(x)\leq \varphi_{Q_{n + 1}}(nx)\varphi_{S_{n}}((n + 1)x)\]です。

常に $\varphi_{P_{n + 1}}(x) = \sum_{k\in C_{n + 1}}\chi_{n + 1, k}(x)$, $\varphi_{R_{n}}(x) = \sum_{l\in E_{n}}\chi_{n, l}(x)$ であることから左辺の積分について\[\int_{0}^{T}\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)dx = \sum_{(k, l)\in C_{n + 1}\times E_{n}}\int_{0}^{T}\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)dx\]ですが、ここで\[\int_{0}^{T}\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)dx = \dfrac{T}{n(n + 1)}\]と計算できるので区間 $[0, T)$ 上に限って考えるとして、$\chi_{n + 1, k}(nx)$ は $i\equiv k\mod n + 1$ を満たす $0\leq i < n(n + 1)$ に対する $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。同様に、$\chi_{n, l}((n + 1)x)$ は $i\equiv l\mod n$ を満たす $0\leq i < n(n + 1)$ に対する $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。よって、中国式剰余定理より $\chi_{n + 1, k}(nx)\chi_{n, l}((n + 1)x)$ はある唯一の $J_{n(n + 1), i}$ の上では常に $1$ を値に取り、それ以外では常に $0$ を値に取ります。\begin{eqnarray*}\int_{0}^{T}\varphi_{P_{n + 1}}(nx)\varphi_{R_{n}}((n + 1)x)dx & = & \sum_{(k, l)\in C_{n + 1}\times E_{n}}\dfrac{T}{n(n + 1)} \\& = & \dfrac{1}{T}\dfrac{T|C_{n + 1}|}{n + 1}\dfrac{T|E_{n}|}{n} \\& = & \dfrac{1}{T}\mu(P_{n + 1})\mu(R_{n})\end{eqnarray*}です。同様に右辺の積分について\[\int_{0}^{T}\varphi_{Q_{n + 1}}(nx)\varphi_{S_{n}}((n + 1)x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(Q_{n + 1})\mu(S_{n})\]です。よって、\[\dfrac{1}{T}\mu(P_{n + 1})\mu(R_{n})\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \dfrac{1}{T}\mu(Q_{n + 1})\mu(S_{n})\]です。ここで、明らかに極限 $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(P_{n}) = \mu(A)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(Q_{n}) = \mu(A)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(R_{n}) = \mu(B)$, $\underset{n\to\infty}{\lim}\mu(S_{n}) = \mu(B)$ が成立するので、$n$ に関する極限とはさみうちの原理より\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]です。

補題B.3.3

$A, B$ を区間 $[0, T)$ における開集合とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。

証明

$A$ は可算個の区間 $I_{0}, I_{1}, \dots$ たちの直和として表し、$B$ も可算個の区間 $J_{0}, J_{1}, \dots$ たちの直和として表すとします必要であれば便宜的に空集合を加えてちょうど可算個にする。ちなみに、実数体の開集合は開区間の直和として表され、各開区間に対してそこに属する有理数を選ぶことで高々可算個の直和であることが分かります。。よって\[m(f, g; n) = \sum_{k, l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)\]と分解できます。まずは、これと単調収束定理を用いて\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}\sum_{k, l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \lim_{n\to\infty}\sum_{k, l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx\end{eqnarray*}と変形できます。続いて、Lebesugue収束定理を用いて\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\sum_{k, l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k\in\N}\lim_{n\to\infty}\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\& = & \sum_{k, l\in\N}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx \\\end{eqnarray*}と変形できます総和を数え上げ測度に関する積分と思ってLebesgue収束定理を適用しています。総和 $\sum_{k, l\in\N}$ を $\sum_{k\in\N}\sum_{l\in\N}$ に崩しているのは、優関数をいきなり取れるか定かでないためです。$2$ つ目の等号は $\underset{n\to\infty}{\lim}$ と $\sum_{k\in\N}$ の交換で、単調収束定理より\[\sum_{l\in\N}\int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx = \int_{0}^{T}\sum_{l\in\N}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{J_{l}}; n)(x)dx = \int_{0}^{T}m(\varphi_{I_{k}}, \varphi_{B}; n)(x)dx\]であることに注意すれば優関数 $a : \N\to\R$ は $a(k) := \mu(I_{k})$ に取ればよいと分かります。当然 $\sum_{k\in\N}\mu(I_{k}) = \mu(A) < +\infty$ なので可積分性もよいです。。最後に補題B.3.2を適用して\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \sum_{k, l\in\N}\dfrac{1}{T}\mu(I_{k})\mu(J_{l}) = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]です。

補題B.3.4

$A, B$ を区間 $[0, T)$ に含まれる可測集合とし、周期 $T$ をもつ関数 $f, g : \R\to \R$ の区間 $[0, T)$ への制限はそれぞれ $A, B$ の定義関数になるとする。このとき、等式\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が成立する。

証明

各正整数 $k\in \Np$ に対して区間 $[0, T)$ における開集合 $U_{k}, V_{k}$ を次の条件を満たすように取ります。

列 $U_{1}, U_{2}, \dots$ と $V_{1}, V_{2}, \dots$ は単調減少。
全ての $k\in \Np$ で $A\subset U_{k}$ および $B\subset V_{k}$ を満たす。
全ての $k\in \Np$ で $\mu(U_{k}\setminus A) < \tfrac{1}{k}$ および $\mu(V_{k}\setminus B) < \tfrac{1}{k}$ を満たす。

まず\[m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n) = m(\varphi_{A}, \varphi_{B}; n) + m(\varphi_{A}, \varphi_{V_{k}\setminus B}; n) + m(\varphi_{U_{k}\setminus A}, \varphi_{B}; n) + m(\varphi_{U_{k}\setminus A}, \varphi_{V_{k}\setminus B}; n)\]と $f = \varphi_{A}$, $g = \varphi_{B}$ より\[\int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx + \dfrac{3}{k}\]と評価でき、よって\[\int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx - \dfrac{3}{k}\leq \int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \int_{0}^{T}m(\varphi_{U_{k}}, \varphi_{V_{k}}; n)(x)dx\]が分かります。補題B.3.3を適用して\[\dfrac{1}{T}\mu(U_{k})\mu(V_{k}) - \dfrac{3}{k}\leq \varliminf_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \varlimsup_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx\leq \dfrac{1}{T}\mu(U_{k})\mu(V_{k})\]であり、$k$ について極限を取ることで\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = \dfrac{1}{T}\mu(A)\mu(B)\]が従います。

では、定理B.3.1を示します。

定理の証明

補題B.3.4より各 $y\in [0, +\infty]$ に対して\[\lim_{n\to\infty}L_{m(f, g; n), y} = \dfrac{1}{T}L_{f, y}L_{g, y}\]です。関数列 $\{L_{m(f, g; n), y}\}$ に対して $L_{f, y}$ もしくは $L_{g, y}$ が可積分な優関数として取れるので、Lebesgue収束定理より\begin{eqnarray*}\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx & = & \lim_{n\to\infty}\int_{0}^{\infty}L_{m(f, g; n), y}dy \\& = & \int_{0}^{\infty}\lim_{n\to\infty}L_{m(f, g; n), y}dy \\& = & \dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy \\\end{eqnarray*}です。

B.3.3 補足
補足B.3.5

定理B.3.1は $f, g$ が両方とも可積分でない場合には反例があり、例えば、区間 $[0, T)$ において\[f(x) = g(x) = 1/x\]であるように取ればこれが反例になります。

証明

$L_{f, y}L_{g, y} = \min\{y^{-2}, T\}$ なので\[\dfrac{1}{T}\int_{0}^{\infty}L_{f, y}L_{g, y}dy < +\infty\]です。しかし、$x\in [0, \tfrac{T}{n + 1})$ に対して $m(f, g; n)(x) = 1/(n + 1)x$ であることから\[\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{T}m(f, g; n)(x)dx = +\infty\]となり、よって、定理B.3.1の等式は成立しません。

以上です。

メモ

一応、自分で考えた結果で参考文献とかはないです。そう変なことはしてないので大丈夫とは思うけど。

参考文献

[1] 伊藤清三 ルベーグ積分入門 裳華房 (1963)

更新履歴

2025/01/13
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