話を始める前にまず、一般の線形空間と積演算の対としてLie代数を定義しておきます。
Lie群には基本的な自己微分同相 $($Lie群の同型ではない$)$ として左移動 $L_{g}$ と右移動 $R_{g}$ が存在します。これは各 $g\in G$ に対して\[L_{g} : G\to G : h\mapsto gh,\]\[R_{g} : G\to G : h\mapsto hg\]により定義されるもので、つまり、$g\in G$ を固定して左からかけるのが左移動 $L_{g}$、右からかけるのが右移動 $R_{g}$ です。基本的な性質として、左移動と右移動の可換性 $L_{g}\circ R_{h} = R_{h}\circ L_{g}$ や、合成 $A_{g} = L_{g}\circ R_{g^{-1}} : h\mapsto ghg^{-1}$ が内部自己同型でありLie群の自己同型となることは容易です。
さて、Lie群 $G$ 上のベクトル場 $X\in\mathfrak{X}(G)$ であってこの左移動に関して不変である、つまり、任意の $g\in G$ に対して $(L_{g})_{*}X = X$ を満たすものもの全体からなる線形空間 $\mathfrak{g}$ は有限次元Lie代数となり、そのLie群の性質をよく反映する重要な対象です。繰り返しになりますが、
Lie群 $G$ に対し、そのベクトル場 $X\in \mathfrak{X}(G)$ が左不変であるとは任意の $g\in G$ に対して $(L_{g})_{*}X = X$ を満たすことと定義し、それら全体からなる線形空間をLie群 $G$ のLie代数という。よくドイツ文字の小文字を用いて $($$G$ に対するこの場合は$)$ $\mathfrak{g}$ と書いたり $\Lie(G)$ と書く。
Lie群 $G$ のLie代数が実際にLie代数であることは任意の $X, Y\in \mathfrak{g}$ と $g\in G$ に対して\[(L_{g})_{*}[X, Y] = [(L_{g})_{*}X, (L_{g})_{*}Y] = [X, Y]\]が成立すること $($積について閉じていること$)$ に注意すれば容易に確かめられます。
まず、Lie代数がLie群 $G$ の単位元 $e$ 上の接空間 $T_{e}G$ と同一視される、特に有限次元であることを見ておきます。
Lie群 $G$ の左不変ベクトル場は単位元 $e$ 上の値のみで決定される。逆に、接ベクトル $v\in T_{e}G$ に対して $X_{e} = v$ を満たす左不変ベクトル場 $X$ が存在する。よって、Lie群 $G$ のLie環 $\mathfrak{g}$ は接空間 $T_{e}G$ と同一視される。
線型写像 $\mathfrak{g}\to T_{e}G : X\mapsto X_{e}$ が同型であることを示せばよいです。まず単射性ですが、$X, Y\in \mathfrak{g}$ が $X_{e} = Y_{e}$ を満たすとき、その左不変性から任意の $g\in G$ に対して\[X_{g} = (L_{g})_{*}X_{e} = (L_{g})_{*}Y_{e} = Y_{g}\]であるので $X = Y$ が分かりよいです。
全射性を示します。$v\in T_{e}X$ に対し、ベクトル場 $X\in \mathfrak{X}(G)$ を各 $g\in G$ に対して $X_{g} = (L_{g})_{*}v\in T_{g}G$ とすることで定めます。これが左不変であることは任意の $g, h\in G$ に対して\[(L_{g})_{*}X_{h} = (L_{g})_{*}\circ (L_{h})_{*}v = (L_{gh})_{*}v = X_{gh}\]なのでよく、$X\in \mathfrak{g}$ かつ $X_{e} = v$ となっています。また、これが $C^{\infty}$ 級であることは容易です局所座標系を取るのが簡単かな。。
Lie群 $G$ の接束は自明。
$T_{e}G$ の基底 $e_{1}, \dots, e_{n}$ を取れば、対応する左不変ベクトル場 $X^{1}, \dots, X^{n}$ が $G$ 上で $($局所$)$ 枠を与えます。
以上です。
まだ全然かけてません。
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