数学をする上で最も基礎的な概念である「集合」を導入します。いわゆる素朴集合論として展開し、公理的には扱いません。
論理学からの言葉や記号の準備を最低限未満ですが導入しておきます。正確な解説には命題論理や述語論理を扱っている記号論理学の教科書を求めてください。
数学において真 $($正しい$)$ か偽 $($誤り$)$ のどちらか一方に決まる文章や式、例えば、「 $5$ は奇数である」や「 $3$ は $5$ よりも大きい」といったものを命題といいますもちろん、「 $5$ は奇数である」は真で、「 $3$ は $5$ よりも大きい」は偽です。。いくつかの与えられた命題から新たな命題を考えることができ、最も基本的なものは $P, Q$ を命題として
というものが考えられ、さらにはこれらの組み合わせにより多くの命題を表現していきます。例えば $P, Q$ をそれぞれ冒頭の例とすれば $P\wedge \neg Q$ は「 $5$ は奇数であり、かつ、$3$ は $5$ より大きくはない」という命題になります。上記の否定 $\neg P$ から含意 $P\Rightarrow Q$ の $4$ つの真偽は $P, Q$ の真偽によって決定され、次の表はその結果を表します。$($真偽表などと呼ばれます。$)$
$P$ | $Q$ | $\neg P$ | $P\wedge Q$ | $P\vee Q$ | $P\Rightarrow Q$ |
真 | 真 | 偽 | 真 | 真 | 真 |
真 | 偽 | 偽 | 偽 | 真 | 偽 |
偽 | 真 | 真 | 偽 | 真 | 真 |
偽 | 偽 | 真 | 偽 | 偽 | 真 |
また、命題 $P, Q$ に対して $(P\Rightarrow Q)\wedge (Q\Rightarrow P)$ を単に $P\Leftrightarrow Q$ と略記して「 $P$ は $Q$ に同値」といいます。基本的な事実として次があります。
$A, B, C$ を命題とする。常に以下のことが成立する。
変数 $x$ を含む形の文章や式であって、その変数を固定することで真偽が決定されるものをここでは変数 $x$ に関する条件と呼び $P(x)$ などで表すことにします。そして、$x$ を固定して $P(x)$ が真となるとき、$x$ は条件 $P(x)$ を満たすとか $x$ について $P(x)$ が成立するなどということにします。例えば、「 $x$ は平方数である」という条件は $x = 0, 1, 4, 9$ などに対しては真 $($成立する$)$ であり、$x = -2, 5$ などでは偽 $($成立しない$)$ となります。変数 $x$ に関する条件 $P(x)$ についての命題「任意の $x$ に対して $P(x)$ が成立する」は全称命題と呼ばれ\[{}^{\forall}x \ P(x)\]と書き、命題「ある $x$ が存在して $P(x)$ を満たす」は存在命題と呼ばれ\[{}^{\exists}x \ P(x)\]や\[{}^{\exists}x \text{ s.t. } P(x)\]と書きます「s.t.」はsuch thatの略で、「そのような」という意味です。。後者の存在命題に一意性を課した命題「ある $x$ がただ $1$ つ存在して $P(x)$ を満たす」はよく\[{}^{\exists 1}x \ P(x)\]や\[{}^{\exists !}x \ P(x)\]と書きます。
集合 $($set$)$ とはいくつか $($$0$ 個でも無限個でもよい$)$ の数学的対象たちの「集まり」のことで、例えば、非負整数全体からなる集合といったら\[0, 1, 2, 3, 4, \dots\]たちを全て集めたものであり、方程式 $x^{3} - 3x + 2 = 0$ の実数解全体からなる集合といったらそれは $-2$ と $1$ をひとまとめにしたものです。集合をなす数学的対象は数に限る必要はなく、平面上の図形であるとか多項式なども、さらに言えば集合自身も数学的対象として集めることで集合をなすと考えます。集合はどのような数学的対象を集めたものかによっては系 $($system$)$ や族 $($family$)$ とも呼ばれ、例えば、集合たちからなる集合のことは集合族や集合系などとも呼びますどういうときに○○系や○○族と呼ばれるかは(恐らく)慣習によるところが大きく、例えば、空間中の点による集合のことを点集合と呼ぶことはあっても点系や点族とはそうそう言わないと思うし、多項式による集合についていえば多項式集合や多項式系とは言っても多項式族とはあまり言わない気がします。ただ、個人的にはですが、「○○族」は違和感あっても「○○の族」や「○○による族」は自然に聞こえたりするしよく使ったりします。すぐ後で添字付けられた族という集合に似た概念を導入しますが、そちらも単に族といったり、テキストによってはこれを系と呼ぶこともあるようです。用語について、[松坂 集合・位相入門]のように「系=集合」と「族=添え字付けられた族」として両者を明確に区別するテキストもあります。添字付けられた族と集合は明確には区別されず扱われたり、これらを表す用語や記号についても混用されることも多いのですが、この点に関するここでの立場は添字付けられた族の導入時 $($1.2.4節$)$ に説明したいと思います。。
一つ注意として、集合は各数学的対象がその中に入っているかどうかきちんと決定されていなければならず、例えば、「好きな数字全体」というのは人やその時の気分によるだろうということで、このような含む数学的対象の範囲が不明瞭なものは集合とは考えません。
集合に限らず、何かしら数学的対象を表記する場合には記号 $($文字$)$ を用いますが記号としてはラテン文字 $a, b, c,\dots$、ギリシャ文字 $\alpha, \beta, \gamma, \dots$、ドイツ文字 $\mathfrak{a}, \mathfrak{b}, \mathfrak{c}, \dots$ などがよく用いられます。例として並べたのは小文字ですが、大文字も当然使われます。その他、太字などもよく用いられます。$($稀に平仮名や片仮名が使われることも…$)$、よく使うものには特別に記号を固定しておくと便利です。例えば、ここでは数の集合について次を採用します。
もう一つ重要な集合として、何一つとして数学的対象を持たない集合を空集合 $($empty set$)$ といい通常 $\varnothing$ や $\emptyset$ により表します。
集合を扱っていくための用語・記号・記法をいくつか導入します。まず、数学的対象 $x$ が集合 $X$ の中に入っているとき、$x$ は $X$ の元 $($もしくは要素$)$ であるといったり、$x$ は $X$ に属する $($もしくは含まれる$)$ といい、記号\[x\in X\]により表します。その否定、つまり、$x$ が集合 $X$ の中に入っていない $($属さない$)$ ことを記号\[x\notin X\]により表します。
続いて、集合を表すための記法ですが、例えば上で考えたような非負整数全体からなる集合 $\N$ は\[\{0, 1, 2, 3, 4, \dots\}\]や\[\{x\mid x\in \N\}\]という表記をし、前者のような集合に属す元を書き並べる表し方を外延的記法、後者のようになにかしら条件、この場合は $x\in \N$、を満たす数学的対象全体としての表し方を内包的記法といいます。内包的記法をもう少し抽象的に言えば、これは数学的対象を表す変数 $x$ に関する条件 $P(x)$ に対し、その条件を満たす数学的対象全体からなる集合を $\{x\mid P(x)\}$ と表す記法のことです。方程式 $x^{3} - 3x + 2 = 0$ の実数解全体からなる集合であればそれぞれ\[\{-1, 2\}, \ \{x\mid x\in \R, \ x^{3} - 3x + 2 = 0\}\]です。ただし、条件部分の論理積をカンマ「 $,$ 」で分けてを表すことにしています。また、内包的記法において条件部分の $x\in \N$ や $x\in \R$ は考える数学的対象を特定の集合の元に限定するという意味になりますが、この部分を例えば\[\{x\in \R\mid x^{3} - 3x + 2 = 0\}\]とする略記を採用し、そもそも考える範囲が文脈から明らかな場合は単に\[\{x\mid x^{3} - 3x + 2 = 0\}\]とも書くことにします。また、よくある略記として、変数 $x$ に関する式 $f(x)$ と条件 $P(x)$ によって\[\{y\mid {}^{\exists}x \text{ s.t. } P(x)\wedge y = f(x)\}\]の形で表される集合、つまり、$P(x)$ が成立するような $x$ 全てにわたって $f(x)$ を集めた集合のことを単に\[\{f(x)\mid P(x)\}\]と書くことがあります。例えば、偶数全体からなる集合のことは\[\{2x\mid x\in \Z\}\]と書くことができます。
素朴集合論の抱える問題について少しだけ触れておきます。いま、数学的対象を集めたものであれば何でもかんでも集合と呼ぶことになっていますが、実はこのような扱いは矛盾を生んでしまいます。有名なのはRussellのパラドックスと呼ばれるもので、これは「集合 $x$ であって自分自身を元として持たないもの全体からなる集合 $X$ 」、つまり、\[X := \{x\mid x\notin x\}\]を実際に集合とみなしてしまうと矛盾が導かれるというものです。いま、$X$ 自身は集合なので
のいずれか一方のみが必ず成立することになりますが、もし前者の $X\in X$ が成立していれば集合 $X$ を定義する条件 $x\notin x$ を満たさないことから $X\notin X$ となり矛盾し、後者の $X\notin X$ であっても $X$ は集合 $X$ 自身を定義する条件を満たすため $X\in X$ となり矛盾します。よって、どちらも起こりえないことになり矛盾が導かれます。
また、「全ての集合からなる集合 $Y$ 」を実際に集合とみなしてしまうと矛盾が導かれるというCantorのパラドックスも知られていますあとで考える冪集合 $($1.1.3.2節$)$ と集合の濃度 $($1.4.3節$)$ に関する事実を使います。$Y$ とその冪集合 $2^{Y}$ の濃度を比較すると、$2^{Y}$ の各元が $Y$ にも属すことから $2^{Y}\leq Y$ ですが、これは冪集合の濃度について一般に成立する事実 $Y < 2^{Y}$ に矛盾します。。
これら矛盾は何でもかんでも節操なく集合としてしまっていることに起因しているのですが、この問題を回避するために集合として扱う範囲を明確に規定して行う「公理的集合論」があります。もう少し正確にいうと、これはいくつかの無条件に認められる公理と呼ばれる命題たち $($公理系$)$ から出発して構築する集合論のことで、単に公理的集合論といってもZermelo-Fraenkel公理系 $($ZF公理系$)$ やそこに選択公理 $($公理1.2.14$)$ を加えたZFC公理系など複数の立場があります。ここではZFC公理系を念頭に話を進めていきますが、実際に公理から出発することはせず、上記の集合 $X, Y$ のようなものに触れないよう注意しながら事実としてZFC公理系において正当化される集合操作のみを行います。
$2$ つの集合 $A, B$ が与えられたとき、$A$ の任意の元が $B$ にも属しているとき\[A\subset B\]と書き「 $A$ は $B$ に含まれる」や「 $B$ は $A$ を含む」といったり「 $A$ は $B$ の部分集合である」などといいます。集合に対するこのような一方が他方を含むという関係は包含関係と呼ばれます。例えば、偶数全体からなる集合を $2\Z$ と表すとき $2\Z\subset \Z$ であり、数の集合たちには\[\N_{+}\subset \N\subset \Z\subset \Q\subset \R\subset \C\subset \mathbb{H}\]という包含関係がありますこれらを互いに共通元を持たない集合 $($特に包含関係もない$)$ と考えると都合がよい場合もあり、そこは臨機応変に扱っていくのですが、通常は明らかな包含関係を認めます。。また、空集合 $\varnothing$ については任意の集合 $X$ に対して $\varnothing\subset X$ となります。ちなみに、包含関係の記号のような左右非対称な記号は左右反転して用いられることも多く、例えば $A\subset B$ は $B\supset A$ とも書かれます。
集合 $A, B$ の間に両方の向きの包含関係が存在するとき、つまり、$A\subset B$ かつ $B\subset A$ であるときは\[A = B\]と書いて $A$ と $B$ は $($集合として$)$ 等しいといいます。また、集合 $A, B$ に対して $A\subset B$ かつ $A\neq B$ であることを $A\subsetneq B$ と書いて $A$ は $B$ の真部分集合であるといいます。集合の等号に関する基本的な性質として次が成立します。
一般に、与えられた集合 $A, B$ に対して包含関係 $A\subset B$ を示すためには定義通り $A$ の任意の元が $B$ に属すことを示せばよいですが、そのためには単に $A$ の元 $x$ を取って $x\in B$ であることを確認する議論を取ればよいです。
(1) $x\in A$ とします。$A\subset B$ より $x\in B$ であり、$B\subset C$ より $x\in C$ です。よって、任意の $x\in A$ に対して $x\in C$ であるので $A\subset C$ です。
(2) (3) 定義から明らか。
(4) (1)から明らか。
注意として、集合においては表記上の元を並べる順番の違いであるとか重複の存在は等号の成立のためには関係がなく、例えば\[\{0, 1, 2\} = \{2, 0, 1\} = \{1, 2, 0, 2, 2\}\]となります。
集合 $A, B$ が与えられたとき、それらに共通する $($つまり、両方に属する$)$ 元たちを全て集めた集合 $A\cap B$ が\[A\cap B := \{x\mid x\in A \wedge x\in B\}\]により定義されます。これを $A$ と $B$ の共通部分といいます。
また、集合 $A, B$ が与えられたとき、少なくともそのどちらか一方には属するもの全体からなる集合 $A\cup B$ が\[A\cup B := \{x\mid x\in A \vee x\in B\}\]により定義されます。これを $A$ と $B$ の和集合といいます。
次は集合どうしの共通部分と和集合について成立する基本的な性質です。
$A, B, C$ を集合とする。
一部のみ確認します。
(4) これは\[x\in A\cup B \Leftrightarrow x\in A\vee x\in B\Leftrightarrow x\in B\vee x\in A\Leftrightarrow x\in B\cup A\]からそうです。
(8) これは\begin{eqnarray*}x\in (A\cup B)\cap C & \Leftrightarrow & (x\in A\vee x\in B)\wedge x\in C \\& \Leftrightarrow & (x\in A\wedge x\in C)\vee (x\in B\wedge x\in C)\Leftrightarrow x\in (A\cap C)\cup (B\cap C)\end{eqnarray*}からそうです。
(11) $A\subset B$ という仮定の下で $A\cap C\subset B\cap C$ を示せばよいです。$x\in A\cap C$ とします。$x\in A$ であり、$A\subset B$ より $x\in B$ です。$x\in A\cap C$ より $x\in C$ でもあるので $x\in B\cap C$ です。以上より、$x\in A\cap C$ ならば $x\in B\cup C$ が示されたので $A\cap C\subset B\cap C$ です。
(12) $A\subset B$ という仮定の下で $A\cup C\subset B\cup C$ を示せばよいです。$x\in A\cup C$ とします。$x\in A$ または $x\in C$ です。$x\in A$ のとき、$A\subset B$ より $x\in B$ であり、$x\in B\cup C$ です。また、$x\in C$ のときも $x\in B\cup C$ です。よって、$x\in A\cup C$ にならば $x\in B\cup C$ が示され、$A\cup C\subset B\cup C$ です。
集合 $A$ から集合 $B$ に属する元を取り除いて得られる集合 $A\setminus B$ が\[A\setminus B := \{x\mid x\in A\wedge x\notin B\}\]により定義され、これを $A$ から $B$ を引いた差集合といったり、$A$ における $B$ の補集合 $($complement$)$ といいます。
数学をする中で、特定の集合 $X$ を固定してその元 $x, y, z, \dots$ や部分集合 $A, B, C, \dots$ にのみ着目して考えるという状況は多く、そのような状況においては集合 $X$ のことを全体集合 $($universal set$)$ と呼びます。考える全体集合 $X$ が明らかな状態では表記や呼称上の $X$ を排除しても混乱の恐れは小さく、例えば、差集合 $X\setminus A$ は $A^{c}$ と書いて単に $A$ の補集合と呼びます。
補集合に関する基本的な性質として次があります。
$X$ を全体集合、$A, B$ をその部分集合とする。
(5) $x\in A^{cc}\Leftrightarrow x\notin A^{c}\Leftrightarrow \neg(x\in A^{c})\Leftrightarrow \neg(x\notin A)\Leftrightarrow \neg\neg (x\in A)\Leftrightarrow x\in A$.
(6) $x\in (A\cup B)^{c}\Leftrightarrow \neg(x\in A\cup B)\Leftrightarrow \neg(x\in A\vee x\in B)\Leftrightarrow x\notin A\wedge x\notin B\Leftrightarrow x\in A^{c}\cap B^{c}$.
(8) $A\subset B$ という仮定の下で $B^{c}\subset A^{c}$ を示せばよいです。$x\in B^{c}$ とします。$x\in A$ とすると $A\subset B$ より $x\in B$ となって矛盾するので $x\notin A$、つまり、$x\in A^{c}$ です。よって、$x\in B^{c}$ ならば $x\in A^{c}$ が示せたので $B^{c}\subset A^{c}$ が分かりました。
数学的対象 $a, b$ による集合 $\{a, b\}$ は表記上の順番にはよらず $\{a, b\} = \{b, a\}$ となってしまいますが、順序を込めて考えたい場合も多く、その場合は\[(a, b)\]と表記することにして $a$ と $b$ の対 $($もしくは組$)$ と呼びます。対 $(a, b)$ に対しては $a\neq b$ ならば $(a, b)\neq (b, a)$ です対 $(a, b)$ は集合としては $(a, b) := \{a, \{a, b\}\}$ として定義されます。この定義に基づいて $a\neq b$ ならば $(a, b)\neq (b, a)$ が容易に確認できます。。また、対 $(a, b)$ の $a$ を第 $1$ 成分、$b$ を第 $2$ 成分と呼びます。一般にも同様に、$n$ 個の対象を順序込みで考える場合には\[(a_{1}, a_{2}, \dots, a_{n})\]のように書き、$n$ 組もしくは単に組と呼びます。$a_{i}$ を第 $i$ 成分と呼びます。
さて、集合 $A$ と $B$ が与えられたとき、$A$ の元を第 $1$ 成分、$B$ の元を第 $2$ 成分とする対全体からなる集合\[A\times B := \{(a, b)\mid a\in A, \ b\in B\}\]を $A$ と $B$ の直積といいます。
また、集合 $A$ と $B$ が与えられたとき、それらが共通部分を持たない $(A\cap B = \varnothing)$ と思って和集合を取りたいことがあり、そのようなときのために $A$ と $B$ の直和 $A\sqcup B$ を\[A\sqcup B := A\times \{0\}\cup B\times \{1\}\subset (A\cup B)\times \{0, 1\}\]により定義しておきます。ただ、実際に $A\cap B = \varnothing$ が分かっている場合にはそのことを強調する意味で $A\cup B$ を $A\sqcup B$ と書くこともあり、ここでは文脈上容易に判別できる場合には断りなくそちらの意味でも用いることにします。
もちろん、集合の直積、直和についても一般に $n$ 個の場合を考えることができます。
集合 $A$ が与えられたとき、その部分集合全体からなる集合族を冪集合 $($power set$)$ といい $2^{A}, \mathfrak{P}(A), \mathcal{P}(A)$ などと書きます。例えば、集合 $A$ が相異なる $3$ つの元からなる集合 $\{a, b, c\}$ ならば\[2^{A} = \{\varnothing, \{a\}, \{b\}, \{c\}, \{a, b\}, \{a, c\}, \{b, c\}, \{a, b, c\}\}\]ですこのとき $2^{A}$ の元の数は $8 = 2^{3}$ 個になり、これが一般の有限集合に対して成立することが冪集合の記号として $2^{A}$ が用いられる理由になります。他の $2$ つはpower setの頭文字の $P$ から。$\mathfrak{P}$ はドイツ文字の $P$ です。。集合 $A$ の部分集合からなる集合族を $A$ の部分集合族といいますが、これは $A$ の冪集合の部分集合に他なりません。
以上です。
具体例はいくらか増やしたいところ。
参考文献
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