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数学ノートについて
第2章 位相空間論からの準備
2.1 位相空間
2.1.1 位相空間の定義
開集合系による定義

一般に位相空間を定義します。

定義2.1.1
(開集合系と位相空間)

$X$ を集合、$\mathcal{O}$ をその部分集合族とする。次の条件を満たすとき、$\mathcal{O}$ を $X$ の開集合系 $($もしくは位相$)$ という。

(i) $\varnothing, X\in \mathcal{O}$.
(ii) 任意の部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcup_{U\in \mathcal{U}} U\in \mathcal{O}$.
(iii) 任意の有限部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcap_{U\in \mathcal{U}} U\in \mathcal{O}$.

集合 $X$ とその開集合系との対 $(X, \mathcal{O})$ を位相空間といい、集合 $X$ に対してこのように位相空間を構成することを $X$ に位相を与える、$X$ に位相を入れるなどという。位相空間 $(X, \mathcal{O})$ において、$X$ の元を点とも呼ぶ。また、位相空間 $(X, \mathcal{O})$ は単に $X$ とも書く。

補足2.1.2

$3$ つ目の「任意の有限部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcap_{U\in \mathcal{U}} U\in \mathcal{O}$ 」という条件は「任意の $U_{1}, U_{2}\in \mathcal{O}$ に対して $U_{1}\cap U_{2}\in \mathcal{O}$ 」という条件で置き換えてもよく後者は前者の特別な場合であるし、前者は後者の高々有限開繰り返し適用より示されるため。、実際にそのように定義するテキストも多いです。

位相空間の例として次のようなものがあります。

例2.1.3
(位相空間の例)

(a) 集合 $X$ に対して $\mathcal{O} := \{\varnothing, X\}$ と定めることで対 $(X, \mathcal{O})$ は位相空間になっており、これを密着空間といいます。この $\mathcal{O}$ 自体は密着位相といいます。
(b) 集合 $X$ に対して $\mathcal{O} := 2^{X}$ と定めることで対 $(X, \mathcal{O})$ は位相空間になっており、これを離散空間といいます。この $\mathcal{O}$ 自体は離散位相といいます。
(c) Euclid空間 $\R^{n}$ に対し、1.7.3節で考えたその開集合系は命題1.7.20によりこちらの意味での開集合系です。
(d) $X$ を相異なる $3$ つの元からなる集合 $\{a, b, c\}$ とします。以下の集合族はいずれも $X$ の位相になります。
$\{\varnothing, X\}$
$\{\varnothing, \{a, b\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{b, c\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{a, b\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{a, b\}, \{a, c\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{b\}, \{a, b\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{b\}, \{a, b\}, \{a, c\}, X\}$
$\{\varnothing, \{a\}, \{b\}, \{c\}, \{a, b\}, \{a, c\}, \{b, c\}, X\}$
ちなみに、$3$ つの元 $a, b, c$ の順番を取り換えることで計 $29$ 個の位相が得られることが分かりそれぞれの並び換えにより順に $1, 3, 3, 3, 6, 3, 3, 6, 1$ 通りの位相が得られ、重複もないので計 $29$ 通りです。、事実として $3$ 元集合の位相はそれですべてであることが確かめられます。
(e) $X$ を集合とします。補集合が有限集合であるような $X$ の部分集合たち全てからなる部分集合族に空集合を加えた\[\mathcal{O} = \{\varnothing\}\cup \{U\in 2^{X}\mid \# U^{c} < \infty\}\]は $X$ の位相を定め、補有限位相と呼ばれます。$\varnothing, X\in \mathcal{O}$ は明らかであるし、任意の部分族 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\left(\bigcup_{U\in \mathcal{U}}U\right)^{c} = \bigcap_{U\in\mathcal{U}}U^{c}$ は $($$\mathcal{U} = \varnothing, \{\varnothing\}$ でない限り$)$ 有限集合なので、$\bigcup_{U\in \mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ であり、さらに、任意の有限部分族 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\left(\bigcap_{U\in \mathcal{U}}U\right)^{c} = \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U^{c}$ は $($$\varnothing\in \mathcal{U}$ でない限り$)$ 有限集合なので、$\bigcap_{U\in \mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ です。
定義2.1.4
(開集合と閉集合)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。$\mathcal{O}$ の元 $U$ を位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の開集合といい、その補集合 $U^{c}$ を位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の閉集合という。また、単に集合 $X$ とその開集合系 $\mathcal{O}$ が与えられている場合、$\mathcal{O}$ の元 $U$ の補集合 $U^{c}$ を開集合系 $\mathcal{O}$ に関する閉集合ということにするいちいち位相空間を参照せずに閉集合と呼びたいというだけのための定義で、開集合系が一緒ならば、$X$ の各部分集合に対してそれが開集合系に関する閉集合であることと位相空間の閉集合であることとは一致します。

閉集合系

開集合系に対する双対概念として閉集合系というものが定義でき、これはちょうど開集合系に関する閉集合全体からなる集合族に一致します。

定義2.1.5
(閉集合系)

$X$ を集合、$\mathcal{F}$ をその部分集合族とする。次の条件を満たすとき、$\mathcal{F}$ を $X$ の閉集合系という。

(i) $\varnothing, X\in \mathcal{F}$.
(ii) 任意の部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{F}$ に対して $\bigcap_{F\in \mathcal{V}} F\in \mathcal{F}$.
(iii) 任意の有限部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{F}$ に対して $\bigcup_{F\in \mathcal{V}} F\in \mathcal{F}$.

また、閉集合系 $\mathcal{F}$ が与えられたとき、$\mathcal{F}$ の元 $F$ の補集合 $F^{c}$ を閉集合系 $\mathcal{F}$ に関する開集合と呼ぶ。

命題2.1.6
(開集合系と閉集合系の対応)

$X$ を集合とする。

(1) $X$ の開集合系 $\mathcal{O}$ が与えられたとき、その各元の補集合全体からなる集合族 $\mathcal{F} = \{U^{c}\mid U\in \mathcal{O}\}$ は $X$ の閉集合系である。つまり、開集合系 $\mathcal{O}$ に関する閉集合全体からなる集合 $\mathcal{F}$ は閉集合系である。
(2) $X$ の閉集合系 $\mathcal{F}$ が与えられたとき、その各元の補集合全体からなる集合族 $\mathcal{O} = \{F^{c}\mid F\in \mathcal{F}\}$ は $X$ の開集合系である。つまり、閉集合系 $\mathcal{F}$ に関する開集合全体からなる集合 $\mathcal{O}$ は開集合系である。
(3) $X$ の開集合系全体からなる集合と $X$ の閉集合系全体からなる集合は上記の対応により一対一対応する。
証明

(1) 開集合系 $\mathcal{O}$ が与えられ、主張のように $\mathcal{F}$ を定めているとします。$\varnothing, X\in \mathcal{F}$ は明らかです。部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{F}$ を取ります。このとき、各 $F\in \mathcal{V}$ に対して $F^{c}\in \mathcal{O}$ なので $\bigcup_{F\in \mathcal{V}}F^{c}\in \mathcal{O}$ です。よって、\[\bigcap_{F\in\mathcal{V}}F = \left(\bigcup_{F\in \mathcal{V}}F^{c}\right)^{c}\in \mathcal{F}\]です。同様に、有限部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{F}$ に対して $\bigcap_{F\in \mathcal{V}}F^{c}\in \mathcal{O}$ なので\[\bigcup_{F\in\mathcal{V}}F = \left(\bigcap_{F\in \mathcal{V}}F^{c}\right)^{c}\in \mathcal{F}\]です。よって、$\mathcal{F}$ は閉集合系です。

(2) (1)と同様です。

(3) 開集合系全体からなる集合を $\mathfrak{O}$、閉集合系全体からなる集合を $\mathfrak{F}$ とおくことにします。また、写像 $\varphi : \mathfrak{P}(2^{X})\to \mathfrak{P}(2^{X}) : \mathcal{A}\mapsto \{A^{c}\mid A\in \mathcal{A}\}$ を取ります。明らかに $\varphi^{2} = \Id_{\mathfrak{P}(2^{X})}$ です。(1), (2)はそれぞれ制限 $\xi : \mathfrak{O}\to \mathfrak{F}$, $\eta : \mathfrak{F}\to \mathfrak{O}$ が定まっているということを意味し、$\varphi^{2} = \Id_{\mathfrak{P}(2^{X})}$ から $\eta\circ \xi = \Id_{\mathfrak{O}}$ と $\xi\circ \eta = \Id_{\mathfrak{F}}$ が従います。よって、これらの対応は全単射です。

補足2.1.7

このことにより、集合 $X$ に対してその開集合系との対 $(X, \mathcal{O})$ たち全体と閉集合系との対 $(X, \mathcal{F})$ たち全体の間に一対一対応が得られ、実は位相空間の定義として集合と閉集合系との対を考えても本質的に同じであることが分かります。

2.1.2 内部と閉包

位相空間の部分集合に対する基本的な操作として次の内部や閉包を取ることが挙げられます。

定義2.1.8
(内部・閉包・境界・外部)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。

(1) $x\in X$ が $A$ の内点であるとは、ある開集合 $U\in \mathcal{O}$ であって $x\in U$ かつ $U\subset A$ となるものが存在することと定める。$A$ の内点全体からなる集合を $\mathring{A}$ や $\Int A$ と書き、$A$ の内部という。
(2) $x\in X$ が $A$ の触点であるとは、任意の開集合 $U\in \mathcal{O}$ に対して $x\in U$ ならば $A\cap U\neq \varnothing$ が成立することと定める。$A$ の触点全体からなる集合を $\overline{A}$ や $\Cl A$ と書き、$A$ の閉包という。
(3) $A$ の境界 $\partial A$ を\[\partial A := \Cl A\cap \Cl A^{c}\]により定義する。境界に属す点を境界点と呼ぶ。
(4) $A$ の外部 $\Out A$ を\[\Out A := \Int A^{c}\]により定義する。

まず、内部と閉包に関する基本的な事実として次を示します。

命題2.1.9
(内部・閉包の基本性質)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A, B\subset X$ を部分集合とする。

(1) $\Int A\subset A\subset \Cl A$ が成立する。
(2) $\Int A$ は開集合である。
(3) $(\Cl A)^{c} = \Int A^{c}$ である。
(4) $\Cl A$ は閉集合である。
(5) $(\Int A)^{c} = \Cl A^{c}$ である。
(6) $A$ が開集合ならば $\Int A = A$ である。
(7) $A$ が閉集合ならば $\Cl A = A$ である。
(8) $A\subset B$ ならば $\Int A\subset \Int B$ である。
(9) $A\subset B$ ならば $\Cl A\subset \Cl B$ である。
(10) $\Int X = \Cl X = X$.
(11) $\Int\varnothing = \Cl\varnothing = \varnothing$.
証明

(1) 内部と閉包の定義から明らか。

(2) 各 $x\in \Int A$ に対して $x\in U_{x}$ かつ $U_{x}\subset A$ となる開集合 $U_{x}$ を取ります。当然、任意の $y\in U_{x}$ に対しても $y\in U_{x}$ かつ $U_{x}\subset A$ なので $y$ も $A$ の内点であり、$x\in U_{x}\subset \Int A$ です。よって、\[\bigcup_{x\in \Int A}U_{x} = \Int A\]ですが、左辺は開集合であるので $\Int A$ は開集合です。

(3) $x\in X$ が $A$ の触点であることの否定は、$x\in U$ かつ $A\cap U = \varnothing$ を満たす開集合 $U$ が存在するということですが、$A\cap U = \varnothing\Leftrightarrow U\subset A^{c}$ なので、これは $x$ が $A^{c}$ の内点であることに同値です。よって、$(\Cl A)^{c} = \Int A^{c}$ です。

(4) (3)より $\Int A^{c}$ が開集合であることを確かめればよいですが、これは(2)よりよいです。

(5) (3)の $A$ を $A^{c}$ で取り換え、両辺の補集合を取ればよいです。

(6) (1)で示したものとは逆の包含関係 $A\subset \Int A$ を示せばよいです。$x\in A$ 対し、$A$ が開集合なので直ちに $x$ は $A$ の内点であり、$x\in \Int A$ です。よって、$A\subset \Int A$ です。

(7) (3)より $\Cl A = (\Int A^{c})^{c}$ であり、$A^{c}$ が開集合であることと(6)から $\Cl A = A^{cc} = A$ です。

(8) (9) (10) (11) 定義から明らか。

続いて、境界と外部に関するものもまとめます。

命題2.1.10
(境界・外部の基本性質)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。

(1) 境界 $\partial A$ は閉集合である。
(2) 外部 $\Out A$ は開集合である。
(3) $\partial A = \Cl A\setminus \Int A$.
(4) $\Cl A = \Int A\sqcup \partial A$.
(5) $X = \Int A\sqcup \partial A\sqcup \Out A$.
証明

(1) $\partial A$ は閉集合 $\Cl A$ と $\Cl A^{c}$ の共通部分なので閉集合です。

(2) $\Out A = \Int A^{c}$ から明らかです。

(3) $\partial A = \Cl A\cap \Cl A^{c} = \Cl A\cap (\Int A)^{c}$ であり、$\Int A\subset \Cl A$ からこれは $\Cl A\setminus \Int A$ に等しいです。

(4) (3)より明らかです。

(5) $X = A\cup A^{c}\subset \Cl A \cup \Cl A^{c}$ より $\Cl A\cup \Cl A^{c} = X$ です。そして、(4)より $\Cl A \cup \Cl A^{c} = \Int A\cup \partial A \cup \Out A$ と $\Int A\cap \partial A = \varnothing$, $\Out A\cap \partial A = \varnothing$ です。また、$\Int A\subset A$, $\Out A = \Int A^{c}\subset A^{c}$ と $A\cap A^{c} = \varnothing$ より $\Int A\cap \Out A = \varnothing$ です。以上より、$X = \Int A\sqcup \partial A \sqcup \Out A$ です。

系として、位相空間の部分集合が開集合であることとの同値条件をまとめておきます。

系2.1.11
(開集合であることの同値条件)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。次は同値である。

(1) $A$ は開集合である。
(2) $\Int A = A$ が成立する。
(3) $A\cap \partial A = \varnothing$ が成立する。
証明

(1) ⇔ (2) 命題2.1.9で示しています。

(2) ⇒ (3) 命題2.1.10より $\Int A\cap \partial A = \varnothing$ なので、仮定より $A\cap \partial A = \varnothing$ です。

(3) ⇒ (2) $A\cap \partial A = \varnothing$ とすると、$A = A\cap \Cl A = A\cap (\Int A\cup \partial A) = \Int A\cup (A\cap \partial A) = \Int A$ です。途中で命題2.1.10を使用。

系2.1.12
(閉集合であることの同値条件)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。次は同値である。

(1) $A$ は閉集合である。
(2) $\Cl A = A$ が成立する。
(3) $\partial A\subset A$ が成立する。
証明

(1) ⇔ (2) 命題2.1.9で示しています。

(2) ⇒ (3) 命題2.1.10より $\partial A\subset \Cl A = A$ です。

(3) ⇒ (2) $\partial A\subset A$ とすると $A\cap \partial A = \partial A$ です。よって、$A = A\cap \Cl A = A\cap (\Int A\cup \partial A) = \Int A\cup (A\cap \partial A) = \Int A\cup \partial A = \Cl A$ です。途中で命題2.1.10を使用。

次は内部 $\Int A$ が部分集合 $A$ に含まれる最大の開集合であること、閉包 $\Cl A$ が部分集合 $A$ を含む最小の閉集合であることを意味します。

命題2.1.13
(内部であることの同値条件)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。部分集合 $S\subset X$ に対して次は同値である。

(1) $S = \Int A$ である。
(2) $\mathcal{U} := \{U\in \mathcal{O}\mid U\subset A\}$ とおくとき $S = \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U$ である。
(3) $S$ は $A$ に含まれる開集合であり、$A$ に含まれる任意の開集合 $U$ に対して $U\subset S$ を満たす。
証明

(1) ⇒ (2) $S$ は $S\subset A$ を満たす開集合なので $S\in \mathcal{U}$ です。よって、$S\subset \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U$ です。逆の包含関係は内点の定義から明らかです。

(2) ⇒ (3) まず、(2)から $S$ が $A$ に含まれる開集合であることは明らかです。そして、$U$ を $A$ に含まれる開集合とすれば $U\in \mathcal{U}$ なので $U\subset \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U = S$ です。

(3) ⇒ (1) まず、$\Int A$ が $A$ に含まれる開集合なので $\Int A\subset S$ です。また、$S$ 自体が $A$ に含まれる開集合であることから、その各点は $A$ の内点であり、$S\subset \Int A$ も従います。

命題2.1.14
(閉包であることの同値条件)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分集合とする。部分集合 $S\subset X$ に対して次は同値である。

(1) $S = \Cl A$ である。
(2) $\mathcal{V} := \{U^{c}\mid U\in \mathcal{O}, \ A\subset U^{c}\}$ とおくとき $S = \bigcap_{F\in\mathcal{V}}F$ である。
(3) $S$ は $A$ を含む閉集合であり、$A$ を含む任意の閉集合 $F$ に対して $S\subset F$ を満たす。
証明

(1)は $S^{c} = \Int A^{c}$ であることと同値。(2)は $\mathcal{U} := \{U\in \mathcal{O}\mid U\subset A^{c}\}$ とおいて $S^{c} = \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U$ であることと同値。(3)は $S^{c}$ が $A^{c}$ に含まれる開集合であり、$A^{c}$ に含まれる任意の開集合 $U$ に対して $U\subset S^{c}$ を満たすことと同値。あとは命題2.1.13の同値性からから従います。

和集合や共通部分をとる操作に関連した性質として次が挙げられます。

命題2.1.15

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。

(1) $X$ の任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して\[\Int\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \bigcap_{\lambda\in\Lambda}\Int A_{\lambda}\]が成立する。また、有限集合族に対しては両辺は等しい。
(2) $X$ の任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して\[\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\subset \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\]が成立する。また、有限集合族に対しては両辺は等しい。
(3) $X$ の任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して\[\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Int A_{\lambda}\subset \Int\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\]が成立する。
(4) $X$ の任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して\[\Cl\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \bigcap_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\]が成立する。
証明

(1) 任意の $\lambda'\in \Lambda$ に対して $\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\subset A_{\lambda'}$ であることから $\Int\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \Int A_{\lambda'}$ であり、$\Int\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \bigcap_{\lambda\in\Lambda}\Int A_{\lambda}$ です。

有限集合族の場合、$\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\Int A_{\lambda}$ は $\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ に含まれる開集合なので $\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\Int A_{\lambda}\subset \Int\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ が成立します。

(2) 任意の $\lambda'\in \Lambda$ に対して $A_{\lambda'}\subset \bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ であることから $\Cl A_{\lambda'}\subset \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ であり、$\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\subset \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ です。

有限集合族の場合、$\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}$ は $\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ を含む閉集合なので $\Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}$ が成立します。

(3) 任意の $\lambda'\in \Lambda$ に対して $\Int A_{\lambda'}\subset \Int\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ です。

(4) 任意の $\lambda'\in \Lambda$ に対して $\Cl\left(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\subset \Cl A_{\lambda'}$ です。

補足2.1.16

特に触れなかった条件については必ずしも逆の包含関係は成立しません。

(1) $X := \R$, $\{A_{n} := (-n^{-1}, n^{-1})\}_{n\in \N_{+}}$ とすると、\[\Int\left(\bigcap_{n\in\N_{+}}A_{\lambda}\right) = \Int\left(\bigcap_{n\in\N_{+}}(-n^{-1}, n^{-1})\right) = \Int\{0\} = \varnothing,\]\[\bigcap_{n\in\N_{+}}\Int A_{n} = \bigcap_{n\in\N_{+}}(-n^{-1}, n^{-1}) = \{0\}\]です。
(2) $X := \R$, $\{A_{n} := [-1 + n^{-1}, 1 - n^{-1}]\}_{n\in \N_{+}}$ とすると、\[\bigcup_{n\in\N_{+}}\Cl A_{n} = \bigcup_{n\in\N_{+}}[-1 + n^{-1}, 1 - n^{-1}] = (-1, 1),\]\[\Cl\left(\bigcup_{n\in\N_{+}}A_{\lambda}\right) = \Cl\left(\bigcup_{n\in\N_{+}}[-1 + n^{-1}, 1 - n^{-1}]\right) = \Cl(-1, 1) = [-1, 1]\]です。
(3) $X := \R$, $A := (-\infty, 0]$, $B := [0, +\infty)$ とすると、\[\Int A\cup \Int B = \R\setminus \{0\}, \ \Int (A\cup B) = \R\]です。
(4) $X := \R$, $A := (-\infty, 0)$, $B := (0, +\infty)$ とすると、\[\Cl (A\cap B) = \varnothing, \ \Cl A\cap \Cl B = \{0\}\]です。

閉包をとる操作と和集合をとる操作の可換性は次に定義する局所有限という仮定の下でも成立します $($命題2.1.19$)$。

定義2.1.17
(局所有限な部分集合族)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$\mathcal{A} = \{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をその部分集合族とする。部分集合族 $\mathcal{A}$ が局所有限であるとは、任意の点 $x\in X$ に対してある開集合 $U$ であって $x\in U$ かつ集合\[\{\lambda\in\Lambda\mid U\cap A_{\lambda}\neq \varnothing\}\]が有限集合となるものが存在することと定める要するに、点 $x$ の周囲には実質有限個の $A_{\lambda}$ しかないということ。。また、単に $1$ 点 $x\in X$ 対して同様の条件を満たす開集合 $U$ が存在することを部分集合族 $\mathcal{A}$ は $x$ において局所有限であるという。

補題2.1.18

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。

(1) 任意の部分集合 $A$ と開集合 $U$ に対して\[U\cap \Cl (U\cap A) = U\cap \Cl A\]が成立する。
(2) 任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ と開集合 $U$ に対して\[U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl(U\cap A_{\lambda}) = U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\]が成立する。
(3) 任意の部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ と開集合 $U$ に対して\[U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}(U\cap A_{\lambda})\right) = U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\]が成立する。
証明

(1) $U\cap \Cl(U\cap A)\subset U\cap \Cl A$ は明らかなので、逆の包含関係を示します。$x\in U\cap \Cl A$ とします。$x\in \Cl A$ より $x\in V$ を満たす任意の開集合 $V$ に対して $V\cap (U\cap A) = (V\cap U)\cap A\neq \varnothing$ であり、$x$ は $U\cap A$ の触点です。よって、$x\in U\cap \Cl(U\cap A)$ であり、$U\cap \Cl A\subset U\cap \Cl(U\cap A)$ が確かめられました。

(2) $U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl(U\cap A_{\lambda}) = \bigcup_{\lambda\in\Lambda}U\cap \Cl(U\cap A_{\lambda}) = \bigcup_{\lambda\in\Lambda}U\cap \Cl A_{\lambda} = U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}$ です。真ん中の等号に(1)を使用。

(3) $U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}(U\cap A_{\lambda})\right) = U\cap \Cl\left(U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right) = U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ です。後ろの等号に(1)を使用。

命題2.1.19
(局所有限部分集合族に対する閉包と和の可換性)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をその局所有限な部分集合族とする。このとき、\[\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda} = \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\]が成立する。よって、閉集合による局所有限な部分集合族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、和集合 $\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ は閉集合である。

証明

各点 $x\in X$ に対して $x\in \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\Leftrightarrow x\in \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ であることを示します。$x\in X$ を固定し、$x\in U$ かつ $\{\lambda\in \Lambda\mid U\cap A_{\lambda}\neq \varnothing\}$ が有限集合となる開集合 $U$ を取ります。補題2.1.18より\[U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda} = U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl (U\cap A_{\lambda}),\]\[U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right) = U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}(U\cap A_{\lambda})\right)\]ですが、$U$ の取り方から $U\cap A_{\lambda}\neq \varnothing$ となる $\lambda\in \Lambda$ は高々有限個なので、命題2.1.15より\[\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl (U\cap A_{\lambda}) = \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}(U\cap A_{\lambda})\right)\]です。よって、$U\cap \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda} = U\cap \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ なので、示したかった $x\in \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda}\Leftrightarrow x\in \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)$ が示されました。各 $A_{\lambda}$ が閉集合のとき、\[\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda} = \bigcup_{\lambda\in\Lambda}\Cl A_{\lambda} = \Cl\left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\right)\]より和集合は閉集合です。

2.1.3 近傍系

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の各点 $x\in X$ に対してその近傍や近傍系を定義します。これらは位相空間の局所的な状況を見る際に重要となります。

定義2.1.20
(近傍と近傍系)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。

(1) 点 $x\in X$ に対し、$x\in \Int U$ を満たす $X$ の部分集合 $U\subset X$ を点 $x$ の近傍という。点 $x$ の近傍であって開集合であるものを点 $x$ の開近傍と呼ぶ。また、一般の部分集合 $A\subset X$ に対し、$A\subset \Int U$ を満たす $X$ の部分集合 $U\subset X$ を $A$ の近傍という。$U$ が開集合であれば $A$ の開近傍という。
(2) 点 $x\in X$ に対し、$x$ の近傍全体からなる集合族を点 $x$ の近傍系と呼ぶ。また、$x$ の開近傍全体からなる集合族を点 $x$ の開近傍系と呼ぶ。
(3) 点 $x\in X$ に対し、その近傍系 $\mathcal{U}_{x}$ の部分族 $\mathcal{V}_{x}$ であって、任意の $U\in \mathcal{U}_{x}$ に対して $V\subset U$ となる $V\in \mathcal{V}_{x}$ が存在するものを $x$ の近傍基や基本近傍系と呼ぶ。$V\in \mathcal{V}_{x}$ がいずれも開集合であるものを開近傍基や基本開近傍系と呼ぶ。
例2.1.21

(a) Euclid空間 $\R^{m}$ において、点 $x\in \R^{m}$ を中心とする半径 $r > 0$ の閉球体 $D_{r}(x)$ は $x$ の近傍です。そして、開球体 $O_{r}(x)$ は $x$ の開近傍でも近傍でもあります。
(b) Euclid空間 $\R^{m}$ の点 $x\in X$ に対し、その基本開近傍系 $\mathcal{V}_{x}$ を\[\mathcal{V}_{x} := \{O_{r}(x)\mid r\in \Q, \ r > 0\}\]により取ることができます。$U$ を $x$ の近傍とするとき、定義からある正実数 $r' > 0$ が存在して $x\in O_{r'}(x)\subset U$ となりますが、有理数 $r$ を $0 < r < r'$ に取れば $O_{r}(x)\in \mathcal{V}_{x}$ かつ $O_{r}(x)\subset U$ であるので、実際に $\mathcal{V}_{x}$ は $x$ の基本開近傍系です。

集合 $X$ 上に与えられた複数の開集合系が互いに等しいことを確かめるためには、次のような適当に取った基本近傍系についての条件を確認すれば十分であることが知られています。

命題2.1.22

$X$ を集合、$\mathcal{O}, \mathcal{O}'$ をその開集合系とする。それぞれの開集合系について各点 $x\in X$ での基本近傍系 $\mathcal{V}_{x}$, $\mathcal{V}'_{x}$ を固定する。このとき次は同値である。

(1) $\mathcal{O} = \mathcal{O}'$.
(2) 任意の $x\in X$ に対して次が成立する。
(i) 任意の $V\in \mathcal{V}_{x}$ に対して $V'\subset V$ となる $V'\in \mathcal{V}'_{x}$ が存在する。
(ii) 任意の $V'\in \mathcal{V}'_{x}$ に対して $V\subset V'$ となる $V\in \mathcal{V}_{x}$ が存在する。
証明

(1) ⇒ (2) 明らかです。

(2) ⇒ (1) 任意の $U\in \mathcal{O}$ に対して $U\in \mathcal{O}'$ であることを(i)のみを用いて示します。各点 $x\in U$ に対して $U$ は $x$ の近傍なので、ある $V_{x}\in \mathcal{V}_{x}$ であって $V_{x}\subset U$ となるものが取れます。また、仮定の(i)よりある $V'_{x}\in \mathcal{V}'_{x}$ であって $V'_{x}\subset V_{x}$ となるものが取れます。開集合系 $\mathcal{O}'$ に対する内部を $\Int'$ により表すとして、各 $x\in U$ に対して $x\in \Int' V'_{x}\subset U$ であることから\[U = \bigcup_{x\in U}\Int' V'_{x}\]であり、$U\in \mathcal{O}'$ です。よって、$\mathcal{O}\subset \mathcal{O}'$ が分かりました。

同様に、(ii)から $\mathcal{O}'\subset \mathcal{O}$ が従い、$\mathcal{O} = \mathcal{O}'$ です。

系2.1.23

$X$ を集合、$\mathcal{O}, \mathcal{O}'$ をその開集合系とする。それぞれの開集合系について、各点 $x\in X$ での近傍系を $\mathcal{U}_{x}$, $\mathcal{U}'_{x}$ とする。このとき次は同値である。

(1) $\mathcal{O} = \mathcal{O}'$.
(2) 任意の $x\in X$ に対して $\mathcal{U}_{x} = \mathcal{U}'_{x}$.
証明

(1) ⇒ (2) 明らかです。

(2) ⇒ (1) 近傍系は基本近傍系なので、命題2.1.22より直ちに従います。

例2.1.24
(Euclid空間の一様ノルムによる位相)

Euclid空間にはノルム $\|\cdot\| : \R^{m}\to \R$ を各 $x = (x_{1}, \dots, x_{m})\in \R^{m}$ に対して\[\|x\| := \sqrt{x_{1}^{2} + \dots + x_{m}^{2}}\]とすることで与え、これをもとに開集合系 $\mathcal{E}^{m}$ を定義していました。そして、各点 $x$ における基本開近傍系として\[\mathcal{V}_{x} = \{O_{r}(x)\mid r\in \R, \ r > 0\}\]を考えることができました。

いま、新たに写像 $\|\cdot\|_{\infty} : \R^{m}\to \R$ を\[\|x\|_{\infty} := \max\{|x_{1}|, \dots, |x_{m}|\}\]により定めます。これは $\|\cdot\|$ と同様の性質 $($命題1.7.5$)$

任意の $x\in \R^{m}$ に対して $\|x\|_{\infty}\geq 0$ であり、$\|x\|_{\infty} = 0$ と $x = 0$ は同値
任意の $a\in \R$ と $x\in \R^{m}$ に対して $\|ax\|_{\infty} = |a|\|x\|_{\infty}$
任意の $x, y\in \R^{m}$ に対して $\|x + y\|_{\infty}\leq \|x\|_{\infty} + \|y\|_{\infty}$

を満たしており、一様ノルムや最大値ノルム、$\infty$-ノルムといいます。そして、$\|\cdot\|$ の場合と全く同様に、この一様ノルムを用いることで $\R^{m}$ の開集合系 $\mathcal{E}_{\infty}^{m}$ が構成され、各点 $x$ における基本開近傍系として\[\mathcal{V}'_{x} := \{O'_{r}(x)\mid r\in \R, \ r > 0\}\]を取ることができます。ただし、$O'_{r}(x)$ は\[O'_{r}(x) := \{y\in\R^{m}\mid \|y - x\|_{\infty} < r\}\]により定義します。

以上より、Euclid空間の $2$ つの位相 $\mathcal{E}^{m}$ と $\mathcal{E}_{\infty}^{m}$ が得られましたが、任意の $r > 0$ に対して\[O'_{r/m}(x)\subset O_{r}(x),\]\[O_{r}(x)\subset O'_{r}(x)\]が成立するので、命題2.1.22より $\mathcal{E}^{m} = \mathcal{E}_{\infty}^{m}$ であることが従います。

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ が与えられたとき、各点での近傍系 $\mathcal{U}_{x}$ による族 $\{\mathcal{U}_{x}\}_{x\in X}$ は次の $5$ つの条件を満たしますが、その逆として、条件を満たす族から開集合系が一意に定まります。

命題2.1.25
(位相空間の近傍系による特徴付け)

集合 $X$ に対して $X$ 自身を添字集合とする $X$ の部分集合族 $\mathcal{U}_{x}$ による族 $\{\mathcal{U}_{x}\}_{x\in X}$ が与えられ、以下の条件を満たしているとする。

(i) 任意の $x\in X$ に対して $\mathcal{U}_{x}\neq \varnothing$.
(ii) 任意の $U\in \mathcal{U}_{x}$ に対して $x\in U$.
(iii) 任意の $U\in \mathcal{U}_{x}$ と $U\subset U'$ を満たす部分集合 $U'\subset X$ に対して $U'\in \mathcal{U}_{x}$.
(iv) 任意の有限な部分族 $\mathcal{U}\subset \mathcal{U}_{x}$ に対して $\bigcap_{U\in\mathcal{U}}U\in \mathcal{U}_{x}$.
(v) 任意の $U\in \mathcal{U}_{x}$ に対し、ある $V\in \mathcal{U}_{x}$ であって任意の $y\in V$ に対して $U\in \mathcal{U}_{y}$ を満たすものが存在する。

このとき、$X$ の開集合系 $\mathcal{O}$ であって、各点での近傍系を $\mathcal{U}_{x}$ とするものが一意に存在する。

証明

$\mathcal{O}$ を部分集合 $U\subset X$ であって次の条件(C)を満たすもの全体からなる集合族として定めます。

(C) 任意の $x\in U$ に対し、ある $U'\in \mathcal{U}_{x}$ であって $U'\subset U$ を満たすものが存在する。

以下のことを順に示せばよいです。

(step 1) $\varnothing, X\in \mathcal{O}$.
(step 2) 任意の部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcup_{U\in \mathcal{U}} U\in \mathcal{O}$.
(step 3) 任意の有限部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcap_{U\in \mathcal{U}} U\in \mathcal{O}$.
(step 4) 以上で定まった開集合系 $\mathcal{O}$ に関する各点 $x\in X$ の近傍系 $\mathcal{V}_{x}$ は $\mathcal{V}_{x}\subset \mathcal{U}_{x}$ を満たす。
(step 5) 逆の包含関係 $\mathcal{U}_{x}\subset \mathcal{V}_{x}$ をが成立する。
(step 6) 主張の条件を満たす開集合系は一意。

(step 1) $\varnothing\in \mathcal{O}$ は自明です。$X\in \mathcal{O}$ を示します。$x\in X$ とします。(i)の $\mathcal{U}_{x}\neq \varnothing$ よりその元 $U'$ を取ることができますが、明らかに $U'\subset X$ です。よって、$X$ は条件(C)を満たすので $X\in \mathcal{O}$ です。

(step 2) 部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ を取り、$x\in \bigcup_{U\in \mathcal{U}} U$ とします。$U_{x}\in \mathcal{U}$ であって $x\in U_{x}$ を満たすものを取るとき、この $U_{x}$ は条件(C)を満たすので $U'\in \mathcal{U}_{x}$ かつ $U'\subset U_{x}$ を満たすものが存在します。この $U'$ に対して $U'\in \mathcal{U}_{x}$ かつ $U'\subset \bigcup_{U\in \mathcal{U}} U$ が成立しています。よって、$\bigcup_{U\in \mathcal{U}}U$ は条件(C)を満たし $\bigcup_{U\in \mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ です。

(step 3) 有限部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ を取り、$x\in \bigcap_{U\in \mathcal{U}} U$ とします。各 $U\in \mathcal{U}$ が条件(C)を満たすことから、それぞれに対して $V_{U}\in \mathcal{U}_{x}$ であって $V_{U}\subset U$ を満たすものを取ります。$\{V_{U}\mid U\in \mathcal{U}\}$ は $\mathcal{U}_{x}$ の有限部分集合なので(iv)より $\bigcap_{U\in\mathcal{U}}V_{U}\in \mathcal{U}_{x}$ です。また、明らかに $\bigcap_{U\in\mathcal{U}}V_{U}\subset \bigcap_{U\in\mathcal{U}}U$ を満たします。よって、$\bigcap_{U\in\mathcal{U}}U$ は条件(C)を満たし $\bigcap_{U\in\mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ です。

(step 4) $V\in \mathcal{V}_{x}$ とします。近傍の定義より $x\in \Int V\in \mathcal{O}$ であり、$\Int V$ が条件(C)を満たすことから $V'\in \mathcal{U}_{x}$ かつ $V'\subset \Int V$ を満たす $V'$ が存在します。この $V'$ に対して(iii)を使用し $V\in \mathcal{U}_{x}$ が従います。

(step 5) $U\in \mathcal{U}_{x}$ とします。(v)により $V\in \mathcal{U}_{x}$ であって任意の $y\in V$ に対して $U\in \mathcal{U}_{y}$ となるものを取ります。この $V$ が $V\subset U$ を満たす $x$ の開近傍であることを示します。

まず $V\subset U$ であることは、$y\in V$ に対して $U\in \mathcal{U}_{y}$ であることと(ii)より $y\in U$ なので従います。また、$x\in V$ であることも同じく $V\in \mathcal{U}_{x}$ と(ii)から分かります。

後は $V\in \mathcal{O}$ であること、つまり、条件(C)を満たすことを示せばよいです。$y\in V$ とします。(v)により $V'\in \mathcal{U}_{y}$ であって任意の $z\in V'$ に対して $V\in \mathcal{U}_{z}$ を満たすものを取ります。(ii)より $y\in V'$ なので、$z = y$ として $V\in \mathcal{U}_{y}$ が従います。$V\subset V$ は自明です。よって、$V$ は条件(C)を満たします。

(step 6) 系2.1.23より明らかです。

従って、集合 $X$ に対して位相 $\mathcal{O}$ を与えることは上記の $5$ 条件を満たす族 $\{\mathcal{U}_{x}\}_{x\in X}$ を与えることと本質的な差は無いことが分かりました。

2.1.4 位相の生成
位相の強弱

固定した集合 $X$ の位相たちの間の包含関係はよく次のように呼ばれます。

定義2.1.26

$X$ を集合 $\mathcal{O}, \mathcal{O}'$ をその位相とする。$\mathcal{O}\subset \mathcal{O}'$ が成立するとき、位相 $\mathcal{O}$ は位相 $\mathcal{O}'$ より弱い、位相 $\mathcal{O}'$ は位相 $\mathcal{O}$ より強いといい「より」というと真部分集合になっている、つまり、$\mathcal{O}\neq \mathcal{O}'$ も意味しそうですが、[松坂 集合・位相入門]など等号成立時にこのように呼ぶテキストも多いみたいなのでここではそれにならいます。、$\mathcal{O}\leq \mathcal{O}'$ と書きます。

例えば、密着位相 $\{\varnothing, X\}$ は $X$ の任意の位相と比較して弱い位相 $($最弱の位相$)$ であり、離散位相 $2^{X}$ は $X$ の任意の位相と比較して強い位相 $($最強の位相$)$ になります。

次は位相による族の共通部分がまた位相になり、位相の強弱に関する順序関係について下限を与えることを意味します。

命題2.1.27
(位相の族の下限)

$X$ を集合、$\{\mathcal{O}_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の位相の族とし、共通部分 $\mathcal{O} := \bigcap_{\lambda\in\Lambda}\mathcal{O}_{\lambda}$ を考える。次が成立する。

(1) $\mathcal{O}$ は $X$ の位相である。
(2) $X$ の位相 $\mathcal{O}'$ について、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $\mathcal{O}'\leq \mathcal{O}_{\lambda}$ が成立しているならば $\mathcal{O}'\leq \mathcal{O}$ が成立する。
証明

(1) $\varnothing, X\in \mathcal{O}$ は明らかです。部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ を取るとき、各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}_{\lambda}$ であり、$\bigcup_{U\in\mathcal{U}}U\in \mathcal{O}_{\lambda}$ となるので $\bigcup_{U\in\mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ です。有限部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcap_{U\in\mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ であることも同様です。

(2) 明らかです。

そして、次はこの逆で、位相の族に対してその上限に当たる位相の存在を与えます。

命題2.1.28
(位相の族の上限)

$X$ を集合、$\{\mathcal{O}_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の位相の族とする。$\mathfrak{O}$ を $X$ の位相 $\mathcal{O}'$ であって任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $\mathcal{O}_{\lambda}\leq \mathcal{O}'$ を満たすもの全体からなる集合とし、その共通部分として位相 $\mathcal{O}$ を定めるとする。$X$ の位相 $\mathcal{O}'$ が任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $\mathcal{O}_{\lambda}\leq \mathcal{O}'$ を満たすならば $\mathcal{O}\leq \mathcal{O}'$ が成立する。

証明

命題2.1.27より明らかです。

補足2.1.29
(完備束)

半順序集合であって任意の部分集合に上限と下限が存在するものを完備束といいますが、以上により固定した集合 $X$ の位相全体からなる集合は位相の強弱に関して完備束をなしていることが分かります。

位相の生成

集合 $X$ の部分集合族 $\mathcal{A}$ に対して命題2.1.28と同様のアイデアより、それを含む最弱の位相が構成されます。

定義2.1.30

$\mathcal{A}$ を集合 $X$ の部分集合族とし、$\mathfrak{O}$ を $\mathcal{A}\subset \mathcal{O}'$ を満たす $X$ の位相 $\mathcal{O}'$ 全体からなる集合とする。$\mathfrak{O}$ の共通部分として定まる位相を $\mathcal{A}$ の生成する位相といい、ここでは $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ と書く。

命題2.1.31

任意の位相 $\mathcal{O}'$ に対し、$\mathcal{A}\subset \mathcal{O}'$ ならば $\mathcal{O}(\mathcal{A})\leq \mathcal{O}'$ である。

証明

$\mathcal{O}(\mathcal{A})$ の定義から明らかに $\mathcal{O}(\mathcal{A})\subset \mathcal{O}'$ です。

$X$ の部分集合族 $\mathcal{A}$ の生成する位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ を命題2.1.27の形の存在命題から与えましたが、次のような具体的な構成も重要です。

命題2.1.32

$\mathcal{A}$ を集合 $X$ の部分集合族とする。$\mathcal{A}$ の元の高々有限個の共通部分として表される集合による部分集合族\[\mathcal{A}' := \left\{\bigcap_{V\in \mathcal{V}}V\relmid \mathcal{V}\subset \mathcal{A}, \ \#\mathcal{V} < +\infty\right\}\]を取り、さらに部分集合族 $\mathcal{O}$ を $\mathcal{A}'$ の元の和集合として表される集合全体\[\mathcal{O} := \left\{\bigcup_{V'\in \mathcal{V}'}V'\relmid \mathcal{V}'\subset \mathcal{A}'\right\}\]として定める。このとき、$\mathcal{O} = \mathcal{O}(\mathcal{A})$ である。

証明

まず、$\mathcal{O}$ が位相を定めていることを示します。$\varnothing\in \mathcal{O}$ は $\varnothing\subset \mathcal{A}'$ に対して和を取ればよく、$X\in \mathcal{O}$ は $\varnothing\subset \mathcal{A}$ に対して共通部分を取ればよいです。部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{O}$ に対して $\bigcup_{U\in \mathcal{U}}U\in \mathcal{O}$ は明らかです。

$U_{1}, U_{2}\in \mathcal{O}$ を取り、$U_{1}\cap U_{2}\in \mathcal{O}$ を示します。各 $U_{i}$ に対して部分集合 $\mathcal{V}'_{i}\subset \mathcal{A}'$ を $U_{i} = \bigcup_{V'\in\mathcal{V}'_{i}}V'$ を満たすように取ります。このとき、\[U_{1}\cap U_{2} = \left(\bigcup_{V'\in\mathcal{V}'_{1}}V'\right)\cap \left(\bigcup_{V'\in\mathcal{V}'_{2}}V'\right) = \bigcup_{(V'_{1}, V'_{2})\in \mathcal{V}'_{1}\times \mathcal{V}'_{2}}(V'_{1}\cap V'_{2})\]です。$V'_{1}\cap V'_{2}$ は $V'_{1}, V'_{2}\in \mathcal{A}'$ から直ちに $\mathcal{A}'$ の元であることが分かり、$U_{1}\cap U_{2}\in \mathcal{O}$ です。以上により $\mathcal{O}$ は $X$ の位相を定めます。

$\mathcal{O}(\mathcal{A})\subset \mathcal{O}$ は $\mathcal{A}\subset \mathcal{O}$ と生成位相の最小性から従います。

$\mathcal{O}\subset \mathcal{O}(\mathcal{A})$ を示します。$U\in \mathcal{O}$ とします。$\mathcal{O}$ の定義より、部分集合 $\mathcal{V}'\subset \mathcal{A}'$ であって $U = \bigcup_{V'\in\mathcal{V}'}V'$ となるものが取れます。そして、各 $V'\in \mathcal{V}'$ に対してある有限部分集合 $\mathcal{V}_{V'}\subset \mathcal{A}$ が存在して $V' = \bigcap_{V\in \mathcal{V}_{V'}}V$ です。$\mathcal{A}\subset \mathcal{O}(\mathcal{A})$ なので、各 $V'\subset \mathcal{V}'$ に対して $V' = \bigcap_{V\in\mathcal{V}_{V'}}V\in \mathcal{O}(\mathcal{A})$ であり、$U = \bigcup_{V'\in\mathcal{V}'}V'\in \mathcal{O}(\mathcal{A})$ です。

以上により $\mathcal{O} = \mathcal{O}(\mathcal{A})$ です。

準開基と開基

与えられた位相に対してそれを生成するような部分集合族として準開基と開基を導入します。

定義2.1.33

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。

(1) $X$ の部分集合族 $\mathcal{A}\subset 2^{X}$ であって $\mathcal{O}(\mathcal{A}) = \mathcal{O}$ を満たすものを位相 $\mathcal{O}$ の準開基という。
(2) $\mathcal{A}$ を位相 $\mathcal{O}$ の準開基とする。任意の $U\in \mathcal{O}$ に対してある部分集合 $\mathcal{B}\subset \mathcal{A}$ であって $U = \bigcup_{A\in\mathcal{B}}A$ を満たすものが存在するとき、$\mathcal{A}$ を位相 $\mathcal{O}$ の開基という。
補足2.1.34

集合 $X$ の部分集合族 $\mathcal{A}$ により生成される位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ に対し、当然 $\mathcal{A}$ 自身は準開基であり、命題2.1.32のように定義した $\mathcal{A}'$ は開基になります。

基本開近傍系との関係として次のことが挙げられます。

命題2.1.35

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。次が成立する。

(1) 各点 $x\in X$ での基本開近傍系 $\mathcal{V}_{x}$ を取って集めた部分集合族 $\mathcal{A} := \bigcup_{x\in X}\mathcal{V}_{x}$ は開基である。
(2) 開基 $\mathcal{A}$ を取るとき、各点 $x\in X$ において部分集合族 $\mathcal{V}_{x} := \{U\in \mathcal{A}\mid x\in U\}$ は $x$ の基本開近傍系である。
証明

(1) $U\in \mathcal{O}$ とします。各点 $x\in U$ に対して $U_{x}\subset U$ となる $U_{x}\in \mathcal{V}_{x}$ を取れば、もちろん常に $U_{x}\in \mathcal{A}$ であり、$U = \bigcup_{x\in U}U_{x}$ です。よって、$\mathcal{A}$ は開基です。

(2) $x\in X$ とその近傍 $U_{x}$ を取ります。ある部分集合 $\mathcal{U}\subset \mathcal{A}$ であって $\Int U_{x} = \bigcup_{U\in\mathcal{U}}U$ となるものが取れます。$x\in U$ となる $U\in \mathcal{U}$ を取ればそれは $\mathcal{V}_{x}$ に属し、$U\subset U_{x}$ を満たします。よって、$\mathcal{V}_{x}$ は基本開近傍系です。

集合 $X$ 上の位相どうしを比較するために次は基本的です。

系2.1.36

集合 $X$ とその上の位相 $\mathcal{O}_{1}, \mathcal{O}_{2}$ について次が成立する。

(1) $\mathcal{A}_{1}, \mathcal{A}_{2}$ を各位相の開基とする。任意の $x\in X$ と $x\in A$ を満たす $A\in \mathcal{A}_{1}$ に対してある $A'\in \mathcal{A}_{2}$ であって $x\in A'\subset A$ となるものが存在するとき、$\mathcal{O}_{1}\leq \mathcal{O}_{2}$ が成立する。
(2) $\mathcal{A}_{1}, \mathcal{A}_{2}$ を各位相の準開基とする。任意の $x\in X$ と $x\in A$ を満たす $A\in \mathcal{A}_{1}$ に対してある $A'\in \mathcal{A}_{2}$ であって $x\in A'\subset A$ となるものが存在するとき、$\mathcal{O}_{1}\leq \mathcal{O}_{2}$ が成立する。
証明

(1) 命題2.1.35より、各点 $x\in X$ に対して\[\mathcal{V}_{i, x} := \{A\in \mathcal{A}_{i}\mid x\in A\}\]は $\mathcal{O}_{i}$ に関する $x$ の基本開近傍系です。任意の $x\in X$ と $A\in \mathcal{V}_{1,x}$ に対して $A'\subset A$ となる $A'\subset \mathcal{V}_{2,x}$ が存在するので、命題2.1.22の証明より $\mathcal{O}_{1}\subset \mathcal{O}_{2}$ です。

(2) 命題2.1.32の要領で開基 $\mathcal{A}'_{1}, \mathcal{A}'_{2}$ を構成すれば、これは(1)の仮定を満たします。よって、$\mathcal{O}_{1}\subset \mathcal{O}_{2}$ です。

2.1.5 相対位相と直積位相

与えられた位相空間から新たな位相空間を構成する基本的な手法についてまとめます。

相対位相

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とします。このとき、$X$ の部分集合 $A$ には $X$ に与えた位相から誘導される位相が存在します。

命題2.1.37
(相対位相)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とします。$X$ の部分集合 $A\subset X$ に対してその位相 $\mathcal{O}_{A}$ が\[\mathcal{O}_{A} := \{U\cap A\mid U\in \mathcal{O}\}\]により定まる。これを相対位相といい、部分集合 $A$ との対 $(A, \mathcal{O}_{A})$ を部分空間と呼ぶ。

証明

$\varnothing, X\in \mathcal{O}$ より $\varnothing \cap A = \varnothing$, $X\cap A = A$ は $\mathcal{O}_{A}$ に属します。

$\mathcal{V}$ を $\mathcal{O}_{A}$ の部分集合とします。各 $V\in \mathcal{V}$ に対して $V = U\cap A$ となる $U\in \mathcal{O}$ を固定し、$U_{V}$ と表すことにします。このとき、\[\bigcup_{V\in\mathcal{V}}V = \bigcup_{V\in\mathcal{V}}A\cap U_{V} = A\cap \bigcup_{V\in\mathcal{V}}U_{V}\]であり、$\bigcup_{V\in\mathcal{V}}U_{V}\in \mathcal{O}$ より $\bigcup_{V\in\mathcal{V}}V\in \mathcal{O}_{A}$ です。

同様に有限部分集合 $\mathcal{V}\subset \mathcal{O}_{A}$ に対して\[\bigcap_{V\in\mathcal{V}}V = \bigcap_{V\in\mathcal{V}}A\cap U_{V} = A\cap \bigcap_{V\in\mathcal{V}}U_{V}\]であり、$\bigcap_{V\in\mathcal{V}}U_{V}\in \mathcal{O}$ より $\bigcap_{V\in\mathcal{V}}V\in \mathcal{O}_{A}$ です。

命題2.1.38

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A\subset X$ を部分空間とする。部分集合 $B\subset A\subset X$ に対して $X$ の部分集合として定めた相対位相 $\mathcal{O}_{B}$ と $A$ の部分集合として定めた相対位相 $\mathcal{O}_{B}'$ は一致する。

証明

$V\in \mathcal{O}_{B}$ に対してある $X$ の開集合 $U$ であって $V = B\cap U$ となるものが取れますが、$B\cap U = B\cap (A\cap U)$ であり、$A\cap U$ が $A$ の開集合となるので $V\in \mathcal{O}_{B}'$ です。よって、$\mathcal{O}_{B}\subset \mathcal{O}_{B}'$ です。

$V\in \mathcal{O}_{B}'$ とします。ある $A$ の開集合 $U'$ であって $V = B\cap U'$ となるものが取れますが、この $U'$ に対して $X$ の開集合 $U$ であって $U' = A\cap U$ となるものを取ることができ、よって、$V = B\cap (A\cap U) = B\cap U$ であり $V\in \mathcal {O}_{B}$ です。よって、逆の包含関係 $\mathcal{O}_{B}'\subset \mathcal{O}_{B}$ も示され $\mathcal{O}_{B} = \mathcal{O}_{B}'$ です。

直積位相

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとき、直積集合には以下のように位相が定義されます。

定義2.1.39
(直積位相)

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとする。直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ の部分集合であって\[U_{\mu}\times \prod_{\lambda\neq\mu}X_{\lambda} = \{(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\mid x_{\mu}\in U_{\mu}\} \ (\mu\in \Lambda, \ U_{\mu}\in \mathcal{O}_{\mu})\]という形のもの全体からなる部分集合族 $\mathcal{A}$ により生成する位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ を直積位相という。直積位相により定まる位相空間を直積空間と呼ぶ。

補足2.1.40

射影 $\pr_{\mu}$ と開集合 $U_{\mu}\subset X_{\mu}$ について\[\pr_{\mu}^{-1}(U_{\mu}) = U_{\mu}\times \prod_{\lambda\neq\mu}X_{\lambda}\]です。つまり、直積位相は $\pr_{\mu}^{-1}(U_{\mu})$ という形の集合により生成する位相です。

いま、直積位相を準開基を与えることで定義したのですが、次の開基を考えることも多いです。

命題2.1.41

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとする。直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ の部分集合であって\[\prod_{\mu\in M}U_{\mu}\times \prod_{\lambda\in \Lambda\setminus M}X_{\lambda} = \{(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\mid x_{\mu}\in U_{\mu} \text{ for all } \mu\in M\} \ (M\subset \Lambda, \ \#M < + \infty, \ U_{\mu}\in \mathcal{O}_{\mu})\]という形のもの全体からなる部分集合族 $\mathcal{A}'$ は直積位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ の開基である。

証明

定義2.1.39の $\mathcal{A}$ を用いて $\mathcal{A'}$ は\[\mathcal{A}' = \left\{\bigcap_{V\in \mathcal{V}}V\relmid \mathcal{V}\subset \mathcal{A}, \ \#\mathcal{V} < +\infty\right\}\]と表せますが、これは命題2.1.32より開基です。

補題2.1.42

$(X, \mathcal{O}_{X}), (Y, \mathcal{O}_{Y})$ を位相空間とする。

(1) $x\in X$ の基本開近傍系 $\mathcal{V}_{X, x}$ と $y\in Y$ の基本開近傍系 $\mathcal{V}_{Y, y}$ を取るとき、$X\times Y$ の部分集合族\[\mathcal{V}_{(x, y)} := \{U\times V\mid U\in \mathcal{V}_{X, x}, \ V\in \mathcal{V}_{Y, y}\}\]は $(x, y)\in X\times Y$ の直積位相に関する基本開近傍系である。
(2) $\mathcal{O}_{X}$ の開基 $\mathcal{A}_{X}$ と $\mathcal{O}_{Y}$ の開基 $\mathcal{A}_{Y}$ を取るとき、$X\times Y$ の部分集合族\[\mathcal{A} := \{U\times V\mid U\in \mathcal{A}_{X}, \ V\in \mathcal{A}_{Y}\}\]は直積空間 $X\times Y$ の開基である。
証明

(1) まず、$\mathcal{V}_{(x, y)}$ の各元が直積空間の開集合であることは明らかです。$A\subset X\times Y$ を $(x, y)$ の近傍とします。ある $x\in X$ の開近傍 $U'$ と $y\in Y$ の開近傍 $V'$ が存在して $U'\times V'\subset A$ となります。$U\subset U'$ となる $U\in \mathcal{V}_{X, x}$ と $V\subset V'$ となる $V\in \mathcal{V}_{Y, y}$ を取れば $U\times V\in \mathcal{V}_{(x, y)}$ かつ $U\times V\subset A$ です。よって、$\mathcal{V}_{(x, y)}$ は $(x, y)$ の基本開近傍系です。

(2) 命題2.1.35と(1)より明らかです。

例2.1.43
(Euclid空間どうしの直積空間)

$n$ 次元Euclid空間の通常の位相を $\mathcal{E}^{n}$ と書くことにします。$m$ 次元Euclid空間 $(\R^{m}, \mathcal{E}^{m})$ と $n$ 次元Euclid空間 $(\R^{n}, \mathcal{E}^{n})$ の直積位相 $\mathcal{E}'$ は $n + m$ 次元Euclid空間の通常の位相 $\mathcal{E}^{n + m}$ に一致します。

証明

$z = (x, y)\in \R^{n + m}$ における基本開近傍系を適当に取り、それを比べます。

$x\in \R^{n}$ の基本開近傍系 $\mathcal{V}_{x} := \{O_{r, \R^{n}}(x)\mid r\in \R, \ r > 0\}$ と $y\in \R^{m}$ の基本開近傍系 $\mathcal{V}_{y} := \{O_{r, \R^{m}}(y)\mid r\in \R, \ r > 0\}$ を取ります。補題2.1.42より\[\mathcal{V}'_{z} := \{O_{s}(x)\times O_{t}(y)\mid s, t\in \R, \ s, t > 0\}\]が直積位相 $\mathcal{E}'$ に関する $z$ の基本開近傍系です$s = t$ となるもののみを集めても基本開近傍系になりますが、今回はこれで。

$n + m$ 次元Euclid空間 $(\R^{n + m}, \mathcal{E}^{n + m})$ における $z\in \R^{n + m}$ の基本近傍系 $\mathcal{V}_{z} := \{O_{r, \R^{n + m}}(z)\mid r\in \R, \ r > 0\}$ を考えるとき、常に\[O_{r/2, \R^{n}}(x)\times O_{r/2, \R^{m}}(y)\subset O_{r, \R^{n + m}}(z),\]\[O_{\min\{s, t\}, \R^{n + m}}(z)\subset O_{s, \R^{n}}(x)\times O_{t, \R^{m}}(y)\]が成立するので命題2.1.22より $\mathcal{E}' = \mathcal{E}^{n + m}$ です。

補足2.1.44
(箱位相)

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとき、直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ の部分集合であって\[\prod_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda} \ (U_{\lambda}\in \mathcal{O}_{\lambda} \text{ for all } \lambda\in \Lambda)\]という形のもの全体からなる部分集合族 $\mathcal{A}$ により生成する位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ を箱位相といいます。容易に分かるようにこの $\mathcal{A}$ は開基になっています。

直積位相を $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}$、箱位相 $\mathcal{O}_{\mathrm{box}}$ と書くとすれば、常に $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\leq \mathcal{O}_{\mathrm{box}}$ が成立し、もしこれが高々有限個の直積 $($$\#\Lambda < +\infty$$)$ であれば $\mathcal{O}_{\mathrm{prod}} = \mathcal{O}_{\mathrm{box}}$ が成立しますちなみに、$\mathcal{O}_{\mathrm{prod}}\neq \mathcal{O}_{\mathrm{box}}$ であることの必要十分条件は、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $X_{\lambda}\neq \varnothing$ が成立し、かつ、無限個の $\lambda\in \Lambda$ に対して $\mathcal{O}_{\lambda}$ が密着位相でないことです。

直和位相

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとき、直和集合には以下のように位相が定義されます。

定義2.1.45
(直和位相)

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとする。$\mathcal{A} := \bigcup_{\lambda\in \Lambda}\mathcal{O}_{\lambda}$ により生成する直和集合 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ の位相 $\mathcal{O}(\mathcal{A})$ を直和位相という。直和位相により定まる位相空間を直和空間と呼ぶ。

命題2.1.46

位相空間の族 $\{(X_{\lambda}, \mathcal{O}_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられたとする。次が成立する。

(1) $\mathcal{A} := \bigcup_{\lambda\in \Lambda}\mathcal{O}_{\lambda}$ は直和位相の開基である。
(2) 直和集合 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ の部分集合であって\[\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}U_{\lambda} \ (U_{\lambda}\in \mathcal{O}_{\lambda} \text{ for all } \lambda\in \Lambda)\]という形のもの全体からなる部分集合族 $\mathcal{O}$ は直和位相である。
(3) 直和空間 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ において、各 $X_{\lambda}$ はその部分集合として開集合かつ閉集合であり、$X_{\lambda}$ に定まる相対位相は $\mathcal{O}_{\lambda}$ である。
証明

(1) $U, V\in \mathcal{\mathcal{A}}$ とすると、$U\in \mathcal{O}_{\lambda}$, $V\in \mathcal{O}_{\mu}$ となる $\lambda,\mu\in \Lambda$ が一意に存在します。$\lambda = \mu$ ならば $U\cap V\in \mathcal{O}_{\lambda}\subset \mathcal{A}$ であり、$\lambda\neq \mu$ ならば $U\cap V = \varnothing\in \mathcal{A}$ です。よって、\[\mathcal{A}' := \left\{\bigcap_{V\in \mathcal{V}}V\relmid \mathcal{V}\subset \mathcal{A}, \ \#\mathcal{V} < +\infty\right\}\]は $\mathcal{A}$ に一致し、命題2.1.32より $\mathcal{A}$ は開基です。

(2) (1)より明らかです。

(3) 明らかです。

以上です。

メモ

具体例をもう少し増やしたいです。

参考文献

[1] 松坂和夫 集合・位相入門 岩波書店 (1968)

更新履歴

2021/12/02
新規追加
2022/01/02
補有限位相が実際に位相を定めていることの説明を追加。
一般の部分集合に対する近傍・開近傍の定義を追加。
2022/02/02
用語として近傍基と開近傍基を追加。
2022/05/02
部分集合族がある点において局所有限であることの定義を追加。
2023/09/02
誤植を修正。全体的に細かい表現の微修正。