可微分多様体に対してその向き付け可能性を定義し、いくつかその同値な条件を整理します。
可微分多様体 $M$ に対し、その接束 $TM$ が向き付け可能であるとき、$M$ は向き付け可能であるという。向きを固定したとき、向き付けられているという。接束 $TM$ の向きを $M$ の向きともいう。
まず、自明な同値条件をまとめておきます。
$n$ 次元可微分多様体 $M$ に対して次は同値である。
(1) ⇔ (2) 可微分多様体の向き付け可能性の定義から。
(2) ⇔ (3) 予備知識 命題9.2.32と予備知識 命題9.2.33により接束と余接束は同型。
(3) ⇔ (4) 予備知識 命題9.3.19と予備知識 命題9.3.20から、余接束が向き付け可能であることとその $n$ 階外積が自明束であることとは同値。
(2) ⇒ (5) 予備知識 命題9.3.19より $TM$ の局所自明化による被覆であって変換関数の各点での値が常に $GL^{+}(n; \R)$ にあるようなものが存在し、必要であれば適切に取り直して局所座標系を与えることで各局所自明化の底空間は連結な座標近傍としてよいです。ここで取った局所自明化 $TU\to U\times \R^{n}$ が与える $TU$ の向き$\R^{n}$ の標準的な基底が定める向きから誘導される向き。と座標近傍の定める標準的な局所自明化 $TU\to U\times \R^{n}$ の誘導する $TU$ 上の向きを考えるとき、予備知識 命題9.3.21によりそれは一致するか逆であるかのどちらかです。これらが一致するときはそのまま、逆であるときは局所座標系に対して第 $n$ 成分の反転 $(x_{1}, \dots, x_{n - 1}, x_{n})\mapsto (x_{1}, \dots, x_{n - 1}, -x_{n})$ を合成$n \geq 2$ の場合は第 $1$ 成分の反転でもよく、この場合は座標近傍の値域側のモデルとして下半空間 $\Rm^{n}$ は不要ですが、$n = 1$ では必要です。例えば、閉区間 $I = [0, 1]$ に対しては $\Rm^{1}$ が必要になります。下半空間を導入したのはこのためだけです。することで一致するもので置き換えれば欲しかった座標近傍系が得られます。
(5) ⇒ (2) 予備知識 命題9.3.19から。
もう一つ、可微分多様体の向き付け可能性に関連してorientation double coverを導入します。
$M$ を可微分多様体とし、$p\in M$ に対して接空間 $T_{p}M$ の向きからなる $2$ 元集合を $O_{p}$ と書くことにします。$M$ の各座標近傍 $(U_{\lambda}, \varphi_{\lambda})$ は、その誘導する標準的な局所自明化 $TU_{\lambda} \cong \underline{\R}_{U_{\lambda}}^{n}$ を通じて $U_{\lambda}$ の各点での向き $o_{\lambda,p}$ を定めます。いま、$\Z_{2}\cong\{\pm 1\}$ に離散位相を与えたうえで変換関数 $g_{\mu\lambda} : U_{\lambda\mu}\to \Z_{2}$ を\[g_{\mu\lambda}(p) = \left\{\begin{array}{ll}1 & (\text{if }o_{\lambda, p} = o_{\mu, p}) \\-1 & (\text{if }o_{\lambda, p} \neq o_{\mu, p})\end{array}\right.\]として定める$g_{\mu\lambda}$ は座標変換のJacobi行列式の符号を取る写像であることに注意します。コサイクル条件を満たすことは微分に関する合成則から、連続であることはJacobi行列式の連続性から分かります。ことで、主 $\Z_{2}$ 束 $\pi : \hat{M}\to M$ を構成できます。これは多様体であり、orientation double coverといいます。
$M$ の各座標近傍 $(U_{\lambda}, \varphi_{\lambda})$ に対し、その上の $\hat{M}$ の局所自明化 $\psi_{\lambda} : \hat{M}|_{U_{\lambda}}\to U_{\lambda}\times\Z_{2}$ において $(p, \pm 1)$ と $\pm o_{\lambda, p}$ を符号同順で対応させるとき、$\{\pm o_{\lambda, p}\}$ と $\{\pm o_{\mu, p}\}$ は必ず一致する向きどうし符号同順かどうかは $g_{\mu\lambda}$ の値に依存します。で貼り合っていることに注意すれば、$\hat{M}$ は $\bigsqcup_{p\in M}O_{p}$ から標準的に定まる多様体とみなすことができます。
さて、各 $\hat{p}\in O_{p}\subset \hat{M}$ について微分写像 $(\pi_{*})_{\hat{p}} : T_{\hat{p}}\hat{M}\to T_{p}M$ は同型なので、この同型を介して $\hat{p}$ 自体を $T_{\hat{p}}\hat{M}$ の向き $o_{\hat{p}}$ として与えるとします。これより接束 $T\hat{M}$ の向きが定まります。
orientation double cover $\hat{M}$ に対し、上記のようにして定まる向きの族 $\{o_{\hat{p}}\}_{\hat{p}\in\hat{M}}$ は $T\hat{M}$ の向きである。
$M$ の座標近傍 $(U_{\lambda}, \varphi_{\lambda})$ を取ります。写像\[i_{+} : U_{\lambda}\to U_{\lambda}\times\Z_{2} : p\mapsto (p, +1)\]と $U_{\lambda}$ 上の局所自明化 $\psi_{\lambda} : \hat{M}|_{U_{\lambda}}\to U_{\lambda}\times \Z_{2}$ の合成 $j = \psi_{\lambda}^{-1}\circ i_{+}$ は向きを保ちます。つまり、接写像 $j_{*} : TU_{\lambda}\to T\hat{M}$ はそれぞれに定めた向きに関して向きを保っています。
$M$ を可微分多様体とし、$\pi : \hat{M}\to M$ をそのorientation double coverとする。このとき、次は同値である。
(1) ⇒ (2) 命題2.3.2を用いて、座標近傍系 $\mathcal{U} = \{(U_{\lambda}, \varphi_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ であって、その任意の座標変換 $f_{\mu\lambda}$ に対して各点でのJacobi行列式が正値となるものを取ります。このとき、orientation double coverの構成における変換関数 $g_{\mu\lambda}$ は常に値 $1$ を取る定数関数 $\cst_{1}$ です。よって自明です。
(2) ⇒ (1) 命題2.3.3により $\hat{M}$ は向き付け可能なので、切断を一つ固定すれば $\hat{M}$ の向きから $M$ の向きが誘導されます。
$M$ が連結な場合はさらに次が成立します。
$M$ を連結可微分多様体とし、$\pi : \hat{M}\to M$ をそのorientation double coverとする。このとき、次は同値である。
(1) ⇔ (2)すでに示しました。
(2) ⇒ (3) $\Z_{2}$ には離散位相を入れていたので不連結です。
(3) ⇒ (2) $\hat{M}$ は不連結とします。まず、$\hat{M}$ の連結成分 $U$ に対して $\pi(U)$ は閉かつ開なので $\pi(U) = M$ です。そこで、$\hat{M}$ の相異なる連結成分 $U_{+}, U_{-}$ を取り、さらに、$($必ずしも連続とは限らない$)$ 切断 $s_{+}, s_{-} : M\to \hat{M}$ であって $\Img s_{\pm}\subset U_{\pm}$ となるものを取ります。いま、$U_{+}\cap U_{-} = \emptyset$ なので、各 $p\in M$ に対して $s_{+}(p)\neq s_{-}(p)$ であり、各ファイバーが $2$ 元集合であることより集合として $\hat{M} = \Img s_{+}\sqcup \Img s_{-}$ となります。また、$\Img s_{\pm} = U_{\pm}$ でもあります。これらの切断が連続であることは各 $p\in M$ に対して $U_{\pm}$ が $s_{\pm}(p)$ の近傍を含むことから分かります。よって、$U_{\pm}$ はそれぞれ $M$ に同相であり、$\hat{M}$ と $U_{+}\sqcup U_{-}$ は同相です。よって、$\pi : \hat{M}\to M$ はファイバー束として自明です。明らかに主 $\Z_{2}$ 束としても自明です。
向き付け可能および不可能な多様体の例を挙げます(証明は省略…一部は時間があるときに埋めたいです)。
向き付けられた $n$ 次元可微分多様体 $M$ について、その境界 $\partial M$ には次で向きが定まります。
$\partial \Rp^{n}$ の向きを $(-1)^{n}[\partial_{x_{1}}, \dots, \partial_{x_{n - 1}}]$ により定める外向き法ベクトルを最初に加えることでもとの $\R^{n}$ の向きが復元されます。。向き付けられた $n$ 次元可微分多様体 $M$ に対し、$\partial M$ の向きを $M$ の向きを保つ座標近傍が境界に誘導する向き、もしくは、向きを逆にする座標近傍が境界に誘導する向きを反転したものと定める予備知識 命題9.3.21によれば連結な座標近傍を取ればそのように取れます。。$n = 1$ のとき、これより定まる符号部分 $\pm(-1)^{n} = \mp 1$ を形式的に向きとして与える。
$M$ を向き付けられた可微分多様体とする。その境界 $\partial M$ には定義2.3.7による向きが定まり、向き付けられた可微分多様体になる。
まず、各 $p\in\partial M$ に対して $T_{p}\partial M$ の向きがwell-definedに定まっていることを示します。$p\in \partial M$ の近傍における座標近傍 $(U_{\lambda}, x_{1}, \dots, x_{n})$ と $(U_{\mu}, y_{1}, \dots, y_{n})$ を取ります。それぞれが向きを保つかどうかで $4$ 通りありますが、ここでは前者は向きを保ち、後者は向きを反転する場合のみ示します。他は同様に示されます。定義よりそれぞれが境界に誘導する向きは $(-1)^{n}[\partial_{x_{1}}, \dots, \partial_{x_{n - 1}}]$, $(-1)^{n + 1}[\partial_{y_{1}}, \dots, \partial_{y_{n - 1}}]$ なので $[\partial_{x_{1}}, \dots, \partial_{x_{n - 1}}] = -[\partial_{y_{1}}, \dots, \partial_{y_{n - 1}}]$ を示せばよいです。座標変換 $f_{\mu\lambda}$ の定めるJacobi行列 $\left[\dfrac{\partial y_{i}}{\partial x_{j}}\right]_{1\leq i, j\leq n}$ は境界上では
を満たしているので $\det\left[\dfrac{\partial y_{i}}{\partial x_{j}}\right]_{1\leq i, j\leq n - 1} < 0$ が分かり、これは $[\partial_{x_{1}}, \dots, \partial_{x_{n - 1}}] = -[\partial_{y_{1}}, \dots, \partial_{y_{n - 1}}]$ を意味します。よって、境界 $\partial M$ の各点において向きがwell-definedに定まることが分かりました。
これが $\partial M$ の向きを定めていることは、$M$ の向きを保つもしくは反転する座標近傍が誘導する境界の座標近傍がそのまま $\partial M$ の向きを保つもしくは向きを反転する $($必ずしも同順ではないので注意$)$ 座標近傍であることから分かります。
ここでは向き付けられた可微分多様体上のコンパクト台を持つ微分形式に対してその積分を定義し、関連して重要なStokesの定理を紹介します。まずは多様体上の微分形式に対する積分のモデルとして、Euclid空間 $\R^{n}$ のコンパクト台を持つ $n$ 次微分形式に対する積分を整備します。
Euclid空間 $\R^{n}$ の開集合 $U$ におけるcompact台を持つ $n$-form $\omega = fdx_{1}\wedge\dots\wedge dx_{n}\in \Omega^{n}(U)$ に対してその積分 $\int_{U}\omega$ を\[\int_{U}\omega = \int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}fdx_{1}\dots dx_{n}\]により定める。
Euclid空間 $\R^{n}$ の開集合 $U, V$ とcompact台を持つ $n$-form $\omega\in\Omega^{n}(V)$、向きを保つ微分同相 $\varphi : U\to V$ が与えられているとする。このとき、\[\int_{U}\varphi^{*}\omega = \int_{V}\omega\]が成立する。また、向きを反転する微分同相 $\varphi : U\to V$ に対しては\[\int_{U}\varphi^{*}\omega = -\int_{V}\omega\]が成立する。
$\varphi$ が向きを保つとします。$U$ の座標を $x_{1}, \dots, x_{n}$ とし、$V$ の座標を $y_{1}, \dots, y_{n}$ とする。$\omega = fdy_{1}\wedge\dots\wedge dy_{n}$ とおくとき\[\varphi^{*}\omega = f\circ\varphi\cdot |\det J_{\varphi}|dx_{1}\wedge\dots\wedge dx_{n}\]です。多重積分の座標変換公式より\[\int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}f\circ\varphi\cdot |\det J_{\varphi}| dx_{1}\dots dx_{n} = \int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}fdy_{1}\dots dy_{n}\]なので\[\int_{U}\varphi^{*}\omega = \int_{V}\omega\]となります。
$\varphi$ が向きを反転する場合、$\varphi$ と $x_{1}$ 成分反転との合成により向きを保つ場合に帰着できまが、この反転において $d(-x_{1}) = -dx_{1}$ より積分値が $-1$ 倍されるので従います。
多様体上の積分を次で定めます。
$n\geq 1$ とし、向き付けられた可微分多様体 $M^{n}$ とcompact台を持つ $n$-form $\omega\in \Omega^{n}(M)$ が与えられているとする。このとき、$M$ 上の微分形式 $\omega$ の積分を、向きを保つか反転するくどいと思うので以降このことは省略します。座標近傍による開被覆 $\{(U_{\lambda},\varphi_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ とそれに従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $1$ つ固定したうえで\[\int_{M}\omega = \sum_{\lambda}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}\omega)\]とすることで定める。ただし、$\sign\varphi_{\lambda}\in\{\pm 1\}$ は $\varphi_{\lambda}$ が向きを保つとき $+1$、反転するとき $-1$ を取るとする。
$n = 0$ の場合、各点 $p\in M$ に与えられた向き $($符号$)$ を $\sign p$ と書くことにして、コンパクト台を持つ $f\in\Omega^{0}(M) = C(M)$ の積分を\[\int_{M}f = \sum_{p\in M}\sign p\cdot f(p)\]と定める。
この定義は次のように開被覆と $1$ の分割の取り方に依らないことを示すことで正当化されます。
この積分値 $\int_{M}\omega$ は座標近傍による開被覆 $\{(U_{\lambda},\varphi_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ とそれに従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の取り方によらない。
座標近傍による開被覆 $\{(U_{\lambda},\varphi_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$, $\{(V_{\lambda'}, \psi_{\lambda'})\}_{\lambda'\in\Lambda'}$ とこれらに従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$, $\{k_{\lambda'}\}_{\lambda'\in\Lambda'}$ をそれぞれ取ります。このとき、\begin{eqnarray*}\sum_{\lambda}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}\omega) & = & \sum_{\lambda, \lambda'}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda(U_{\lambda})}}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}k_{\lambda'}\omega) \\& = & \sum_{\lambda, \lambda'}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda}\cap V_{\lambda'})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}k_{\lambda'}\omega) \\& = & \sum_{\lambda, \lambda'}\sign\psi_{\lambda'}\int_{\psi_{\lambda'}(U_{\lambda}\cap V_{\lambda'})}(\psi_{\lambda'}^{-1})^{*}(h_{\lambda}k_{\lambda'}\omega) \\& = & \sum_{\lambda, \lambda'}\sign\psi_{\lambda'}\int_{\psi_{\lambda'}(V_{\lambda'})}(\psi_{\lambda'}^{-1})^{*}(h_{\lambda}k_{\lambda'}\omega) \\& = & \sum_{\lambda'}\sign\psi_{\lambda'}\int_{\psi_{\lambda'}(V_{\lambda'})}(\psi_{\lambda'}^{-1})^{*}(k_{\lambda'}\omega)\end{eqnarray*}です。
では、Stokesの定理を説明します。
$M^{n}$ を向き付けられた可微分多様体とし、$i : \partial M\to M$ を包含写像とする。コンパクト台を持つ $n - 1$ 次微分形式 $\omega\in\Omega^{n - 1}(M)$ に対して\[\int_{\partial M}i^{*}\omega = \int_{M}d\omega\]が成立する。
座標近傍による開被覆 $\mathcal{U} = \{(U_{\lambda},\varphi_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ であって各 $\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})$ が $\Rp^{n}$ の開集合であるものを取り、各座標近傍 $(U_{\lambda}, \varphi_{\lambda})$ が誘導する境界 $\partial M$ の座標近傍を $(\partial U_{\lambda}, \partial\varphi_{\lambda})$ と書くことにします。境界での向きの定め方により $\sign\partial\varphi_{\lambda} = \sign\varphi_{\lambda}(-1)^{n}$ が成立していることに注意します。さらに、開被覆 $\mathcal{U}$ に従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。いま、\[\int_{M}d\omega = \sum_{\lambda}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}d(h_{\lambda}\omega),\]\[\int_{\partial M} i^{*}\omega = \sum_{\lambda}\sign\partial\varphi_{\lambda}\int_{\partial\varphi_{\lambda}(\partial U_{\lambda})}(\partial\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(i^{*}(h_{\lambda}\omega))\]なので、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して\[\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}d(h_{\lambda}\omega) = \sign\partial\varphi_{\lambda}\int_{\partial\varphi_{\lambda}(\partial U_{\lambda})}(\partial\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(i^{*}(h_{\lambda}\omega))\]を示せば十分です。
$(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}\omega)$ が\[(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}\omega) = \sum_{k = 1}^{n}f_{k}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{k - 1}\wedge dx_{k + 1}\wedge\dots\wedge dx_{n}\]と表されるとします。このとき、\[(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}d(h_{\lambda}\omega) = d(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(h_{\lambda}\omega) = \sum_{k = 1}^{n}(-1)^{k - 1}\dfrac{\partial f_{k}}{\partial x_{k}}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{n},\]\[(\partial\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(i^{*}(h_{\lambda}\omega)) = f_{n}|_{\partial\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{n - 1}\]です。$1\leq k\leq n - 1$ に対して\[\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}\dfrac{\partial f_{k}}{\partial x_{k}}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{n} = \int_{0}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{-\infty}^{\infty}\dfrac{\partial f_{k}}{\partial x_{k}}dx_{k}\right)dx_{1}\dots dx_{n} = 0\]なので、\begin{eqnarray*}\sign\varphi_{\lambda}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}(\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}d(h_{\lambda}\omega) & = & \sign\varphi_{\lambda}\sum_{k = 1}^{n}(-1)^{k - 1}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})} \dfrac{\partial f_{k}}{\partial x_{k}}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{n} \\& = & \sign\varphi_{\lambda}(-1)^{n - 1}\int_{\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}\dfrac{\partial f_{n}}{\partial x_{n}}dx_{1}\wedge\dots \wedge dx_{n} \\& = & \sign\varphi_{\lambda}(-1)^{n - 1}\int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}\left(\int_{0}^{\infty}\dfrac{\partial f_{n}}{\partial x_{n}}dx_{n}\right)dx_{1}\dots dx_{n - 1} \\& = & \sign\varphi_{\lambda}(-1)^{n} \int_{-\infty}^{\infty}\dots\int_{-\infty}^{\infty}f_{n}|_{\partial\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}dx_{1}\dots dx_{n - 1} \\& = & \sign\partial\varphi_{\lambda} \int_{\partial\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})} f_{n}|_{\partial\varphi_{\lambda}(U_{\lambda})}dx_{1}\wedge\dots\wedge dx_{n - 1} \\& = & \sign\partial\varphi_{\lambda}\int_{\partial\varphi_{\lambda}(\partial U_{\lambda})}(\partial\varphi_{\lambda}^{-1})^{*}(i^{*}(h_{\lambda}\omega))\end{eqnarray*}です。よって示されました。
以上です。
Stokesの定理について、$n = 1$ の場合は単なる微積分学の基本定理なのでさぼってもよかった気がします。例えば、$n\geq 2$ として話を進めれば座標近傍として向きを保つものだけを考えれば良くなるので、計算中に出てきた符号部分はほとんど現れなくなります。
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