分離公理に関する基本的な事項をまとめます最初に用語について、これから導入する正則空間や正規空間はテキストによって $T_{1}$ 性 $($これもすぐ後で導入$)$ を課すかどうかまちまちのようなので注意。ここでは[松坂 集合・位相入門]や[L. A. Steen and J. A. Seebach Jr, Counterexamples in Topology] (完全正規とかまで定義している洋書で $T_{1}$ 性を課してるのはこれしかしならい…が、一応ある)の流儀に従い $T_{1}$ 性を課します。課さない例としては例えば[児玉 永見 位相空間論]があります。。分離公理自体は何種類もあるのですが、幾何学において現れる位相空間はそのうちのいずれかの意味での分離公理を満たしていること多く、そして、その満たしている分離公理に関する一般論から多くの性質を導くことができます。
$T_{0}, T_{1}$ 空間とHausdorff空間 $($$T_{2}$ 空間$)$ を導入します。
$X$ を位相空間とする。
位相空間 $X$ が $T_{1}$ 空間であれば、相異なる任意の $2$ 点 $x\neq y\in X$ に対して $x\in U$ かつ $y\notin U$ となる開集合 $U$、$y\in V$ かつ $x\notin V$ となる開集合 $V$ が存在することになりますが、$X$ がHausdorff空間であるというのはさらにこの $U, V$ が非交叉に取れるということです。
次は明らかです。
位相空間は $T_{1}$ 空間ならば $T_{0}$ 空間であり、Hausdorff空間 $($$T_{2}$ 空間$)$ ならば $T_{1}$ 空間である。
$X$ を位相空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) $x\in X$ とします。任意の点 $y\neq x$ に対して開集合 $U_{y}$ であって $y\in U_{y}$ かつ $x\notin U_{y}$ となるものを固定すれば $\bigcup_{y\in X\setminus \{x\}}U_{y} = X\setminus \{x\}$ であり、これは開集合なのでその補集合 $\{x\}$ は閉集合です。
(2) ⇒ (3) $x\in X$ を固定します。任意の $y\neq x$ に対して(2)より $X\setminus \{y\}$ は $x$ の開近傍であり、$\{x\} = \bigcap_{y\neq x}(X\setminus \{y\})$ です。このことにより、$x$ の全ての開近傍たちの共通部分は $\{x\}$ です。
(3) ⇒ (1) $x\neq y\in X$ とします。(3)より $x\in X$ の開近傍 $U$ であって $y\notin U$ となるものが取れるので $X$ は $T_{1}$ 空間です。
$T_{1}$ 空間 $X$ において有限部分集合は閉集合である。$($もちろんHausdorff空間でも成立。$)$
$T_{1}$ 空間において $1$ 点からなる部分集合は閉集合です。高々有限個の閉集合の和集合は閉集合なので、有限集合は閉集合です。
さて、Hausdorff空間における重要な事項として点列の極限が一意に定まることが挙げられます。
$X$ を位相空間とする。$X$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ が点 $a\in X$ に収束するとは、$a$ の任意の開近傍 $U$ に対してある非負整数 $N$ が存在し、任意の $n > N$ に対して $x_{n}\in U$ が満たされることと定める。このことを $\underset{n\to\infty}{\lim}x_{n} = a$ と書き、点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ は $a$ に収束するなどという。$a$ は点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ の収束点や極限という。
$X$ をHausdorff空間とする。$X$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ は収束すればその収束点は一意である。
$a\neq b\in X$ の $2$ 点に収束したとします。開集合 $U, V$ であって $a\in U$ かつ $b\in V$ かつ $U\cap V = \varnothing$ となるものを取ります。点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ が $a$ に収束することからある非負整数 $N_{a}$ であって任意の $n > N_{a}$ に対して $x_{n}\in U$ となるものを取ることができ、同様に非負整数 $N_{b}$ であって任意の $n > N_{b}$ に対して $x_{n}\in V$ となるものを取ることができます。$n > \max\{N_{a}, N_{b}\}$ を取れば $x_{n}\in U\cap V = \varnothing$ となり矛盾です。よって、収束先は一意です。
$X$ を位相空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) $x\in X$ を固定します。各 $y\neq x$ に対し、$x\in U_{y}$, $y\in V_{y}$, $U_{y}\cap V_{y} = \varnothing$ となる開集合 $U_{y}, V_{y}$ を固定します。$\overline{U_{y}}\subset V_{y}^{c}$ であり、$\overline{U_{y}}$ は $y\notin \overline{U_{y}}$ を満たす $x$ の閉近傍です。よって、$\bigcap_{y\neq x}\overline{U_{y}} = \{x\}$ です。このことにより、$x$ の全ての閉近傍たちの共通部分は $\{x\}$ です。
(2) ⇒ (1) $x\neq y$ を取ります。(2)より、$x$ の閉近傍 $F$ であって $y\notin F$ となるものが取れます。$U := \Int F$, $V := F^{c}$ とすれば、これが $x\in U$, $y\in V$, $U\cap V = \varnothing$ を満たす開集合になります。よって、$X$ はHausdorff空間です。
(1) ⇒ (3) $z = (x, y)\in \Delta(X)^{c}$ とします。$x\neq y$ なので、開集合 $U_{z}, V_{z}$ であって $x\in U_{z}$, $y\in V_{z}$, $U_{z}\cap V_{z} = \varnothing$ となるものが取れます。$W_{z} := U_{z}\times V_{z}$ は $z$ の開近傍であって $W_{z}\subset \Delta(X)^{c}$ を満たします。各 $z\in \Delta(X)^{c}$ に対してそのような $W_{z}$ を固定しておけば、$\Delta(X)^{c} = \bigcup_{z\in \Delta(X)^{c}}W_{z}$ であり、これは開集合です。よって、$\Delta(X)$ は閉集合です。
(3) ⇒ (1) $x\neq y\in X$ を取ります。$(x, y)\in \Delta(X)^{c}$ です。$X\times X$ は $X$ の開集合 $U, V$ を用いて $U\times V$ の形で表される部分集合たちからなる開基を持つので、$(x, y)$ の開近傍であって $U\times V$ の形かつ $\Delta(X)^{c}$ に含まれるものが取れます。これが $x\in U$, $y\in V$, $U\cap V = \varnothing$ を満たしますもし $U\cap V\neq \varnothing$ とすると、その元 $z$ に対して $(z, z)\in U\times V\in \Delta(X)^{c}$ となって矛盾です。。よって、$X$ はHausdorff空間です。
部分空間を取る操作や直積空間をとる操作でHausdorff性が保たれることは重要です。
(1) $x\neq y\in A$ を取ります。$X$ が $T_{1}$ 空間なので、$X$ の開集合 $U$ であって $x\in U$ かつ $y\neq U$ となるものが取れます。この $U$ について $U' = A\cap U$ は $x\in U'$ かつ $y\notin U'$ を満たす $A$ の開集合です。
(2) $x = (x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\neq y = (y_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\in \prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ を取ります。ある $\mu\in \Lambda$ が存在して $x_{\mu}\neq y_{\mu}$ です、$X_{\mu}$ の開集合 $U_{\mu}$ を $x_{\mu}\in U_{\mu}$ かつ $y_{\mu}\notin U_{\mu}$ となるように取れば、$U := \pr_{\mu}^{-1}(U_{\mu})$ が $x\in U$, $y\notin U$ を満たす直積空間の開集合です。
(3) (1)とほぼ同じです。$x\neq y\in A$ に対し、それらを $X$ において分離する開集合 $U, V$ を取り、それぞれの $A$ との共通部分を考えればよいです。
(4) (2)とほぼ同じです。$X_{\mu}$ において $x_{\mu}, y_{\mu}$ を分離する開集合 $U_{\mu}, V_{\mu}$ を取れば、それらの射影 $\pr_{\mu}$ による逆像が直積空間において $x, y$ を分離する開集合です。
$X$ を位相空間、$Y$ をHausdorff空間とする。連続写像 $f : X\to Y$ のグラフ\[\Gamma(f) := \{(x, f(x))\mid x\in X\}\subset X\times Y\]は閉集合である。
$(x, y)\notin \Gamma(f)$ となる $(x, y)\in X\times Y$ を任意に取ります。$y\neq f(x)$ です。$Y$ の開集合 $U, V$ を $f(x)\in U$, $y\in V$, $U\cap V = \varnothing$ となるように取ります。このとき、$U\cap V = \varnothing$ より $f^{-1}(U)\cap f^{-1}(V) = \varnothing$ であり、$f^{-1}(U)\times V\subset X\times Y$ は $\Gamma(f)$ と交わらない $(x, y)$ の開近傍です。よって、$\Gamma(f)$ は閉集合です。
次は結構いろんなところで使う事実です。
$X$ を位相空間、$Y$ をHausdorff空間とする。連続写像 $f, g : X\to Y$ に対して集合\[A := \{x\in X\mid f(x) = g(x)\}\subset X\]は閉集合である。
補集合 $A^{c} = \{x\in X\mid f(x)\neq g(x)\}$ が開集合であることを示します。$x\in A^{c}$ とします。$Y$ の開集合 $U, V$ を $f(x)\in U$, $g(x)\in V$, $U\cap V = \varnothing$ となるように取ります。このとき、任意の $x'\in f^{-1}(U)\cap g^{-1}(V)$ に対して $f(x')\in U$ かつ $g(x') \in V$ であり、$U\cap V = \varnothing$ より $f(x')\neq g(x')$ なので $x'\in A^{c}$ です。よって、$f^{-1}(U)\cap g^{-1}(V)\subset A^{c}$ です。$f^{-1}(U)\cap g^{-1}(V)$ は $x'$ の開近傍であり、$x'$ を任意に取っていたことから $A^{c}$ は開集合です。よって、$A$ は閉集合です。
正則空間を導入します。
$X$ を位相空間とする。
まず、正則空間はHausdorff空間であることを確かめておきます。
正則空間 $X$ はHausdorff空間である。
正則空間は定義から $T_{1}$ 空間なのでその $1$ 点集合は閉集合。よって、$T_{3}$ 空間であることから任意の相異なる $2$ 点 $x\neq y$ に対して $x\in U$ かつ $\{y\}\subset V$ かつ $U\cap V = \varnothing$ となるものが取れます。当然 $\{y\}\subset V$ は $y\in V$ と同値なので、Hausdorff空間であることが分かりました。
$X$ を位相空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) $x\in X$ とその開近傍 $V$ を固定します。$X$ が正則であることから $x$ と $V^{c}$ を分離する開集合 $U, W$ を取れば、$x\in \overline{U}\subset W^{c}\subset V$ です。
(2) ⇒ (1) $x\in X$ と $x\notin A$ である閉集合 $A\subset X$ を固定します。$V := A^{c}$ は $x$ の開近傍であり、(2)より $x$ の開近傍 $U$ であって $\overline{U}\subset V$ を満たすものが取れます。容易に分かるように $U$ と $\overline{U}^{c}$ が $x$ と $A$ を分離する開集合です。
(1) $x\in A$ と $A$ の閉集合 $B\subset A$ であって $x\notin B$ であるものを固定します。$X$ の閉集合 $F$ であって $B = F\cap A$ であるものを取ります。$X$ において $x$ と $F$ を分離する開集合 $U, V$ を取れば、それらと $A$ との共通部分として得られる開集合たちが $A$ において $x$ と $B$ を分離する開集合です。
(2) $x = (x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\in \prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ と閉集合 $A\subset \prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ を $x\notin A$ であるように固定します。$A^{c}$ は $x$ の開近傍であり、$x$ の開近傍 $V$ であって\[\prod_{\mu\in M}V_{\mu}\times \prod_{\lambda\in \Lambda\setminus M}X_{\lambda} \ (M\subset \Lambda, \ \#M < +\infty, \ V_{\mu} : \text{open set})\]の形に表されかつ $V\subset A^{c}$ を満たすものが取れます。各 $\mu\in M$ に対して $V_{\mu}$ は $x_{\mu}$ の開近傍であり、命題2.3.16から $x$ の開近傍 $U_{\mu}$ であって $\overline{U_{\mu}}\subset V_{\mu}$ となるものが取れます。\[U := \prod_{\mu\in M}U_{\mu}\times \prod_{\lambda\in \Lambda\setminus M}X_{\lambda}\]とおけば $U$ と $\overline{U}^{c}$ が $x$ と $A$ を分離する開集合です。
実際、これらが非交叉な開集合であること、$x\in U$ であることは容易であるし、\[\overline{U} = \prod_{\mu\in M}\overline{U_{\mu}}\times \prod_{\lambda\in \Lambda\setminus M}X_{\lambda}\subset \prod_{\mu\in M}V_{\mu}\times \prod_{\lambda\in \Lambda\setminus M}X_{\lambda}\subset A^{c}\]により $A\subset \overline{U}^{c}$ も従います。
(3) (4) $T_{1}$ 性は部分空間や直積空間で保たれる性質でした $($命題2.3.11$)$。
正規空間を導入します。
$X$ を位相空間とする。
正規空間 $X$ は正則空間であり、よって、Hausdorff空間である。
$x\in X$ と閉集合 $A\subset X$ を $x\notin A$ であるように固定します。正規空間は定義から $T_{1}$ 空間なのでその $1$ 点集合 $\{x\}$ は閉集合。よって、$T_{4}$ 空間であることから $\{x\}\subset U$ かつ $A\subset V$ かつ $U\cap V = \varnothing$ となるものが取れます。よって、$X$ は正則空間です。
$X$ を位相空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) 閉集合 $A\subset X$ とその開近傍 $V$ を固定します。$X$ が正規であることから $A$ と $V^{c}$ を分離する開集合 $U, W$ を取れば、$A\subset \overline{U}\subset W^{c}\subset V$ です。
(2) ⇒ (1) 閉集合 $A, B\subset X$ であって $A\cap B = \varnothing$ となるものを取ります。$V := B^{c}$ は $A$ の開近傍であり、(2)より $A$ の開近傍 $U$ であって $\overline{U}\subset V$ を満たすものが取れます。容易に分かるように $U$ と $\overline{U}^{c}$ が $A$ と $B$ を分離する開集合です。
$X$ を $T_{4}$ 空間とする。$A_{1}, \dots, A_{n}$ を互いに非交叉な閉集合とするとき、各 $A_{k}$ の開近傍 $U_{k}$ であって $\overline{U_{1}}, \dots, \overline{U_{n}}$ が互いに非交叉となるものが存在する。
開近傍 $U_{1}, \dots, U_{k - 1}$ を $\overline{U_{1}}, \dots, \overline{U_{k - 1}}, A_{k}, \dots, A_{n}$ が互いに非交叉となるように構成されているとします。このとき、$A_{k}\subset \left(\bigcup_{1\leq i < k}\overline{U_{i}}\cup \bigcup_{k < i\leq n}A_{i}\right)^{c}$ であるので、命題2.3.20より $A_{k}$ の開近傍 $U_{k}$ を\[\overline{U_{k}}\subset \left(\bigcup_{1\leq i < k}\overline{U_{i}}\cup \bigcup_{k < i\leq n}A_{i}\right)^{c}\]であるように取ることができ、このとき、$\overline{U_{1}}, \dots, \overline{U_{k}}, A_{k + 1}, \dots, A_{n}$ は互いに非交叉です。よって、主張の条件を満たす開近傍 $U_{1}, \dots, U_{n}$ が帰納的に構成されます。
正規空間について、部分空間や直積空間がまた正規空間になるとは限らないことが知られていますただし、正規空間 $X$ の閉部分集合 $A$ は正規空間になります。$A$ の閉集合が $X$ の閉集合なので、$X$ において分離する開集合が取ればよいです。。例えば、[L. A. Steen and J. A. Seebach Jr, Counterexamples in Topology]を参照。
Euclid空間は正規空間の最も重要な例となります。
Euclid空間 $\R^{n}$ は正規空間である。
$T_{1}$ 空間、Hausdorff空間 $($$T_{2}$ 空間$)$、正則空間 $($$T_{3}$ 空間かつ $T_{1}$ 空間$)$、正規空間 $($$T_{4}$ 空間かつ $T_{1}$ 空間$)$ を導入してきましたが、これらを条件の強い順に並べると\[T_{4} + T_{1}\Rightarrow T_{3} + T_{1}\Rightarrow T_{2}\Rightarrow T_{1}\]です。いずれの $\Rightarrow$ についても逆には反例が存在することが知られています。詳細は[L. A. Steen and J. A. Seebach Jr, Counterexamples in Topology]を参照。
$T_{4}$ 空間に関する重要な定理として、まずはUrysohnの補題を紹介します。$1$ つ補題を用意します。
$X$ を位相空間、$R$ を閉区間 $[a, b]$ の稠密部分集合であって $a, b$ の属すもの、$\{A_{r}\}_{r\in R}$ を閉集合族であって任意の $s < t\in R$ に対して $A_{s}\subset \Int A_{t}$ を満たすものとします。写像 $f : X\to [a, b]$ を\[f(x) := \left\{\begin{array}{ll}\inf\{r\in R\mid x\in A_{r}\} & (x\in A_{b}) \\b & (x\in A_{b}^{c})\end{array}\right.\]により定めるとき、これは連続である。
$U\subset [a, b]$ を $($この区間における$)$ 開集合とし、各 $x\in f^{-1}(U)$ が内点になっていることを確かめます。これには以下の場合を確認すれば十分です。
注意として、$x\in A_{r}$ ならば $f(x)\leq r$ は明らかであるし、$x\notin A_{r}$ であれば $r$ 以下の任意の $r'\in R$ に対して $x\notin A_{r'}$ であり、$f(x)\geq r$ が成立しています。
(i) $[a, c)\subset U$ となる $c\in (a, b]$ を取り、$a < r' < r < c$ となる $r, r'\in R$ を取れば\[x\in A_{r'}\subset \Int A_{r}\subset f^{-1}([a, c))\subset f^{-1}(U)\]なので、$x$ は $f^{-1}(U)$ の内点です。
(ii) $f(x)\in (c, d)\subset U$ となる $c, d\in [a, b]$ を取り、$c < s < f(x) < t < d$ となるように $s, t\in R$ を取れば $x\in \Int A_{t}\setminus A_{s}\subset f^{-1}(U)$ であり、$x$ は $f^{-1}(U)$ の内点です。
(iii) $(c, b]\subset U$ となる $c\in [a, b)$ を取り、$c < r < b$ となる $r\in R$ を取れば $x\in A_{r}^{c}\subset f^{-1}(U)$ であり、$x$ は $f^{-1}(U)$ の内点です。
$X$ を $T_{4}$ 空間とする。$A, B\subset X$ を閉集合とし、$A\cap B = \varnothing$ とします。このとき、連続写像 $f : X\to [0, 1]$ であって $f|_{A}\equiv 0$, $f|_{B}\equiv 1$ を満たすものが存在する。ただし、区間 $[0, 1]$ には実数体 $\R$ の通常の位相に関する相対位相をを与える。
命題2.3.20を用いて $A$ とは交わらない $B$ の閉近傍 $C$ を固定しておきます。そして、非負整数 $n\in \N$ と整数 $0\leq m\leq 2^{n}$ を用いて $m/2^{n}$ と表される有理数全体からなる集合を $R$ とし、以下の条件を満たす閉集合族 $\{A_{r}\}_{r\in R}$ を構成します。
各非負整数 $n\in \N$ について、$R_{n}$ を整数 $m$ を用いて $m/2^{n}$ と表される $R$ の元全体からなる集合とします。$R_{0} = \{0, 1\}$ においては $A_{0} := A$, $A_{1} := \Cl(C^{c})$ と定め、以下は帰納的に定義していきます。$R_{n}$ の各元に対して条件の(ii)が成立するように $A_{r}$ たちが定義されているとして、各 $r = (2k + 1)/2^{n + 1}\in R_{n + 1}\setminus R_{n}$ に対して $A_{r}$ を $A_{k/2^{n}}\subset \Int A_{r}$, $A_{r}\subset \Int A_{(k + 1)/2^{n}}$ となる閉集合として構成できれば $R_{n + 1}$ でも(ii)を満たすように構成されたことになりますが、これは $\Int A_{(k + 1)/2^{n}}$ が $A_{k/2^{n}}$ の開近傍になっていることと命題2.3.20から $A_{k/2^{n}}$ の開近傍 $U$ であって $\overline{U}\subset \Int A_{(k + 1)/2^{n}}$ となるものを取り、$A_{r} := \overline{U}$ とすればよいです。以上により条件を満たす閉集合族が帰納的に構成されます。
写像 $f : X\to [0, 1]$ を\[f(x) := \left\{\begin{array}{ll}\inf\{r\in R\mid x\in A_{r}\} & (x\in A_{1}) \\1 & (x\in A_{1}^{c})\end{array}\right.\]により定めます。これは補題2.3.25より連続であり、$f|_{A}\equiv 0$ は $A = A_{0}$ から、$f|_{B}\equiv 1$ は $B\subset \Int C = (\Cl(C^{c}))^{c} = A_{1}^{c}$ から従います。以上で目的の連続関数が得られました。
もう $1$ つ、$T_{4}$ 空間に関する重要な定理として、Tietzeの拡張定理を紹介します。いくつか補題を用意します。
$X$ を $T_{4}$ 空間、$A$ を $X$ の閉集合、$g : A\to \R$ を連続写像とする。任意の $r\in \R$ に対して次の条件を満たす閉集合 $A_{r}$ が存在する。
各 $s\in \R$ に対して $A$ の閉集合 $F_{s}, G_{s}$ を $F_{s} := g^{-1}((-\infty, s])$, $G_{s} := g^{-1}([s, +\infty))$ と定めます。$A$ が閉なのでこれらは $X$ においても閉です。開集合列 $\{U_{n}\}_{n\in\N}, \{V_{n}\}_{n\in\N}$ を次の条件を満たすように構成します。
$U_{n - 1}, V_{n - 1}$ まで構成されているとして $U_{n}, V_{n}$ を構成すればよいですが、$U_{n}$ が構成できることは $(\overline{U_{n - 1}}\cup F_{r - 1/n})\cap (\overline{V_{n - 1}}\cup G_{r}) = \varnothing$ であること(b)から $\overline{U_{n - 1}}\cap G_{r} = \varnothing$ が、(c)から $(\overline{U_{n - 1}}\cup F_{r - 1/n})\cap \overline{V_{n - 1}} = \varnothing$ が分かります。$F_{r - 1/n}\cap G_{r} = \varnothing$ は定義から明らかです。と命題2.3.20からよく、$V_{n}$ も同様に $(\overline{V_{n - 1}}\cup G_{r + 1/n})\cap (\overline{U_{n}}\cup F_{r}) = \varnothing$ と命題2.3.20から構成されるのでよいです。よって、帰納的に開集合列が構成されます。
$A_{r} := \Cl\left(\bigcup_{n\in\N}U_{n}\right)\cup F_{r}$ が条件を満たす閉集合であることを示します。いま、\[g^{-1}((-\infty, r)) = \bigcup_{n\in\N_{+}}F_{r - 1/n}\subset \bigcup_{n\in\N}U_{n}\subset \left(\bigcup_{n\in\N}V_{n}\right)^{c}\subset \left(\bigcup_{n\in\N_{+}}G_{r + 1/n}\right)^{c} = g^{-1}((r, +\infty))^{c}\]であることに注意します。$g^{-1}((-\infty, r))\subset \Int A_{r}$ は明らかです。また、$\left(\bigcup_{n\in\N}V_{n}\right)^{c}$ が閉集合であることから $\Cl\left(\bigcup_{n\in\N}U_{n}\right)\subset \left(\bigcup_{n\in\N}V_{n}\right)^{c}$ であり、$\Cl\left(\bigcup_{n\in\N}U_{n}\right)\cap A\subset F_{r}$ となるので、もちろん $A_{r}\cap A = F_{r}$ です。以上により $A_{r}$ が構成されました。
$X$ を $T_{4}$ 空間、$A$ を $X$ の閉集合、$g : A\to \R$ を連続写像とする。閉集合族 $\{A_{n}\}_{n\in\Z}$ であって次の条件を満たすものが存在する。
条件(ii)を満たす $A_{0}$ を補題2.3.27より取ります。$p, q$ を整数とし、$p < n < q$ の範囲で各条件を満たすように $A_{n}$ が構成されているとして $A_{p}, A_{q}$ を構成します。
$A_{p}$ は連続写像 $h_{p + 1} : (\Int A_{p + 1})^{c}\cup A\to \R$ を\[h_{p + 1}(x) := \left\{\begin{array}{ll}p + 1 & (x\in (\Int A_{p + 1})^{c}) \\\min\{g(x), p + 1\} & (x\in A)\end{array}\right.\]により定め$g^{-1}((-\infty, p + 1))\subset \Int A_{p + 1}$ より $(\Int A_{p + 1})^{c}\cap A\subset \{x\in A\mid g(x)\geq p + 1\}$ となることに注意すれば $h_{p + 1}$ はwell-definedであり、連続性は $(\Int A_{p + 1})^{c}$ への制限の連続性と $A$ への制限の連続性から従います。、この $h_{p + 1}$ に対して補題2.3.27を適用すればよいです。$A_{p}\subset \Int A_{p + 1}$ は $A_{p}\cap (\Int A_{p + 1})^{c} = \varnothing$ から従います。
$A_{q}$ は連続写像 $k_{q - 1} : A_{q - 1}\cup A\to \R$ を\[k_{q - 1}(x) := \left\{\begin{array}{ll}q - 1 & (x\in A_{q - 1}) \\\max\{g(x), q - 1\} & (x\in A)\end{array}\right.\]により定め、この $k_{q - 1}$ に対して補題2.3.27を適用すればよいです。$A_{q - 1}\subset \Int A_{q}$ も明らかです。
$X$ を $T_{4}$ 空間、$A$ を $X$ の閉集合、$g : A\to \R$ を連続写像とする。また、$R$ を非負整数 $n\in \N$ と整数 $m\in \Z$ を用いて $m/2^{n}$ と表される有理数全体からなる集合とする。閉集合族 $\{A_{r}\}_{r\in R}$ であって次の条件を満たすものが存在する。
$r\in \Z$ については補題2.3.28より取ります。$s < t\in R$ について各条件を満たす $A_{s}, A_{t}$ が得られているとして、$r := \tfrac{s + t}{2}\in R$ に対して各条件を満たす $A_{r}$ が連続写像 $g' : A_{s}\cup A\cup (\Int A_{t})^{c}\to \R$ を\[g'(x) := \left\{\begin{array}{ll}s & (x\in A_{s}) \\\min\{\max\{g(x), s\}, t\} & (x\in A) \\t & (x\in (\Int A_{t})^{c})\end{array}\right.\]により定義して補題2.3.27を適用して得られます。このことから $R$ 全体でも構成できることが容易に分かります。
$X$ を $T_{4}$ 空間、$A$ を $X$ の閉集合とする。連続写像 $g : A\to \R$ は $X$ 全体で定義された連続写像 $f : X\to \R$ に拡張する。つまり、$f|_{A} = g$ を満たす連続写像 $f : X\to \R$ が存在する。
補題2.3.29の閉集合列 $\{A_{r}\}_{r\in R}$ を取り、$A_{\infty} := \left(\bigcup_{r\in R}A_{r}\right)\setminus \left(\bigcap_{r\in R}A_{r}\right)$ とおきます。$A_{\infty}$ は $A$ の開近傍です。写像 $h : A_{\infty}\to \R$ を\[h(x) := \inf\{r\in R\mid x\in A_{r}\}\]により定めます。これは補題2.3.25より連続であり、$A_{r}\cap A = g^{-1}((-\infty, r])$ より $A$ 上で $g$ に一致します。$A_{\infty}^{c}$ は $A$ とは交わらない $X$ の閉集合であり、その閉近傍 $B$ であって $A$ とは交わらないものが取れます。ここでUrysohnの補題 $($定理2.3.26$)$ より連続写像 $k : X\to [0, 1]$ であって $k|_{A}\equiv 1$ かつ $k|_{B}\equiv 0$ を満たすものを取り、連続写像 $f : X\to \R$ を\[f(x) := \left\{\begin{array}{ll}k(x)h(x) & (x\in A_{\infty}) \\0 & (x\in \Int B)\end{array}\right.\]と定めればこれが目的の $g$ の連続拡張です。$A_{\infty}\cap\Int B$ において $kh$ が恒等的に $0$ を値に取ることに注意すれば確かに連続に定まっています。
正則空間や正規空間に関連してもういくつかの空間を導入します。
$X$ を $T_{1}$ 空間とし、任意の点 $x\in X$ と閉集合 $A\subset X$ に対し、$x\notin A$ ならばある連続写像 $f : X\to [0, 1]$ であって $f(x) = 1$ かつ $A\subset f^{-1}(0)$ を満たすものが存在するとする。このとき、$X$ は完全正則 $($completely regular$)$ であるというここでは正則空間に $T_{1}$ 性を課しているので完全正則空間にも $T_{1}$ 性を課していますが、この仮定を外して完全正則性を定義し、$T_{1}$ 性を課したほうをTychonoff空間と呼ぶことが多そうです。。
正規空間であって任意の部分空間が再び正規空間であるものを全部分正規空間 $($completely normal space$)$ や遺伝的的正規空間 $($hereditarily normal space$)$ と呼ぶ。
$X$ を正規空間とする。任意の閉集合 $A, B\subset X$ に対し、$A\cap B = \varnothing$ ならばある連続関数 $f : X\to [0, 1]$ であって $A = f^{-1}(0)$ かつ $B = f^{-1}(1)$ を満たすものが存在すとき、$X$ を完全正規空間 $($perfectly normal space$)$ と呼ぶ。
以下の性質があります。
$X$ を $T_{1}$ 空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) 自明です。
(2) ⇒ (3) $\overline{A}\cap B = \varnothing$ かつ $A\cap \overline{B} = \varnothing$ を満たす部分集合 $A, B\subset X$ を取ります。$Y := X\setminus (\overline{A}\cap \overline{B})$ 開集合であり、仮定より正規です。また、明らかに $A, B\subset Y$ であり、さらに $Y$ における閉包 $C := \Cl_{Y}A$ と $D := \Cl_{Y}B$ は交わりません。よって、$Y$ において $C, D$ を分離する開集合を取ればそれが $X$ において $A, B$ を分離する開集合になります。
(3) ⇒ (1) 部分空間 $Y\subset X$ を取り、その正規性を示します。互いに交わらない $Y$ の閉集合 $A, B\subset Y$ を取ります。$\Cl_{X}A\cap B = \varnothing$ かつ $A\cap \Cl_{X}B = \varnothing$ なので仮定より $X$ において $A, B$ を分離する開集合 $U, V$ を取ることができ、$U\cap Y$ と $V\cap Y$ が $Y$ において $A, B$ を分離する開集合になります。よって、$Y$ は正規です。
$X$ を $T_{1}$ 空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) 自明です。
(2) ⇒ (1) $A, B\subset X$ を互いに非交叉な閉集合とします。連続写像 $g, h : X\to [0, 1]$ を $g^{-1}(0) = A$, $h^{-1}(0) = B$ に取れば連続関数 $f := g/(g + h)$ が $f^{-1}(0) = A$ と $f^{-1}(1) = B$ を満たします。
次が成立する。
(1) 完全正則空間 $X$ とその部分空間 $Y$ を取ります。$Y$ の閉集合 $B$ と点 $y$ を $y\notin B$ に取ります。$X$ の閉集合 $A$ であって $A\cap Y = B$ となるものを取り、この $A$ と $y$ に対して連続関数 $f : X\to [0, 1]$ を $A\subset f^{-1}(0)$ かつ $f(y) = 1$ に取ります。制限 $g := f|_{Y}$ が $B\subset g^{-1}(0)$ かつ $g(y) = 1$ を満たし、$Y$ の完全正則性が従います。
(2) 自明です。
(3) 完全正規空間 $X$ とその部分空間 $Y$ を取ります。$Y$ の閉集合 $B$ を取ります。$X$ の閉集合 $A$ であって $A\cap Y = B$ となるものを取り、この $A$ に対して連続関数 $f : X\to [0, 1]$ を $A = f^{-1}(0)$ に取ります。制限 $g := f|_{Y}$ が $B = g^{-1}(0)$ を満たし、命題2.3.35と合わせて $Y$ の完全正規性が従います。
(4) 自明です。
(5) Urysohnの補題 $($定理2.3.26$)$ からそうです。
(6) 自明です。
(7) (3)と完全正規空間が正規空間であることから従います。
以上です。
Tietzeの拡張定理の証明については上手い連続関数列の一様収束極限として拡張を構成する証明がやはり単純な気もする。そちらの証明については例えば[河澄 トポロジーの基礎]の上巻を参照。
参考文献
更新履歴