Euclid空間 $\R^{m}$ の部分集合上で定義された実数を値に取る関数 $($単に実関数ともいう$)$ の連続性について整備します。与えられた関数が連続かどうかを定式化するための基本的な方法として
の $3$ つが挙げられますが、ここでは $\varepsilon\text{-}\delta$ 論法を軸に、残りをその同値な言い換えとして紹介することにします。
まず、与えられた実関数 $f : A\to \R$ について、定義域の点 $x\in A$ を特定の点 $a\in \R^{m}$ に「近づけていった」ときに関数の値 $f(x)$ もある値 $b\in [-\infty, +\infty]$ に「近づいていく」ということを極限として定式化します。$1$ つ注意として、点 $x$ を $A$ の中から $a\in \R^{m}$ に近づけていくためには $a$ が $A$ の触点である $($どんなに近くにも $A$ の点が存在する$)$ 必要があり、つまり、$a\in \overline{A}$ が極限を考えるための前提条件とします。
部分集合 $A\subset \R^{m}$ を定義域とする実関数 $f : A\to \R$ を考え、$a\in \overline{A}$ とする。
極限の性質として明らかなこと、極限が関数の局所的な値のみで $($極限の存在も含めて$)$ 決定されることを確かめておきます。
$A\subset \R^{m}$ を部分集合、$f : A\to \R$ を実関数とし、$a\in \overline{A}$ に対して極限 $\underset{x\to a}{\lim}f(x) = b\in [-\infty, \infty]$ が成立しているとする。
(1) $b, c\in \R$ の場合に $b = c$ であることを示します。極限の定義より任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある正実数 $\delta > 0$ が存在し、$\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $|f(x) - b|, |f(x) - c| < \dfrac{\varepsilon}{2}$ となりますが、$a\in \overline{A}$ より実際にそのような点を取ることで $|b - c| < \varepsilon$ が従います。よって、$\varepsilon$ 任意より $b = c$ です。
あとは $b\in \R$ のときに $c = \pm\infty$ とはなりえないことは、および、$b = \pm\infty$ のときに $b = c$ であることを示せばよいですが、それは容易です。
(2) 明らか。
(3) $b\in \R$ の場合のみ示します。$b = \pm\infty$ の場合も同様に証明されます。正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。$f$ についての極限が $b$ であることから、正実数 $\delta > 0$ であって $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $|f(x) - b| < \varepsilon$ を満たすものが存在します。必要であれば $\delta < r$ となるように小さく取り直せば、その $\delta$ について $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $|g(x) - b| = |f(x) - b| < \varepsilon$ が成立します。よって、$\underset{x\to a}{\lim}g(x) = b$ です。
次は極限の定義の言い換えを与えます。
$A\subset \R^{m}$ を部分集合、$f : A\to \R$ を実関数とし、$a\in \overline{A}$ を取る。また、$b\in \R$ とする。このとき、次は同値である。
また、$b = \pm\infty$ の場合でも(1)と(3)は同値である(2)も少し修正すれば同値になりますがさぼります。。
$b\in \R$ の場合のみ示します。
(1) ⇒ (1) 正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。(1)からある正実数 $\delta > 0$ が存在し、$\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $|f(x) - b| < \varepsilon$ が成立します。つまり、任意の $x\in A\cap O_{\delta}(a)$ に対して $f(x)\in (b - \varepsilon, b + \varepsilon)$ であり、$A\cap O_{\delta}(a)\subset f^{-1}((b - \varepsilon, b + \varepsilon))$ が成立します。
(2) ⇒ (2) $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を $A$ の点列であって点 $a\in \overline{A}$ に収束するものとし、正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。(2)よりある正実数 $\delta > 0$ が存在して $A\cap O_{\delta}(a)\subset f^{-1}((b - \varepsilon, b + \varepsilon))$ が成立します。この $\delta$ に対して非負整数 $N$ であって $n > N$ ならば $x_{n}\in A\cap O_{\delta}(a)$ となるものを取れば、$n > N$ に対して $f(x_{n})\in (b - \varepsilon, b + \varepsilon) \ (\Leftrightarrow |f(x_{n}) - b| < \varepsilon)$ です。よって、$\underset{n\to\infty}{\lim}f(x_{n}) = b$ です。
(3) ⇒ (3) 対偶を示します。極限 $\underset{x\to a}{\lim}f(x) = b$ は成立していないとします。このとき、ある正実数 $\varepsilon > 0$ が存在し、任意の正実数 $\delta > 0$ に対して $\|x - a\| < \delta$ かつ $|f(x) - b|\geq \varepsilon$ となる $x\in A$ が存在します。各正整数 $n\in \N_{+}$ に対して $\delta = n^{-1}$ としてそのような $x_{n}$ を取るとすれば点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N_{+}}$ は $a\in \overline{A}$ に収束し、常に $|f(x_{n}) - b|\geq \varepsilon$ を満たします。よって、この数列に対して $\underset{n\to\infty}{\lim}f(x_{n}) = b$ は成立しません。
部分集合 $A\subset \R^{m}$ で定義されて実関数にはその定数倍 $($スカラー倍ともいう$)$ や関数どうしの和や積が定義されます。実数 $t\in \R$ と実関数 $f : A\to \R$ に対して $f$ の $t$ 倍 $tf$ が\[tf : A\to \R : x\mapsto t\cdot f(x)\]により定義され、実関数 $f, g : A\to \R$ に対してその和 $f + g$ と積 $fg$ が\[f + g : A\to \R : x\mapsto f(x) + g(x),\]\[fg : A\to \R : x\mapsto f(x)g(x)\]により定義されます。そして、実関数の極限はこれらの演算に関して次を満たします。
$A\subset \R^{m}$ を部分集合とする。実関数 $f, g : A\to \R$ は点 $a\in \overline{A}$ に対して極限\[\lim_{x\to a}f(x) = b, \ \lim_{x\to a}g(x) = c\]を持ち、$b, c\in [-\infty, +\infty]$ とするとき、次が成立する。ただし、それぞれの右辺は定義されていることは仮定する。
(1) 容易です。
(2) $a\in \overline{A}$ に収束する点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を取ります。命題1.8.4より $\underset{n\to\infty}{\lim}f(x_{n}) = b$, $\underset{n\to\infty}{\lim}g(x_{n}) = c$ であり、$b + c$ が定義されていることから和と極限の可換性 $($命題1.5.16$)$ を用いて\[\lim_{n\to\infty}(f + g)(x_{n}) = \lim_{n\to\infty}f(x_{n}) + \lim_{n\to\infty}g(x_{n}) = b + c\]です。再び命題1.8.4より $\underset{x\to a}{\lim}(f + g)(x)$ です。
(3) (2)と同じです。
(4) (3)と同じです。より $f\equiv 1$ の場合に示せばよいですが、これも(2)と同様にして分かります。
関数の連続性を定義します。
いま、各点における連続性を単に極限の存在から定義したので、極限の定義の言い換え $($命題1.8.4$)$ から直ちに各点での連続性の定義の言い換えが得られます。そして、関数自体の連続性についてもそれに近い次の形で言い換えが成立します。
実関数 $f : A\to \R$ について次は同値である。
(1) ⇒ (2) $V$ を $\R$ の開集合とします。各点 $a\in f^{-1}(V)$ に対して $(f(a) - \varepsilon_{a}, f(a) + \varepsilon_{a})\subset V$ となる正実数 $\varepsilon_{a} > 0$ を固定し、この $\varepsilon_{a}$ に対して正整数 $\delta_{a} > 0$ であって $x\in A\cap O_{\delta_{a}}(a)$ ならば $|f(x) - f(a)| < \varepsilon_{a}$ となるものを取ります。このとき、各 $a\in f^{-1}(V)$ に対して $A\cap O_{\delta_{a}}(a)\subset f^{-1}(V)$ なので\[A\cap\left(\bigcup_{a\in f^{-1}(V)}O_{\delta_{a}}(a)\right) = \bigcup_{a\in f^{-1}(V)}(A\cup O_{\delta_{a}}(a))\subset f^{-1}(V)\]が従い、明らかに逆の包含関係も成立するので $A\cap\left(\bigcup_{a\in f^{-1}(V)}O_{\delta_{a}}(a)\right) = f^{-1}(V)$ です。よって、$U = \bigcup_{a\in f^{-1}(V)}O_{\delta_{a}}(a)$ が欲しかった開集合です。
(2) ⇒ (3) $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を $A$ の点列であってある点 $a\in A$ に収束するものとし、正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。仮定よりあるある開集合 $U$ が存在して $A\cap U = f^{-1}((f(a) - \varepsilon, f(a) + \varepsilon))$ が成立します。$O_{\delta}(a)\subset U$ となるような正実数 $\delta > 0$ を固定します。この $\delta$ に対して非負整数 $N$ であって $n > N$ ならば $x_{n}\in A\cap O_{\delta}(a)$ となるものを取れば、$n > N$ において $f(x_{n})\in (f(a) - \varepsilon, f(a) + \varepsilon)$ です。よって、$\underset{n\to\infty}{\lim}f(x_{n}) = f(a)$ です。
(3) ⇒ (1) $a\in A$ を固定します。$a$ に収束する任意の $A$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ に対して仮定より極限 $\underset{n\to\infty}{\lim}f(x_{n}) = f(a)$ が成立するので、命題1.8.4より $f$ は $a$ において連続です。$a\in A$ は任意なので $f$ は連続です。
区間 $J\subset \R$ において定義された実関数 $f : J\to \R$ が点 $a\in J$ において右連続であるとは極限\[\lim_{x\to a, \ a\leq x}f(x)\]が存在することと定めます。これは、$($$a$ が区間の右側端点でなければ、$)$ 右極限 $\underset{x\to a + 0}{\lim}f(x)$ が存在して極限値が $f(a)$ に等しいことと同値です。$J$ の各点で右連続であれば単に実関数 $f$ は右連続といいます。同様に、$f$ が点 $a\in J$ において左連続であることは極限\[\lim_{x\to a, \ x\leq a}f(x)\]が存在することと定めます。
また、基本的事実として、点 $a\in J$ において連続であることと $a$ において右連続かつ左連続であることとは同値になります。
命題1.8.5から直ちに連続関数のスカラー倍や連続関数どうしの和・積がまた連続関数を与えることが従います。つまり、連続関数の空間 $C(A)$ はそれらの操作に関して閉じており、写像\[\R\times C(A)\to C(A) : (t, f)\mapsto tf,\]\[C(A)\times C(A)\to C(A) : (f, g)\mapsto f + g,\]\[C(A)\times C(A)\to C(A) : (f, g)\mapsto fg\]が定まります。
$A\subset \R^{m}$ とする。
実係数多項式 $f(x) = \sum_{k = 0}^{n}a_{k}x^{k}$ により定義される関数 $f : \R\to \R : x\mapsto f(x)$ は連続です。まず、$f(x) = x$ の場合の連続性ですが、これは各 $a\in \R$ について、任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して $|x - a| < \delta := \varepsilon$ ならば $|f(x) - a| = |x - a| < \varepsilon$ なのでよいです。よって、命題1.8.9から $f(x) = x^{k}$ の場合、$f(x) = a_{k}x^{k}$ の場合、$f(x) = \sum_{k = 0}^{n}a_{k}x^{k}$ の場合と順に連続性が確かめられます。
また、直接評価によっても連続性を示すことができます。$f(x) = \sum_{k = 0}^{n}a_{k}x^{k}$ について、各 $a\in \R$ での連続性を示せば十分です。$M := \max\{|a_{0}|, \dots, |a_{n}|, (|a| + 1)^{n - 1}\}$ とおきます。このとき、任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して $|x - a| < \min\{\varepsilon/(nM)^{2}, 1\}$ ならば\begin{eqnarray*}|f(x) - f(a)| & = & \left| \sum_{k = 0}^{n}a_{k}(x^{n} - a^{n})\right| \leq \sum_{k = 1}^{n}|a_{k}||x - a|\left|\sum_{i = 0}^{k - 1}x^{i}a^{k - 1 - i}\right| \\& \leq & \sum_{k = 1}^{n}|a_{k}||x - a|\cdot k\cdot (|a| + 1)^{n - 1}\leq n^{2}M^{2}|x - a| < \varepsilon\end{eqnarray*}であり、$a$ において連続です。
部分集合 $A\subset \R^{m}$ 上の実連続関数全体からなる空間 $C(A)$ や、実係数多項式関数全体からなる空間はいずれも実線型空間の定義の条件 $($定義1.7.1$)$ を満たし、実線型空間になります。
空でないコンパクト部分集合において定義された実連続関数は最大値と最小値を持ち、特に有界であることが分かります。
$K\subset \R^{m}$ を空でないコンパクト集合とする。このとき、$K$ において定義された実連続関数 $f : K\to \R$ は最大値と最小値を持つ。
定理1.7.29より $K$ は有界閉集合として示せばよいです。また、最大値についてのみ示します。最小値でも一緒です。
$s = \sup f(K)$ とします。まずは $s\neq +\infty$ を背理法より示します。$s = +\infty$ とします。このとき、$K$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in \N}$ であって常に $f(x_{n}) > n$ となるものを取ることができ、$K$ が有界なのでBolzano–Weierstrassの定理 $($定理1.7.13$)$ を用いてある点 $a\in \R^{m}$ に収束する部分列 $\{x_{n_{k}}\}_{k\in \N}$ が取れます。$K$ が閉集合なので $a\in K$ であり、$f$ の連続性から $\underset{k\to\infty}{\lim}f(x_{n_{k}}) = f(a)\in \R$ が成立しますが、これは点列の構成から $\underset{k\to\infty}{\lim}f(x_{n_{k}}) = +\infty$ であることに矛盾です。よって、$s = \sup f(K)\in \R$ です。
よって、$K$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in \N_{+}}$ であって常に $s - n^{-1} < f(x_{n})\leq s$ を満たすものを取ることができます。その部分列であってある点 $a$ に収束するもの $\{x_{n_{k}}\}_{k\in\N}$ を取れば $f$ の連続性より $s = \underset{k\to\infty}{\lim}f(x_{n_{k}}) = f(a)$ です。よって、$f(K)$ の上限に一致する値を取る点 $a$ が得られ、つまり、この $a$ において $f$ は最大値を取ります。
$K\subset \R^{m}$ をコンパクト集合とする。このとき、$K$ において定義された実連続関数 $f : K\to \R$ は有界である。
連結部分集合上で定義された実連続関数に対して次の中間値の定理が示されます。これは連結部分集合の連続像がまた連結部分集合になるという一般的に成立する事実の特別な場合です。
$A\subset \R^{m}$ を連結部分集合とし $f : A\to \R$ を実連続関数とする。また、$a, b\in A$ を任意に固定する。$f(a)$ と $f(b)$ の間にある任意の実数 $d$ に対してある $A$ の点 $c$ が存在して $f(c) = d$ が成立する。
$f(a) < f(b)$ として $[f(a), f(b)]\subset f(A)$ を示せばよいです。ある $f(a) < d < f(b)$ であって $d\notin f(A)$ となるものが存在したとします。$U = f^{-1}((-\infty, d))$, $V = f^{-1}((d, +\infty))$ とします。このとき、$a\in U$, $b\in V$ であり $A\cap U\neq \varnothing$, $A\cap V\neq \varnothing$ です。また、$U\cap V = \varnothing$ も明らかです。そして、$f^{-1}(d) = \varnothing$ なので $A\subset f^{-1}(\R\setminus \{d\}) = U\cup V$ です。これは $A$ が連結であることに矛盾します。よって、$[f(a), f(b)]\subset f(A)$ です。
$J$ を実数体 $\R$ の部分集合、$f : J\to \R$ を連続関数とする。次が成立する。
関数の終域として $\R^{l}$ を考えることも多く、そのような関数をベクトル値関数と呼びます。このベクトル値関数に対しては次のようにして極限や連続性を定義します。$($もちろん、$l = 1$ の場合には実関数として考えてきたものに一致します$)$
$A$ をEuclid空間 $\R^{m}$ の部分集合、$f : A\to \R^{l}$ をベクトル値関数とする。
ベクトル値関数についての極限や連続性は実関数の場合と全く同じように整備されます。
$A\subset \R^{m}$ を部分集合、$f : A\to \R^{l}$ を関数とし、$a\in \overline{A}$ を取る。また、$b\in \R^{l}$ とする。このとき、次は同値である。
命題1.8.4と全く同じです。
部分集合 $A\subset \R^{m}$ 上で定義されたベクトル値関数 $f : A\to \R^{l}$ について次は同値である。
命題1.8.7と全く同じです。
極限や連続性に関するもう一つの重要な言い換えとして、成分ごとの表示に関するものがあります。$\R^{l}$ を終域とするベクトル値関数 $f : A\to \R^{l}$ は $l$ 個の実関数 $f_{1}, \dots, f_{l} : A\to \R$ の組 $f = (f_{1}, \dots, f_{l})$ として表され各 $f_{k}$ は具体的には第 $k$ 成分への射影 $\pr_{k} : \R^{l}\to \R$ との合成 $\pr_{k}\circ f$ です。、以下が成立します。
$A\subset \R^{m}$ を部分集合、$f : A\to \R^{l}$ をベクトル値関数とし、$a\in \overline{A}$ を取る。また、$b = (b_{1}, \dots, b_{l})\in \R^{l}$ とする。このとき、次は同値である。
(1) ⇒ (1) 正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。仮定よりある正実数 $\delta > 0$ であって $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $\|f(x) - b\| < \varepsilon$ が成立するものが取れます。第 $k$ 成分について、$\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $|f_{k}(x) - b_{k}| < \|f(x) - b\| < \varepsilon$ なので $\underset{x\to a}{\lim}f_{k}(x) = b_{k}$ が成立します。
(2) ⇒ (2) 正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。仮定よりある正実数 $\delta > 0$ であって $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して\[|f_{k}(x) - b_{k}| < \dfrac{\varepsilon}{\sqrt{m}} \ (1\leq {}^{\forall}k\leq m)\]となるものが取れます。このとき、$\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して\[\|f(x) - b\| = \left(\sum_{k = 1}^{m}(f_{k}(x) - b)^{2}\right)^{1/2} < \varepsilon\]であり、$\underset{x\to a}{\lim}f(x) = b$ が成立します。
命題1.8.17より、次の同値性を示せばよいです。
しかし、これは $\R^{l}$ の点列の収束性及び収束値を成分ごとに考えてもよかったこと $($命題1.7.11$)$ から明らかです。$($最初の証明でした議論は、実は既にしたことでした。$)$
ベクトル値関数 $f : A\to \R$ について次は同値である。
$A$ の各点で命題1.8.19を適用すればよいです。
連続関数どうしの合成がまた連続関数になることを見ておきます。比較のため、連続性の定義に従った証明と開集合系による言い換えに従った証明の $2$ 通りを書いておきます。
$A$ を $\R^{n}$ の部分集合、$B$ を $\R^{m}$ の部分集合とする。ベクトル値連続関数 $f : A\to \R^{m}$, $g : B\to \R^{l}$ が $f(A)\subset B$ を満たしているとき、その合成として定義されるベクトル値関数 $g\circ f : A\to \R^{l}$ は連続である。
$a\in A$ とし、正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。$g$ の $f(a)\in B$ における連続性より、正実数 $\delta' > 0$ であって $\|y - f(a)\| < \delta'$ を満たす任意の $y\in B$ に対して $\|g(y) - g(f(a))\| < \varepsilon$ となるものが取れます。この $\delta'$ に対して $f$ の $a\in A$ における連続性から、ある正実数 $\delta > 0$ であって $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ に対して $\|f(x) - f(a)\| < \delta'$ となるものが取れます。この $\delta$ に対して $\|x - a\| < \delta$ を満たす任意の $x\in A$ は $\|f(x) - f(a)\| < \delta'$ と $f(x)\in B$ を満たすので $\|g\circ f(x) - g\circ f(a)\| < \varepsilon$ を満たします。よって、$g\circ f$ は連続です。
$W\subset \R^{l}$ を開集合とし、開集合 $U\subset \R^{n}$ であって $A\cap U = (g\circ f)^{-1}(W)$ となるものを構成すればよいです。まず、$g$ の連続性から $\R^{m}$ の開集合 $V$ であって $B\cap V = g^{-1}(W)$ となるものが取れます。また、$f$ の連続性から $\R^{n}$ の開集合 $U$ であって $A\cap U = f^{-1}(V)$ となるものが取れます。このとき、\[(g\circ f)^{-1}(W) = f^{-1}(g^{-1}(W)) = f^{-1}(B\cap V) = f^{-1}(V) = A\cap U\]です。
まずは、Euclid空間 $\R^{m}$ の部分集合 $A$ に対し、$\R^{m}$ の各点から $A$ までの距離を表す関数が連続であることを示します。
空でない部分集合 $A\subset \R^{m}$ を取り、写像 $f : \R^{m}\to \R$ を\[f(x) := d(x, A)\]により定める。$f$ は連続であり、$f^{-1}(0) = \overline{A}$ が成立する。従って、任意の部分集合 $A\subset \R^{m}$ と正実数 $r > 0$ に対してその $r$ 開近傍 $O_{r}(A)$ は開集合であり、$r$ 閉近傍 $D_{r}(A)$ は閉集合である。
各点 $a\in \R^{m}$ での連続性を確かめます。正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。正実数 $\delta := \varepsilon$ について $\|x - a\| < \delta\Rightarrow |f(x) - f(a)| < \varepsilon$ が成立することを示せば十分です。$\|x - a\| < \delta$ とします。任意の $y\in A$ に対して $\|x - y\| < \|x - a\| + \|a - y\|$ であることから $\{\|x - y\|\mid y\in A\}$ の下界が $\{\|x - a\| + \|a - y\|\mid y\in \R\}$ の下界でもあることに注意して\[f(x) = d(x, A) = \inf\{\|x - y\|\mid y\in A\}\leq \|x - a\| + d(a, A)\leq \|x - a\| + f(a)\]であり、また、$\|a - y\| - \|x - a\|\leq \|x - y\|$ であることから同様に\[f(a) - \|x - a\| = d(a, A) - \|x - a\|\leq \inf\{\|x - y\|\mid y\in A\} = d(x, A) = f(x)\]です。以上より $\|x - a\| < \delta$ となる $x$ に対して\[|f(x) - f(a)|\leq \|x - a\| < \delta = \varepsilon\]であり、$f$ は $a$ において連続です。つまり、$f$ は連続です。
定義から容易に分かるように、$f(x, A) = 0$ であることと任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して $\|x - y\| < \varepsilon$ となる $y\in A$ が存在すること、つまり、$x$ が $A$ の触点であることとは同値なので、$f^{-1}(0) = \overline{A}$ です。
$f$ の連続性が分かったので、$O_{r}(A) = f^{-1}((-\infty, r))$ は開集合であるし、$D_{r}(A) = f^{-1}((-\infty, r])$ は閉集合です。
系として、まずは非交叉な閉集合と有界閉集合の間の距離が正値であること、それらが開集合で「分離」できることを示します。
$A$ を $\R^{m}$ の閉集合、$K$ を $\R^{m}$ の有界閉集合とし、$A\cap K = \varnothing$ とする。このとき、$d(A, K) > 0$ であり、$\R^{m}$ のある開集合 $U, V$ であって $A\subset U$, $K\subset V$, $U\cap V = \varnothing$ を満たすものが存在する。
$A, K$ の一方でも空集合である場合は自明なので、$A, K\neq \varnothing$ とします。連続写像 $f : \R^{m}\to \R : x\mapsto d(x, A)$ を考えます。$f$ の連続性から $f|_{K}$ はある点 $k\in K$ において最小値 $l$ を取ります。$l = d(k, A) = 0$ とすると $k\in \overline{A}\cap K = A\cap K$ となって矛盾するので $l > 0$ です。また、$d(A, K) = l$ が容易に分かります。そこで、$U, V$ をそれぞれ $A, K$ の $l/3$ 開近傍に取れば主張の条件を満たす開集合系になります。$A\subset U$ と $K\subset V$ は明らかです。$U\cap V = \varnothing$ を示します。$x\in U$, $y\in V$ とします。$a\in A$ と $k\in K$ をそれぞれ $\|x - a\|, \|y - k\| < l/3$ となるように取るとき$d(x, A) < l/3$ なので、$a\in A$ であって $d(x, A)\leq d(x, a) < l/3$ を満たすものが存在します。$k$ についても同じです、\[0 < l/3 = l - (l/3 + l/3)\leq \|a - k\| - (\|x - a\| + \|y - k\|)\leq \|x - y\|\]です。よって、常に $x\neq y$ なので $U\cap V = \varnothing$ です。
さらに、非交叉な閉集合どうしは開集合で分離可能です。$($正規性といいます。一般の位相空間における正規性は2.3.3節で紹介します。$)$
$A, B$ を $\R^{m}$ の閉集合とし、$A\cap B = \varnothing$ とする。このとき、$\R^{m}$ のある開集合 $U, V$ であって $A\subset U$, $B\subset V$, $U\cap V = \varnothing$ を満たすものが存在する。
各正整数 $n\in \N_{+}$ に対して $A_{n} := A\cap D_{n}$, $B_{n} := B\cap D_{n}$ と定め、系1.8.25により正実数\[r_{n} := \min\{d(A_{n}, B), d(A, B_{n}), 1\}\]を取ります$1$ を加えたのは $A_{n} = B_{n} = \varnothing$ の場合に $r_{n} = +\infty$ となるのを防ぐため。。$A_{n}$ の $r_{n}/3$ 開近傍を $U_{n}$ とし、$B_{n}$ の $r_{n}/3$ 開近傍を $V_{n}$ とします。$U := \bigcup_{n\in \N_{+}}U_{n}$ と $V := \bigcup_{n\in \N_{+}}V_{n}$ が $A, B$ を分離する開集合であること、つまり、$A\subset U$, $B\subset V$, $U\cap V = \varnothing$ を満たすことを示します。
$A\subset U$, $B\subset V$ であることは明らかなので、$U\cap V = \varnothing$ を示せばよいですが、そのためには任意の $k, l\in \N_{+}$ に対して $U_{k}\cap V_{l} = \varnothing$ を示せば十分です。対称性から $k\leq l$ として問題ないです。$x\in U_{k}$, $y\in V_{l}$ とします。$a\in A_{k}$ を $\|x - a\| < r_{k}/3$ となるように取り、$b\in B_{l}$ を $\|y - b\| < r_{l}/3$ となるように取ります。このとき、\[0 < r_{k}/3\leq r_{k} - (r_{k}/3 + r_{l}/3)\leq \|a - b\| - (\|x - a\| + \|y - b\|)\leq \|x - y\|\]であり$A_{n}, B_{n}$ が単調に大きくなっていくことから $r_{n}$ が広義単調減少であり、$k\leq l$ から $r_{k}\geq r_{l}$ です。$\|a - b\|\geq r_{k}$ は $a\in A_{k}$, $b\in B$ と思えば $r_{k}$ の定義から分かります。、常に $x\neq y$ なので $U_{k}\cap V_{l} = \varnothing$ です。
以上です。
なし。
参考文献
更新履歴