homotopy群を構成し、その基本的性質についてまとめます。予備知識 2.10節にまとめたhomotopyに関する準備を認めます。記号に関して、$C(X, Y)$ で位相空間 $X$ から $Y$ への連続写像全体からなる空間、$[X, Y]$ でそのhomotopy集合 $($homotopyによる同値関係に関する商集合$)$ を表すことにします。基点付き空間の間の基点を保つ連続写像全体からなる空間は $C(X, Y)_{0}$ と書き、そのhomotopy集合は $[X, Y]_{0}$ と書くことにします。空間対や基点付き空間対についても近い形で表します。また、ここでは $I$ により単位区間 $[0, 1]$ を表し、$I^{n}$ で $n$ 次元単位超立方体、$\partial I^{n}$ でその境界、つまり\[\{(t_{1}, \dots, t_{n})\in I^{n}\mid 1\leq{}^{\exists}k\leq n \text{ s.t. }t_{k}\in \{0, 1\}\}\]を表すことにします。
$n$ 次元単位超立方体 $I^{n}$ から基点付き空間 $(X, x_{0})$ への連続写像であって境界 $\partial I^{n}$ を基点 $x_{0}$ に移すもの $u, v\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対する積 $v\cdot u\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ を第 $1$ 成分の向きにつなぎ合わせた\[(v\cdot u)(t_{1}, \dots, t_{n}) = \left\{\begin{array}{ll}u(2t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2}) \\v(2t_{1} - 1, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]により定義しますこれを $u\cdot v$ と定めるテキストも多いです。。
これにより定まる写像\[C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))\times C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))\to C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))\]がhomotopy集合 $[(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]$ 上の二項演算\[[(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]\times [(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]\to [(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})] : ([v], [u])\mapsto [v]\cdot [u]: = [v\cdot u],\]を誘導して群構造を与えることを確かめます。
これから用いる記号として、連続写像 $u\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対してその逆 $\overline{u}$ を\[\overline{u}(t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) = u(1 - t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n})\]により定義し、基点 $x_{0}$ を値に取る定値写像を $e_{x_{0}}$ もしくは単に $e$ と表すことにします。
$(X, x_{0})$ を基点付き空間とする。このとき、次が成立する。
注意として、この証明中のhomotopyは常に $C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ におけるhomotopyを指します。
(1) 示すべきことは以下の通りです。
(i) $u_{0}\sim u_{1}, v_{0}\sim v_{1}\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対して $v_{0}\cdot u_{0}\sim v_{1}\cdot u_{1}$ を示せばよいです。$u_{0}$ を $u_{1}$ につなぐhomotopy $F : I^{n}\times I\to X$ と $v_{0}$ を $v_{1}$ につなぐhomotopy $G : I^{n}\times I\to X$ を取ります。homotopy $H : I^{n}\times I\to X$ を\[H(t_{1}, \dots, t_{n}, s) = \left\{\begin{array}{ll}F(2t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}, s) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2})\\G(2t_{1} - 1, t_{2}, \dots, t_{n}, s) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]により定めるとき、これが $H_{0} = v_{0}\cdot u_{0}$ を $H_{1} = v_{1}\cdot u_{1}$ につなぐhomotopyです$F(\{1\}\times I^{n - 1}\times I) = G(\{0\}\times I^{n - 1}\times I) = \{x_{0}\}$ から $H$ は連続に定まっています。また、$F(\partial I^{n}\times I) = G(\partial I^{n}\times I) = \{x_{0}\}$ から $H(\partial I^{n}\times I) = \{x_{0}\}$ であり、$H$ は $C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ におけるhomotopyになっています。。
(ii) $u, v, w\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対して $w\cdot (v\cdot u)\sim (w\cdot v)\cdot u$ であることを示せばよいです。これらを具体的に表すと\[(w\cdot (v\cdot u))(t_{1}, \dots, t_{n}) = \left\{\begin{array}{ll}u(4t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{4})\\v(4t_{1} - 1, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{4} \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2}) \\w(2t_{1} - 1, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.,\]\[((w\cdot v)\cdot u)(t_{1}, \dots, t_{n}) = \left\{\begin{array}{ll}u(2t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2})\\v(4t_{1} - 2, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq \tfrac{3}{4}) \\w(4t_{1} - 3, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{3}{4} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]なので、homotopy $H : I^{n}\times I\to X$ として\[H(t_{1}, \dots, t_{n}, s) = \left\{\begin{array}{ll}u(\tfrac{4}{1 + s}t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1 + s}{4})\\v(4t_{1} - 1 - s, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1 + s}{4} \leq t_{1}\leq \tfrac{2 + s}{4}) \\w(1 - \tfrac{4}{2 - s}(1 - t_{1}), t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{2 + s}{4} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]を考えればよいです。
(iii) homotopy類 $[e]$ が単位元であることを示しますが、そのためには $u\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対して $e\cdot u\sim u\cdot e\sim u$ であることを示せばよいです。$e\cdot u\sim u$ についてはhomotopy $H : I^{n}\times I\to X$ を\[H(t_{1}, \dots, t_{n}, s) = \left\{\begin{array}{ll}u(\tfrac{2}{1 + s}t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1 + s}{2})\\x_{0} & (\tfrac{1 + s}{2} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]に取ればよく、$u\cdot e\sim u$ についても同様に取れます。
(iv) $[u]\in [(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]$ に対して $[\overline{u}]$ が逆元になることを示します。そのためには $\overline{u}\cdot u$ と $u\cdot \overline{u}$ が $e$ にhomotopicであることを示せばよいです。$\overline{u}\cdot u\sim e$ はhomotopy $H : I^{n}\times I\to X$ を\[H(t_{1}, \dots, t_{n}, s) = \left\{\begin{array}{ll}u(2t_{1} - s, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{s}{2} \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2})\\\overline{u}(2t_{1} - 1 + s, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq 1 - \tfrac{s}{2}) \\x_{0} & (\text{otherwise})\end{array}\right.\]に取ればよいです$t_{1} = \tfrac{1}{2}$ において $u(2t_{1} - s, t_{2}, \dots, t_{n}) = \overline{u}(2t_{1} - 1 + s, t_{2}, \dots, t_{n})$ であること、$t_{1} = \tfrac{s}{2}$ において $u(2t_{1} - s, t_{2}, \dots, t_{n}) = x_{0}$ であること、$t_{1} = 1 - \tfrac{s}{2}$ において $\overline{u}(2t_{1} - 1 + s, t_{2}, \dots, t_{n}) = x_{0}$ であることから $H$ は実際にhomotopyになっており、明らかに $H_{0} = \overline{u}\cdot u$ を $H_{1} = e$ につないでいます。。$u\cdot \overline{u}\sim e$ も同様です。
(2) $u, v\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に対して $v\cdot u\sim u\cdot v$ を確認すればよいです。具体的に書き下しませんが、次のようなhomotopyを順につなげれば $v\cdot u$ を $u\cdot v$ につなぐhomotopyが定まります。$v\cdot u : I\times I\times I^{n - 2}\to X$ について、$u$ は定義域の $[0, \tfrac{1}{2}]\times I \times I^{n - 2}$ に、$v$ は $[\tfrac{1}{2}, 1]\times I \times I^{n - 2}$ に対応していることに注意。
$n\geq 1$ とする。基点付き空間 $(X, x_{0})$ に対して群 $[(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]$ を $n$ 次homotopy群と呼び $\pi_{n}(X, x_{0})$ と書く。通常、$n = 1$ の場合の $\pi_{1}(X, x_{0})$ を基本群と呼ぶ。
基点付き空間 $(X, x_{0})$, $(Y, x_{0})$ の間の基点を保つ連続写像 $f : X\to Y$ が与えられたとき、誘導写像\[f_{*} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(Y, y_{0}) : [u]\mapsto [f\circ u]\]は準同型を与えます。
基点付き空間 $(X, x_{0})$, $(Y, x_{0})$ の間の基点を保つ連続写像 $f : X\to Y$ による誘導写像\[f_{*} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(Y, y_{0}) : [u]\mapsto [f\circ u]\]は $n\geq 1$ において準同型である。
任意の $[u], [v]\in [(I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0})]$ に対して\[f_{*}([v]\cdot [u]) = f_{*}([v\cdot u]) = [f\circ (v\cdot u)] = [(f\circ v)\cdot (f\circ u)] = f_{*}([v])\cdot f_{*}([u])\]です。従って、$f_{*}$ は準同型です。
このことと基点付き空間の恒等写像がhomotopy群の恒等写像を誘導することにより、基点付き空間にその $n \, (\geq 1)$ 次homotopy群、基点を保つ連続写像に上記の誘導準同型を対応させることで基点付き空間の圏 $\Top_{*}$ から群の圏 $\Grp$ への共変関手\[\pi_{n} : \Top_{*}\to \Grp\]が得られます。これを $n$ 次homotopy関手と呼びます。$n = 0$ においては集合の圏 $\Set$ への共変関手として $0$ 次homotopy関手が定まります。
また、誘導準同型 $f_{*}$ は $f$ の代表するhomotopy類 $[f]$ のみで決まること $($予備知識 2.10.2.2節$)$ に注意すれば基点付き空間のhomotopy圏 $\hTop_{*}$ から群の圏 $\Grp$ もしくは集合の圏 $\Set$ への共変関手 $\pi_{n}$ を与えます。これも $n$ 次homotopy関手と呼びます。
そして、基点付き空間のhomotopy圏 $\hTop_{*}$ においてhomotopy同値写像の代表する類が同型射であることからただちに次が従います。
基点付き空間の間のhomotopy同値写像 $f\in C(X, Y)_{0}$ およびそのhomotopy類 $[f]\in [X, Y]_{0}$ は各 $n\geq 1$ に対して $n$ 次homotopy群の間の同型\[f_{*} = [f]_{*} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(Y, y_{0})\]を誘導する。つまり、homotopy群の同型類は基点付き空間のhomotopy型により決まる。
直積空間のhomotopy群は成分ごとに考えることができます。
$n\geq 1$ とする。基点付き空間 $(X, x_{0})$, $(Y, y_{0})$ に対して自然な同型\[\pi_{n}(X\times Y, (x_{0}, y_{0}))\cong \pi_{n}(X, x_{0})\times \pi_{n}(Y, y_{0})\]が成立する。
射影による誘導写像 $(\pr_{X})_{*} : [S^{n}, X\times Y]_{0}\to [S^{n}, X]_{0}$, $(\pr_{Y})_{*} : [S^{n}, X\times Y]_{0}\to [S^{n}, Y]_{0}$ はそれぞれ準同型なのでその対 $((\pr_{X})_{*}, (\pr_{Y})_{*}) : [S^{n}, X\times Y]_{0}\to [S^{n}, X]_{0}\times [S^{n}, Y]_{0}$.も準同型です。この準同型が全単射であることは容易であり、同型です。
$X$ を位相空間とします。$X$ の部分集合 $A, B$ に対して $C((I, 0, 1), (X, A, B))$ を簡単に $P(X; A, B)$ と表すことにします。さらに、$A = \{x_{0}\}$, $B = \{x_{1}\}$ の場合には $P(X; x_{0}, x_{1})$ と書くことにします。$P(X; x_{0}, x_{1})$ の元は特別に点 $x_{0}$ を点 $x_{1}$ につなぐ道 $($path$)$ と呼ばれます。点 $x_{0}$ を点 $x_{1}$ につなぐ道 $u : I\to X\in P(X; x_{0}, x_{1})$ と点 $x_{1}$ を点 $x_{2}$ につなぐ道 $v : I\to X\in P(X; x_{1}, x_{2})$ に対し、その積 $v\cdot u$ を\[(v\cdot u)(t) = \left\{\begin{array}{ll}u(2t) & (0\leq t\leq \tfrac{1}{2}) \\v(2t - 1) & (\tfrac{1}{2}\leq t\leq 1)\end{array}\right.\]により定めます。つまり、このような道の繋ぎ合わせによって写像\[P(X; x_{0}, x_{1})\times P(X; x_{1}, x_{2})\to P(X; x_{0}, x_{2}) : (u, v)\mapsto v\cdot u\]を定めます。また、道 $u\in P(X; x_{0}, x_{1})$ に対してその始点と終点を入れ換えた道\[I\to X : t\mapsto u(1 - t)\in P(X; x_{1}, x_{0})\]を $\overline{u}$ により表すとします。
$P(X; A, B)$ のhomotopy集合を $\Pi(X; A, B)$ により表すことにします。$\Pi(X; x_{0}, x_{1})$ の元は道のhomotopy類と呼ばれます。上記の道の積はhomotopy集合についての積\[\Pi(X; x_{0}, x_{1})\times \Pi(X; x_{1}, x_{2})\to \Pi(X; x_{0}, x_{2}) : ([u], [v])\mapsto [v]\cdot [u] := [v\cdot u]\]を誘導します。
位相空間 $X$ に対し、$X$ の各点 $x_{0}$ を対象、$\Pi(X; x_{0}, x_{1})$ を射とする圏を基本亜群と呼び $\Pi(X)$ により表す。
$X$ の基本亜群 $\Pi(X)$ から圏 $\mathcal{C}$ への共変関手 $\mathcal{S}$ を $\mathcal{C}$ に値に持つ $X$ 上の局所系と呼ぶ。例えば、$\mathcal{C}$ が $R$ 加群の圏であれば $\mathcal{C}$ を値にもつ局所系 $\mathcal{S}$ を $R$ 加群の局所系というように呼ぶ。
重要なのは、任意の $[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$ に対して $[\overline{u}]\in \Pi(X; x_{1}, x_{0})$ が逆射になることから基本亜群 $\Pi(X)$ における射は全て同型射になっていることです一般に、小圏 $($ここでは対象全体が集合をなす圏のこと$)$ であって射が全て同型射であるものを亜群と呼びます。。従って、局所系 $\mathcal{S} : \Pi(X)\to \mathcal{C}$ が与えられたとき、任意の $[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$ に対して射 $\mathcal{S}[u] : \mathcal{S}x_{0}\to \mathcal{S}x_{1}$ は同型射になります。$R$ 加群などの局所系においては各点に対応する対象の同型類が各弧状連結成分上で一意に定まります。
また、$R$ 加群などの局所系 $\mathcal{S}$ において $x_{1} = x_{0}$ の場合を考えると、これは各 $[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{0})$ は $\mathcal{S}x_{0}$ の自己同型を与えており、$\pi(X, x_{0}) = \Pi(X; x_{0}, x_{0})$ に注意すれば基本群からの準同型\[\rho_{\mathcal{S}, x_{0}} : \pi_{1}(X, x_{0})\to \Aut(\mathcal{S}x_{0}) : [u]\mapsto \mathcal{S}[u]\]が定まります。これを局所系 $\mathcal{S}$ の $x_{0}$ を基点とするmonodromy表現や単に表現と呼びます[服部 位相幾何学]では特性準同型と呼んでいます。。monodromy表現が基点によらず自明な局所系は単純な局所系と呼びます。
連続写像 $f : X\to Y$ が与えられたとき、基本亜群 $\Pi(X)$ の対象 $x\in X$ に対して $f(x)\in Y$ を、射 $\gamma\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$ に対してその代表元の押し出しの代表する道のhomotopy類 $f_{*}\gamma\in \Pi(Y, f(x_{0}), f(x_{1}))$ を対応させる関手 $f_{*} : \Pi(X)\to \Pi(Y)$ が誘導されます。この誘導関手は自然同値の違いを除いてhomotopy不変です。
$f_{0}, f_{1} : X\to Y$ を互いにhomotopicな連続写像とする。このとき、これらの連続写像により誘導される基本亜群の間の射 $(f_{0})_{*}, (f_{1})_{*} : \Pi(X)\to \Pi(Y)$ は自然同値である。
$f_{0}$ を $f_{1}$ につなぐhomotopy $H : X\times I\to Y$ を固定し、その $\{x\}\times I$ への制限を $H_{x}$ で表すとします。各 $x\in X$ に対して道のhomotopy類 $[H_{x}]\in \Pi(Y; f_{0}(x), f_{1}(x))$ を対応させることで自然同値変換が得られることを確認します。まずは自然変換になっていることですが、$X$ における道のhomotopy類 $\gamma\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$ に対し、図式
の可換性をいえばよく、これは $\gamma$ の代表元 $u\in P(X; x_{0}, x_{1})$ を取れば連続写像\[H\circ (u\times \Id_{I}) : I\times I\to X\times I\to Y\]から $H_{x_{1}}\cdot (f_{0}\circ u)\sim (f_{1}\circ u)\cdot H_{x_{0}}$ が従うのでよいです。そして、各 $[H_{x}]$ は同型射なので自然同値変換になっています。
以下では位相空間 $X$ 上の局所系として、各点にその点を基点とするhomotopy群を対応させるものが構成されること、従って、弧状連結な位相空間においてはhomotopy群の同型類が基点の取り方によらず定まることを確認します。ここでは簡単のために $\pi_{n}(X, x_{0}) = [S^{n}, X]_{0}$ と考えます射影 $I^{n}\to S^{n}$ で引き戻して書き直せばhomotopy群のもとの定義にしたがった議論になります。。
$[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$, $[a]\in \pi_{n}(X, x_{0})$ に対して $[u] * [a]\in \pi_{n}(X, x_{1})$ を以下の手順で構成します。
これがwell-definedであることを確かめるには $[u], [a]$ の代表元と拡張 $H$ の取り方によらないことを示せばよいです。$u\overset{F}{\sim} u'$, $a\overset{G}{\sim} a'$ と $H, H'$ を上記のように取ったとします。連続写像 $K : (S^{n}\times I\times \partial I)\cup ((S^{n}\times \{0\})\cup (\{*\}\times I))\times I\to X$ を\[K(x, s, t) = \left\{\begin{array}{ll}H(x, s) & ((x, s, t)\in S^{n}\times I\times \{0\}) \\H'(x, s) & ((x, s, t)\in S^{n}\times I\times \{1\}) \\G(x, s) & ((x, s, t)\in S^{n}\times \{0\}\times I) \\F(s, t) & ((x, s, t)\in \{*\}\times I\times I)\end{array}\right.\]により定め、これをCW対 $(S^{n}\times I, (S^{n}\times \partial I)\cup (\{*\}\times I))$ のhomotopy拡張性質により連続写像 $K : S^{n}\times I\times I\to X$ に拡張第 $2$ 成分と第 $3$ 成分を入れ換えると分かりやすいと思います。することで $H_{1}$ を $H'_{1}$ につなぐ基点を保つhomotopyが得られ、$[H_{1}] = [H'_{1}]$ となります。
この構成から次のことは明らかでしょう。
$n\geq 1$ とし、$X$ を位相空間とする。任意の $[u]\in \Pi(X, x_{0}, x_{1})$, $[v]\in \Pi(X; x_{1}, x_{2})$, $[a], [b]\in \pi_{n}(X, x_{0})$ に対して次が成立する。ただし、$[e_{x_{0}}^{1}]$ は基本群 $\pi_{1}(X, x_{0})$ の単位元とする。
(3)は各 $[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$ に対して $[u] * {} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})$ が準同型であることを意味し、(1)と(2)は局所系 $\Pi(X)\to \Grp$ が $x\mapsto \pi_{n}(X, x)$, $[u]\mapsto [u] * {}$ という対応により得られることを意味します。
系として次が従います。
位相空間 $X$ のhomotopy群の同型類は基点の属する弧状連結成分で決まる。特に、弧状連結空間のhomotopy群の同型類は基点の取り方によらない。
従って、弧状連結空間のhomotopy群について、その同型類にのみ興味のある場合には単に $\pi_{n}(X)$ と書くことができます。$($$\pi_{n}(X)$ という記法は単に基点の省略として用いることもあります。$)$
さらに、系として次が従います。
$X, Y$ を互いにhomotopy同値な弧状連結空間とする。任意の $n\geq 1$ と点 $x_{0}\in X$, $y_{0}\in Y$ に対して同型\[\pi_{n}(X, x_{0})\cong \pi_{n}(Y, y_{0})\]が成立する。従って、弧状連結な基点付き空間に対するhomotopy群の同型類は基点を無視した位相空間としてのhomotopy型により決まる。
homotopy同値写像 $f\in C(X, Y)$ とそのhomotopy逆写像 $g\in C(Y, X)$ を取ります。系3.1.11より $y_{0} = f(x_{0})$, $x_{1} = g(y_{0})$ として誘導準同型 $g_{*} : \pi_{n}(Y, y_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})$ が同型であることを示せばよいです。そして、そのためにはこの $g_{*}$ が全単射であることを示せば十分です。
恒等写像 $\Id_{X}$ を $g\circ f$ につなぐhomotopy $K : X\times I\to X$ を固定します。$K$ の $\{x_{0}\}\times I$ への制限として $x_{0}$ を $x_{1}$ につなぐ道 $u\in P(X; x_{0}, x_{1})$ を定めます。任意の $[a]\in \pi_{n}(X, x_{0})$ に対してその代表元 $a$ を $g\circ f\circ a\in C((S^{n}, *), (X, x_{1}))$ につなぐhomotopy $H : S^{n}\times I\to X$ であってその $\{*\}\times I$ への制限が $u$ に一致するものが $H(p, t) = K(a(p), t)$ により得られます。これは $(g\circ f)_{*}([a]) = [u] * [a]$ を意味し、つまり、誘導準同型 $(g\circ f)_{*} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})$ は同型です。よって、誘導準同型 $g_{*} : \pi_{n}(Y, y_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})$ は全射です。同様に、$y_{1} = f(x_{1})$ とおいて誘導準同型 $(f\circ g)_{*} : \pi_{n}(Y, y_{0})\to \pi_{n}(Y, y_{1})$ は同型であり、誘導準同型 $g_{*} : \pi_{n}(Y, y_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})$ は単射です。以上により $g_{*}$ は同型です。
上記のようにhomotopy群による局所系を構成しましたが、そのmonodromy表現 $\pi_{1}(X, x_{0})\to \Aut(\pi_{n}(X, x_{0}))$ はただちに群作用\[\pi_{1}(X, x_{0})\times \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(X, x_{0}) : ([u], [a])\mapsto [u] * [a]\]を与えます。弧状連結空間に対してはこの群作用に関する軌道空間が自由homotopy集合 $[S^{n}, X]$ に自然に一致することが確かめられます。
弧状連結な基点付き空間 $(X, x_{0})$ に対して基点を忘れることによる自然な写像\[f_{x_{0}} : \pi_{n}(X, x_{0}) = [S^{n}, X]_{0}\to [S^{n}, X]\]を考える。この $f_{x_{0}}$ は全射であり、各自由homotopy類 $\beta\in [S^{n}, X]$ に対してその逆像 $f_{x_{0}}^{-1}(\beta)$ は基本群 $\pi_{1}(X, x_{0})$ の $\pi_{n}(X, x_{0})$ への作用による軌道に一致する。
以下のことを示せばよいです。
(i) 自由homotopy類 $\beta\in [S^{n}, X]$ に対してその代表元 $b\in C(S^{n}, X)$ を取ります。$b$ が $S^{n}$ の基点を $x_{1}$ に移すとすれば $b\in C((S^{n}, *), (X, x_{1}))$ であり、$[b]\in \pi_{n}(X, x_{1})$ です。$X$ の弧状連結性から道 $v\in P(X; x_{1}, x_{0})$ を取り、$[v] * [b]\in \pi_{n}(X, x_{0})$ の代表元 $a\in C((S^{n}, *), (X, x_{0}))$ を取ります。$a$ は $b$ に基点のことを無視してhomotopicであるので $f_{x_{0}}([a]) = f_{x_{1}}([b]) = \beta$ が得られます。
(ii) $[u] * [a]$ の構成から明らかです。
(iii) $f_{x_{0}}([a]) = f_{x_{0}}([a'])$ から基点を保つとは限らないhomotopy $H : S^{n}\times I\to X$ であって $a$ を $a'$ につなぐものを取ります。道 $u\in P(X; x_{0}, x_{0})$ を $H$ の $\{*\}\times I$ への制限として定めれば $[a'] = [u] * [a]$ です。
特に、$n$ 次homotopy群による局所系が単純な場合、この群作用は自明なため写像 $f_{x_{0}} : \pi_{n}(X, x_{0})\to [S^{n}, X]$ は全単射になります。従って、各 $x_{0}, x_{1}\in X$ に対してこの全単射を通じた同型\[f_{x_{1}}^{-1}\circ f_{x_{0}} : \pi_{n}(X, x_{0})\to \pi_{n}(X, x_{1})\]が得られ、このことにより自由homotopy集合 $[S^{n}, X]$ に各 $f_{x}$ が同型となるような群構造を一意に定めることができます。
まとめると、空でない弧状連結空間の $n$ 次homotopy群による局所系が単純ならば、各点を基点とする $n$ 次homotopy群の間には自由homotopy集合を経由した標準的な同型が存在し、自由homotopy集合 $[S^{n}, X]$ 自体に標準的に群構造を定めることができる。そして、単に同型類しか表さなかった $\pi_{n}(X)$ という表記に基点の取り方によらず定まる具体的な群 $[S^{n}, X]$ としての意味付けが可能ということになります。
任意の $[u]\in \Pi(X; x_{0}, x_{1})$, $[a]\in \pi_{1}(X, x_{0})$ に対して $[u] * [a] = [u\cdot a\cdot \overline{u}]$ です。従って、基本群の $1$ 次homotopy群、つまり、基本群自身への作用は共役作用に一致します。
以下、$n\geq 1$ に対して超立方体 $I^{n}$ の部分空間 $(I^{n - 1}\times \{0\})\cup (\partial I^{n - 1}\times I)$ を $J^{n - 1}$ により表すとします。$n\geq 2$ において、三対 $(I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1})$ から基点付き空間対 $(X, A, x_{0})$ への連続写像 $u, v\in C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ に対する積 $v\cdot u$ を\[(v\cdot u)(t_{1}, \dots, t_{n}) = \left\{\begin{array}{ll}u(2t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) & (0 \leq t_{1}\leq \tfrac{1}{2}) \\v(2t_{1} - 1, t_{2}, \dots, t_{n}) & (\tfrac{1}{2} \leq t_{1}\leq 1)\end{array}\right.\]により定義し、homotopy集合 $[(I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0})]$ 上の二項演算を $[u], [v]\in [(I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0})]$ に対して $[v]\cdot [u] = [v\cdot u]$ として定めます。
また、連続写像 $u\in C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ に対してその逆 $\overline{u}$ を\[\overline{u}(t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n}) = u(1 - t_{1}, t_{2}, \dots, t_{n})\]により定義します。通常のhomotopy群と同様に、$[(I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0})]$ は $n\geq 2$ において群になります。
$(X, A, x_{0})$ を基点付き空間対とする。このとき、次が成立する。
通常と全く同じです。
$n\geq 2$ とする。基点付き空間対 $(X, A, x_{0})$ に対して群 $[(I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0})]$ を $n$ 次相対homotopy群と呼び $\pi_{n}(X, A, x_{0})$ と書く。
homotopy群により局所系を構成したように、相対homotopy群による局所系も構成できます。$[u]\in \Pi(A; x_{0}, x_{1})$, $[a]\in \pi_{n}(X, A, x_{0})$ に対して $[u] * [a]\in \pi_{n}(X, A, x_{1})$ を次の手順で構成します。ただし、$\pi_{n}(X, A, x_{0}) = [(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]_{0}$ と考えます。
これがwell-definedであることを確かめるに $[u], [a]$ の代表元と拡張 $H$ の取り方によらないことを示します。$u\overset{F}{\sim} u'$, $a\overset{G}{\sim} a'$ と $H, H'$ を上記のように取ったとします。連続写像 $K : (D^{n}\times I\times \partial I)\cup ((D^{n}\times \{0\})\cup (\{*\}\times I))\times I\to X$ を\[K(x, s, t) = \left\{\begin{array}{ll}H(x, s) & ((x, s, t)\in D^{n}\times I\times \{0\}) \\H'(x, s) & ((x, s, t)\in D^{n}\times I\times \{1\}) \\G(x, s) & ((x, s, t)\in D^{n}\times \{0\}\times I) \\F(s, t) & ((x, s, t)\in \{*\}\times I\times I)\end{array}\right.\]により定めます。$K$ が $(S^{n - 1}\times I\times \partial I)\cup ((S^{n - 1}\times \{0\})\cup (\{*\}\times I))\times I$ において $A$ に値を取ることに注意し、まずは $S^{n - 1}\times I\times I$ において $A$ に値を取るような連続写像 $K : (D^{n}\times I\times \partial I)\cup ((D^{n}\times \{0\})\cup (S^{n - 1}\times I))\times I\to X$ に拡張します。これをさらに連続写像 $K : D^{n}\times I\times I\to X$ へ拡張すれば $H_{1}$ を $H'_{1}$ につなぐ $C((D^{n}, S^{n - 1}, *), (X, A, x_{1}))$ におけるhomotopyが得られ、$[H_{1}] = [H'_{1}]$ となります。
この演算について次が容易に確かめられ、よって、空間対 $(X, A)$ に対して $A$ 上の局所系 $\Pi(A)\to \Grp$ であって各点にその点を基点とする相対homotopy群を対応させるものが得られます。
$n\geq 2$ とし、$(X, A)$ を空間対とする。任意の $[u]\in \Pi(A, x_{0}, x_{1})$, $[v]\in \Pi(A; x_{1}, x_{2})$, $[a], [b]\in \pi_{n}(X, A, x_{0})$ に対して次が成立する。ただし、$[e_{x_{0}}^{1}]$ は基本群 $\pi_{1}(X, x_{0})$ の単位元とする。
従って、相対homotopy群 $\pi_{n}(X, A, x_{0})$ の同型類は基点 $x_{0}$ の属す $A$ の弧状連結成分により決定し、特に、$A$ が弧状連結ならば基点の取り方によりません。
また、$A$ の基本群 $\pi_{1}(A, x_{0})$ の相対homotopy群 $\pi_{n}(X, A, x_{0})$ への作用が考えられますが、この作用による軌道空間もまたhomotopy集合 $[(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]$ に自然に一致することが確かめられます。
基点付き空間対 $(X, A, x_{0})$ であって $A$ が弧状連結であるものに対して基点を忘れることによる自然な写像\[f_{x_{0}} : \pi_{n}(X, A, x_{0}) = [(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]_{0}\to [(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]\]を考える。この $f_{x_{0}}$ は全射であり、各homotopy類 $\beta\in [(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]$ に対してその逆像 $f_{x_{0}}^{-1}(\beta)$ は基本群 $\pi_{1}(A, x_{0})$ の $\pi_{n}(X, A, x_{0})$ への作用による軌道に一致する。
そして、相対homotopy群による局所系が単純な場合、この群作用は自明なので写像 $f_{x_{0}} : \pi_{n}(X, A, x_{0})\to [(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]$ は全単射になり、homotopy集合 $[(D^{n}, S^{n - 1}), (X, A)]$ に標準的に群構造を与えることができます。
包含写像 $\iota_{n - 1} : I^{n - 1}\to I^{n} : (t_{1}, \dots, t_{n - 1})\mapsto (t_{1}, \dots, t_{n - 1}, 1)$ を固定します。連続写像 $u\in C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ に対してその $\iota_{n - 1}$ による引き戻し $u\circ \iota_{n - 1}$ は空間対 $(I^{n - 1}, \partial I^{n - 1})$ から $(A, x_{0})$ への連続写像と考えられます。そして、この対応による写像\[\partial : C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))\to C((I^{n - 1}, \partial I^{n - 1}), (A, x_{0})) : u\mapsto u\circ \iota_{n - 1}\]は $n\geq 1$ において自然な写像\[\partial_{*} : \pi_{n}(X, A, x_{0})\to \pi_{n - 1}(A, x_{0}) : [u]\mapsto [u\circ \iota_{n - 1}]\]を誘導し、これは $n\geq 2$ において準同型になります$(v\cdot u)\circ \iota_{n - 1} = (v\circ \iota_{n - 1})\cdot (u\circ \iota_{n - 1})$.。この $\partial_{*}$ を境界準同型や連結準同型と呼びます。
基点付き空間対に対してはhomotopy完全系列と呼ばれる空間対のhomology完全系列に類似した完全系列が得られます。
基点付き空間対 $(X, A, x_{0})$ に対して次の完全系列が存在する。\begin{align*}\cdots\to \pi_{n}(A, x_{0}) &\xrightarrow{i_{*}} \pi_{n}(X, x_{0})\xrightarrow{j_{*}} \pi_{n}(X, A, x_{0})\xrightarrow{\partial_{*}} \pi_{n - 1}(A, x_{0})\to \\\cdots &\to \pi_{1}(X, x_{0})\xrightarrow{j_{*}} \pi_{1}(X, A, x_{0})\xrightarrow{\partial_{*}} \pi_{0}(A, x_{0})\xrightarrow{i_{*}} \pi_{0}(X, x_{0})\end{align*}ただし、$i_{*}, j_{*}$ は包含写像 $A\xrightarrow{i} X\xrightarrow{j} (X, A)$ による誘導準同型である。また、末尾の群準同型になっていない部分について、定値写像の代表するhomotopy類を基点として与え、その基点の逆像を核 $\Ker$ として考え、$\Img = \Ker$ であることにより完全性を定義する。
以下のことを示せばよいです。
(i) 各 $[w]\in \pi_{n + 1}(X, A, x_{0})$ に対して $w : I^{n}\times I\to X$ の第 $n + 1$ 成分を固定して得られる連続写像は $C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ に属しているので、$w$ が定値写像 $e_{x_{0}}$ を $i\circ \partial(w) = i\circ w\circ \iota_{n}$ へつなぐ $C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ におけるhomotopyです。よって、$i_{*}\circ \partial_{*}([w]) = [i\circ \partial(w)] = [e_{x_{0}}]$ であり、$\Img \partial_{*}\subset \Ker i_{*}$ です。
各 $[u]\in \Ker i_{*}$ に対し、$i\circ u$ は $C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$ において定値写像 $e_{x_{0}}$ にhomotopicです。$e_{x_{0}}$ を $i\circ u$ につなぐhomotopy $w : I^{n}\times I\to X$ は $C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ に属すので $[w]\in \pi_{n + 1}(X, A, x_{0})$ を定め、また、$\partial(w) = u$ を満たすので $\partial_{*}([w]) = [u]$ です。従って $\Ker i_{*}\subset \Img \partial_{*}$ です。
(ii) 各 $[u]\in \pi_{n}(A, x_{0})$ に対して定値写像 $e_{x_{0}}$ を $j\circ i\circ u$ につなぐ $C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ におけるhomotopy\[H : I^{n}\times I\to X :(t_{1}, \dots, t_{n}, u)\mapsto u(t_{1}, \dots, t_{n - 1}, ut_{n})\]が取れるので $j_{*}\circ i_{*}([u]) = [j\circ i\circ u] = [e_{x_{0}}]$ です。従って、$\Img i_{*}\subset \Ker j_{*}$ です。
各 $[v]\in \Ker j_{*}$ に対し、$j\circ v$ は $C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ において定値写像 $e_{0}$ にhomotopicであるので $j\circ v$ を $e_{x_{0}}$ につなぐhomotopy $H : I^{n}\times I\to X$ を取り、homotopy $K : I^{n}\times I\to X$ を\[K : I^{n}\times I\to X : (t_{1}, \dots, t_{n}, s)\mapsto \left\{\begin{array}{ll}H(t_{1}, \dots, t_{n - 1}, t_{n}, 2s(1 - t_{n})) & (0\leq s\leq \tfrac{1}{2})\\H(t_{1}, \dots, t_{n - 1}, 1 - 2(1 - s)(1 - t_{n}), 1 - t_{n}) & (\tfrac{1}{2}\leq s\leq 1)\end{array}\right.\]により定めれば $K_{0} = v$, $K_{1}\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (A, x_{0}))$ であり式は追わずに図3.1.4を見たほうがいいです。$H$ は $s = 0$ および $t_{n} = 1$ 以外の面と各辺に対応する部分を基点 $x_{0}$ に移し、$s = 0$ の面は $X$ に、$t_{n} = 1$ の面は $A$ に移します。そして、各 $K_{s}$ は $(t_{n}, s) = (1, 0)$ で表される辺を含む平面による切断面への $H$ の制限となるように定義されています。、$u = K_{1}$ に対して $i_{*}([u]) = [i\circ u] = [v]$ です。従って、$\Ker j_{*}\subset \Img i_{*}$ です。
(iii) 各 $[v]\in \pi_{n}(X, x_{0})$ に対して $\partial(j\circ v) = e_{x_{0}}$ なので $\partial_{*}\circ j_{*}([v]) = [\partial(j\circ v)] = [e_{x_{0}}]$ です。従って、$\Img \partial_{*}\subset \Ker j_{*}$ です。
各 $[w]\in \Ker \partial_{*}$ に対し、$\partial(w) = w\circ \iota_{n - 1}$ は $C((I^{n - 1}, \partial I^{n - 1}), (A, x_{0}))$ において定値写像 $e_{x_{0}}$ にhomotopicであり、$\partial(w)$ を $e_{x_{0}}$ につなぐhomotopy $H : I^{n - 1}\times I\to A$ を用いて $C((I^{n}, \partial I^{n}, J^{n - 1}), (X, A, x_{0}))$ におけるhomotopy\[K : I^{n}\times I\to X : (t_{1}, \dots, t_{n}, s)\mapsto \left\{\begin{array}{ll}w(t_{1}, \dots, t_{n - 1}, \tfrac{2}{1 + s}t_{n}) & (0\leq t_{n}\leq \tfrac{1 + s}{2})\\H(t_{1}, \dots, t_{n - 1}, \tfrac{2}{1 + s}t_{n} - 1) & (\tfrac{1 + s}{2}\leq t_{n}\leq 1)\end{array}\right.\]を構成すれば $K_{0}\in C((I^{n}, \partial I^{n}), (X, x_{0}))$, $K_{1} = w$ であり、$v = K_{0}$ に対して $j_{*}([v]) = [j\circ v] = [w]$ です。従って、$\Ker \partial_{*}\subset \Img j_{*}$ です。
以上です。
具体例は $($別ページで$)$ もう少し道具を準備してから紹介する予定です。
参考文献
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