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数学ノートについて
2.4 CW複体

ここでは位相幾何学における重要な対象であるCW複体を導入し、その基礎的な事実をまとめます。弱位相や位相空間の帰納極限に関する事実を用いますが、必要なことは予備知識 2.7.4節にまとめてあります。(弱位相や位相空間の帰納極限が商写像により記述できることと商写像の普遍性くらいを抑えておけば大体読めます。)

2.4.1 胞体複体
胞体複体

まずは位相空間における胞体と胞体複体の構造を定義します。

定義2.4.1
(胞体と特性写像)

$X$ を位相空間とする。$e$ を $X$ の部分集合とし、連続写像 $\varphi : D^{n}\to \overline{e}$ であって次の条件をみたすものが存在するとする。ただし、$D^{0}$, $\Int D^{0}$ は $1$ 点からなる空間と考える。

$\varphi(\partial D^{n})\subset \overline{e}\setminus e$.
制限 $\varphi|_{\Int D^{n}} : \Int D^{n}\to e$ が定まり同相写像である。

このとき、$e$ を胞体 $($cell$)$ と呼び、条件を満たす写像 $\varphi$ を胞体 $e$ の特性写像 $($characteristic map$)$ と呼ぶ。胞体 $e$ に対して一意に定まる非負整数 $n$ を胞体 $e$ の次元異なる次元の開球体が互いに同相ではないことから、確かに胞体の次元は胞体写像の取り方によらず一意に決まります。といい $\dim e$ と書く。胞体 $e$ はその次元 $n$ を明示したいときには $n$ 胞体と呼び $e^{n}$ のように表す。

定義2.4.2
(胞体複体)

$X$ をHausdorff空間とする。

(1) $X$ の胞体の族 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ であって次の条件を満たすものを $X$ の胞体分割と呼ぶ。
$X = \bigsqcup_{\lambda\in \Lambda}e_{\lambda}$.
各非負整数 $n$ に対して $X^{(n)} = \bigsqcup_{\dim e_{\lambda}\leq n}e_{\lambda}$ とおくとき、任意 $\lambda\in \Lambda$ に対して $\overline{e_{\lambda}}\setminus e_{\lambda}\subset X^{(\dim e_{\lambda} - 1)}$ が成立する。
また、$X$ と胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の対 $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体といい、単に $X$ とも表す。そして、条件中の $X^{(n)} = \bigsqcup_{\dim e_{\lambda}\leq n}e_{\lambda}$ を胞体複体 $X$ の $n$ 骨格と呼ぶ。混乱の恐れが無ければ単に $X^{n}$ と書くこともある。
(2) 胞体複体 $X$ に対してその胞体分割が局所有限な部分集合族であるとき、胞体複体 $X$ は局所有限であるという。また、胞体分割が有限族であるときは有限胞体複体という。
(3) 胞体複体 $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ に対して $\sup \{\dim e_{\lambda}\mid \lambda\in \Lambda\}$ を胞体複体 $X$ の次元と呼び $\dim X$ により表すここの $X$ はあくまでも胞体複体の意味であり、次元は胞体分割の取り方に依存します。$($この後で導入するCW複体になっている場合には位相構造で決まります。$)$

Hausdorff空間において特性写像は商写像になり、この性質のために胞体複体であることにHausdorff性を課しています。

補題2.4.3

Hausdorff空間 $X$ において、その胞体 $e$ の特性写像 $\varphi : D^{n}\to \overline{e}$ は全射である。特に、胞体 $e$ に対する特性写像の像はその取り方によらない。また、特性写像は商写像である。

証明

$D^{n}$ がコンパクト、$X$ がHausdorff空間なので $\Img \varphi$ は閉集合です。そして、特性写像の定義の条件よりもちろん $e\subset \Img \varphi\subset \overline{e}$ です。閉包 $\overline{e}$ は $e$ を含む最小の閉集合なので $\Img \varphi = \overline{e}$ です。商写像であることはコンパクト空間からHausdorff空間への連続全射が商写像であることから従います $($予備知識 命題2.7.24$)$。

部分胞体複体

部分胞体複体を次で定義します。

定義2.4.4
(部分胞体複体)

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体とする。胞体複体 $(A, \{e_{\mu}\}_{\mu\in M})$ が $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ の部分複体であるとは、$A$ が $X$ の部分空間かつ $A$ の胞体分割 $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が $X$ の胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の部分族であることをいう。

その特徴付けが次で与えられます。

命題2.4.5

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体とする。部分空間 $A\subset X$ と胞体分割の部分族 $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ について次は同値である。

(1) 対 $(A, \{e_{\mu}\}_{\mu\in M})$ は部分胞体複体である。
(2) $A = \bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}$ かつ任意の $\mu\in M$ に対して $\Cl_{X}(e_{\mu})\subset A$ が成立するここでは胞体 $e_{\mu}$ の $X$ における閉包と $A$ における閉包を区別してそれぞれ $\Cl_{X}(e_{\mu})$, $\Cl_{A}(e_{\mu})$ と表すことにします。
証明

(1) ⇒ (2) $A = \bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}$ は胞体複体の定義から明らです。また、各 $\mu\in M$ に対して胞体 $e_{\mu}$ の $A$ における特性写像 $\varphi_{\mu}$ を取ればそれは $X$ における特性写像でもあるので補題2.4.3より $\Cl_{X}(e_{\mu}) = \Img \varphi_{\mu} = \Cl_{A}(e_{\mu})\subset A$ です。

(2) ⇒ (1) まず、各 $\mu\in M$ に対して $e_{\mu}$ が $A$ における胞体になっていることですが、これは $e_{\mu}$ の $X$ における特性写像 $\varphi : D^{n}\to \Cl_{X}(e_{\mu})$ を $\Cl_{X}(e_{\mu})\subset A$ であることからそのまま $A$ における特性写像として取れるのでよいです。$(A, \{e_{\mu}\}_{\mu\in M})$ が胞体複体であるための条件として $A = \bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}$ は既に与えられているし、各 $\mu\in M$ に対して $\Cl_{A}(e_{\mu})\setminus e_{\mu}\subset A^{(\dim e_{\mu} - 1)}$ であることも $\Cl_{A}(e_{\mu})\setminus e_{\mu}\subset X^{(\dim e_{\mu} - 1)}$ と $A^{(\dim e_{\mu} - 1)} = X^{(\dim e_{\mu} - 1)}\cap A$ より従います。

系2.4.6

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体とする。

(1) その $n$ 骨格 $X^{(n)}$ は $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda, \ \dim e_{\lambda}\leq n}$ により部分胞体複体となる。
(2) 部分胞体複体の族 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in A}$ に対して和集合 $\bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}$ は部分胞体複体である厳密には、部分胞体複体の族 $\{(A_{\mu}, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda_{\mu}})\}_{\mu\in M}$ に対して $\left(\bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in \bigcup_{\mu\in M}\Lambda_{\mu}}\right)$ が部分胞体複体であるという主張です。
(3) 部分胞体複体の族 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に対して共通部分 $\bigcap_{\mu\in M}A_{\mu}$ は部分胞体複体である。
証明

命題2.4.5よりいずれも容易です。

胞体複体の直積には再び胞体複体の構造が定まります。

命題2.4.7

胞体複体 $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$, $(Y, \{e'_{\mu}\}_{\mu\in M})$ が与えられているとする。このとき、直積空間 $X\times Y$ は胞体分割 $\{e_{\lambda}\times e'_{\mu}\}_{(\lambda, \mu)\in\Lambda\times M}$ を持ち、これにより胞体複体となる。

証明

$X$ の $n$ 胞体 $e_{\lambda}$ と $Y$ の $m$ 胞体 $e'_{\mu}$ の直積 $e_{\lambda}\times e'_{\mu}$ が胞体になることは、それぞれの特性写像 $\varphi_{\lambda}, \varphi'_{\mu}$ の直積 $\varphi_{\lambda}\times \varphi'_{\mu} : D^{n + m}\cong D^{n}\times D^{m}\to X\times Y$ が特性写像であることから確かめられます。胞体分割になっていること、つまり、$X\times Y$ の直和分解を与えることと常に $\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\setminus (e_{\lambda}\times e'_{\mu}) \subset (X\times Y)^{(n + m - 1)}$ であることも容易です。

もちろん、直積空間上の胞体分割は一意ではないですが、特に断らなければここで具体的に取った胞体分割により胞体複体とみなすことにします。

胞体複体の例

いくつか胞体複体の例を挙げます。

例2.4.8
(胞体複体の例)

(a) $n$ 次元球面 $S^{n}$ は $0$ から $n$ 次元の胞体を各 $2$ つずつ持つ胞体分割を持ち、これにより胞体複体になります。実際、$S^{0} = \{-1, +1\}$ については $\{-1\}$ と $\{+1\}$ を $0$ 胞体とする胞体分割を持ち、以下帰納的に、$S^{n - 1}$ 上の胞体分割に $S^{n}$ の上半球面と下半球面を $n$ 胞体として加えることで $S^{n}$ の胞体分割を構成すればそのような胞体分割が得られます。
(b) $n$ 次元球面 $S^{n}$ は任意に固定した一点を $0$ 胞体、その補空間を $n$ 胞体とする胞体分割を持ち、これによっても胞体複体になります。
(c) $n$ 次元球体 $D^{n}$ はその内部を唯一の $n$ 胞体とし、境界に $S^{n - 1}$ の胞体分割を取ることで胞体複体になります。
(d) $n$ 次元トーラス $T^{n} = \overbrace{S^{1}\times \cdots\times S^{1}}^{n}$ は各 $S^{1}$ 成分に胞体複体の構造を与えておくことで直積としての胞体複体になります。例えば、$S^{1}$ に $0, 1$ 胞体を $1$ つずつ持つ胞体分割を与えていたとすれば、$T^{n}$ は $k$ 胞体をちょうど $\comb{n}{k}$ 個持ちます。
(e) 実数体 $\R$ において $\{\{n\}\}_{n\in\Z}\sqcup \{(n, n + 1)\}_{n\in\Z}$ は胞体分割を与えます。そして、この直積として $n$ 次元Euclid空間 $\R^{n}$ は格子状の胞体複体になります。
図2.4.1 : $S^{1}, S^{2}, D^{2}, T^{2}$ の胞体分割
2.4.2 CW複体
CW複体とその基本性質

CW複体を導入します。これは台とするHausdorff空間の位相構造を反映する胞体複体単に胞体複体というだけでは必ずしも位相構造を反映するとはいえず、そのことは任意のHausdorff空間 $X$ に対して $\{\{x\}\}_{x\in X}$ がその胞体分割を与えていることから了解されると思います。であり、応用上その性質を把握しておく。

定義2.4.9
(CW複体)

$X$ をHausdorff空間、$\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をその胞体分割とする。条件

(C) 任意の $x\in X$ に対し、ある有限部分胞体複体 $A$ が存在して $x\in A$ を満たす。$($closuer finite$)$
(W) $X$ の位相は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相に一致する。$($weak topology$)$

を満たすとき、胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ のことをCW分割といい、CW分割による胞体複体 $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体という。単に $X$ とも書く。

補足2.4.10
(基点付きCW複体)

CW複体 $X$ に対して基点 $x_{0}$ を与えて基点付きCW複体 $(X, x_{0})$ と考える場合はその $0$ 胞体のうちの $1$ 点を基点として取ります。

容易に分かるように、条件(C)は $X$ が有限部分胞体複体による閉被覆有限部分胞体複体は有限個の胞体の閉包の和集合であるので閉です。を持つことと同値です。そして、この条件(C)が成立している状況で次が成立します。

命題2.4.11

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を条件(C)を満たす胞体複体とする。次は同値である。

(1) $X$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相を持つ。$($つまり、条件(W)を満たす。$)$
(2) $X$ はその有限部分胞体複体全体からなる閉被覆 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に関する弱位相を持つ。
証明

各 $\mu\in M$ に対して $A_{\mu}$ を構成する胞体 $e_{\lambda}$ たちの添字全体からなる集合を $\Lambda_{\mu}$ とします。各 $\mu\in M$ について連続写像\[\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda_{\mu}}\overline{e_{\lambda}}\to A_{\mu}\]は商写像$\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda_{\mu}}$ は $A_{\mu}$ の有限閉被覆であるため。なので、連続写像\[\bigsqcup_{\mu\in M}\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda_{\mu}}\overline{e_{\lambda}}\xrightarrow{\varphi} \bigsqcup_{\mu\in M}A_{\mu}\xrightarrow{\psi} X\]について $\varphi$ は商写像であり、予備知識 命題2.7.16より $\psi$ が商写像であることと $\psi\circ \varphi$ が商写像であることとは同値になります。また、連続写像\[\bigsqcup_{\mu\in M}\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda_{\mu}}\overline{e_{\lambda}}\xrightarrow{\varphi'} \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}\overline{e_{\lambda}}\xrightarrow{\psi'} X\]について $\varphi'$ が商写像であることと $\varphi\circ \psi = \varphi'\circ \psi'$ であることから $\psi$ が商写像であることと $\psi'$ が商写像であることとが同値になります。これが主張の同値性でした。

命題2.4.12

$X$ をCW複体とする。

(1) その部分胞体複体 $A$ は閉集合である。
(2) その部分胞体複体 $A$ はCW複体である。
証明

$X$ の有限部分胞体複体全体からなる族を $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ としておきます。

(1) 任意の $\mu\in M$ に対して $A\cap A_{\mu}$ は有限部分胞体複体、従って閉集合になるので命題2.4.11より $A$ 自身が閉集合です。

(2) $A$ が条件(C)を満たすことは明らかです。条件(W)について、商写像 $p : \bigsqcup_{\mu\in M}A_{\mu}\to X$ の制限 $p : p^{-1}(A) = \bigsqcup_{\mu\in M}(A\cap A_{\mu})\to A$ は $A$ が閉集合なので商写像であり $($予備知識 命題2.7.19$)$、また、$\{A\cap A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ は重複を無視すれば $A$ の有限部分胞体複体全体からなるので $A$ はその有限部分胞体複体全体による閉被覆に関する弱位相を持ちます。よって、$A$ はCW複体です。

以下、CW複体における部分胞体複体のことを部分CW複体もしくは単に部分複体と呼ぶことにします。

系2.4.13

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体とする。

(1) その $n$ 骨格 $X^{(n)}$ は部分CW複体である。
(2) 部分CW複体の族 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に対して和集合 $\bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}$ は部分CW複体である。
(3) 部分CW複体の族 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に対して共通部分 $\bigcap_{\mu\in M}A_{\mu}$ は部分CW複体である。
証明

系2.4.6から明らか。

CW複体のコンパクト部分空間に関する補題を用意しておきます。

補題2.4.14

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体とする。次が成立する。

(1) 各胞体 $e_{\lambda}$ から一点 $y_{\lambda}$ を取ることで部分空間 $Y = \{y_{\lambda}\mid \lambda\in \Lambda\}$ を構成するとき、$Y$ は閉集合である。
(2) この $Y$ は離散空間である。
(3) $X$ のコンパクト部分空間 $K$ はある有限部分複体に含まれる。従って、ある骨格 $X^{(n)}$ に含まれる。
証明

(1) 各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $\overline{e_{\lambda}}\cap Y$ が $\overline{e_{\lambda}}$ の閉集合であることを示せばよいですが、$\overline{e_{\lambda}}$ を含む有限部分複体が存在することから $\overline{e_{\lambda}}\cap Y$ はHausdorff空間における有限集合、従って閉集合です。よって、$Y$ も閉集合です。

(2) 固定した $\lambda_{0}\in \Lambda$ に対して(1)と全く同様にして $Y\setminus \{y_{\lambda_{0}}\}$ が $X$ の閉集合であるので、$\{y_{\lambda_{0}}\}$ は $Y$ における開集合です。よって、$Y$ は離散空間です。

(3) $K$ と交わる胞体全体からなる部分族 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda'}$ が有限族であることを示せばよいです。各 $\lambda\in \Lambda'$ について一点 $y_{\lambda}\in e_{\lambda}\cap K$ を取ることで部分空間 $Y' = \{y_{\lambda}\mid \lambda\in \Lambda'\}$ を構成するとき、$Y'$ は $K$ の閉集合でありコンパクトですが、$Y'$ が離散空間であることから有限集合であることが従います。よって、$\Lambda'$ は有限集合となるので $K$ はある有限部分複体に含まれます。また、$K$ を含む有限部分複体の胞体の次元の最大値を $n$ とすれば $K$ は $X^{(n)}$ に含まれます。

次は具体的に与えた胞体複体がCW複体であることを確認する際に有用です。

命題2.4.15
(局所有限な胞体複体はCW複体)

局所有限な胞体分割を与えられた胞体複体 $X$ はCW複体である。

証明

条件(C)は容易に確かめられます念のため確認しておきます。各胞体 $e$ に対してそれを含む有限部分胞体複体を構成すればよいです。帰納法により示します。$\dim e = 0$ のときは明らか。$\dim e = n - 1$ まではよいとしたとき、$\dim e = n$ となる胞体 $e$ について、その閉包 $\overline{e}$ は胞体分割の局所有限性と $\overline{e}$ のコンパクト性から次元が $n - 1$ 以下の高々有限個の胞体と交わりますが、その交わる各胞体に対してそれを含む有限部分胞体複体を取り、それらと $\overline{e}$ の和集合を取れば $e$ を含む有限部分胞体複体が構成されます。。また、$X$ の閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ は局所有限なので $X$ はこの被覆に関する弱位相を持ちます $($予備知識 系2.7.36$)$。以上により $X$ はCW複体です。

命題2.4.16

CW複体 $X$ に対して次は同値である。

(1) $X$ の胞体分割は局所有限である。
(2) 各点 $x\in X$ に対して有限部分胞体複体 $A$ であって $x\in \Int A$ を満たすものが存在する。
(3) $X$ は局所コンパクトHausdorff空間である。
証明

(1) ⇒ (2) $x$ の開近傍 $U$ であって高々有限個の胞体としか交わらないものを取り、$U$ と交わる各胞体に対してそれを含む有限部分胞体複体たちを取り、それらの和集合を $A$ とすれば $x\in U\subset \Int A$ です。

(2) ⇒ (3) 各 $x\in X$ に対してそのコンパクト閉近傍として $x\in \Int A$ を満たす有限部分胞体複体 $A$ を取れるので $X$ は局所コンパクトHausdorff空間です。

(3) ⇒ (1) 固定した点 $x\in X$ に対してコンパクト閉近傍 $K$ を取れば補題2.4.14よりそれは高々有限個の胞体としか交わりません。よって、$X$ の胞体分割は局所有限です。

例2.4.17
(CW複体の例)

(a) 例2.4.8で挙げた $S^{n}, D^{n}, T^{n}, \R^{n}$ の胞体複体は局所有限なのでCW複体を与えます。
(b) $($無向$)$ グラフ $(V, E)$ はその各頂点を $0$ 胞体、各辺を $1$ 胞体とする $1$ 次元のCW複体として実現されます。具体的には、辺集合 $E$ で添字付けられた単位区間の直和 $\bigsqcup_{e\in E}I_{e}$ を各辺がどの頂点を結ぶかを表す写像 $\bigsqcup_{e\in E}\partial I_{e}\to V$ に従って離散位相を与えた頂点集合 $V$ に貼り合わせた空間がそうです。逆に、$1$ 次元のCW複体からグラフを構成することも容易です。これによる同一視から $1$ 次元のCW複体もグラフと呼ぶことがあります。
(c) 単位区間 $I = [0, 1]$ の胞体分割として $\{\{0\}\}\sqcup \{\{\tfrac{1}{n}\}\mid n\in \Np\}$ を $0$ 胞体全体とするようなものを与えるとき、この胞体分割に対して $I$ はCW複体ではありません。$I$ に被覆 $\{\{0\}\}\sqcup \{\{\tfrac{1}{n}\}\mid n\in \Np\}\sqcup \{[\tfrac{1}{n + 1}, \tfrac{1}{n}]\mid n\in \Np\}$ に関する弱位相を考えると位相空間として直和 $\{0\}\sqcup (0, 1]$ に等しいためです。

補足的な事実として、CW複体の次元の位相不変性を確認しておきます。これは次の補題からただちに従います。ただし、Euclid空間の空でない開集合をより低い次元のEuclid空間に埋め込むことができないという事実を認めます。(領域不変性定理と呼ばれる事実の系として確かめられます。時間できたらこちらも整備したいと思います。)

補題2.4.18

$X$ をCW複体とする。埋め込み $f : D^{n}\to X$ が存在するならば $\dim X\geq n$ が成立する。

証明

$A$ を $f(D^{n})$ を含む最小の部分CW複体とします。補題2.4.14より $k = \dim A$ は有界値です。また、制限 $f : D^{n}\to A$ も埋め込みです。$A$ の $k$ 胞体 $e$ を取ります。$A$ の最小性から $f(D^{n})\cap e\neq \varnothing$ です。$e$ は $A$ における開集合であり、制限 $g : f^{-1}(e)\cap \Int D^{n}\to e$ は $\R^{n}$ の空でない開集合から $\R^{k}$ への埋め込みを与えます。これは $k\geq n$ を意味し、$\dim X\geq n$ が従います。

命題2.4.19
(CW複体の次元の位相不変性)

CW複体 $X$ の次元 $\dim X$ はCW分割の取り方によらず位相構造のみで決定される。

証明

$n$ 胞体 $e^{n}$ が埋め込み $D^{n}\to e^{n}$ を受け付けることに注意すれば $\dim X$ は埋め込める閉球体の次元の上限に一致することが分かり、これはCW分割の取り方によりません。

CW複体の骨格からの帰納的な構成

CW複体 $(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ はその骨格による階層構造\[\varnothing = X^{(-1)}\subset X^{(0)}\subset X^{(1)}\subset X^{(2)}\subset\cdots \subset X^{(n)}\subset \cdots\]を持ちます。この階層構造に関する重要な事実として

各 $X^{(n)}$ は $X^{(n - 1)}$ と $n$ 次元球体 $D^{n}$ たちを特性写像の境界 $\partial D^{n} = S^{n - 1}$ への制限に従って貼り合わせた空間である。
位相空間として $X$ は包含写像により定まる帰納系の帰納極限 $\underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ に一致する。

ということが挙げられます。以下では胞体の族 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対してその $n$ 胞体全体に対応する添字集合を $\Lambda^{n}$ により表すことにします。

命題2.4.20

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体とする。

(1) 各 $\lambda\in \Lambda^{n}$ に対して胞体 $e_{\lambda}$ の特性写像 $\varphi_{\lambda} : D^{n}\to X$ を固定する。このとき、包含写像 $X^{(n - 1)}\to X^{(n)}$ と特性写像 $\varphi_{\lambda}$ たちの直和として定まる写像\[\varPhi_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda^{n}} D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{(n - 1)}\to X^{(n)}\]は商写像である。ただし、$D_{\lambda}^{n}$ は $n$ 次元単位球体である。従って、接着部分のみに注目すれば $X^{(n)}$ は連続写像\[\varPsi_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\partial D_{\lambda}^{n}\to X^{(n - 1)}\]により $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}$ と $X^{(n - 1)}$ を貼り合わせて得られる空間である。
(2) $X$ は骨格 $X^{(n)}$ たちの間の包含写像により定まる帰納系の帰納極限 $\underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ に一致する。
証明

(1) 次の可換図式を考えます。

まず、$X^{(n)}$ がCW複体であることここの各骨格がCW複体となることに条件(C)を使用しています。から $r\circ q$ は商写像であり、$r$ も商写像です。そして、コンパクト空間からHausdorff空間への連続全射が商写像であることから $p$ は商写像です。よって商写像どうしの合成 $\varPhi_{n} = r\circ p$ は商写像です。

(2) 次の可換図式を考えます。

縦の写像がいずれも商写像なのでその帰納極限 $Q = \underset{n}{\varinjlim}q_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}\overline{e_{\lambda}}\to \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ も商写像であり $($予備知識 定理2.7.44$)$、これが位相空間としての $X = \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ を意味します。

逆に、このような階層ごとの貼り合わせによって骨格 $X^{(n)}$ たちを構成していったとき、その帰納極限としてCW複体が得られます。もちろん、その貼り合わせ方が既に与えられていたCW複体をもとにしたものであればもとのCW複体自体が復元されます。

命題2.4.21

$X^{(-1)} = \varnothing$ とし、以下帰納的に $X^{(n)}$ を連続写像 $\varPsi_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\partial D_{\lambda}^{n}\to X^{(n - 1)}$ を用いて\[X^{(n)} = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\cup_{\varPsi_{n}}X^{(n - 1)}\]とすることで定義する。明らかな包含写像 $i_{nm} : X^{(n)}\to X^{(m)}$ により定まる帰納系の帰納極限 $X = \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ はCW複体である。

証明

集合レベルでは $X^{(n)} = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Int D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{(n - 1)}$ であり、$\Int D_{\lambda}^{n}$ を $X$ の胞体 $e_{\lambda}$ とすることで胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda = \bigsqcup_{n\in\N}\Lambda^{n}}$ が構成されます。商写像の各 $D_{\lambda}^{n}$ への制限が特性写像 $\varphi_{\lambda}$ です。この胞体分割により $X$ がCW複体になることを確かめるわけですが、そのためには

(i) $X$ がHausdorff空間であること。$($つまり、まずは実際に胞体複体になっていること。$)$
(ii) $X$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相を持つこと。
(iii) 各胞体 $e_{\lambda}$ に対してそれを含む有限部分胞体複体が存在すること。

を示せばよいです。

(i) 相異なる $2$ 点 $x, y\in X$ に対して分離する開集合 $U, V$ を構成します。$x\in e_{\lambda}^{n}$, $y\in e_{\mu}^{m}$ とします。対称性より $n\leq m$ としてもよく、まずはその状況で $X^{(m)}$ において $x, y$ を分離する開集合 $U_{m}, V_{m}$ を取ります$y$ の $e_{\mu}^{m} = \Int D_{\mu}^{m}$ におけるコンパクト閉近傍 $K$ であって $x$ を元に持たないものを取れば $X^{(m)}\setminus K$ と $\Int K$ が分離する開集合として取れます。。あとは一般に $X^{(k)}$ における互いに非交叉な開集合 $U_{k}, V_{k}$ が $X^{(k + 1)}$ における互いに非交叉な開集合 $U_{k + 1}, V_{k + 1}$ に拡張することを示せば全空間において $x, y$ を分離する開集合 $U = \bigcup_{k\geq m}U_{k}$, $V = \bigcup_{k\geq m}V_{k}$ が得られます。この拡張は各 $k + 1$ 胞体ごとに拡張することで可能であり、実際、接着写像 $\varphi_{\nu}|_{\partial D_{\nu}^{k + 1}} : \partial D_{\nu}^{k + 1}\to X^{(k)}$ による逆像として定まる $\partial D_{\nu}^{k + 1}$ の互いに非交叉な開集合 $(\varphi_{\nu}|_{\partial D_{\nu}^{k + 1}})^{-1}(U_{k}), (\varphi_{\nu}|_{\partial D_{\nu}^{k + 1}})^{-1}(V_{k})$ を $D_{\nu}^{n + 1}$ における互いに非交叉な開集合 $U_{k + 1, \nu}, V_{k + 1, \nu}$ に拡張し例えば、$D^{k + 1}$ の中心を頂点とする錐から頂点を除いたものを取ればよいです。、$U_{k + 1} = U_{k}\cup \left(\bigcup_{\nu\in \Lambda^{n}}\varphi_{\nu}(U_{k + 1, \nu})\right)$, $V_{k + 1} = V_{k}\cup \left(\bigcup_{\nu\in \Lambda^{n}}\varphi_{\nu}(V_{k + 1, \nu})\right)$ とすればよいです。

(ii) 明らかな写像 $q_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{k}, \, k\leq n}\overline{e_{\lambda}}\to X^{(n)}$ が商写像であることを帰納法により示します。$q_{0}$ については明らかなので、$q_{n - 1}$ が商写像であるとして $q_{n}$ が商写像であることを示します。次の可換図式を考えます。

まず、$\varPhi_{n} = r\circ p$ は商写像なので $r$ も商写像です。帰納法の仮定より $q'_{n - 1}$ も商写像であり、商写像どうしの合成 $q_{n} = r\circ q'_{n - 1}$ も商写像です。よって、任意の $n\in \N$ に対して $q_{n}$ は商写像です。この帰納極限として商写像 $Q : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}\overline{e_{\lambda}}\to \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ が得られるので $X$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相を持ちます。

(iii) 胞体の次元に関する帰納法より示します。$0$ 胞体に対しては明らかなので、$n - 1$ 次元以下の胞体に対しては確かめられたとして $n$ 胞体に対して確かめます。$e_{\lambda}$ を $n$ 胞体とします。帰納法の仮定と(ii)より $X^{(n - 1)}$ はCW複体であるので、そのコンパクト部分空間 $\overline{e_{\lambda}}\setminus e_{\lambda}$ はある有限部分胞体複体 $A$ に含まれます。$\overline{e_{\lambda}}\cap A$ が $e_{\lambda}$ を含む $X^{(n)}$ の有限部分胞体複体です。以上より、$X$ の任意の胞体に対してそれを含む有限部分胞体複体が存在します。

CW複体の直積

CW複体どうしの直積は次の場合には再びCW複体になります。

命題2.4.22
(直積がCW複体になるための十分条件)

$X, Y$ をCW複体とする。

(1) $X$ が局所有限ならば $X\times Y$ はCW複体である。
(2) $X, Y$ が局所可算ならば $X\times Y$ はCW複体である。
証明

$X, Y$ のCW分割をそれぞれ $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$, $\{e'_{\mu}\}_{\mu\in M}$ とします。

(1) まず、$Y$ の各胞体の閉包 $\overline{e'_{\mu}}$ が局所コンパクトHausdorff空間なので明らかな連続写像\[\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\to X\times \overline{e'_{\mu}}\]は商写像です $($予備知識 命題2.7.25$)$。また、局所有限性と命題2.4.16から $X$ は局所コンパクトHausdorff空間なので明らかな連続写像\[\bigsqcup_{\mu\in M}X\times \overline{e'_{\mu}}\to X\times Y\]は商写像です。従って、連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda, \, \mu\in M}\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\to X\times Y$ も商写像であり、$X\times Y$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\}_{\lambda\in \Lambda, \, \mu\in M}$ に関する弱位相を持ちます。よって、$X\times Y$ はCW複体です。

(2) 明らかな連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda, \, \mu\in M}\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\to X\times Y$ が商写像であることを示せばよいですが、そのためには各 $\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}$ との共通部分が常に $\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}$ における開集合であるような $X\times Y$ の部分集合 $W$ が $X\times Y$ の開集合であることを示せばよいです。$z = (x, y)\in W$ を固定し、これが $W$ の内点であることを示します。まず、$X$ の局所可算性から $x\in X$ の開近傍であって高々可算個の胞体としか交わらないものを取り、その開近傍と交わる胞体たちを $e_{0}, e_{1}, e_{2}, \dots$ とします。そして、$X$ の有限部分複体の単調増大列 $\{A_{n}\}_{n\in\N}$ を $x\in A_{0}$ かつ常に $e_{n}\subset A_{n}$ となるように取ります。$x\in \Int \left(\bigcup_{n\in\N}A_{n}\right)$ となります。同様に、$Y$ の有限部分複体の単調増大列 $\{B_{n}\}_{n\in\N}$ であって $y\in B_{0}$ かつ $y\in \Int \left(\bigcup_{n\in\N}B_{n}\right)$ となるものを取ります。以下のように $A_{n}$ における $x$ のコンパクト閉近傍 $K_{n}$ と $B_{n}$ における $y$ のコンパクト閉近傍 $L_{n}$ を構成します。

$z\in \Int_{A_{0}\times B_{0}}(K_{0}\times L_{0})\subset W\cap (A_{0}\times B_{0})$.
$K_{n - 1}\times L_{n - 1}\subset \Int_{A_{n}\times B_{n}}(K_{n}\times L_{n})\subset W\cap (A_{n}\times B_{n})$.

実際、$K_{n - 1}, L_{n - 1}$ まで構成できているとき、各 $A_{n}, B_{n}$ が有限胞体複体であることから $A_{n}\times B_{n}$ はCW複体になっており、従って、$W$ の取り方から $W\cap (A_{n}\times B_{n})$ は $A_{n}\times B_{n}$ における開集合であり、$K_{n}, L_{n}$ を $K_{n}\times L_{n}$ が $W\cap (A_{n}\times B_{n})$ における $K_{n - 1}\times L_{n - 1}$ のコンパクト閉近傍であるように構成できます。

さて、$U = \bigcup_{n\in\N}\Int_{A_{n}}K_{n}$ は $\bigcup_{n\in\N}A_{n}$ における $x$ の開近傍なので $X$ における近傍議論に関係ないですが、開とは限らないです。であり、同様に $V = \bigcup_{n\in\N}\Int_{A_{n}}K_{n}$ は $Y$ における $y$ の近傍です。従って、$U\times V$ は $X\times Y$ における $z = (x, y)$ の近傍であり、構成より $U\times V\subset W$ であるので $z$ は $W$ の内点です。以上により $W$ は $X\times Y$ における開集合であり、連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda, \, \mu\in M}\overline{e_{\lambda}\times e'_{\mu}}\to X\times Y$ が商写像であることが分かりました。以上により $X\times Y$ はCW複体です。

しかし、一般にはCW複体どうしの直積がCW複体になるとは限らないことが知られています[C. H. Dowker, Topology of Metric Complexes]から。

例2.4.23
(直積がCW複体にはならないCW複体)

次の手順で構成されるCW複体 $X, Y$ の直積 $X\times Y$ はCW複体ではありません。

正整数集合 $\Np$ から自身への写像全体からなる集合 $\Map(\Np, \Np)$ を単に $\mathcal{M}$ と書くことにして $\Np, \mathcal{M}$ に離散位相を与え、$X = (I\times \Np)/(\{0\}\times \Np)$, $Y = (I\times \mathcal{M})/(\{0\}\times \mathcal{M})$ と定める。
商を取る前の各単位区間 $I$ は $\{0\}$ と $\{1\}$ のみを $0$ 胞体に持つCW複体であると考え、$X, Y$ はそこから誘導されるCW複体とする。

証明のために以下の設定を行います。

等化してできた点はそれぞれ $x_{0} = [\{0\}\times \Np]$, $y_{0} = [\{0\}\times \mathcal{M}]$ と表す。
各 $2$ 胞体の閉包 $I\times \{n\}\times I\times \{f\}$ を単に $I\times I$ とみなし、$A_{n, f}$ と表すことにする。
各 $n\in \Np$, $f\in \mathcal{M}$ に対して $A_{n, f}$ の点 $z_{n, f} = (f(n)^{-1}, f(n)^{-1})$ を取る。

この設定のもと、$X\times Y$ がCW複体であると仮定すると以下の流れで矛盾が導かれます。いずれも容易です。

(step 1) $Z = \{z_{n, f}\mid n\in \Np, \ f\in \mathcal{M}\}$ は $X\times Y$ における閉集合であり $($補題2.4.14$)$、$(x_{0}, y_{0})\in X\times Y$ の開近傍 $W$ であって $Z$ と交わらないものが存在する。
(step 2) $x_{0}$ の開近傍 $U$ と $y_{0}$ の開近傍 $V$ であって $U\times V\subset W$ となるものが存在するが、必要であればそれぞれを小さく取り換え、実数 $s_{n}, t_{f}\in (0, 1)$ たちを用いて $U = \left(\bigsqcup_{n\in\Np}[0, s_{n})\times \{n\}\right)/(\{0\}\times \Np)$, $V = \left(\bigsqcup_{n\in\mathcal{M}}[0, t_{f})\times \{f\}\right)/(\{0\}\times \mathcal{M})$ と表されるとする。
(step 3) $Z\cap (U\times V) = \varnothing$ より任意の $n\in \Np$, $f\in \mathcal{M}$ に対して $f(n)^{-1} < s_{n}$ ならば $t_{f}\leq f(n)^{-1}$ が成立する。
(step 4) 狭義単調増加な $f\in \mathcal{M}$ を任意の $n\in \Np$ に対して $f(n)^{-1} < s_{n}$ となるように取るとき、任意の $n\in \Np$ に対して $t_{f}\leq f(n)^{-1}$ であるので $t_{f}\leq 0$ となり矛盾する。

ただし、直積位相をコンパクト生成位相により取り換えることで直積もCW複体になります。コンパクト生成空間については予備知識 2.11.1節を参照。

命題2.4.24

CW複体 $X, Y$ に対し、直積空間 $X\times Y$ の位相をコンパクト生成位相で取り換えた $k(X\times Y)$ はCW複体である。

証明

$X\times Y$ の胞体の閉包 $\overline{e}$ の位相は $X\times Y$ と $k(X\times Y)$ のどちらの通常の相対位相で考えても変わりない$k(X\times Y)$ はHausdorff空間であり、特性写像 $\varphi : D^{n}\to \overline{e}$ はどちらに関する相対位相を与えても商写像です。ので $X\times Y$ の胞体分割は $k(X\times Y)$ における胞体分割になっています。あとは $k(X\times Y)$ がその有限部分胞体複体全体からなる被覆 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に関する弱位相を持つことを示せばよいです。

まず、Hausdorff空間においてはコンパクト生成位相を持つこととそのコンパクト部分空間全体からなる被覆に関する弱位相を持つこととが同値であり $($予備知識 命題2.11.23$)$、従って、$k(X\times Y)$ はそのコンパクト部分空間全体からなる被覆 $\mathcal{K}$ に関する弱位相を持ちます。言い換えると、包含写像の直和により定まる写像 $q : \bigsqcup_{K\in\mathcal{K}}K\to k(X\times Y)$ は商写像です。

写像 $\varphi : \mathcal{K}\to M$ を各 $K\in \mathcal{K}$ に対して $A_{\varphi(K)}$ が $K$ を含む最小の有限部分胞体複体となるように取ります各成分への射影 $k(X\times Y)\to X, Y$ は連続なので、それらによる $K$ の像はCW複体 $X, Y$ におけるコンパクト部分空間です。それぞれについて補題2.4.14より像を含む有限部分胞体複体を取ればその直積として $K$ を含む有限部分胞体複体が $1$ つ構成できます。よって、最小の有限部分胞体複体というのが意味を持ちます。。各 $\mu\in M$ に対して包含写像の直和 $\bigsqcup_{K\in \varphi^{-1}(\mu)}K\to A_{\mu}$ は商写像であり$\varphi^{-1}(\mu)$ に $A_{\mu}$ 自身が属すことに注意すれば明らかです。また、ここで最小性を使っています。、さらにその直和\[p : \bigsqcup_{K\in\mathcal{K}}K\to \bigsqcup_{\mu\in M}A_{\mu}\]も商写像です。包含写像の直和 $r : \bigsqcup_{\mu\in M}A_{\mu}\to k(X\times Y)$ は合成 $q = r\circ p$ が商写像であることにより商写像になりますが、これは $X$ が被覆 $\{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に関する弱位相を持つことを意味します。以上により $k(X\times Y)$ はCW複体です。

補足2.4.25
(CW複体はCGWH空間)

CW複体はCGWH空間です。コンパクト生成空間であることはCW複体がコンパクトHausdorff空間たちの直和空間の商空間として表されること、コンパクト生成空間の商空間がコンパクト生成空間であることから従い、弱Hausdorff性はHausdorff性から従います。

胞体写像による等化空間

CW複体 $X, Y$ と $X$ の部分複体 $A$ が与えられ、さらに次に定義される胞体写像 $f : A\to Y$ が与えられたとき、等化空間 $X\cup_{f} Y$ にはCW複体の構造が誘導されます。

定義2.4.26
(胞体写像)

$X, Y$ をCW複体とする。連続写像 $f : X\to Y$ であって任意の非負整数 $n\geq 0$ に対して $f(X^{(n)})\subset Y^{(n)}$ を満たすものを胞体写像という。

命題2.4.27

$X, Y$ をCW複体、$A$ を $X$ の部分複体、$f : A\to Y$ を胞体写像とする。等化空間 $X\cup_{f} Y$ はCW複体の構造が定まる。

証明

$\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ のCW分割、$\{e'_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を $Y$ のCW分割とし、部分集合 $N\subset \Lambda$ に対して $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in N}$ が $A$ のCW分割を与えるとします。$Z = X\cup_{f} Y$ が胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda\setminus N}\sqcup \{e'_{\mu}\}_{\mu\in M}$ によりCW複体になることを示します。$f$ が胞体写像という仮定から各 $n\geq 0$ に対して制限 $f_{n} : A^{(n)}\to Y^{(n)}$ が得られ、これによる $X^{(n)}$ と $Y^{(n)}$ の等化空間 $Z^{(n)} = X^{(n)}\cup_{f_{n}} Y^{(n)}$ が考えられます。商写像 $p_{n} : X^{(n)}\sqcup Y^{(n)}\to Z^{(n)}$ の帰納極限 $p : X\sqcup Y\to \underset{n}{\varinjlim}Z^{(n)}$ が商写像であるので $Z = \underset{n}{\varinjlim}Z^{(n)}$ です。あとは $Z^{(n)}$ が $Z^{(n - 1)}$ に $n$ 次元球体たちをその境界で貼り合わせて得られる空間であることを示せば命題2.4.21より $Z$ が上記の胞体分割によってCW複体になることが分かります。

$X^{(n)}$ の部分複体 $W_{n}$ を $W_{n} = X^{(n - 1)}\cup \left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda^{n}\setminus N^{n}}e_{\lambda}\right)$ により定めます。次の可換図式を考えます。

$p_{n}, \Id\sqcup p_{n - 1}, q, r, s$ が商写像であることから $t, u$ も商写像です。$u$ について、その制限 $u' : \bigsqcup_{\lambda\in N^{n}}D_{\lambda}^{n}\to Z^{(n)}$ は制限 $u'' : W_{n}\cup_{f_{n - 1}} Y^{(n)}\to Z^{(n)}$ に関するリフト $l : \bigsqcup_{\lambda\in N^{n}}D_{\lambda}^{n}\to W_{n}\cup_{f_{n - 1}} Y^{(n)}$ を持ち、このことから $u''$ は商写像です。そして、$u''$ は連続全単射でもあるので同相写像です。以上により $t$ の制限 $t' : \left(\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda^{n}\setminus N^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup \left(\bigsqcup_{\mu\in M^{n}}D_{\mu}^{n}\right)\sqcup Z^{(n - 1)}\to W_{n}\cup_{f_{n - 1}} Y^{(n)}\cong Z^{(n)}$ は商写像であり、これは $Z^{(n)}$ が $Z^{(n - 1)}$ に $n$ 次元球体をその境界で貼り合わせた空間であることを意味します。

系2.4.28

(1) $X, Y$ をCW複体、$f : X\to Y$ を胞体写像とする。写像柱 $M_{f}$、写像錐 $C_{f}$ にはCW複体の構造が定まる。
(2) $X, Y$ を基点付きCW複体、$f : X\to Y$ を基点を保つ胞体写像とする。縮約写像柱 $\tilde{M}_{f}$、縮約写像錐 $\tilde{C}_{f}$ には基点付きCW複体の構造が定まる。
系2.4.29

$X$ をCW複体、$A$ をその部分CW複体とする。商空間 $X/A$ にはCW複体の構造が定まる。

証明

商空間 $X/A$ は胞体写像 $f : A\to \{*\}$ による等化空間 $X\cup_{f} \{*\}$ です。

系2.4.30

$X, Y$ を基点付きCW複体とする。直積 $X\times Y$ がCW複体であればsmash積 $X\wedge Y = (X\times Y)/(X\vee Y)$ には基点付きCW複体の構造が定まる。特に、任意の基点付きCW複体 $X$ に対して縮約懸垂 $\Sigma X = X\wedge S^{1}$ には基点付きCW複体の構造が定まる。$($通常、$S^{1}$ には唯一の $0$ 胞体を持つCW分割を与えたと考える。$)$

補足2.4.31

CGWH空間の圏で考えれば直積 $X\times Y$ はCW複体になるのでsmash積は常に基点付きCW複体を与えます。

補足2.4.32
(CW複体の圏)

CW複体を対象、胞体写像を射とする圏 $\CW$ をCW複体の圏といいます。

CW複体のパラコンパクト性

CW複体はパラコンパクトHausdorff空間です。パラコンパクト空間については予備知識 2.9節を参照証明に使用する事実はMichaelの選択定理 $($予備知識 定理2.9.30$)$ の系として整備しています。(なので、追うのは大変…)

命題2.4.33
(CW複体のパラコンパクト性)

CW複体 $X$ はパラコンパクトHausdorff空間である。よって、正規空間である。

証明

まず、$X^{(-1)}$ は空集合なので自明にパラコンパクトHausdorff空間です。$X^{(n - 1)}$ がパラコンパクトHausdorff空間であるとき、$X^{(n)}$ はパラコンパクトHausdorff空間 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}} D_{\lambda}^{n}$ をその閉集合からの連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}} \partial D_{\lambda}^{n}\to X^{(n - 1)}$ に従って $X^{(n - 1)}$ に貼り合わせた空間であるのでパラコンパクトHausdorff空間です $($予備知識 系2.9.31$)$。よって、帰納法により全ての骨格 $X^{(n)}$ はパラコンパクトHausdorff空間です。従って、$X$ はパラコンパクトHausdorff閉部分空間の増大列 $\{X_{n}\}_{n\in\N}$ の帰納極限でありパラコンパクトHausdorff空間です $($予備知識 系2.9.32$)$。

CW複体からの連続写像

CW複体から別の位相空間への写像の連続性は胞体の閉包ごと、または骨格ごとの連続性から確かめられます。

命題2.4.34

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体、$Y$ を位相空間とし、$f : X\to Y$ を写像とする。このとき、次は同値である。

(1) $f$ は連続である。
(2) 任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して制限 $f|_{\overline{e_{\lambda}}} : \overline{e_{\lambda}}\to Y$ は連続である。
(3) 任意の $n\geq 0$ に対して制限 $f|_{X^{(n)}} : X^{(n)}\to Y$ は連続である。
証明

(1) ⇔ (2) $X$ が閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相を持つことと弱位相の普遍性 $($予備知識 系2.7.35$)$ から従います。

(1) ⇔ (3) $X = \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ と帰納極限の普遍性から従います。

homotopyについても同様です。

命題2.4.35

$(X, \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ をCW複体、$Y$ を位相空間とし、$F : X\times I\to Y$ を写像とする。このとき、次は同値である。

(1) $F$ はhomotopyである。
(2) 任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して制限 $F|_{\overline{e_{\lambda}}\times I} : \overline{e_{\lambda}}\times I \to Y$ はhomotopyである。
(3) 任意の $n\geq 0$ に対して制限 $F|_{X^{(n)}\times I} : X^{(n)}\times I\to Y$ はhomotopyである。
証明

(1) ⇔ (2) 区間 $I$ が局所コンパクトHausdorff空間なので $X\times I$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\times I\}_{\lambda\in\Lambda}$ に関する弱位相を持ちます $($予備知識 系2.7.48$)$。よって、弱位相の普遍性より主張の同値性が従います。

(1) ⇔ (3) 区間 $I$ が局所コンパクトHausdorff空間なので $(\underset{n}{\varinjlim}X^{(n)})\times I = \underset{n}{\varinjlim}(X^{(n)}\times I)$ であり $($予備知識 系2.7.49$)$、このことと帰納極限の普遍性からただちに従います。

相対CW複体とCW対

相対CW複体を導入します。これはCW複体の中に胞体構造を持たない閉集合を許容したもので、通常のCW複体とほぼ同じ形で定義することができます。

Hausdorff空間 $X$ とその閉集合 $A$ による空間対 $(X, A)$ に対する胞体分割 $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を条件

$X = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}e_{\lambda}\right)\sqcup A$.
任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $\overline{e_{\lambda}}\setminus e_{\lambda}\subset X^{(\dim e_{\lambda} - 1)}$.

を満たす胞体の族として定義します。ただし、$X^{(n)}$ で $n$ 次元以下の全ての胞体と $A$ との和集合を表し、この場合もこれを $n$ 骨格と呼びます。また、$X^{(-1)} = A$ とします。そして、胞体分割との対 $((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を空間対に対する胞体複体として定めます。胞体複体 $((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ に対する部分胞体複体 $((Y, B), \{e_{\mu}\}_{\mu\in M})$ を胞体複体であって条件

$B = A\subset Y\subset X$.
$\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ は $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の部分族。

を満たすものとして定めます。ここで、相対CW複体 $((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体であって条件

(C) 任意の $x\in X$ に対し、ある有限部分胞体複体 $(Y, A)$ が存在して $x\in Y$ を満たす。$($closuer finite$)$
(W) $X$ の位相は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}\sqcup \{A\}$ に関する弱位相に一致する。$($weak topology$)$

を満たすものとして定義します。以下に並べる通り、通常の胞体複体やCW複体と同様の事実が成立します。証明は通常版と大きく異なる部分のみに付けます。

命題2.4.36

$((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を胞体複体とする。部分空間 $Y\subset X$ と胞体分割の部分族 $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ について次は同値である。

(1) 対 $((Y, A), \{e_{\mu}\}_{\mu\in M})$ は部分胞体複体である。
(2) $Y = \left(\bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}\right)\sqcup A$ かつ任意の $\mu\in M$ に対して $\Cl_{X}(e_{\mu})\subset Y$ が成立する。
命題2.4.37

$((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を条件(C)を満たす胞体複体とする。次は同値である。

(1) $X$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}}\}_{\lambda\in\Lambda}\sqcup \{A\}$ に関する弱位相を持つ。
(2) $X$ はその有限部分胞体複体全体からなる閉被覆 $\{Y_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に関する弱位相を持つ。
命題2.4.38

$(X, A)$ を相対CW複体とする。

(1) その部分胞体複体 $(Y, A)$ に対して $Y$ は閉集合である。
(2) その部分胞体複体 $(Y, A)$ は相対CW複体である。
(3) その骨格 $X^{(n)}$ や部分相対CW複体どうしの和集合・共通部分は部分相対CW複体である。
補題2.4.39

$(X, A)$ を相対CW複体とする。$X$ ののコンパクト部分空間 $K$ はある有限部分複体に含まれる。従って、ある骨格 $X^{(n)}$ に含まれる。

命題2.4.40

局所有限な胞体分割を与えられた胞体複体 $(X, A)$ は相対CW複体である。

命題2.4.41

$(X, A)$ を相対CW複体とする。部分CW複体 $(Y, A)$ に対して空間対 $(X, Y)$ には相対CW複体の構造が定まる。

証明

条件(C)は明らかです$x\in X$ に対し、$(X, A)$ についての有限部分複体 $(Z, A)$ であって $x$ の属すものを取れば $(Z\cup Y, Y)$ が $(X, Y)$ についての有限部分複体であって $x$ が属しています。。条件(W)については明らかな写像\[\left(\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda\setminus M}\overline{e_{\lambda}}\right)\sqcup \left(\bigsqcup_{\mu\in M}\overline{e_{\mu}}\right)\sqcup A\xrightarrow{p} \left(\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda\setminus M}\overline{e_{\lambda}}\right)\sqcup Y\xrightarrow{q} X\]について $q\circ p$ が商写像であることから $q$ も商写像でありよいです。

補足2.4.42
(CW対)

CW複体 $X$ とその部分CW複体 $A$ の対 $(X, A)$ のことをCW対といいます。命題2.4.41によれば、これはただちに相対CW複体とみなすことが可能です。CW対 $(X, A)$ の相対CW複体としての $n$ 骨格を $X$ の骨格と区別して表したいときには $\overline{X}^{(n)}$ や $\overline{X}^{n}$ により表すことにします。その場合、$\overline{X}^{(n)} = X^{(n)}\cup A$ となります。

相対CW複体 $(X, A)$ はHausdorff空間 $A$ を $-1$ 骨格 $\overline{X}^{(-1)}$ としてそこに球体を繰り返し貼り合わせていくことで構成できます。

命題2.4.43

(1) $A$ をHausdorff空間とする。$X^{(-1)} = A$ とし、以下帰納的に $X^{(n)}$ を連続写像 $\varPsi_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\partial D_{\lambda}^{n}\to X^{(n - 1)}$ を用いて\[X^{(n)} = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\cup_{\varPsi_{n}}X^{(n - 1)}\]とすることで定義する。明らかな包含写像 $i_{nm} : X^{(n)}\to X^{(m)}$ により定まる帰納系の帰納極限 $X = \underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ について、空間対 $(X, A)$ には相対CW複体の構造が定まる。
(2) $((X, A), \{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda})$ を相対CW複体とする。各 $\lambda\in \Lambda^{n}$ に対して胞体 $e_{\lambda}$ の特性写像 $\varphi_{\lambda} : D^{n}\to X$ を固定する。このとき、包含写像 $X^{(n - 1)}\to X^{(n)}$ と特性写像 $\varphi_{\lambda}$ たちの直和として定まる写像\[\varPhi_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in \Lambda^{n}} D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{(n - 1)}\to X^{(n)}\]は商写像である。そして、$X$ は骨格 $X^{(n)}$ たちの間の包含写像により定まる帰納系の帰納極限 $\underset{n}{\varinjlim}X^{(n)}$ に一致する。
系2.4.44

$(X, A)$ を相対CW複体とする。商空間 $X/A$ にはCW複体の構造が定まる。

系2.4.45

$(X, A)$ を相対CW複体とする。

(1) $A$ が正規空間ならば $X$ も正規空間である。
(2) $A$ がパラコンパクトHausdorff空間ならば $X$ もパラコンパクトHausdorff空間である。
証明

(1) 予備知識 命題2.7.56予備知識 命題2.7.57から従います。

(2) 通常のCW複体のパラコンパクトHausdorff性 $($命題2.4.33$)$ と全く同様に示されます。

最後に、局所有限なCW複体と相対CW複体の直積が相対CW複体になることのみ確認します。

命題2.4.46

$X$ 局所有限なCW複体、$(Y, B)$ を相対CW複体とするとき、直積 $(X\times Y, X\times B)$ には相対CW複体の構造が定まる。

証明

$X, (Y, B)$ のCW分割をそれぞれ $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$, $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ とします。まず、$Y$ の各胞体の閉包 $\overline{e_{\mu}}$ が局所コンパクトHausdorff空間なので明らかな連続写像\[\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}\overline{e_{\lambda}\times e_{\mu}}\to X\times \overline{e_{\mu}}\]は商写像です $($予備知識 命題2.7.25$)$。また、$X$ は局所コンパクトHausdorff空間なので明らかな連続写像\[\left(\bigsqcup_{\mu\in M}X\times \overline{e_{\mu}}\right)\sqcup (X\times B)\to X\times Y\]は商写像です。従って、連続写像 $\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda, \, \mu\in M}\overline{e_{\lambda}\times e_{\mu}}\right)\sqcup (X\times B)\to X\times Y$ も商写像であり、$X\times Y$ は閉被覆 $\{\overline{e_{\lambda}\times e_{\mu}}\}_{\lambda\in \Lambda, \, \mu\in M}\sqcup \{X\times B\}$ に関する弱位相を持ちます。

2.4.3 胞体近似定理
CW複体の局所強可縮性

相対CW複体 $(X, A)$ において $A$ がカラーを持つこと、CW複体 $X$ が局所強可縮位相空間 $X$ が局所強可縮であるとは、各点 $p\in X$ に対してその点 $p$ を保って可縮な開近傍による開近傍基が存在することをいう。であることを示します。

まずは補題を用意します。

補題2.4.47

$(X, A)$ を空間対とする。部分空間の増大列 $\{X_{n}\}_{n\in\N}$ であって次の条件を満たすものが存在したとする。

(i) $X_{0} = A$.
(ii) $X = \underset{n}{\varinjlim}X_{n}$.
(iii) $X_{n}$ において $X_{n - 1}$ は強変位レトラクトである。

このとき、$X$ において $A$ は強変位レトラクトである。

証明

各 $n\geq 1$ に対して強変位レトラクション $r_{n} : X_{n}\to X_{n - 1}$ を取り、$i_{n - 1} : X_{n - 1}\to X_{n}$ を包含写像として $\Id_{X_{n}}$ を $i_{n - 1}\circ r_{n}$ につなぐ $X_{n - 1}$ を保つhomotopy $R_{n} : X_{n}\times I\to X_{n}$ を取ります。

連続写像 $H_{0} : X_{0}\times \{1\}\to X_{0}$ を恒等写像にとり、以下、連続写像 $H_{n} : X_{n}\times [2^{-n}, 1]\to X_{n}$ を\[H_{n}(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}R_{n}(x, 2^{n}t - 1)& (t\in [2^{-n}, 2^{-(n - 1)}]) \\H_{n - 1}((i_{n - 1}\circ r_{n})(x), t)& (t\in [2^{-(n - 1)}, 1])\end{array}\right.\]として帰納的に定めます。$R_{n - 1}$ の $X_{n - 1}\times \{0\}$ への制限が恒等写像であることから $H_{n - 1}$ の $X_{n - 1}\times \{2^{-(n - 1)}\}$ への制限も恒等写像であり、このことに注意して $t = 2^{-(n - 1)}$ において $R_{n}(x, 1) =(i_{n - 1}\circ r_{n})(x) = H_{n - 1}((i_{n - 1}\circ r_{n})(x), 2^{-(n - 1)})$ であるので $H_{n}$ はwell-definedです。さらに、以下の条件を満たしています(a)は $r_{n}$ が $X_{n - 1}$ のレトラクションであることから。(b)は $R_{n}$ が $X_{n - 1}$ を保つhomotopyであることから。

(a) $H_{n}|_{X_{n - 1}\times [2^{-(n - 1)}, 1]} = H_{n - 1}$.
(b) $X_{n - 1}\times [2^{-n}, 2^{-(n - 1)}]$ において $H_{n}(x, t) = x$.

この $H_{n}$ たちを用いてhomotopy $H : X\times I\to X$ を\[H(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}H_{n}(x, t)& ((x, t)\in X_{n}\times [2^{-n}, 1]) \\x & (t = 0)\end{array}\right.\]と定めます。well-definedであることは(a)から直ちに従います。各 $n\in \N$ に対し、(b)より $X_{n}\times [0, 2^{-n}]$ 上で $H(x, t) = x$ が成立し、$H$ は $X_{n}\times I$ 上で連続です。よって、$H$ は $X\times I$ 上で連続です。$H|_{X\times \{1\}}$ の制限 $r : X\to A$ が $X$ における $A = X_{0}$ のレトラクションであり、$i : A\to X$ を包含写像として $H$ は $\Id_{X}$ を $i\circ r$ につなぐ $A$ を保つhomotopyです。よって、$A$ は強変位レトラクトです。

補題2.4.48

$D^{n}$ の開集合 $U$ と $S^{n - 1}$ の開集合 $V$ であって $V\subset U$ であるものが与えられているとする。このとき、埋め込み $\xi : V\times [0, 1)\to U$ であって常に $\xi(x, 0) = x$ を満たすものが存在する。

証明

埋め込み $u : S^{n - 1}\times [0, 1)\to D^{n} : (x, t)\mapsto (1 - t)x$ を取り、$U' = u^{-1}(U)$ とおきます。$V$ の相対コンパクト開集合による被覆 $\{V_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ とそれに従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。さらに、各 $\lambda\in\Lambda$ に対して正実数 $t_{\lambda} > 0$ であって $\overline{V_{\lambda}}\times [0, t_{\lambda}]\subset U'$ を満たすものを取ります。$V$ 上の正値連続関数 $h = \sum_{\lambda\in\Lambda}t_{\lambda}h_{\lambda}$ を用いて定義される写像\[\xi : V\times [0, 1)\mapsto U : (x, t)\mapsto u(x, t\cdot h(x))\]が主張の条件を満たす埋め込みになっています。

補題2.4.49

$(X, A)$ を相対CW複体とする。$m\geq -1$ とし、$m$ 骨格 $X^{m}$ における開集合 $U_{m}$ と $X$ における開集合 $W$ であって $U_{m}\subset W$ を満たすものが与えられたとする。このとき、次の条件を満たす $X$ の開集合 $U$ が存在する。

$U\subset W$.
$U_{m} = U\cap X^{m}$.
$U_{m}$ は $U$ の強変位レトラクト。
証明

各 $n > m$ に対して $X^{n}$ の開集合 $U_{n}$ を次の条件を満たすように構成します。

(i) $U_{n}\subset W$.
(ii) $U_{n - 1} = U_{n}\cap X^{n - 1}$.
(iii) $U_{n - 1}$ は $U_{n}$ の強変位レトラクト。

$U_{n - 1}$ まで構成できているとして $U_{n}$ を構成します。$\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda^{n}}$ を $n$ 胞体全体からなる族とし、商写像 $\varPhi_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{n - 1}\to X^{n}$ の制限により各 $n$ 胞体に対する特性写像 $\varphi_{\lambda}$ を固定します。各 $\lambda\in \Lambda^{n}$ に対し、$V_{\lambda} = (\varphi_{\lambda}|_{S^{n - 1}})^{-1}(U_{n - 1})$ とおき、この $V_{\lambda}$ と $D^{n}$ の開集合 $\varphi_{\lambda}^{-1}(W)$ に対して補題2.4.48を用いて埋め込み $\xi_{\lambda} : V_{\lambda}\times [0, 1)\to D^{n}$ であって $\Img \xi_{\lambda}\subset \varphi_{\lambda}^{-1}(W)$ かつ常に $\xi_{\lambda}(x, 0) = x$ を満たすものを固定します。$U_{n} = U_{n - 1}\cup \left(\bigcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\varphi_{\lambda}(\Img \xi_{\lambda})\right)$ が条件を満たす開集合であることを示します。$($開集合であることは(iii)の途中で示します。$)$

(i) $U_{n - 1}\subset W$ であることと各 $\lambda\in \Lambda^{n}$ に対して $\varphi_{\lambda}(\Img \xi_{\lambda})\subset \varphi_{\lambda}(\varphi_{\lambda}^{-1}(W))\subset W$ であることからよいです。

(ii) 各 $\lambda\in \Lambda^{n}$ に対して\[\varphi_{\lambda}(\Img \xi_{\lambda})\cap X^{n - 1} = \varphi_{\lambda}(V_{\lambda}) = \varphi_{\lambda}((\varphi_{\lambda}|_{S^{n - 1}})^{-1}(U_{n - 1}))\subset U_{n - 1}\]であり、$U_{n}\cap X^{n - 1}\subset U_{n - 1}$ です。逆の包含関係は明らかです。

(iii) まず、商写像 $\varPhi_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{n - 1}\to X^{n}$ について $\varPhi_{n}^{-1}(U_{n}) = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Img \xi_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}$ であることを示します。$\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Img \xi_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}\subset \varPhi_{n}^{-1}(U_{n})$ は明らかなので逆の包含関係を示します。各 $V_{\lambda}$ の定義より\[\varPhi_{n}^{-1}(U_{n - 1}) = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}V_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}\subset \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Img \xi_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}\]であり、(ii)より $U_{n}\setminus U_{n - 1} = U_{n}\setminus X^{n - 1}$ であることと特性写像の制限の直和 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Int D_{\lambda}^{n}\to \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}e_{\lambda}$ の同相性から\begin{align*}\varPhi_{n}^{-1}(U_{n}\setminus U_{n - 1}) &= \varPhi_{n}^{-1}(U_{n}\setminus X^{n - 1}) = \varPhi_{n}^{-1}\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\varphi_{\lambda}(\xi_{\lambda}(V_{\lambda}\times (0, 1)))\right) \\&= \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\xi_{\lambda}(V_{\lambda}\times (0, 1))\subset \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Img \xi_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}\end{align*}です。これらを合わせて逆の包含関係が従い、よって、$\varPhi_{n}^{-1}(U_{n}) = \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\Img \xi_{\lambda}\right)\sqcup U_{n - 1}$ です。

各 $\Img \xi_{\lambda}$ が $D_{\lambda}^{n}$ における開集合であることから $\varPhi_{n}^{-1}(U_{n})$ は開集合、従って、$U_{n}$ は $X^{n}$ における開集合です。そして、このことから商写像の制限 $\varPhi_{n}^{-1}(U_{n})\to U_{n}$ も商写像です。同相 $\xi_{\lambda} : V_{\lambda}\times [0, 1)\to \Img \xi_{\lambda}$ を用いて $U_{n}$ を $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}(V_{\lambda}\times [0, 1))$ と $U_{n - 1}$ の連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\varphi_{\lambda}|_{V_{\lambda}} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}V_{\lambda}\to U_{n - 1}$ による等化空間、つまり、連続写像 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}\varphi_{\lambda}|_{V_{\lambda}}$ に関する写像柱と考えられるので $U_{n - 1}$ は $U_{n}$ の強変位レトラクトです。

$U = \bigcup_{n\geq m}U_{n}$ とおきます。$U\subset W$ は明らかです。各 $n\geq m$ に対して $U_{n} = U\cap X^{n}$ であり、$U$ は $X$ における開集合です。また、$U = \underset{n}{\varinjlim}U_{n}$ も従います。補題2.4.47よりこの $U$ が主張の開集合であることが従います。

命題2.4.50
(相対CW複体はカラー付き空間対)

相対CW複体 $(X, A)$ はカラー付き空間対である。つまり、$A$ の開近傍 $U$ であって $A$ を強変位レトラクトに持つものが存在する。

証明

補題2.4.49を $m = -1$, $U_{m} = A$, $W = X$ として適用すればよいです。

命題2.4.51
(CW複体の局所強可縮性)

CW複体 $X$ は局所強可縮である。

証明

任意の点 $x\in X$ とその開近傍 $W$ に対し、$x$ の開近傍 $U$ であって $x$ を保って可縮かつ $W$ に含まれるものを構成すればよいです。$x$ の属す胞体 $e^{m}$ を固定し、$U_{m}$ を $x$ の $X^{m}$ における開近傍であって $e\cap W$ に含まれる開球体に取り、この $U_{m}$ と $W$ に対して補題2.4.49を適用すればよいです。

補足2.4.52

相対CW複体 $(X, A)$ に対し、骨格の対 $(X^{n}, X^{n - 1})$ はカラー付き空間対ですが、具体的には $X^{n}$ のそれぞれの $n$ 胞体から $1$ 点ずつ取り除いた空間が $X^{n - 1}$ を強変位レトラクトに持ちます。

CW複体のhomotopy拡張性質

CW複体のhomotopy拡張性質を相対版で示します。

定理2.4.53
(相対CW複体のhomotopy拡張性質)

$(X, A)$ を相対CW複体、$Y$ を位相空間とする。連続写像 $F : (X\times \{0\})\cup (A\times I)\to Y$ は連続写像 $G : X\times I\to Y$ に拡張する。

証明

連続写像の列 $\{G_{n} : X^{n}\times I\to Y\}_{n\geq -1}$ を次の条件を満たすように帰納的に構成します。

$G_{-1} = F|_{X^{-1}\times I}$.
$n\geq -1$ に対して $G_{n}|_{X^{n}\times \{0\}} = F|_{X^{n}\times \{0\}}$.
$n\geq 0$ に対して $G_{n}$ は $G_{n - 1}$ の拡張。

もし構成できたとすれば、帰納極限 $G = \underset{n}{\varinjlim}G_{n} : X\times I\to Y$ が明らかに主張の連続拡張です。

$G_{n - 1}$ まで構成できたとして $G_{n}$ を構成します。連続写像 $F_{n - 1} : (X^{n}\times \{0\})\cup (X^{n - 1}\times I)\to Y$ を\[F_{n - 1}(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}F(x, t) & ((x, t)\in X^{n}\times \{0\}) \\G_{n - 1}(x, t) & ((x, t)\in X^{n - 1}\times I)\end{array}\right.\]により構成し、$\varPhi_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)\sqcup X^{n - 1}\to X^{n}$ を商写像とします。さらに、連続写像\[H_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}(D_{\lambda}^{n}\times \{0\})\cup (\partial D_{\lambda}^{n}\times I)\right)\sqcup (X^{n - 1}\times I)\to Y\]を $H_{n}(x, t) = F_{n - 1}(\varPhi_{n}(x), t)$ により定めます。レトラクション $r_{n} : D^{n}\times I\to (D^{n}\times \{0\})\cup (\partial D^{n}\times I)$ を用いることでレトラクション\[R_{n} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D^{n}\times I\right)\sqcup (X^{n - 1}\times I)\to \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}(D_{\lambda}^{n}\times \{0\})\cup (\partial D_{\lambda}^{n}\times I)\right)\sqcup (X^{n - 1}\times I)\]を構成すれば、合成 $H_{n}\circ R_{n}$ は $H_{n}$ の $\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D^{n}\times I\right)\sqcup (X^{n - 1}\times I)$ への連続拡張であり、連続写像 $G_{n} : X^{n}\times I\to Y$ を誘導します。これが条件を満たすことは容易であり、構成が完了しました。

拡張はhomotopyの違いを除いて一意です。

系2.4.54
(拡張のhomotopyの違いを除いた一意性)

$(X, A)$ を相対CW複体、$Y$ を位相空間とする。連続写像 $F : (X\times \{0\})\cup (A\times I)\to Y$ はに対し、その連続拡張 $G_{0}, G_{1} : X\times I\to Y$ は $(X\times \{0\})\cup (A\times I)$ を保ってhomotopicである。

証明

連続写像\[H' : (X\times I)\times \{0\}\cup (A\times I\cup X\times \{0, 1\})\times I\to Y\]を\[H'(x, s, t) = \left\{\begin{array}{ll}F(x, t) & ((x, s, t)\in X\times I\times \{0\}) \\G_{0}(x, t) & ((x, s, t)\in X\times \{0\}\times I) \\F(x, t) & ((x, s, t)\in A\times I\times I) \\G_{1}(x, t) & ((x, s, t)\in X\times \{1\}\times I)\end{array}\right.\]により定めます。この $H'$ に対して相対CW複体 $(X\times I, (A\times I)\cup (X\times \{0, 1\}))$ のhomotopy拡張性質を用いることで $G_{0}$ を $G_{1}$ につなぐ $(X\times \{0\})\cup (A\times I)$ を保つhomotopy $H : X\times I\times I\to Y$ が得られます第 $2$ 変数がそのhomotopyの時間変数。$H(x, 0, t) = G_{0}(x, t)$, $H(x, 1, t) = G_{1}(x, t)$ です。

もう一つ、系として次が分かります。

系2.4.55

$(X, A)$ を相対CW複体とする。$(X\times \{0\})\cup (A\times I)$ は $X\times I$ の強変位レトラクトであるここではhomotopy拡張性質の系として紹介しますが、最初にこちらを示すことでただちにhomotopy拡張性質が導かれます。

証明

恒等写像 $\Id_{(X\times \{0\})\cup (A\times I)}$ に対してhomotopy拡張性質 $($定理2.4.53$)$ を用いることでレトラクション $r : X\times I\to (X\times \{0\})\cup (A\times I)$ が得られます。$i : (X\times \{0\})\cup (A\times I)\to X\times I$ を包含写像とするとき、恒等写像 $\Id_{X\times I}$ と合成 $i\circ r$ はともに包含写像 $i$ の拡張であり、拡張のhomotopyの違いを除いた一意性 $($系2.4.54$)$ よりこれらは $(X\times \{0\})\cup (A\times I)$ を保ってhomotopicです。これは $(X\times \{0\})\cup (A\times I)$ が $X\times I$ の強変位レトラクトであることを意味します。

胞体写像と胞体近似定理

CW複体の間の連続写像が必ず胞体写像にhomotopicであるという胞体近似定理 $($定理2.4.57$)$ を相対版で紹介します。この場合、相対CW複体の間の連続写像 $f : (X, A)\to (Y, B)$ であって任意の $n\geq -1$ に対して $f(X^{n})\subset Y^{n}$ を満たすものを胞体写像と呼びます。

一つ補題を用意します。

補題2.4.56

任意の正整数 $m$ に対して次が成立する。

(A) $0\leq n < m$ のとき、$\R^{n}$ の開集合 $U$ から $\R^{m}$ の空でない開集合 $V$ への任意の固有写像 $f : U\to V$ に対してコンパクト台を持つhomotopy $H : U\times I\to V$ であって $f$ を全射でない連続写像 $g$ につなぐものが存在する。
(B) $0\leq n < m$ のとき、任意の連続写像 $f : S^{n}\to S^{m}$ に対してその連続拡張 $h : D^{n + 1}\to S^{m}$ が存在する。
証明

固定した $m$ に対する主張の命題をそれぞれ(A-$m$), (B-$m$)とおき、次を確かめます。

(i) (A-$1$).
(ii) (A-$m$) ⇒ (B-$m$).
(iii) (B-$m$-$1$) ⇒ (A-$m$).

(i) 明らかです。

(ii) 任意に点 $p\in S^{n}$ を固定します。制限 $f' : S^{n}\setminus f^{-1}(f(p))\to S^{m}\setminus \{f(p)\}$ は固有であり$S^{m}\setminus \{f(p)\}$ のコンパクト部分空間 $K$ に対して ${f'}^{-1}(K) = f^{-1}(K)$ であり、これは $f$ の固有性からコンパクトです。よって、$f'$ は固有写像です。、$S^{n}\setminus f^{-1}(f(p))$ を $\R^{n}$ の開集合、$S^{m}\setminus \{f(p)\}$ を $\R^{m}$ の開集合と同一視したうえで(A-$m$)を使用し、$f'$ を全射でない連続写像 $g'$ につなぐhomotopy $F' : (S^{n}\setminus f^{-1}(f(p))\times I\to S^{m}\setminus \{f(p)\}$ であってコンパクト台を持つ、従って、$f^{-1}(f(p))$ の近傍を保つものが得られます。これはただちに $f$ を全射でない連続写像 $g$ につなぐhomotopy $F : S^{n}\times I\to S^{m}$ を与えます。

点 $q\in S^{m}\setminus \Img g$ と同相写像 $\alpha : S^{m}\setminus \{q\}\to \R^{m}$ を固定し、$f$ を定値写像につなぐhomotopy $H : S^{n}\times I\to S^{m}$ を\[H(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}F(x, 2t) & (t\in [0, \tfrac{1}{2}]) \\\alpha^{-1}((2 - 2t)\alpha(g(x))) & (t\in [\tfrac{1}{2}, 1])\end{array}\right.\]に取れば、これが $f$ の連続拡張 $h : D^{n + 1}\to S^{m}$ を誘導します写像 $S^{n}\times I\to D^{n + 1} : (x, t)\mapsto (1 - t)x$ はコンパクト空間からHausdorff空間への連続全射なので商写像。$H|_{S^{m}\times \{1\}}$ が定値写像であることと商空間の普遍性より $h$ が誘導されます。

(iii) 点 $q\in V$ と $q$ を中心とする閉球体 $D\subset V$ を固定します。$f$ が固有なので $K = f^{-1}(q)$ と $f^{-1}(D)$ はコンパクトです。$d$ を $K$ と $f^{-1}(\Int D)^{c}$ の距離とし、正実数 $0 < r < d/\sqrt{n}$ を固定します。$\R^{n}$ の胞体分割として一辺の長さが $r$ の $n$ 次元超立方体たちによる格子状のものを取ります。そして、それら $n$ 次元超立方体たちのうちで閉包が $K$ と交わるもの全体からなる族 $\{Q_{l}\}_{1\leq l\leq p}$ を取ります。$L = \bigcup_{l = 1}^{p}\overline{Q_{l}}$ は $f^{-1}(\Int D)$ のコンパクト部分空間かつ $\R^{n}$ に与えた格子によりCW複体になります。また、$K\subset \Int L$ かつ $\partial L\cap K = \varnothing$ です。

いま、$f$ の制限 $f|_{\partial L}$ は $D\setminus \{q\}$ に値を取りますが、これを連続写像 $h : L\to D\setminus \{q\}$ に拡張できることを示します。CW対 $(L, \partial L)$ としての $k - 1$ 骨格 $\overline{L}^{k - 1}$ まで拡張 $h$ が構成できているとして $k$ 骨格 $\overline{L}^{k}$ に拡張できることを示せばよく、そのためには各 $k$ 胞体 $e$ の閉包 $\overline{e}$ 上に拡張できればよいです。簡単のために $D\setminus \{q\}$ を $S^{m - 1}\times [0, 1)$ と同一視することにします。同相 $(\overline{e}, \overline{e}\setminus e)\cong (D^{k}, S^{k - 1})$ により連続写像 $S^{k - 1}\to S^{m - 1}\times [0, 1)$ の $D^{k}$ 上の連続写像への拡張を構成すればよいですが、第 $1$ 成分については(B-$m$-$1$)から、第 $2$ 成分についても容易に拡張できます。従って、連続拡張 $h : L\to D\setminus \{q\}$ が得られます。

連続写像 $g : U\to V$ を\[g(x) = \left\{\begin{array}{ll}h(x) & (x\in L) \\f(x) & (x\notin L)\end{array}\right.\]により定めれば、これは $q$ を値に取りません。そして、$f$ を $g$ につなぐhomotopy $H : U\times I\to V$ であって台が $L$ に含まれるものが\[H(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}(1 - t)f(x) + th(x) & (x\in L) \\f(x) & (x\notin L)\end{array}\right.\]により定まります。

定理2.4.57
(胞体近似定理(相対版))

$(X, A)$, $(Y, B)$ を相対CW複体、$f : (X, A)\to (Y, B)$ を連続写像とする(1)が通常の胞体近似定理。(2)はその少しの一般化で、既に胞体写像になっている部分を保って胞体写像につなぐhomotopyが取れるというもの。

(1) $f$ はある胞体写像 $g : (X, A)\to (Y, B)$ に $A$ を保ってhomotopicである。
(2) $f$ の部分複体 $(Z, A)$ への制限が胞体写像であるとき、$f$ はある胞体写像 $g : (X, A)\to (Y, B)$ に $Z$ を保ってhomotopicである。
証明

(2)を次の流れで示します。

(step 1) 連続写像 $f : D^{n}\to Y$ の像はある $m$ 骨格 $Y^{m}$ に含まれる。
(step 2) $m > n$ のとき、連続写像 $f : (D^{n}, S^{n - 1})\to (Y^{m}, Y^{n - 1})$ はある連続写像 $g : (D^{n}, S^{n - 1})\to (Y^{m - 1}, Y^{n - 1})$ に $S^{n - 1}$ を保ってhomotopicである。
(step 3) 連続写像 $f : (D^{n}, S^{n - 1})\to (Y, Y^{n - 1})$ はある連続写像 $g : (D^{n}, S^{n - 1})\to (Y^{n}, Y^{n - 1})$ に $S^{n - 1}$ を保ってhomotopicである。
(step 4) 部分複体 $(Z, A)$ に対して $f(Z^{n})\subset Y^{n}$ を満たす連続写像 $f : (X, X^{n - 1})\to (Y, Y^{n - 1})$ はある連続写像 $g : (X, X^{n})\to (Y, Y^{n})$ に $X^{n - 1}\cup Z$ を保ってhomotopicである。
(step 5) 部分複体 $(Z, A)$ への制限が胞体写像である連続写像 $f : (X, A)\to (Y, B)$ はある胞体写像 $g : (X, A)\to (Y, B)$ に $Z$ を保ってhomotopicである。

(step 1) 補題2.4.39より従います。

(step 2) $M^{m}$ により $Y$ の $m$ 胞体全体に対応する添字集合を表すとします。$Y$ の各 $m$ 胞体 $e_{\mu}$ に対して制限 $f' : f^{-1}(e_{\mu})\to e_{\mu}$ は固有写像であり、補題2.4.56より $f$ はこの制限がいずれも全射でないとして問題ありません。各 $\mu\in M^{m}$ に対して点 $q_{\mu}\in e_{\mu}\setminus \Img f$ を固定し、$Q = \{q_{\mu}\mid \mu\in M^{m}\}$ とおきます。強変位レトラクション $r : Y^{m}\setminus Q\to Y^{m - 1}$ と包含写像 $i : Y^{m - 1}\to Y^{m}\setminus Q$ を取り、恒等写像 $\Id_{Y^{m}\setminus Q}$ を $i\circ r$ につなぐ $Y^{m - 1}$ を保つhomotopy $H : (Y^{m}\setminus Q)\times I\to Y^{m}\setminus Q$ 取ります。合成\[H\circ (f\times \Id_{I}) : D^{n}\times I\to Y^{m} : (x, t)\mapsto H(f(x), t)\]が $f$ を連続写像 $g = H|_{D^{n}\times \{1\}} : (D^{n}, S^{n - 1})\to (Y^{m - 1}, Y^{n - 1})$ につなぐ $S^{n - 1}$ を保つhomotopyです。

(step 3) (step 1)より $f$ の像が適当な次数の骨格に含まれることは分かっているので、あとは(step 2)を繰り返し適用すればよいです。

(step 4) $X$ の各 $n$ 胞体 $e_{\lambda}$ に対して特性写像 $\varphi_{\lambda} : D_{\lambda}^{n}\to X^{n}$ を固定し、$f_{n - 1}\circ \varphi_{\lambda} : (D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n})\to (Y, Y^{n - 1})$ を連続写像 $g_{\lambda} : (D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n})\to (Y^{n}, Y^{n - 1})$ につなぐ $S_{\lambda}^{n - 1}$ を保つhomotopy $H_{\lambda} : D_{\lambda}^{n}\times I\to Y$ を固定します。ただし、$Z$ の $n$ 胞体に対しては自明なものを取るとします。これらのhomotopyと連続写像 $F_{n - 1} : X^{n - 1}\times I\to Y : (x, t)\mapsto f(x)$ の直和\[\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}H_{\lambda}\right)\sqcup F_{n - 1} : \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\times I\right)\sqcup (X^{n - 1}\times I)\to Y\]を取ります。これは $X^{n - 1}\cup Z^{n}$ を保つhomotopy $H' : X^{n}\times I\to Y$ を誘導し、$H'(X^{n}\times \{1\})\subset Y^{n}$ を満たしています。これを明らかな方法で $X^{n - 1}\cup Z$ を保つhomotopy $H' : (X^{n}\cup Z)\times I\to Y$ に拡張します。連続写像 $H : (X\times \{0\})\cup ((X^{n}\cup Z)\times I)\to Y$ を\[H(x, t) = \left\{\begin{array}{ll}f(x) & ((x, t)\in X\times \{0\}) \\H'(x, t) & ((x, t)\in (X^{n}\cup Z)\times I)\end{array}\right.\]により定め、homotopy拡張性質 $($定理2.4.53$)$ からhomotopy $H : X\times I\to Y$ に拡張します。この $H$ が $f$ を連続写像 $g : (X, X^{n})\to (Y, Y^{n})$ につなぐ $X^{n - 1}\cup Z$ を保つhomotopyです。

(step 5) (step 4)の繰り返し適用により連続写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\geq -1}$ とhomotopyの列 $\{H_{n} : X\times I\to Y\}_{n\geq 0}$ であって条件

$f_{-1} = f$.
各 $n\geq -1$ について $f_{n}(X^{n})\subset Y^{n}$ を満たす。
各 $n\geq 0$ について $H_{n}$ は $f_{n - 1}$ を $f_{n}$ につなぐ $X^{n - 1}\cup Z$ を保つhomotopyである。

を満たすものを取ります。連続写像 $H : X\times [0, 1)\to Y$ を $X\times [1 - 2^{-n}, 1 - 2^{-(n + 1)}]$ において\[H(x, t) = H_{n}(x, 2^{n + 1}t - 2^{n + 1} + 2)\]とすることで定義します単に $H_{n}$ たちをつなげているだけです。。$m\geq n + 1$ において $H_{m}$ が $X^{n}$ を保つことから $H$ の $X^{n}\times [1 - 2^{-(n + 1)},1)$ における値は $X^{n}$ 成分のみで決まります。そこで、$X^{n}\times \{1\}$ において\[H(x, 1) = H(x, 1 - 2^{-(n + 1)})\]と定義することで $H$ を $X^{n}\times I$ においても連続な写像として拡張できます。この拡張の繰り返しによりhomotopy $H : X\times I\to Y$ が得られ、これは $Z$ を保ちます。構成より $g = H|_{X\times \{1\}}$ は胞体写像であり、主張が示されました。

系2.4.58

$(X, A)$, $(Y, B)$ を相対CW複体、$f, g : (X, A)\to (Y, B)$ を胞体写像とする。$f$ と $g$ がhomotopicであるとき、これらをつなぐhomotopy $H : X\times I\to Y$ を胞体写像に取ることができる。ただし、単位区間 $I$ には端点のみを $0$ 胞体とするCW分割を与える。

証明

$f$ を $g$ につなぐhomotopy $H' : (X\times I, A\times I)\to (Y, B)$ を取り、この $H'$ と部分複体 $(X\times \partial I\cup A\times I, A\times I)$ に対して胞体近似定理 $($定理2.4.57$)$ を適用すればよいです。

いくつかの系(連結性に関連して)

これまで調べたことの系としてCW複体の連結性空集合は連結および弧状連結として扱っています。についてまとめます。

系2.4.59

CW複体 $X$ に対して次が成立する。

(1) $X$ は局所弧状連結である。特に、局所連結である。
(2) $X$ の連結成分 $A$ はCW複体である。
(3) $X$ は連結CW複体による直和空間である。
証明

(1) CW複体は局所強可縮 $($命題2.4.51$)$ なので可縮空間の弧状連結性、弧状連結空間の連結性から従います。

(2) $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の胞体分割とし、$A$ と交わる胞体全体を $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ とします。この $\{e_{\mu}\}_{\mu\in M}$ について $A$ が部分胞体複体になっていることを示します。命題2.4.5により

(i) $A = \bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}$.
(ii) 任意の $\mu\in M$ に対して $\Cl_{X}(e_{\mu})\subset A$.

であることを示せばよいです。

(i) $A\subset \bigsqcup_{\mu\in M}e_{\mu}$ は明らかです。また、各 $\mu\in M$ に対して $e_{\mu}\subset A$ であることは $e_{\mu}\cap A\neq \varnothing$ と胞体 $e_{\mu}$ の連結性と連結成分 $A$ の極大性からただちに従い、逆の包含関係も成立します。

(ii) 各 $\mu\in M$ に対して $\Cl_{X}(e_{\mu})$ は連結空間 $D^{\dim e_{\mu}}$ の連続像であり連結です。従って、連結成分の極大性から $\Cl_{X}(e_{\mu})\subset A$ が成立します。

(3) (1)の局所連結性から $X$ は連結成分による直和空間です。そして、(2)より各連結成分はCW複体です。

CW複体の連結性がその $1$ 骨格の連結性で決まることが示されます。

系2.4.60

CW複体 $X$ に対して次は同値である。

(1) $X$ は連結である。
(2) $X^{1}$ は連結である。
(3) $X$ は弧状連結である。
(4) $X^{1}$ は弧状連結である。
証明

$X$ が空の場合は自明なのでそうでないとします。

(1) ⇔ (3) (2) ⇔ (4) CW複体が局所弧状連結空間であることと局所弧状連結空間に対する連結性と弧状連結性の同値性 $($予備知識 命題2.5.28$)$ からただちに従います。

(3) ⇒ (4) 任意の $x, y\in X^{1}$ に対し、$X$ の弧状連結性から $x$ を $y$ につなぐ連続曲線 $c : (I, \partial I)\to (X, X^{1})$ が取れますが、これに対して胞体近似定理 $($定理2.4.57$)$ を適用すればよいです。

(4) ⇒ (3) 対偶から明らかです。空でないCW複体の $0$ 骨格、従って $1$ 骨格が空でないことには注意。

さらにこの系として、空でない連結CW複体が唯一の $0$ 胞体を持つCW複体とhomotopy同値になることが $($基点付きで$)$ 示されます。少し補題を用意します。

補題2.4.61

木 $T$ においてその任意の点は強変位レトラクトである。特に、$T$ は強可縮である。

証明

まずは各頂点が強変位レトラクトであることを示します。$T$ の頂点 $v$ を取ります。各 $n\in \N$ に対し、$v$ からの距離が $n$ 以下の頂点全体とそれらを端点に持つ辺全体からなる部分木を $T_{n}$ とおけば $T_{0} = \{v\}$ かつ $n\geq 1$ において $T_{n - 1}$ は $T_{n}$ の強変位レトラクトです注意しないといけないのは、$v$ からの距離がちょうど $n$ の頂点どうしが辺で結ばれていないことですが、これは $T$ が木であることから確かめられます。補題2.4.47より $T_{0} = \{v\}$ は $T$ の強変位レトラクトです。辺上の点 $v\in T$ についてはその属す辺を分割して頂点を導入することで頂点の場合に帰着します。

補題2.4.62

$X$ を基点付きCW複体、$A$ をその基点を保って可縮な部分複体とする。このとき、商写像 $f : X\to X/A$ は基点付き空間のhomotopy同値写像である。

証明

$X$ の基点 $x_{0}$ は $A$ の頂点であり強変位レトラクトです。そこで、強変位レトラクション $r : A\to \{x_{0}\}$ と基点を保つhomotopy $H : A\times I\to A$ であって恒等写像 $\Id_{A}$ を定値写像 $\cst_{x_{0}}$ につなぐものを取ります。連続写像 $F : (X\times \{0\})\cup (A\times I)\to X$ を $F|_{X\times \{0\}} = \Id_{X}$ かつ $F|_{A\times I} = H$ として取り、CW対 $(X, A)$ のhomotopy拡張性質 $($定理2.4.53$)$ からその連続拡張 $G : X\times I\to X$ を取ります。$G_{1}$ は $A$ を基点 $x_{0}$ に移すので基点を保つ連続写像 $q : X/A\to X$ を誘導します。

商写像 $p : X\to X/A$ と $q : X/A\to X$ が互いにhomotopy逆写像になっていることを示します。まず、$G$ の構成から基点を保って $\Id_{X} = G_{0}\sim G_{1} = q\circ p$ です。続いて、合成 $p\circ G : X\times I\to X/A$ は $A\times I$ を $X/A$ の基点に移すので基点を保つhomotopy $G' : X/A\times I\to X/A$ を誘導し、基点を保って $\Id_{X/A} = G'_{0}\sim G'_{1} = p\circ q$ です。以上により $X$ と $X/A$ は基点付き空間としてhomotopy同値です。

系2.4.63

連結な基点付きCW複体 $X$ は唯一の $0$ 胞体を持つある基点付きCW複体 $Y$ とhomotopy同値である。

証明

$X$ の連結性から $1$ 骨格 $X^{1}$ は連結であり、$X^{1}$ の極大な木 $T$ を取ると $X^{0}\subset A$ です。$X/T$ は唯一の $0$ 胞体 $T/T$ を持ち、補題2.4.61補題2.4.62よりこれは $X$ に基点付き空間としてhomotopy同値です。

2.4.4 CW複体のhomology群
胞体チェイン複体

相対CW複体 $(X, A)$ が与えられたとき、その胞体構造からチェイン複体を構成することができます。$R$ を可換環、$M$ を $R$ 加群とします。

命題2.4.64

$(X, A)$ を相対CW複体とする。このとき次が成立する。

(1) $n$ 胞体全体からなる族を $\{e_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda^{n}}$ とし、各 $n$ 胞体の特性写像 $\varphi_{\lambda} : (D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n - 1})\to (X^{n}, X^{n - 1})$ を固定する。特性写像の直和\[\varPhi_{n} : \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\to X^{n}\]はhomology群の間の同型\[\bigoplus_{\lambda\in\Lambda^{n}}H_{\bullet}(D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n - 1}; M)\cong H_{\bullet}(X^{n}, X^{n - 1}; M)\]を誘導し、特に同型\[H_{q}(X^{n}, X^{n - 1}; M)\cong \left\{\begin{array}{ll}M^{\oplus\Lambda^{n}} & (n = q) \\0 & (n \neq q)\end{array}\right.\]が成立する。
(2) $n < q$ ならば $H_{q}(X^{n}, A; M) = 0$ が成立する。
(3) $q < n$ ならば包含写像 $i_{n} : X^{n}\to X$ は同型 $(i_{n})_{*} : H_{q}(X^{n}, A; M) \to H_{q}(X, A; M)$ を誘導する。
証明

(1) 空間対 $(X^{n}, X^{n - 1})$ および $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}(D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n - 1})$ はカラー付き空間対なので同型\[H_{\bullet}(X^{n}, X^{n - 1})\cong H_{\bullet}(X^{n}/X^{n - 1}, *),\]\[\bigoplus_{\lambda\in\Lambda^{n}}H_{\bullet}(D_{\lambda}^{n}, S_{\lambda}^{n - 1})\cong H_{\bullet}\left(\bigvee_{\lambda\in\Lambda^{n}}S_{\lambda}^{n}, *\right)\]が成立します $($系2.2.11$)$。$\varPhi_{n}$ が同相写像\[\bigvee_{\lambda\in\Lambda^{n}}S_{\lambda}^{n}\cong \left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}D_{\lambda}^{n}\right)/\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda^{n}}S_{\lambda}^{n - 1}\right)\cong X^{n}/X^{n - 1}\]を誘導するので主張の同型が従います。

(2) $n = -1$ の場合は自明です。三対 $(X^{n}, X^{n - 1}, A)$ のhomology完全系列\[\cdots\to H_{q + 1}(X^{n}, X^{n - 1})\to H_{q}(X^{n - 1}, A)\to H_{q}(X^{n}, A)\to H_{q}(X^{n}, X^{n - 1})\to \cdots\]の $n < q$ において同型 $H_{q}(X^{n - 1}, A)\cong H_{q}(X^{n}, A)$ が成立するので $n < q$ においても $H_{q}(X^{n}, A) = 0$ です。

(3) 補題2.4.14より $\bigcup_{n\in\N}S_{\bullet}(X^{n}, A) = S_{\bullet}(X, A)$ であり、チェイン複体の帰納系に対するhomology関手と帰納極限の可換性 $($命題1.4.16$)$ より\[\underset{n}{\varinjlim}H_{q}(X^{n}, A)\cong H_{q}(X, A)\]が成立します。(2)と同様に $q > n$ において同型 $H_{q}(X^{n}, A)\cong H_{q}(X^{n + 1}, A)$ が成立するので誘導準同型\[(i_{n})_{*} : H_{q}(X^{n}, A)\to H_{q}(X, A)\]は同型です。

命題2.4.65

$(X, A)$ を相対CW複体とする。三対 $(X^{n}, X^{n - 1}, X^{n - 2})$ のhomology完全系列の連結準同型\[\partial_{*} : H_{n}(X^{n}, X^{n - 1}; M)\to H_{n- 1}(X^{n - 1}, X^{n - 2}; M)\]を $\partial_{n}$ と書くことにすれば $\partial_{n - 1}\circ \partial_{n} = 0$ が成立する。

証明

可換図式

を考えます。横の列は空間対 $(X^{n - 1}, X^{n - 2})$ のhomology完全系列であり、左上の可換性は恒等写像 $j : (X^{n}, X^{n - 1}, \varnothing)\to (X^{n}, X^{n - 1}, X^{n - 2})$ と三対のhomology完全系列における連結準同型の自然性から従い、右下の可換性も同様に恒等写像 $j : (X^{n - 1}, X^{n - 2}, \varnothing)\to (X^{n - 1}, X^{n - 2}, X^{n - 3})$ を考えることで確かめられます。

この可換図式において横の列の合成 $\partial_{*}\circ j_{*}$ が零写像なので縦の列の合成 $\partial_{n - 1}\circ \partial_{n}$ も零写像です。

胞体チェイン複体を導入します。

定義2.4.66
(胞体チェイン複体)

相対CW複体 $(X, A)$ に対して $H_{n}(X^{n}, X^{n - 1}; R)$ を $C_{n}(X, A; R)$ と書き、命題2.4.65の連結準同型により得られるチェイン複体 $(C_{\bullet}(X, A; R), \partial)$ を相対CW複体 $(X, A)$ の $R$ 係数胞体チェイン複体という。

$R$ 加群 $M$ 対して\[C_{\bullet}(X, A; M) = C_{\bullet}(X, A; R)\otimes M,\]\[C^{\bullet}(X, A; M) = \Hom_{R}(C_{\bullet}(X, A; R), M)\]と記号を定め、それぞれ $M$ 係数胞体チェイン複体、$M$ 係数胞体コチェイン複体と呼ぶ。

自然な同型\[C_{n}(X, A; M) = H_{n}(X^{n}, X^{n - 1}; R)\otimes M\cong H_{n}(X^{n}, X^{n - 1}; M),\]\[C^{n}(X, A; M) = \Hom_{R}(H_{n}(X^{n}, X^{n - 1}; R), M)\cong H^{n}(X^{n}, X^{n - 1}; M)\]が存在することには注意します。

また、胞体写像 $f : (X, A)\to (Y, B)$ はチェイン写像 $f_{\sharp} : C_{\bullet}(X, A; M)\to C_{\bullet}(Y, B; M)$ を誘導し、別の胞体写像 $g : (Y, B)\to (Z, C)$ に対して $(g\circ f)_{\sharp} = g_{\sharp}\circ f_{\sharp}$ を満たします。コチェイン複体に対しても同様です。

特異homology群との自然な同型

胞体チェイン複体について、そのhomology群は特異チェイン複体のhomology群に自然に同型になります。

定理2.4.67
(特異homology群との自然な同型)

相対CW複体 $(X, A)$ に対し、胞体写像に関して自然な同型\[H_{\bullet}(C_{\bullet}(X, A; M))\cong H_{\bullet}(X, A; M)\]が存在する。

証明

次の可換図式において、横の列は三対 $(X^{n + 1}, X^{n}, X^{n - 2})$ のhomology完全系列、縦の列は三対 $(X^{n}, X^{n - 1}, A)$ のhomology完全系列です。可換性は恒等写像 $j : (X^{n + 1}, X^{n}, X^{n - 2})\to (X^{n + 1}, X^{n}, X^{n - 1})$ と三対のhomology完全系列における連結準同型の自然性から従います。

いま、縦の列の完全性により $\Img j_{*} = \Ker \partial_{n} = Z_{n}(C_{\bullet}(X, A))$ であり、$j_{*}$ は単射なので同型\[H_{n}(X^{n}, X^{n - 2})\cong Z_{n}(C_{\bullet}(X, A))\]が成立します。よって、\begin{eqnarray*} H_{n}(C_{\bullet}(X, A)) & \cong & j_{*}(H_{n}(X^{n}, X^{n - 2}))/\partial_{n + 1}(C_{n + 1}(X, A)) \\& \cong & H_{n}(X^{n}, X^{n - 2})/\partial_{*}(C_{n + 1}(X, A)) \\& \cong & H_{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\end{eqnarray*}です。三対 $(X^{n + 1}, X^{n - 2}, A)$ のhomology完全系列\[\cdots\to H_{n}(X^{n - 2}, A)\to H_{n}(X^{n + 1}, A)\to H_{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\to H_{n - 1}(X^{n - 2}, A)\to \cdots\]において命題2.4.64より $H_{n}(X^{n - 2}, A) = H_{n - 1}(X^{n - 2}, A) = 0$ なので同型\[H_{n}(X^{n + 1}, A) \cong H_{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\]が得られ、このことと命題2.4.64による同型\[H_{n}(X^{n + 1}, A) \cong H_{n}(X, A)\]により主張の同型が従います。自然性は証明に用いた三対のhomology完全系列や同型がいずれも自然であることから従います。

cohomology群についても同様です。

定理2.4.68
(特異cohomology群との自然な同型)

相対CW複体 $(X, A)$ に対し、胞体写像に関して自然な同型\[H^{\bullet}(C^{\bullet}(X, A; M))\to H^{\bullet}(X, A; M)\]が存在する。

証明

$R$ がPIDがの場合を示します。まず、補題として

(i) $n < q$ ならば $H^{q}(X^{n}, A; M) = 0$ が成立する。
(ii) $q < n$ ならば包含写像 $i_{n} : X^{n}\to X$ は同型 $(i_{n})^{*} : H^{q}(X, A; M)\to H^{q}(X^{n}, A; M)$ を誘導する。

であることを確かめます。

(i) 三対 $(X^{n}, X^{n - 1}, A)$ のcohomology完全系列\[\cdots\to H^{q}(X^{n}, X^{n - 1})\to H^{q}(X^{n}, A)\to H^{q}(X^{n - 1}, A)\to H^{q + 1}(X^{n}, X^{n - 1})\to \cdots\]より $n < q$ において同型 $H^{q}(X^{n}, A)\cong H^{q}(X^{n - 1}, A)$ が成立し、これと自明に $H^{-1}(X^{-1}, A) = 0$ であることをあわせて従います。

(ii) $q\leq n$ に対して $H_{q}(X, X^{n}; R)\cong H_{q}(X^{n + 1}, X^{n}; R) = 0$ です$X^{n} = A$ と思って命題2.4.64を適用する。。従って、この場合では普遍係数定理 $($定理1.3.3$)$ による短完全系列\[0\to \Ext_{R}^{1}(H_{q - 1}(X, X^{n}; R), M)\to H^{q}(X, X^{n}; M)\to \Hom_{R}(H_{q}(X, X^{n}; R), M)\to 0\]から $H^{q}(X, X^{n}; M) = 0$ が従います。ここで、三対 $(X, X^{n}, A)$ のcohomology完全系列\[\cdots\to H^{q}(X, X^{n}; M)\to H^{q}(X, A; M)\to H^{q}(X^{n}, A; M)\to H^{q + 1}(X, X^{n}; M)\to \cdots\]から $q < n$ において同型 $H^{q}(X, A; M)\cong H^{q}(X^{n}, A; M)$ が成立します。

主張の自然な同型は下の図式からhomology群の場合と同様にして示されます。

横の列は三対 $(X^{n + 1}, X^{n - 1}, X^{n - 2})$ のcohomology完全系列、縦の列は三対 $(X^{n + 1}, X^{n - 1}, A)$ のcohomology完全系列です。$\Img i^{*} = \Ker \delta^{n} = Z^{n}(C^{\bullet}(X, A))$ と $i^{*}$ の単射性から同型\[H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 1})\cong Z^{n}(C^{\bullet}(X, A))\]が成立し、よって、\begin{eqnarray*}H^{n}(C^{\bullet}(X, A)) & \cong & i^{*}(H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 1}))/\delta^{n - 1}(C^{n - 1}(X, A)) \\& \cong & H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 1})/\delta^{*}(C^{n - 1}(X, A)) \\& \cong & H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\end{eqnarray*}

です。三対 $(X^{n + 1}, X^{n - 2}, A)$ のcohomology完全系列\[\cdots\to H^{n - 1}(X^{n - 2}, A)\to H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\to H^{n}(X^{n + 1}, A)\to H^{n}(X^{n - 2}, A)\to \cdots\]において $H^{n - 1}(X^{n - 2}, A) = H^{n}(X^{n - 2}, A) = 0$ なので同型\[H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2})\cong H^{n}(X^{n + 1}, A)\]が得られ、このことと同型\[H^{n}(X^{n + 1}, A)\cong H^{n}(X, A)\]より主張の同型が従います。自然性も三対のcohomology完全系列の自然性などから従います。

$R$ が一般の可換環の場合、加群としての自然な同型\[\Hom_{\Z}(C_{\bullet}(X, A; \Z), M)\cong \Hom_{R}(C_{\bullet}(X, A; R), M),\]\[\Hom_{\Z}(S_{\bullet}(X, A; \Z), M)\cong \Hom_{R}(S_{\bullet}(X, A; R), M)\]とPIDの場合の結果から加群としての同型 $H^{n}(C^{\bullet}(X, A; M))\cong H^{n}(X, A; M)$ がまず確かめられ、$R$ 加群としての準同型\[H^{n}(X, A; M)\to H^{n}(X^{n + 1}, A; M)\cong H^{n}(X^{n + 1}, X^{n - 2}; M)\cong H^{n}(C^{\bullet}(X, A; M))\]が定まっているPIDであるという仮定は $R$ 準同型 $H^{n}(X, A; M)\to H^{n}(X^{n + 1}, A; M)$ が同型であることを示すためだけに使用していました。ことから $R$ 加群としての同型でもあることが従います。

以上です。

メモ

胞体チェイン複体のhomology群については全然書けていないです。気が向いたら書きます。

参考文献

[1] 服部晶夫 位相幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ 岩波書店 (1977-1979)
[2] 河澄響矢 トポロジーの基礎上下 東京大学出版会 (2022)
[服部 位相幾何学]と同じ議論をより丁寧に解説されているようなので挙げておきます。(一部の行間の埋め方が同じになってしまったというのもあります…)
[3] A. Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, (2002), http://pi.math.cornell.edu/~hatcher/AT/ATpage.html
[4] C. H. Dowker, Topology of Metric Complexes, Amer. J. Math. 74 (1952), pp. 555-577.

更新履歴

2022/10/02
新規追加
2023/01/02
基点付き連結CW複体が唯一の $0$ 胞体を持つ基点付き連結CW複体にhomotopy同値であることの証明から一部を補題として分離。