homotopy論を展開する際の便利なセッティングとして、扱う空間をコンパクト生成弱Hausdorff空間 $($compactly generated weakly Hausdorff space$)$ に限定する、つまり、コンパクト生成弱Hausdorff空間の圏で考えることが挙げられます。コンパクト生成弱Hausdorff空間の圏は多様体などの主な考察対象となる位相空間を含みながら、直積や商など通常の位相空間で考えてきた操作についても $($適切な処置のもとで$)$ 新たなコンパクト生成弱Hausdorff空間を与える操作として実現でき、多くの場面で一般の位相空間で考えたことと同様の事実が示されます。
ここではまず、コンパクト生成空間と弱Hausdorff空間の性質を個別に調べ、そののちにコンパクト生成弱Hausdorff空間の圏において正当化できる基本的な空間操作をまとめることを目標とします。また、コンパクト生成弱Hausdorff空間はちょっと長いので、ここでは単にCGWH空間とも呼ぶことにしたいと思います。
コンパクト生成空間を導入します。
$X$ を集合、$\mathcal{F}$ をその閉集合系とする。
まず、一般の閉集合系 $\mathcal{F}$ に対して $k(\mathcal{F})$ がコンパクト生成位相になることは重要です。そのことを含めた基本性質として次を挙げておきます。
$X$ を集合、$\mathcal{F}, \mathcal{G}$ をその閉集合系とする。次が成立する。
(1) $\varnothing, X\in k(\mathcal{F})$ は明らかです。有限部分族 $\mathcal{A}\subset k(\mathcal{F})$ に対して $\bigcup_{F\in\mathcal{A}}F\in k(\mathcal{F})$ であることは、コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $f : K\to X$ に対して $f^{-1}(\bigcup_{F\in\mathcal{A}}F) = \bigcup_{F\in\mathcal{A}}f^{-1}(F)$ であることからよいです。部分族 $\mathcal{A}\subset k(\mathcal{F})$ に対して $\bigcap_{F\in\mathcal{A}}F\in k(\mathcal{F})$ であることも、コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $f : K\to X$ に対して $f^{-1}(\bigcap_{F\in\mathcal{A}}F) = \bigcap_{F\in\mathcal{A}}f^{-1}(F)$ であることからよいです。以上により $k(\mathcal{F})$ は閉集合系です。
(2) $F\in \mathcal{F}$ に対して $F\in k(\mathcal{F})$ であることを示します。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $f : K\to X$ に対し、$F$ が閉なので $f^{-1}(F)$ は $K$ の閉集合です。よって、$F\in k(\mathcal{F})$ です。
(3) 写像 $f : K\to X$ が $k(\mathcal{F})$ に関して連続であるときは $\mathcal{F}\subset k(\mathcal{F})$ より $\mathcal{F}$ に関しても連続です。$f$ が $\mathcal{F}$ に関して連続として $k(\mathcal{F})$ に関しても連続であることを示します。そのためには $F\in k(\mathcal{F})$ に対して $f^{-1}(F)$ が $K$ の閉集合であることを示せばよいでが、これは $F$ が $\mathcal{F}$ に関する $k$ 閉集合であることと $f$ の $\mathcal{F}$ に関する連続性からただちに従います。よって、$k(\mathcal{F})$ に関して連続です。
(4) (3)より部分集合 $F\subset X$ に対して $F\in k(\mathcal{F})$ であることと $F\in k^{2}(\mathcal{F})$ であることとは同値になるので $k^{2}(\mathcal{F}) = k(\mathcal{F})$ です。
(5) $F\in k(\mathcal{F})$ が $\mathcal{G}$ に関する $k$ 閉集合であることを示します。コンパクトHausdorff空間 $K$ と $\mathcal{G}$ に関する連続写像 $f : K\to X$ を取ります。$f^{-1}(F)$ が $K$ の閉集合であることを示せばよいですが、$\mathcal{F}\subset \mathcal{G}$ より $f$ は $\mathcal{F}$ に関しても連続であり、$F$ が $\mathcal{F}$ に関する $k$ 閉集合であることから $f^{-1}(F)$ は $K$ の閉集合です。よって、$F$ は $\mathcal{G}$ に関する $k$ 閉集合であり、$k(\mathcal{F})\subset k(\mathcal{G})$ です。
ということで、位相空間 $X$ に対してその閉集合系による位相 $\mathcal{F}$ を $k(\mathcal{F})$ に取り換えることでコンパクト生成空間とすることができますが、以下ではこれを $k(X)$ により表し、$k(X)$ の閉集合を $X$ の $k$ 閉集合と呼ぶことにします。また、以下では位相空間としての $X$ との区別のためにその台集合を $X_{\mathrm{set}}$ と表すことがあります。位相空間 $X$ がコンパクト生成空間であることを確かめるにはその $k$ 閉集合が閉集合になっていることを確認すれば十分なことは容易です。
コンパクト生成空間の例として第一可算公理を満たす位相空間が挙げられますが、そのことを示すために、次の列型空間と呼ばれる位相空間がコンパクト生成空間であることを示します。
$X$ を位相空間とする。
列型空間 $X$ はコンパクト生成空間である。
$X$ の $k$ 閉集合 $F$ が $X$ における閉集合であることを示せばよく、そのためには $F$ が $X$ において点列閉であることを示せばよいです。そしてそのためには、$F$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ であって $X$ の点 $x_{\infty}$ に収束するものに対して $x_{\infty}\in F$ であることを示せばよいです。非負整数集合 $\N$ に離散位相を与え、その一点コンパクト化 $K = \N\sqcup \{\infty\}$ を考えます。$K$ はコンパクトHausdorff空間です離散空間が局所コンパクトHausdorff空間であることと、局所コンパクトHausdoff空間の一点コンパクト化のHausdorff性 $($命題2.6.33$)$ から従います。。写像 $f : K\to X$ を\[f(n) = x_{n}, \ f(\infty) = x_{\infty}\]により定めればこれは連続写像であり$X$ の開集合 $U$ に対し、$x_{\infty}\in U$ ならばあるところから先の $x_{n}$ は全て $U$ に属すので $f^{-1}(U)^{c}$ は $\N$ の有限集合、従ってコンパクト閉集合になっており、$f^{-1}(U)$ は $K$ の開集合です。$x_{\infty}\notin U$ のとき $f^{-1}(U)$ が $K$ の開集合であることは明らかです。よって、$f$ は連続です。、$F$ が $k$ 閉集合であることから $f^{-1}(F)$ は $K$ における閉集合です。$\N\subset f^{-1}(F)$ ですが、$\N$ は $K$ における閉集合ではないので $\infty\in f^{-1}(F)$ が従い、これは $x_{\infty}\in F$ を意味します。以上により列型空間 $X$ はコンパクト生成空間です。
第一可算公理を満たす空間 $X$ はコンパクト生成空間である。特に距離空間はコンパクト生成空間である。
$X$ が列型空間であることを示せばよく、そのためには $X$ の点列閉集合 $F$ が閉集合であることを示せばよいです。$X$ が第一可算公理を満たすことから閉包 $\overline{F}$ の各点 $x$ に対して $x$ に収束する $F$ の点列が構成され $($命題2.4.3$)$、$\overline{F}\subset F$ です。従って、$F = \overline{F}$ であり、$F$ は閉集合です。
おなじみ、局所コンパクトHausdorff空間もコンパクト生成空間です。
局所コンパクトHausdorff空間 $X$ はコンパクト生成空間である。
$X$ の $k$ 閉集合 $F$ が $X$ の閉集合であることを示します。$X$ についての相対コンパクト開近傍による被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。各 $\overline{U_{\lambda}}$ がコンパクトHausdorff空間であることと $F$ が $k$ 閉集合であることから任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $F\cap \overline{U_{\lambda}}$ は $\overline{U_{\lambda}}$ における閉集合であり、従って、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $F\cap U_{\lambda}$ は $U_{\lambda}$ における閉集合です。そして、$X$ は開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ による弱位相を持つので $F$ は $X$ における閉集合です。以上により局所コンパクトHausdorff空間はコンパクト生成空間です。
重要な事実として、連続写像 $f : X\to Y$ の定義域・値域をコンパクト生成空間で取り換えた写像 $k(f) : k(X)\to k(Y)$ はまた連続写像になります。一つ補題を示します。
$X$ をコンパクト生成空間、$Y$ を位相空間とする。任意の写像 $f : X\to Y_{\rm{set}}$ に対し、$f : X\to Y$ が連続であることと $f : X\to k(Y)$ が連続であることとは同値である。従って、$Y$ を $k(Y)$ で置き換える手続きにより全単射\[C(X, Y)\to C(X, k(Y))\]が定まる。
写像 $f : X\to Y_{\rm{set}}$ について、$f : X\to k(Y)$ が連続ならば $f : X\to Y$ が連続であることは $k(Y)$ の位相が $Y$ の位相より強いこと $($命題2.11.2$)$ から従います。逆に、$f : X\to Y$ が連続ならば $f : X\to k(Y)$ が連続であることを示します。$k(Y)$ の閉集合、つまり、$Y$ の $k$ 閉集合 $F$ に対して $f^{-1}(F)$ が $X$ の $k$ 閉集合であることを示せば $X = k(X)$ より閉集合でもあるので $f : X\to k(Y)$ の連続性が従います。任意のコンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ に対して $f\circ u : K\to Y$ の連続性と $F$ が $Y$ の $k$ 閉集合であることから $u^{-1}(f^{-1}(F))$ が $K$ の閉集合であるので $u^{-1}(F)$ は $X$ の $k$ 閉集合です。よって、$f : X\to k(Y)$ は連続です。写像 $C(X, Y)\to C(X, k(Y))$ が定まり全単射であることは明らかです。
任意の位相空間 $X, Y$ と連続写像 $f : X\to Y$ に対して位相を取り換えて得られる写像 $k(f) : k(X)\to k(Y)$ は連続である。
連続写像 $f : X\to Y$ に対して $f : k(X)\to Y$ が連続であることは明らかであり、補題2.11.7より $k(f) : k(X)\to k(Y)$ も連続です。
まず、コンパクト生成空間どうしの直和空間はまたコンパクト生成空間です。
コンパクト生成空間の族 $\{X_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対してその直和空間 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda}$ はコンパクト生成空間である。
直和空間を $X$ と書くことにして、$X$ の $k$ 閉集合 $F$ が $X$ における閉集合であることを示します。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $F\cap X_{\lambda}$ が $X_{\lambda}$ における閉集合であることを示せばよいです。$K$ をコンパクトHausdorff空間、$u : K\to X_{\lambda}$ を連続写像とします。$u^{-1}(F\cap X_{\lambda})$ は $u$ を $X$ への連続写像と思えば $u^{-1}(F)$ に等しく、$F$ が $X$ における $k$ 閉集合であることから $u^{-1}(F\cap X_{\lambda})$ は $K$ の閉集合です。従って、$F\cap X_{\lambda}$ は $X_{\lambda}$ の $k$ 閉集合です。そして、$X_{\lambda}$ がコンパクト生成空間なので $F\cap X_{\lambda}$ は $X_{\lambda}$ の閉集合です。
コンパクト生成空間 $X, Y$ に対してその直積空間 $X\times Y$ はコンパクト生成空間になるとは限らないことが知られています[C. H. Dowker, Topology of Metric Complexes]によるCW複体どうしの直積がCW複体とならない例 $($位相幾何学 例2.4.23$)$ がコンパクト生成空間どうしの直積であってコンパクト生成とはならない例になります。CW複体がコンパクト生成空間であること、直積位相をそのコンパクト生成位相で取り換えることでCW複体になること $($位相幾何学 命題2.4.24$)$ に注意します。。コンパクト生成 $($弱Hausdorff$)$ 空間のみを扱おうとする立場においてはこの点で不都合なため、位相を取り換えてコンパクト生成空間 $k(X\times Y)$ をその直積と考えることになります。そして、この意味での直積の性質について調べておく必要が生じます。以下、位相空間 $X, Y$ に対して $k(X\times Y)$ を $X\times_{k}Y$ により表すとします。また、一般の位相空間の族 $\{X_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して $k(\prod_{\lambda\in\Lambda}X_{\lambda})$ を $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{k}X_{\lambda}$ により表すとします。
直積空間は次の普遍性を持ちます。
$\{Y_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をコンパクト生成空間の族とする。射影 $\pr_{\lambda} : \prod_{\lambda\in\Lambda}^{k}Y_{\lambda}\to Y_{\lambda}$ は連続である。また、任意のコンパクト生成空間 $X$ に対して\[C\left(X, \underset{\lambda\in\Lambda\phantom{||}}{{\prod}^{k}}Y_{\lambda}\right) = C\left(X, \prod_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}\right) = \prod_{\lambda\in\Lambda}C(X, Y_{\lambda})\]が成立する。
射影 $\pr_{\lambda}$ の連続性は $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{k}Y_{\lambda}\to \prod_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}$ の連続性と通常の直積空間からの射影の連続性から。後半も補題2.11.7から従います。
$X, Y ,Z$ をコンパクト生成空間とする。このとき、\[(X\times_{k}Y)\times_{k}Z = X\times_{k}(Y\times_{k}Z)\]が成立する証明を見ればわかる通り、これ以外にも任意の位相空間の族に対して直積はその順序に依存しないことが分かります。。
任意のコンパクトHausdorff空間 $K$ に対して\[C(K, (X\times_{k}Y)\times_{k}Z) = C(K, X\times_{k}(Y\times_{k}Z))\]なので、一方に関する $k$ 閉集合は他方に関する $k$ 閉集合、つまり、$k((X\times_{k}Y)\times_{k}Z)) = k(X\times_{k}(Y\times_{k}Z))$ です。もちろん両者ともにコンパクト生成空間なので $(X\times_{k}Y)\times_{k}Z = X\times_{k}(Y\times_{k}Z)$ です。
片方が局所コンパクトHausdorff空間ならば直積空間は再びコンパクト生成空間です。
$X$ を局所コンパクトHausdorff空間、$Y$ をコンパクト生成空間とする。このとき、$X\times Y$ はコンパクト生成空間である。
$X\times Y$ の $k$ 閉集合 $F$ が $X\times Y$ における閉集合であることを示します。そのために、$z_{0} = (x_{0}, y_{0})\in F^{c}$ を取り、これが $F^{c}$ の内点であることを以下の流れで示します。
(step 1) $x_{0}$ におけるコンパクト閉近傍 $B$ を取り連続写像 $i : B\to X\times Y : x\mapsto (x, y_{0})$ を考えます。$B$ はコンパクトHausdorff空間なので $i^{-1}(F)$ は $B$ の閉集合であり、明らかに $x_{0}\notin i^{-1}(F)$ です。$B$ における $x_{0}$ のコンパクト閉近傍を $A\subset i^{-1}(F)^{c}$ であるように取ればよいです。
(step 2) コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to Y$ を取り、$u^{-1}(\pr_{Y}(F\cap (A\times Y)))$ が $K$ の閉集合であることを示せばよいです。$\Id_{A}\times u : A\times K\to A\times Y$ を考えるとき、$F$ が $k$ 閉集合であることから $(\Id_{A}\times u)^{-1}(F\cap (A\times Y))$ は $A\times K$ の閉集合であり、その $K$ 成分への射影 $\pr_{K}((\Id_{A}\times u)^{-1}(F\cap (A\times Y)))$ は閉集合ですコンパクト空間からHausdorff空間への連続写像が閉写像であることに注意。。ここで、\begin{eqnarray*}\pr_{K}((\Id_{A}\times u)^{-1}(F\cap (A\times Y))) & = & \{k\in K\mid {}^{\exists}a\in A \text{ s.t. } (a, u(k))\in F\} \\& = & \{k\in K\mid u(k)\in \pr_{Y}(F\cap (A\times Y))\} \\& = & u^{-1}(\pr_{Y}(F\cap (A\times Y)))\end{eqnarray*}であるので $u^{-1}(\pr_{Y}(F\cap (A\times Y)))$ は閉集合です。よって、$\pr_{Y}(F\cap (A\times Y))$ は $Y$ の閉集合です。
(step 3) $A$ の取り方から $y_{0}\notin \pr_{Y}(F\cap (A\times Y))$ です。(step 2)から $\Int A\times \pr_{Y}(F\cap (A\times Y))^{c}$ が $z_{0}$ の開近傍になるので $z_{0}$ は $F^{c}$ の内点です。
以上により $F$ は閉集合であり、$X\times Y$ はコンパクト生成空間です。
$X$ をコンパクト生成空間、$Y$ を位相空間とする。補題2.11.7の全単射 $C(X, Y)\to C(X, k(Y))$ はhomotopy集合の間の全単射\[[X, Y]\to [X, k(Y)]\]を誘導する。基点付きの場合も同様に全単射 $C(X, Y)_{0}\to C(X, k(Y))_{0}$ は全単射\[[X, Y]_{0}\to [X, k(Y)]_{0}\]を誘導する。
$X\times I$ がコンパクト生成空間であるので全単射 $C(X\times I, Y)\to C(X\times I, k(Y))$ が得られます。これは写像 $f, g : X\to Y_{\rm{set}}$ が $Y$ への写像と考えてhomotopicであることと $k(Y)$ への写像と考えてhomotopicであることとが同値であることを意味します。
コンパクト生成空間の商空間が再びコンパクト生成空間になることは重要です。
商写像 $p : X\to Y$ が与えられているとする。$X$ がコンパクト生成空間ならば $Y$ もコンパクト生成空間である。つまり、コンパクト生成空間の商空間はコンパクト生成空間である。
$Y$ の $k$ 閉集合 $F$ が $Y$ における閉集合であることを示します。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ が与えられたとき、$p\circ u : K\to Y$ の連続性と $F$ が $k(Y)$ における閉集合であることから $(p\circ u)^{-1}(F) = u^{-1}(p^{-1}(F))$ は $K$ の閉集合であり、よって、$p^{-1}(F)$ は $X$ における $k$ 閉集合です。$X$ がコンパクト生成空間であるので $p^{-1}(F)$ は $X$ の閉集合であり、$p$ が商写像であることから $F$ は $Y$ における閉集合です。以上により $Y$ はコンパクト生成空間です。
コンパクト生成空間の部分空間は一般にはコンパクト生成空間とは限りませんが、閉集合や開集合はコンパクト生成空間になります。
$X$ をコンパクト生成空間とする。
(1) $F$ を $A$ における $k$ 閉集合とし、これが $X$ における $k$ 閉集合であることを示します。そうすれば $F$ が $X$ における閉集合となり、$A$ においても閉集合であることが従います。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ が与えられたとします。$u$ のコンパクトHausdorff部分空間 $u^{-1}(A)\subset K$ への制限 $v = u|_{u^{-1}(A)} : u^{-1}(A)\to A$ について、$F$ が $A$ における $k$ 閉集合であることから $v^{-1}(F)$ は $K$ における閉集合です。$u^{-1}(F) = v^{-1}(F)$ なので $u^{-1}(F)$ は $K$ における閉集合です。よって、$F$ は $X$ における $k$ 閉集合であり、$A$ における閉集合です。以上により閉集合 $A$ はコンパクト生成空間です。
(2) $F$ を $U$ における $k$ 閉集合とし、$V = U\setminus F$ が $X$ における開集合であることを示します。そのために、コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ が与えられたとして $u^{-1}(V)$ が $K$ の開集合であることを示します。各 $a\in u^{-1}(V)$ が内点であることを示します。$u^{-1}(U)$ が $a$ の開近傍であることと $K$ の正則性より $a$ の開近傍 $W$ を $\overline{W}\subset u^{-1}(U)$ となるように取ります。$u$ のコンパクトHausdorff部分空間 $\overline{W}$ への制限 $w : \overline{W}\to U$ について、$F$ が $U$ における $k$ 閉集合であることから $w^{-1}(F)$ は $K$ の閉集合です。$W\setminus w^{-1}(F)$ は $K$ の開集合であり、\[a\in W\setminus w^{-1}(F)\subset u^{-1}(U)\setminus u^{-1}(F) = u^{-1}(V)\]より $a$ は $u^{-1}(V)$ の内点です。以上により $u^{-1}(V)$ は $K$ の開集合であり、$V$ は $X$ の $k$ 開集合、従って $X$ における閉集合です。以上により $F = (X\setminus V)\cap U$ は $U$ における閉集合です。
以下ではコンパクト生成空間を主な考察対象とするため、直積の記号 $\times_{k}, \prod^{k}$ を単に $\times, \prod$ と表すことにします。そして、通常の意味での直積を考えるときは $\times_{o}, \prod^{o}$ を用いることにします。ここでは、コンパクト生成空間 $X, Y$ の間の連続写像全体からなる集合 $C(X, Y)$ に次で位相を与えることにします。
$X, Y$ をコンパクト生成空間とする。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ と $Y$ の開集合 $U$ に対して $C(X, Y)$ の部分集合 $W(u, K, U)$ を\[W(u, K, U) = \{f\in C(X, Y)\mid f(u(K))\subset U\}\]により定める。$C(X, Y)$ に $W(u, K, U)$ たちにより生成する位相を与えた位相空間をここでは $C'(X, Y)$ と書くことにし、$k(C'(X, Y))$ を単に $C(X, Y)$ と書くことにする。
このように連続写像の集合に位相を与えることで、写像の合成など次の演算の連続性が確かめられます一般の位相空間で考えた命題2.10.30と比較して細かい条件が無くなっているのが嬉しいところ。。
$X, Y, Z$ をコンパクト生成空間とする。次が成立する。
(1) コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ と $Z$ の開集合 $U$ に対して\[(g_{*})^{-1}(W(u, K, U)) = \{f\in C(X, Y)\mid g(f(u(K)))\subset U\} = W(u, K, g^{-1}(U))\]であり、まずは $C'(X, Y)\to C'(X, Z)$ が連続です。よって、系2.11.8より $C(X, Y)\to C(X, Z)$ は連続です。
(2) コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ と $Z$ の開集合 $U$ に対して\[(f^{*})^{-1}(W(u, K, U)) = \{g\in C(Y, Z)\mid g(f(u(K)))\subset U\} = W(f\circ u, K, U)\]であり、(1)と同様にして $C(Y, Z)\to C(X, Z)$ は連続です。
(3) $V$ を $Y$ の開集合とします。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $w = (u, v) : K\to C(X, Y)\times X$ を取り、$w^{-1}(\ev^{-1}(V))$ が $K$ における開集合ことを示せばよいです。そのために、$(u\times v)^{-1}(\ev^{-1}(V))$ が $K\times K$ における開集合であることを示します。$(a, b)\in (u\times v)^{-1}(\ev^{-1}(V))$ を取ります。$u(a) : X\to Y$ は $v(b)$ を $V$ の中に移す連続写像なので $v^{-1}(u(a)^{-1}(V))$ は $b\in K$ の開近傍です。$b$ のコンパクト閉近傍 $L$ を $L\subset v^{-1}(u(a)^{-1}(V))$ であるように取るとき、$u(a)\in W(v|_{L}, L, V)$ であり、\[(a, b)\in u^{-1}(W(v|_{L}, L, V))\times \Int L\subset (u\times v)^{-1}(\ev^{-1}(V))\]です。これは $(a, b)$ が $(u\times v)^{-1}(\ev^{-1}(V))$ の内点であることを意味し、よって、$(u\times v)^{-1}(\ev^{-1}(V))$ は開集合です。この対角写像による逆像が $w^{-1}(\ev^{-1}(V))$ であり、これも開集合です。従って、$\ev^{-1}(V)$ が $k$ 開集合であることが示され、$\ev$ は連続です。
(4) 各 $y\in Y$ に対して写像 $\inj(y)$ が実際に $C(X, X\times Y)$ に属すことは明らかであり、$\inj : Y\to C(X, X\times Y)$ は定義できています。あとは連続性を確かめればよいですが、そのためにはコンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ と $X\times Y$ の開集合 $U$ に対して $\inj^{-1}(W(u, K, U))$ が開集合であることを示せばよいです。容易に分かるように\begin{eqnarray*}y\in \inj^{-1}(W(u, K, U)) & \Leftrightarrow & \inj(y)\in W(u, K, U) \\& \Leftrightarrow & \inj(y)\in \{f\in C(X, X\times Y)\mid f(u(K))\subset U\} \\& \Leftrightarrow & \inj(y)(u(K))\subset U \\& \Leftrightarrow & u(K)\times \{y\}\subset U \\& \Leftrightarrow & K\times \{y\}\subset (u\times \Id_{Y})^{-1}(U) \\\end{eqnarray*}です。$K$ のコンパクト性と $K\times Y$ に通常の直積位相が入っていること $($命題2.11.12$)$ と $(u\times \Id_{Y})^{-1}(U)$ が $K\times Y$ の開集合であることから\[\inj^{-1}(W(u, K, U)) = \{y\in Y\mid K\times \{y\}\subset (u\times \Id_{Y})^{-1}(U)\}\]は開集合です。
(5) 単なる集合間の写像として全単射\[\adj : \Map(X\times Y, Z)\to \Map(X, \Map(Y, Z)) : f\mapsto (x\mapsto f|_{\{x\}\times Y}),\]が取れました。各 $f\in C(X\times Y, Z)$ に対して $\adj(f)$ は連続写像の合成\[\adj(f) : X\xrightarrow{\inj} C(Y, X\times Y)\xrightarrow{f_{*}} C(Y, Z) : x\mapsto (y\mapsto (x, y))\mapsto (y\mapsto f(x, y))\]により表されるので $C(X, C(Y, Z))$ に属しまず。また、各 $g\in C(X, C(Y, Z))$ に対して $\adj^{-1}(g)$ は連続写像の合成\[\adj^{-1}(g) : X\times Y\xrightarrow{g\times \Id_{Y}}C(Y, Z)\times Y\xrightarrow{\ev} Z : (x, y)\mapsto (g(x), y)\mapsto g(x)(y)\]として表されるので $C(X\times Y, Z)$ に属します。よって、$\adj : C(X\times Y, Z)\to C(X, C(Y, Z))$ は全単射として定まっています。
以下、この対応が同相写像であることを示します。まず、\[\ev : C(X\times Y, Z)\times (X\times Y)\to Z\]が連続なので、\[\adj(\ev) : C(X\times Y, Z)\times X\to C(Y, Z)\]が連続となり、\[\adj(\adj(\ev)) : C(X\times Y, Z)\to C(X, C(Y, Z))\]も連続となります。続いて、評価写像\[\ev : C(X, C(Y, Z))\times X\to C(Y, Z),\]\[\ev : C(Y, Z)\times Y\to Z\]が連続なので、合成\[\ev\circ (\ev\times \Id_{Y}) : C(X, C(Y, Z))\times (X\times Y)\to Z\]が連続となり、\[\adj(\ev\circ (\ev\times \Id_{Y})) : C(X, C(Y, Z))\to C(X\times Y, Z)\]の連続性が従います。以上により同相であることが分かりました。
(6) 合成写像\[C(X, Y)\times C(Y, Z)\times X\to C(Y, Z)\times Y\to Z\]は連続であり、$\adj$ による移り先 $\circ : C(X, Y)\times C(Y, Z)\to C(X, Z)$ も連続です。
(1) $p\times \Id_{Z} : X\times Z\to Y\times Z$ が普遍性を持つことを示します。位相空間 $W$、連続写像 $g : X\times Z\to W$ と写像 $h : Y\times Z\to W$ が与えられ、$g = h\circ (p\times \Id_{Z})$ を満たしているとして $h$ の連続性を示せばよいです。補題2.11.7より $W$ を $k(W)$ で置き換えて最初からコンパクト生成空間として問題ないです。可換図式
について、$\adj(g)$ の連続性と $p : X\to Y$ が商写像であることから $\adj(h)$ の連続性が従い、よって、$\adj^{-1}(\adj(h)) = h$ の連続性が従います。以上により $p\times \Id_{Z}$ は商写像です。
(2) $(p\times q) = (\Id_{Y}\times q)\circ (p\times \Id_{Z})$ と商写像どうしの合成が商写像であることから従います。
対象をコンパクト生成空間、射を連続写像とする圏をコンパクト生成空間の圏といい $\CG$ と書くことにします。ここまで整備してきたことから明らかなように、位相空間 $X$ に対してコンパクト生成空間 $k(X)$ を対応させ、連続写像 $f : X\to Y$ に対して連続写像 $k(f) : k(X)\to k(Y)$ を対応させることで関手\[k : \Top\to \CG\]が定まります。補題2.11.7の\[C(X, Y) = C(X, k(Y))\]は包含関手 $I : \CG\to \Top$ がその左随伴であることを意味します。また、命題2.11.17の\[\adj : C(X\times Y, Z)\cong C(X, C(Y, Z))\]は $\CG$ がCartesian閉であることを意味します。
弱Hausdorff空間を導入します。
$X$ を位相空間とする。任意のコンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ に対して像 $u(K)$ が $X$ の閉集合になるとき、$X$ は弱Hausdorff空間であるという。
基本的な性質として次を挙げておきます。
$X$ を位相空間とする。次が成立する。
(1) $K$ をコンパクトHausdorff空間、$u : K\to X$ を連続写像とします。コンパクト空間の連続像 $u(K)$ はコンパクトですが、Hausdorff空間のコンパクト部分空間は閉集合であったので $u(K)$ は閉集合です。よって、$X$ は弱Hausdorff空間です。
(2) コンパクトHausdorff空間からの連続写像 $u : K\to A$ の像は $X$ における閉集合なので $A$ においても閉集合です。
(3) 一点空間はコンパクトHausdorff空間なのでその連続像になる $X$ の一点部分空間は閉集合です。よって、$X$ は $T_{1}$ 空間です。
(4) $K$ の閉集合 $F$ について、$F$ はコンパクトHausdorff空間なのでその連続像 $u(F)$ は弱Hausdorff空間 $X$ において閉です。
(5) コンパクト性は当然よいのでHausdorff性を示します。$x\neq y\in u(K)$ を取り、これらを分離する $($$u(K)$ における$)$ 開集合を構成します。$u^{-1}(x), u^{-1}(y)$ は $K$ の互いに非交叉な閉集合なので $K$ の正規性から $u^{-1}(x)$ の閉近傍 $A$ であって $u^{-1}(y)$ と交わらないもを取ります。$u(A)$ が $y$ を元として持たない閉集合なので $W = u(K)\setminus u(A)$ は $y$ の開近傍です。$A\cap u^{-1}(W) = \varnothing$ であり、よって、$\Int A\cap \overline{u^{-1}(W)} = \varnothing$ です。$Z = u(\overline{u^{-1}(W)})$ は $W$ を含む閉集合ですが、$u^{-1}(x)\subset \Int A$ より $x$ は元として持ちません。従って、$u(K)\setminus Z$ と $W$ が $x, y$ を分離する開集合になっています。以上により $u(K)$ はHausdorff空間です。
弱Hausdorff性は直和と直積について保たれます。
$\{X_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を弱Hausdroff空間の族とする。次が成立する。
(1) 明らかです。
(2) コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to \prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}X_{\lambda}$ が与えられているとします。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $(\pr_{\lambda}\circ u)(K)$ は $X_{\lambda}$ の閉集合であり、$\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}(\pr_{\lambda}\circ u)(K)$ は直積空間における閉集合です。また、各 $(\pr_{\lambda}\circ u)(K)$ はコンパクトHausdorff空間なので $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}(\pr_{\lambda}\circ u)(K)$ もそうです。従って、$u(K)$ は $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}(\pr_{\lambda}\circ u)(K)$ における閉集合であり、$\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}X_{\lambda}$ における閉集合でもあります。以上により $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}X_{\lambda}$ は弱Hausdorff空間です。
以下ではこの弱Hausdorff性とコンパクト生成性との関連を紹介します。まず、弱Hausdorff空間においてはコンパクト生成性を次で言い換えることができます。
$X$ を弱Hausdorff空間とする。次は同値である。
弱Hausdorff空間 $X$ に対してそのコンパクトHausdorff部分空間全体からなる被覆に関する弱位相を与えた空間を $k'(X)$ と表すことにし、一般に位相空間として $k(X) = k'(X)$ であることを示します。$F$ を $k(X)$ における閉集合とします。$X$ のコンパクトHausdorff部分空間 $K$ に対し、包含写像 $i : K\to X$ が $i^{-1}(F)$ を閉集合とすることから $F\cap K$ は閉です。よって、$F$ は $k'(X)$ における閉集合です。$F$ を $k'(X)$ における閉集合とします。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ に対して $u(K)$ はコンパクトHausdorff部分空間なので $F\cap u(K)$ は $u(K)$ における閉集合です。よって、$u^{-1}(F)$ は $K$ の閉集合であり、$F$ は $k(X)$ の閉集合です。以上により $k(X) = k'(X)$ です。
主張は $k(X) = X\Leftrightarrow k'(X) = X$ であるということなので、$k(X) = k'(X)$ より成立します。
コンパクト生成空間における弱Hausdorff性については次の同値条件が存在し、このことを通じて弱Hausdorff性を確認していくことになります。注意として、ここでの直積 $\times$ は引き続き $\times_{k}$ の略記です。
$X$ をコンパクト生成空間、$\Delta_{X}$ をその対角線集合 $\{(x, x)\in X\times X\mid x\in X\}$ とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) $\Delta_{X}$ が $k$ 閉集合であることを示せばよいです。コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $w = (u, v) : K\to X\times X$ を取り、$w^{-1}(\Delta_{X})$ が $K$ の閉集合であることを示します。$a\notin w^{-1}(\Delta_{X})$ に対して次のことを示します。
これらが示されれば $w^{-1}(\Delta_{X})$ が閉集合であることは明らかであり、$\Delta_{X}$ が $X\times X$ の $k$ 閉集合であることが従います。そして、$X\times X$ がコンパクト生成空間であることから閉集合であることも従います。
(i) $a\in U$ は $w^{-1}(\Delta_{X}) = \{k\in K\mid u(k) = v(k)\}$ から明らか。$X$ が $T_{1}$ 空間なので $\{v(a)\}$ は閉集合であり、$U^{c} = \{b\in K\mid u(b) = v(a)\} = u^{-1}(v(a))$ は閉集合です。よって、$U$ は開集合です。
(ii) $V$ を取れることは $K$ の正規性から。$U$ の定義から $v(a)\notin u(U)$ であり、$v(a)\notin u(\overline{V})$ です。よって、$a\in v^{-1}(u(\overline{V})^{c})$ です。$u$ が閉写像であることに注意すれば $v^{-1}(u(\overline{V})^{c})$ が開集合であることは明らかです。
(iii) $b\in V\cap v^{-1}(u(\overline{V})^{c})$ とします。$b\in V$ から $u(b)\in u(\overline{V})$ であり、$b\in v^{-1}(u(\overline{V})^{c})$ より $v(b)\in u(\overline{V})^{c}$ です。よって、$u(b)\neq v(b)$ より $b\notin w^{-1}(\Delta_{X})$ なので主張が示されました。
(2) ⇒ (1) コンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ を取り、その像 $u(K)$ が $X$ の $k$ 閉集合であることを示せばよいです。コンパクトHausdorff空間 $L$ と連続写像 $v : L\to X$ を取ります。このとき、\begin{eqnarray*}\pr_{L}((u\times v)^{-1}(\Delta_{X})) & = & \pr_{L}(\{(k, l)\in K\times L\mid u(k) = v(l)\}) \\& = & \{l\in L\mid {}^{\exists}k\in K \text{ s.t. } u(k) = v(l)\} \\& = & \{l\in L\mid v(l)\in u(K)\} \\& = & v^{-1}(u(K))\end{eqnarray*}です。$\Delta_{X}$ が閉なので $(u\times v)^{-1}(\Delta_{X})$ は閉であり、その $\pr_{L}$ による連続像 $v^{-1}(u(K))$ は $L$ の閉集合ですコンパクト空間からHausdorff空間への連続写像は閉写像。。よって、$u(K)$ は $X$ の $k$ 閉集合であり、$X$ がコンパクト生成空間であることから閉集合です。以上により $X$ は弱Hausdorff空間です。
$X$ をコンパクト生成空間、$Y$ をコンパクト生成弱Hausdoff空間とする。連続写像 $f, g : X\to Y$ に対して $\{x\in X\mid f(x) = g(x)\}$ は閉集合である。
$X$ がコンパクト生成空間なので写像 $(f, g) : X\to Y\times Y : x\mapsto (f(x), g(x))$ は連続です。$Y$ がコンパクト生成弱Hausdorff空間なので対角線集合 $\Delta_{Y}$ は閉集合であり、$(f, g)^{-1}(\Delta_{Y}) = \{x\in X\mid f(x) = g(x)\}$ は $X$ の閉集合です。
ここからはコンパクト生成弱Hausdorff空間を単にCGWH空間と呼ぶことにします。ここでは弱Hausdorff化と呼ばれるコンパクト生成空間からCGWH空間を構成する手続きについて述べます。
$X$ をコンパクト生成空間、$\sim$ を $X$ 上の同値関係、$\Gamma_{\sim} = \{(x, y)\in X\times X\mid x\sim y\}$ をそのグラフとする。次は同値である。
$p : X\to X/{\sim}$ を商写像とすると系2.11.18より $p\times p : X\times X\to (X/{\sim})\times (X/{\sim})$ は商写像です。よって、$\Gamma_{\sim} = (p\times p)^{-1}(\Delta_{X/{\sim}})$ が $X\times X$ の閉集合であることと $\Delta_{X/{\sim}}$ が $(X/{\sim})\times (X/{\sim})$ の閉集合であること、つまり、$X/{\sim}$ が弱Hausdorff空間であることとは同値です。
$X$ をコンパクト生成空間とする。$X$ 上の最小の閉同値関係 $\sim$ $X$ 上の同値関係 $\sim$ が閉であるとはそのグラフ\[\Gamma = \{(x, y)\in X\times X\mid x\sim y\}\]が $X\times X$ の閉集合であることとします。そして、全ての閉同値関係たちのグラフの共通部分により定まる閉同値関係が最小の閉同値関係です。による商空間 $X/{\sim}$ を $X$ の弱Hausdorff化といい、ここでは $h(X)$ により表す。
$X, Y$ をコンパクト生成空間とする。連続写像 $f : X\to Y$ に対して連続写像 $h(f) : h(X)\to h(Y)$ が誘導される。また、もし $Y$ がCGWH空間ならばこの対応は全単射\[C(X, Y)\to C(h(X), Y)\]を定める。
商写像 $p : X\to h(X) = X/{\sim_{X}}$, $q : Y\to h(Y) = Y/{\sim_{Y}}$ を取ります。$X$ 上の同値関係 $\sim'_{X}$ を $x\sim'_{X} x'\Leftrightarrow q\circ f(x) = q\circ f(x')$ により定めるとき、連続写像 $f' : X/{\sim'_{X}}\to h(Y)$ が誘導されます。$h(Y)$ はCGWH空間なので補題2.11.24より対角線集合 $\Delta_{h(Y)}$ は閉集合であり、\[(q\circ f\times q\circ f)^{-1}(\Delta_{h(Y)}) = \{(x, x')\in X\times X\mid x\sim'_{X} x'\}\]は閉集合です。従って、$\sim'_{X}$ は閉同値関係です。$\sim_{X}$ の最小性より連続写像 $p' : h(X)\to X/{\sim'_{X}}$ が誘導されるので合成により連続写像 $h(f) = f'\circ p'$ が定まります。
もし $Y$ がCGWH空間ならば $h(Y) = Y$ より写像 $C(X, Y)\to C(h(X), Y) : f\mapsto h(f)$ が定まっており、また、商写像 $p : X\to h(X)$ による引き戻しが逆写像を与えることが容易に分かるのでこの対応は全単射です。
対象をCGWH空間、射を連続写像とする圏をCGWH空間の圏といい $\CGWH$ と書くことにします。ここで考えた弱Hausdorff化はコンパクト生成空間の圏 $\CG$ からCGWH空間の圏への関手\[h : \CG\to \CGWH\]を定め、命題2.11.28の\[C(h(X), Y) = C(X, Y)\]は包含関手 $I : \CGWH\to \CG$ がその右随伴であることを意味します。また、$\CGWH$ は $\CG$ と同様にCartesian閉です。
また、関手 $k : \Top\to \CG$ の弱Hausdorff空間の圏 $\WH$ への制限は関手\[k : \WH\to \CGWH\]を与えます。実際、弱Hausdorff空間 $X$ においては任意のコンパクトHausdorff空間 $K$ と連続写像 $u : K\to X$ に対して\[C(K, X) = C(K, k(X))\]が成立しているので関手 $k$ により弱Hausdorff性は保たれています。
CGWH空間の圏においてhomotopy論を展開するためには直積や部分空間を取る操作などがCGWH空間の圏に閉じている、つまり、再びCGWH空間を与える必要があります。そのため、ここでは主要操作がCGWH空間の圏に閉じていることの確認や、例えば
といったようなCGWH空間でない空間が生じうる場合にも適切に関手 $k, h$ を施してCGWH空間を与えるようにできることを確認します。
以下でも引き続き直積の記号 $\times$ は関手 $k$ を施す $\times_{k}$ の意味で使用し、写像の集合 $C(X, Y)$ には定義2.11.16による位相を与えることにします。
まずは直和空間について。この場合は特に注意する点はないです。
$\{Y_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をCGWH空間の族とする。直和空間 $Y = \bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}$ はCGWH空間である。また、任意のCGWH空間 $X$ に対して自然な全単射\[C\left(\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}, X\right) = \prod_{\lambda\in\Lambda}C(Y_{\lambda}, X)\]が存在する。
容易です。
続いて直積空間について。この場合は弱Hausdorff性の確認が必要になります。
$\{Y_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をCGWH空間の族とする。直積空間 $Y = \prod_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}$ はCGWH空間である。また、任意のCGWH空間 $X$ に対して自然な全単射\[C\left(X, \prod_{\lambda\in\Lambda}Y_{\lambda}\right) = \prod_{\lambda\in\Lambda}C(X, Y_{\lambda})\]が存在する。
コンパクト生成空間であることは直積の定義から明らかです。弱Hausdorff性を示します。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $q_{\lambda} = \pr_{\lambda}\times \pr_{\lambda} : Y\times Y\to Y_{\lambda}\times Y_{\lambda}$ の連続性念のため。射影 $\pr_{\lambda} : Y\to Y_{\lambda}$ の連続性は命題2.11.10から。よって、通常の直積位相に関して $\pr_{\lambda}\times \pr_{\lambda}$ は連続です。あとは関手 $k$ により連続性が保たれること $($系2.11.8$)$ を思い出せばよいです。と対角線集合 $\Delta_{Y_{\lambda}}\subset Y_{\lambda}\times Y_{\lambda}$ が閉集合であることから $q_{\lambda}^{-1}(\Delta_{Y_{\lambda}})$ は $Y\times Y$ の閉集合です。$\Delta_{Y} = \bigcap_{\lambda\in\Lambda}q_{\lambda}^{-1}(\Delta_{Y_{\lambda}})$ なので $\Delta_{Y}$ は閉集合、従って $Y$ は弱Hausdorff空間です。
CGWH空間 $X$ 上の同値関係 $\sim$ が与えられたとき、商空間 $X/{\sim}$ はコンパクト生成空間ですが、命題2.11.26より $\sim$ が閉同値関係でない場合には弱Hausdorff空間になりません。そこで、CGWH空間とするために $h(X/{\sim})$ を考えることになりますが、これは $\sim$ の閉包 $\sim'$ グラフについて $\Gamma_{\sim}\subset \Gamma_{\sim'}$ を満たす閉同値関係 $\sim'$ であって包含関係に関して最小もののこと。による商空間 $X/{\sim'}$ と同相です。
$X$ をCGWH空間、$\sim$ を $X$ 上の同値関係とし、$\sim'$ を $\sim$ の閉包とする。自然な同相 $h(X/{\sim})\cong X/{\sim'}$ が成立する。
まず、誘導写像 $\varphi : X/{\sim}\to X/{\sim'}$ に関手 $h$ を適用することで連続写像 $h(\varphi) : h(X/{\sim})\to X/{\sim'}$ が得られます。射影 $p : X\to h(X/{\sim})$ を用いて同値関係 $\sim''$ を $x\sim'' y\Leftrightarrow p(x) = p(y)$ により定めるとき、$h(X/{\sim})$ が弱Hausdorff空間なので $\sim''$ は閉同値関係であり、閉包 $\sim'$ の最小性から連続写像 $\psi : X/{\sim'}\to X/{\sim''} = h(X/{\sim})$ が誘導されます。明らかに $h(\varphi)$ と $\psi$ が互いに逆写像になっており、同相 $h(X/{\sim})\cong X/{\sim'}$ が成立します。
$X$ をCGWH空間、$A$ をその部分集合とする。このとき、同相 $h(X/A)\cong X/\overline{A}$ が成立する。
商空間 $X/A$ を定める同値関係のグラフ $\Gamma$ は $\Delta_{X}\cup (A\times A)$ であり、その閉包 $\overline{\Gamma}$ は $\Delta_{X}\cup (\overline{A}\times \overline{A})$ です各 $x\in A$ に対して部分空間 $\{x\}\times X\subset X\times X$ は $X$ と同相なので $\{x\}\times \overline{A}\subset \overline{\Gamma}$ が成立し、よって、$A\times \overline{A}\subset \overline{\Gamma}$ です。同様に、$\overline{A}\times \overline{A}\subset \overline{\Gamma}$ も従います。これより $\Gamma\subset \Delta_{X}\cup (\overline{A}\times \overline{A})\subset \overline{\Gamma}$ ですが、$\Delta_{X}\cup (\overline{A}\times \overline{A})$ は閉集合なので $\overline{\Gamma} = \Delta_{X}\cup (\overline{A}\times \overline{A})$ です。。従って、同相 $h(X/A)\cong X/\overline{A}$ が得られます。
CGWH空間の部分空間は必ず弱Hausdorff空間ですが、コンパクト生成空間とは限りません。そこで、以下で部分空間 $A$ を考えるときはその相対位相 $\mathcal{F}_{A}$ を $k(\mathcal{F}_{A})$ により取り換え、必ずCGWH空間とみなすことにします。当たり前に成り立ってほしいこととして、CGWH空間の間の連続写像 $f : X\to Y$ の任意の制限 $f|_{A} : A\to B$ はこの意味で連続になっています通常の意味での相対位相を与えて制限は連続であり、それに関手 $k$ を適用したものも連続です。。そして、以降ではCGWH空間の間の写像 $i : A\to X$ が包含写像、もしくは埋め込みであるといったら像 $i(A)$ をCGWH空間とみなしたうえで同相写像 $i : A\to i(A)$ を定めることを意味するとします。この意味での包含写像は次の普遍性を持ちます。
$X, A$ をCGWH空間とする。単射 $i : A\to X$ に対して次は同値である。
(1) ⇒ (2) 補題2.11.7より明らかです。
(2) ⇒ (1) まず、$h$ を恒等写像 $h : A\to A$ とすることで $i = i\circ h : A\to i(A)$ の連続性が従います。続いて、$i : A\to i(A)$ の逆写像を $h$ としてを取れば、$i\circ h$ は $i(A)$ の恒等写像、従って連続写像なので逆写像 $h$ の連続性も従います。よって、$i$ は包含写像です。
その他、CGWH空間の圏における包含写像の性質として次を挙げておきます。
$X, A$ をCGWH空間とする。連続写像 $i : A\to X$ と $r : X\to A$ が $r\circ i = \Id_{A}$ を満たすとき $i$ は閉埋め込みであり、$r$ は商写像である。
$i$ が埋め込みであることは $r|_{i(A)} : i(A)\to A$ の連続性から従います。また、$i$ が $r$ の $($連続な$)$ 切断になっているので $r$ は商写像です。$i$ が閉写像であることは $i(A) = i\circ r(X) = \{x\in X\mid \Id_{X}(x) = i\circ r(x)\}$ が系2.11.25より閉集合であり、$i(A)$ が通常の相対位相に関してCGWH空間になっていることとから従います。
$X, Y, Z$ をCGWH空間、$i : X\to Y$, $j : Y\to Z$ を連続写像とする。
(1) $W$ をCGWH空間 $h : W\to X$ を写像とします。$h$ が連続なときの $(j\circ i)\circ h$ の連続性は明らか。$(j\circ i)\circ h$ が連続なとき $j$ が埋め込みであることから $i\circ h$ の連続性、そして、$i$ が埋め込みであることから $h$ の連続性が従います。よって、$j\circ i$ は埋め込みです。
(2) $W$ をCGWH空間 $h : W\to X$ を写像とします。$h$ が連続なときの $i\circ h$ の連続性は明らか。$i\circ h$ が連続なとき $(j\circ i)\circ h$ が連続であり、$j\circ i$ が埋め込みであることから $h$ の連続性が従います。よって、$i$ は埋め込みです。
(3) コンパクト生成空間の閉集合はコンパクト生成空間だったので、通常の相対位相に関して埋め込みになっています。
(4) $C = j\circ i(X)$ は $Z$ の閉集合であり、$B = j^{-1}(j\circ i(X))$ は $Y$ の閉集合です。制限\[X\xrightarrow{i'} B\xrightarrow{j'} C\cong X\]を考えれば命題2.11.35より $i' : X\to B$ は閉埋め込みです。従って、閉埋め込み $B\to Y$ との合成である $i : X\to Y$ は閉埋め込みです。
(1) CGWH空間 $W$ と写像 $h : W\to Y\times Z$ を取り、$(i\times\Id_{Z})\circ h$ が連続として $h$ の連続性を示せばよいです。$h = (f, g)\in C(W, Y)\times C(W, Z)$ と分ければ $(i\times \Id_{Z})\circ h = (i\circ f, g)$ であり、この連続性は $i\circ f$ の連続性と $g$ の連続性を意味します。$i$ が埋め込みであったので $f$ の連続性が従い $h = (f, g)$ は連続です。以上により $i\times \Id_{Z}$ は埋め込みです。
$i$ が閉埋め込みのとき、$i(Y)\times Z$ は $X\times Z$ の閉集合であり、その部分空間としての位相は通常の相対位相に一致します。よって、$i\times \Id_{Z}$ は閉埋め込みです。
(2) $i\times j = (i\times \Id_{W})\circ (\Id_{X}\times j)$ であり、埋め込み同士の合成が埋め込みであること $($命題2.11.36$)$ から $i\times j$ も埋め込みです。同じく、$i, j$ が閉埋め込みならば $i\times j$ は閉埋め込みです。
関手 $k : \WH\to \CGWH$ は包含写像を保ちます。つまり、弱Hausdorff空間の間の包含写像 $i : A\to X$ に関手 $k$ を適用して得られる連続写像 $k(i) : k(A)\to k(X)$ はCGWH空間の圏における包含写像になります。$A'$ を $k(X)$ における通常の相対位相を与えた部分空間とします。連続写像 $k(i) : k(A)\to k(X)$ はただちに連続写像 $\varphi : k(A)\to k(A')$ を誘導し、連続写像 $k(A')\to k(X)\to X$ の値域側を $A$ に制限して関手 $k$ を適用すれば連続写像 $\psi : k(A')\to k(A)$ が得られます。$\varphi, \psi$ が互いに逆写像であることは明らかであり、同相 $k(A)\cong k(A')$ が得られるので $k(i)$ は包含写像になります。
しかし、関手 $h : \CG\to \CGWH$ は包含写像を必ずしも保ちません。例えば、集合 $X = \{-1, 0, +1\}$ に位相を\[\{\varnothing, \{-1\}, \{+1\}, \{-1, +1\}, X\}\]で与えた位相空間を考えます。この $X$ は次を満たします(i)は $X$ が $([-1, +1]/[-1, 0))/(0, +1]$ に同相であることから。(ii)は対角線集合 $\Delta_{X}$ の閉包が $\{-1, 0\}\times\{-1\}$ と $\{0, +1\}\times \{+1\}$ を含むことから従います。(iii)は自明です。。
従って、包含写像 $i : A\to X$ に対して関手 $h$ を適用すると単射性が崩れ、CGWH空間の圏における包含写像にはなりません。
コンパクト生成空間の性質として確かめたこと $($命題2.11.17$)$ はそのままCGWH空間においても成立します。一つ注意として、CGWH空間の間の連続写像全体からなる空間はそれ自体CGWH空間になります。
$X$ をコンパクト生成空間、$Y$ をCGWH空間とする。$C(X, Y)$ はCGWH空間である。
$C(X, Y)$ の位相の定め方からコンパクト生成空間であることは明らかなので、あとは弱Hausdorff性を確かめればよいです。対角線集合 $\Delta_{C(X, Y)}$ が $C(X, Y)\times C(X, Y)$ の閉集合であることを示します。写像 $\ev_{x} : C(X, Y)\to X$ を $\ev_{x}(f) = f(x)$ により定めます。$\ev_{x}$ は連続写像の合成\[C(X, Y)\to C(X, Y)\times X\to Y : f\mapsto (f, x)\mapsto f(x)\]により表されるので連続です。従って、$Y$ が弱Hausdorff空間であることと合わせて\[(\ev_{x}\times \ev_{x})^{-1}(\Delta_{Y}) = \{(f, g)\mid f(x) = g(x)\}\]は閉集合であり、\[\Delta_{C(X, Y)} = \{(f, g)\mid {}^{\forall}x\in X, \ f(x) = g(x)\} = \bigcap_{x\in X}(\ev_{x}\times \ev_{x})^{-1}(\Delta_{Y})\]は閉集合です。よって、$C(X, Y)$ は弱Hausdorff空間です。
CGWH空間の帰納極限、射影極限の存在について確認します。ここでは通常の位相空間の帰納極限を $\underset{\lambda\ \ }{\varinjlim^{o}}A_{\lambda}$、射影極限を $\underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda}$ と書き、これから導入するCGWH空間の帰納極限 $\underset{\lambda}{\varinjlim}A_{\lambda}$ や射影極限 $\underset{\lambda}{\varprojlim}A_{\lambda}$ と区別することにします。一般の位相空間に対する帰納極限・射影極限については2.7.4節を参照。
まず、位相空間の帰納系 $(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ であって各 $A_{\lambda}$ がCGWH空間であるものをCGWH空間の帰納系として定義します。CGWH空間の帰納系 $(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ に対し、その位相空間の帰納極限 $\underset{\lambda\ \ }{\varinjlim^{o}}A_{\lambda}$ は直和空間 $\bigsqcup_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ に定めた適切な同値関係 $\sim$ による商空間であったのでコンパクト生成空間にはなるのですが、この同値関係が閉同値関係になるとは限らないため弱Hausdorff性までは保証されません。そこで、CGWH空間の帰納極限 $\underset{\lambda}{\varinjlim}A_{\lambda}$ としては関手 $h$ を適用してCGWH空間とした $h(\underset{\lambda\ \ }{\varinjlim^{o}}A_{\lambda})$ を考えます。これは次の普遍性を持ちます。
$(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ をCGWH空間の帰納系とする。CGWH空間 $B$ と連続写像の族 $\{\varphi_{\lambda} : A_{\lambda}\to B\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられ、任意の $\lambda\leq \mu\in \Lambda$ に対して $\varphi_{\mu}\circ f_{\lambda\mu} = \varphi_{\lambda}$ を満たしているとする。このとき、連続写像 $\varPhi = \underset{\lambda}{\varinjlim}\varphi_{\lambda} : \underset{\lambda}{\varinjlim}A_{\lambda}\to B$ であって常に $\varPhi\circ f_{\lambda} = \varphi_{\lambda}$ を満たすものが一意に存在する。
まず、位相空間の帰納極限の普遍性より連続写像 $\varPhi^{o} : \underset{\lambda\ \ }{\varinjlim^{o}}A_{\lambda}\to B$ であって常に $\varPhi^{o}\circ f_{\lambda} = \varphi_{\lambda}$ を満たすものが一意に存在します。関手 $h$ を適用して $\varPhi = h(\varPhi^{o}) : \underset{\lambda}{\varinjlim}A_{\lambda}\to h(B) = B$ とすることで常に $\varPhi\circ f_{\lambda} = \varphi_{\lambda}$ を満たす連続写像 $\varPhi$ が得られます。$\varPhi$ の一意性は $\varPhi^{o}$ の一意性から明らかです。
位相空間の射影系 $(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ であって各 $A_{\lambda}$ がCGWH空間であるものをCGWH空間の射影系として定義します。CGWH空間の射影系 $(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ に対し、その位相空間の射影極限 $\underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda}$ は通常の直積空間 $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}A_{\lambda}$ の適切な部分空間であったので弱Hausdorff空間にはなるのですが、コンパクト生成空間であることまでは保証されません。そこで、CGWH空間の射影極限 $\underset{\lambda}{\varprojlim}A_{\lambda}$ としては関手 $k$ を適用してCGWH空間とした $k(\underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda})$ を考えます。これは次の普遍性を持ちます。
$(A_{\bullet}, f_{\bullet\bullet})_{\Lambda}$ をCGWH空間の射影系とする。CGWH空間 $B$ と連続写像の族 $\{\varphi_{\lambda} : B\to A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が与えられ、任意の $\lambda\leq \mu\in \Lambda$ に対して $f_{\lambda\mu}\circ \varphi_{\mu} = \varphi_{\lambda}$ を満たしているとする。このとき、連続写像 $\varPhi = \underset{\lambda}{\varprojlim}\varphi_{\lambda} : B\to \underset{\lambda}{\varprojlim}A_{\lambda}$ であって常に $f_{\lambda}\circ \varPhi = \varphi_{\lambda}$ を満たすものが一意に存在する。
まず、位相空間の射影極限の普遍性より連続写像 $\varPhi^{o} : B\to \underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda}$ であって常に $\varPhi^{o}\circ f_{\lambda} = \varphi_{\lambda}$ を満たすものが一意に存在します。よって、関手 $k$ を適用することでただちに条件を満たす連続写像 $\varPhi = k(\varPhi^{o}) : B\to \underset{\lambda\ \ }{\varprojlim}A_{\lambda}$ が得られます。$\varPhi$ の一意性は明らかです。
位相空間の射影極限 $\underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda}$ から通常の直積空間 $\prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}A_{\lambda}$ への包含写像 $i : \underset{\lambda\ \ }{\varprojlim^{o}}A_{\lambda}\to \prod_{\lambda\in\Lambda}^{o}A_{\lambda}$ は弱Hausdorff空間の間の包含写像になっているので補足2.11.38より関手 $k$ を適用して得られる連続写像 $k(i) : \underset{\lambda}{\varprojlim}A_{\lambda}\to \prod_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ はCGWH空間の圏における包含写像になっています。つまり、CGWH空間の射影極限は一般の位相空間の場合と同様にCGWH空間の圏における直積空間 $\prod_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}$ の部分空間としても定義できます。
CGWH空間の帰納系・射影系の間の射についても帰納極限・射影極限の間に連続写像が誘導されることは容易です。
基点付きCGWH空間 $X, Y$ に対してそのwedge和 $X\vee Y = (X\sqcup Y)/\{x_{0}, y_{0}\}$ はまた基点付きCGWH空間でありまず、直和 $X\sqcup Y$ はCGWH空間であり、基点による部分集合 $\{x_{0}, y_{0}\}$ は閉集合なので $X\vee Y$ において弱Hausdorff性は保たれています。よって、CGWH空間になります。、$X\vee Y\subset X\times Y$ が閉集合であることからsmash積 $X\wedge Y = (X\times Y)/(X\vee Y)$ もまた基点付きCGWH空間になりますもちろん、ここの $X\times Y$ は $X\times_{k}Y$ の意味。弱Hausdorff空間は $T_{1}$ 空間だったので $\{x_{0}\}\times Y$ と $X\times \{y_{0}\}$ は通常の直積位相を与えた $X\times_{0} Y$ における閉集合であり、関手 $k$ によってより強い位相で取り換えた後でも閉集合です。。
smash積について、基点付きCGWH空間においても一般の基点付き空間で考えたことと同様のことが成立します。
$X, Y, Z$ を基点付きCGWH空間とするとき、次の自然な同相が存在する。
(1) (2) 簡単です。
(3) 系2.11.18より $(X\times Y)\times Z\to (X\wedge Y)\times Z$ は商写像です。よって、$X\times Y\times Z\to (X\wedge Y)\wedge Z$ も商写像です。同様に $X\times Y\times Z\to X\wedge (Y\wedge Z)$ も商写像です。これは同相 $(X\wedge Y)\wedge Z\cong X\wedge (Y\wedge Z)$ を意味します。
(4) 容易に分かるように\begin{eqnarray*}(X\vee Y)\wedge Z & \cong & \dfrac{(X\sqcup Y)\times Z}{(X\sqcup Y)\times \{z_{0}\}\cup \{x_{0}, y_{0}\}\times Z} \\& \cong & \dfrac{(X\times Z)\sqcup (Y\times Z)}{(X\vee Z)\sqcup (Y\vee Z)} \cong (X\wedge Z)\vee (Y\wedge Z)\end{eqnarray*}です系2.11.18より $(X\sqcup Y)\times Z\to (X\vee Y)\times Z$ が商写像であることを最初の同相に使っています。。
$X, Y, Z$ を基点付きCGWH空間とするとき、次の自然な全単射\[C(X\wedge Y, Z)_{0}\to C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}\]が存在する。
まず、写像 $\varphi : C(X\wedge Y, Z)_{0}\to C(X, C(Y, Z))$ が合成\[C(X\wedge Y, Z)_{0} \xrightarrow{\text{incl.}} C(X\wedge Y, Z)\xrightarrow{\text{pull-back}} C(X\times Y, Z) \xrightarrow{\adj} C(X, C(Y, Z))\]により得られます。各 $f\in C(X\wedge Y, Z)_{0}$ に対して $\varphi(f)\in C(X, C(Y, Z))$ は各点 $x\in X$ で基点を保つ連続写像 $\varphi(f)(x)\in C(Y, Z)_{0}$ を与えており、$\varphi(f)$ は $X$ から $C(Y, Z)_{0}$ への写像として連続です。また、$\varphi(f)$ は基点 $x_{0}\in X$ において $C(Y, Z)_{0}$ の基点、つまり定値写像 $\varphi(f)(x_{0}) = \cst_{z_{0}}$ を与えているので $\varphi(f)$ は基点を保つ連続写像です。従って、$\varphi(f)\in C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}$ であり、写像 $\varPhi : C(X\wedge Y, Z)_{0}\to C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}$ が定まります。
$\varPhi$ の逆写像を構成します。写像 $\psi : C(X, X(Y, Z)_{0})_{0}\to C(X\times Y, Z)$ が合成\[C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}\xrightarrow{\text{incl.}} C(X, C(Y, Z)_{0})\xrightarrow{\text{push-out}} C(X, C(Y, Z))\xrightarrow{\adj^{-1}}C(X\times Y, Z)\]により得られます。各 $g\in C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}$ に対して $\psi(g)\in C(X\times Y, Z)$ は $X\vee Y$ において基点 $z_{0}$ を値に取るため基点を保つ連続写像 $\varPsi(g) : X\wedge Y\to Z$ が誘導されます。従って、写像 $\varPsi : C(X, C(Y, Z)_{0})_{0}\to C(X\wedge Y, Z)_{0}$ が定まり、これが $\varPhi$ の逆写像であることは容易です。
$X, Y, Z$ を基点付きCGWH空間とするとき、次の自然な全単射\[[X\wedge Y, Z]_{0}\to [X, C(Y, Z)_{0}]_{0}\]が存在する。
$I_{+} = I\sqcup \{*\}$ とおきます。任意の基点付きCGWH空間 $W$ に対して $W\wedge I_{+} = (W\times I)/(\{w_{0}\}\times I)$ です。命題2.11.44より全単射 $C(X\wedge Y\wedge I_{+}, Z)_{0}\to C(X\wedge I_{+}, C(Y, Z)_{0})_{0}$ が得られ、これにより $X\wedge Y$ から $Z$ への基点を保つhomotopyと $X$ から $C(Y, Z)_{0}$ への基点を保つhomotopyは一対一対応しています。つまり、全単射 $[X\wedge Y, Z]_{0}\to [X, C(Y, Z)_{0}]_{0}$ が定まります。
基点付きCGWH空間 $X$ に対する縮約懸垂 $\Sigma X = X\wedge S^{1}$ とループ空間 $\Omega X = C(S^{1}, X)_{0}$ はまた互いに随伴関係にあります。
$n$ を非負整数とする。位相空間 $X, Y$ に対して自然な全単射 $[\Sigma^{n} X, Y]_{0} = [X, \Omega^{n} Y]_{0}$ が存在する。
繰り返し系2.11.45を適用すればよいです。
以上です。
ここでは諸々の反例の紹介までは踏み込まなかった(私自身あまり追ってない)ですが、MathStackExchangeとかあさるとそれなりに出てくるようなので興味あればあさってみるのがよいかも。
参考文献
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