パラコンパクト空間を導入しその基本的な事実をまとめます。パラコンパクトHausdorff空間では $1$ の分割 $($単位の分割$)$ と呼ばれる位相空間上の種々の写像・構造の局所的な構成を大域的な構成へ飛躍させる強力な道具を持ち、この応用上の重要性から、まずはHausdorff空間におけるパラコンパクト性と $1$ の分割との関係について整備することを目標として話を進めます。その他、距離空間のパラコンパクト性やHausdorff空間におけるパラコンパクト性の特徴付けとして知られるMichaelの選択定理についても紹介します。
最初にパラコンパクト空間を定義します。
容易に確かめられることとして次があります。
コンパクト空間 $X$ はパラコンパクト空間である。
任意の開被覆に対してその有限部分被覆が局所有限な開細分です。
パラコンパクト空間 $X$ の閉集合 $A$ はパラコンパクト空間である。
$\{W_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $A$ の開被覆とします。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $X$ の開集合 $U_{\lambda}$ であって $U_{\lambda}\cap A = W_{\lambda}$ を満たすものを取ります。各 $U_{\lambda}$ と $U_{\lambda_{0}} = A^{c}$ による $X$ の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda\sqcup\{\lambda_{0}\}}$ に関する局所有限な開細分 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取ります。$\{V_{\mu}\cap A\}_{\mu\in M}$ が開被覆 $\{W_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の局所有限な開細分です。実際、局所有限な開被覆であることは構成から明らかであるし、細分になっていることは各 $\mu\in M$ に対して $V_{\mu}\subset U_{\lambda}$ となる $\lambda\in \Lambda\sqcup \{\lambda_{0}\}$ を取れば\[V_{\mu}\cap A\subset U_{\lambda}\cap A = \left\{\begin{array}{ll}W_{\lambda} & (\lambda\neq \lambda_{0}) \\\varnothing & (\lambda = \lambda_{0})\end{array}\right.\]なのでよいです。
パラコンパクト空間の族 $\{X_{\alpha}\}_{\alpha\in A}$ に対してその直和空間 $X = \bigsqcup_{\alpha\in A}X_{\alpha}$ はパラコンパクト空間である。特に、離散空間はパラコンパクトである。
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ を $X$ の開被覆とします。各 $\alpha\in A$ に対して $X_{\alpha}$ の開被覆 $\{U_{\lambda}\cap X_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の局所有限な開細分 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M_{\alpha}}$ を取り、$M = \bigsqcup_{\alpha\in A}M_{\alpha}$ とすれば $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ の局所有限な細分です。
以降の議論でよく使用する部分集合族の局所有限性に関する補題を用意しておきます。
(1) 命題2.1.19そのものです。
(2) 任意の開集合 $U$ と $\lambda\in \Lambda$ に対して $U\cap A_{\lambda}\neq \varnothing\Leftrightarrow U\cap \overline{A_{\lambda}}\neq \varnothing$ なのでそうです。
(3) $x\in X$ に対してその開近傍であって有限個の $B_{\mu}$ としか交わらないものを取ります。交わる $B_{\mu}$ の添字全体からなる有限集合を $M'$ とします。$A_{\lambda}$ が $U$ と交わるには $\lambda\in \varphi(M')$ が必要なので $U$ と交わる $A_{\lambda}$ は有限個です。よって、$\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ は局所有限です。
(4) $x\in X$ に対してその開近傍 $U$ であって有限個の $A_{\lambda}$ としか交わらないものを取ります。$U$ と交わる $A_{\lambda}$ の添字全体からなる集合を $\Lambda'$ とおきます。各 $\lambda\in \Lambda'$ に対して $x$ の開近傍 $U_{\lambda}$ であって $U_{\lambda}\subset U$ かつ $B_{\mu}\cap U_{\lambda}\neq \varnothing$ となる $\mu\in M_{\lambda}$ が有限個であるものを取り、$V = \bigcap_{\lambda\in \Lambda'}U_{\lambda}$ とおきます。この $V$ について $B_{\mu}\cap V\neq \varnothing$ となる $\mu\in M$ は有限個です。実際、$\mu\in M_{\lambda}$ に対して $B_{\mu}\cap V\neq \varnothing$ ならば $A_{\lambda}\cap U\neq \varnothing$ なので $\lambda$ は有限集合 $\Lambda'$ の元でなければならず、各 $\lambda\in \Lambda'$ に対して $B_{\mu}\cap V\neq \varnothing$ ならば $B_{\mu}\cap U_{\lambda}\neq \varnothing$ なので $B_{\mu}\cap V\neq \varnothing$ となる $\mu\in M_{\lambda}$ は有限個です。従って、$\mu\in M$ であって $B_{\mu}\cap V\neq \varnothing$ となるものは有限個です。以上より $\{B_{\mu}\}_{\mu\in M}$ は局所有限です。
$X$ をパラコンパクト空間とする。$X$ の任意の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、添字を保つ局所有限な開細分 $\{V_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が存在する。
$X$ の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して局所有限な開細分 $\{V'_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取り、写像 $\varphi : M\to \Lambda$ を任意の $\mu\in M$ に対して $V'_{\mu}\subset U_{\varphi(\mu)}$ であるように取ります。補題2.9.5より $\left\{V_{\lambda} = \bigcup_{\mu\in \varphi^{-1}(\lambda)}V'_{\mu}\right\}_{\lambda\in \Lambda}$ は局所有限な被覆であり、明らかに常に $V_{\lambda}\subset U_{\lambda}$ を満たしているので添字を保ち、開細分でもあります。
パラコンパクトHausdorff空間において正規性が保証されることは重要です。
パラコンパクトHausdorff空間 $X$ は正規空間である。
正則性を示してから正規性を示します。
まず、正則性を示します。任意に点 $a\in X$ と $a$ を元に持たない閉集合 $B\subset X$ を取り、それらを分離する開集合を構成します。まず、各 $b\in B$ に対して $a$ の開近傍 $U_{b}$ と $b$ の開近傍 $V_{b}$ であって互いに交わらないものを取ります。この $V_{b}$ たちと $V_{a} = B^{c}$ による $X$ の開被覆 $\{V_{x}\}_{x\in B\sqcup\{a\}}$ に関する局所有限な開細分 $\{W_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。$a$ の開近傍 $U'_{a}$ であって高々有限個の $W_{\lambda}$ たちとしか交わらないものを取り、$W_{\lambda}\cap U'_{a}\neq \varnothing$ かつ $W_{\lambda}\cap B\neq \varnothing$ となる $W_{\lambda}$ たちの添字を $\lambda_{1}, \dots, \lambda_{n}$ とします。各 $1\leq k\leq n$ に対して $W_{\lambda_{k}}\subset V_{b_{k}}$ となる $b_{k}\in B$ を選び$W_{\lambda_{k}}\cap B\neq \varnothing$ より $W_{\lambda_{k}}\not\subset B^{c} = V_{a}$ であるので $b_{k}\in B$ に取れます。、\[U_{a} = U'_{a}\cap \bigcap_{k = 1}^{n} U_{b_{k}},\]\[V_{B} = \bigcup_{\lambda\in \Lambda, \, W_{\lambda}\cap B\neq \varnothing}W_{\lambda}\]と定めればこれらが $a$ と $B$ を分離します。実際、$a\in U_{a}$ と $B\subset V_{B}$ は構成から明らかであり、あとは $W_{\lambda}\cap B\neq \varnothing$ となる $W_{\lambda}$ について $U_{a}\cap W_{\lambda} = \varnothing$ を示せばよいですが、これは $\lambda = \lambda_{k}$ となる $k$ が存在する場合には $U_{a}\subset U_{b_{k}}$, $W_{\lambda_{k}}\subset V_{b_{k}}$, $U_{b_{k}}\cap V_{b_{k}} = \varnothing$ から従い、$\lambda = \lambda_{k}$ となる $k$ が存在しない場合には $U_{a}\subset U'_{a}$ と $U'_{a}\cap W_{\lambda} = \varnothing$ から従います。
次に正規性を示します $($ほぼ正則性の証明と同じです$)$。$A, B\subset X$ を互いに交わらない閉集合とし、それらを分離する開集合を構成します。正則性より、各点 $b\in B$ に対して $A$ と $b$ を分離する開集合 $U_{b}$, $V_{b}$ を取ります。この $V_{b}$ たちと $V_{A} = B^{c}$ による開被覆 $\{V_{x}\}_{x\in B\sqcup\{A\}}$ に関する局所有限な開細分 $\{W_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。各 $a\in A$ に対してその開近傍 $U'_{a}$ であって高々有限個の $W_{\lambda}$ たちとしか交わらないものを取り、$W_{\lambda}\cap U'_{a}\neq \varnothing$ かつ $W_{\lambda}\cap B\neq \varnothing$ となる $W_{\lambda}$ たちの添字を $\lambda_{1}^{a}, \dots, \lambda_{n_{a}}^{a}$ とします。各 $\lambda_{k}^{a}$ に対して $W_{\lambda_{k}^{a}}\subset V_{b_{k}^{a}}$ となる $b_{k}^{a}\in B$ を選び、\[U_{A} = \bigcup_{a\in A}\left(U'_{a}\cap \bigcap_{k = 1}^{n_{a}}U_{b_{k}^{a}}\right),\]\[V_{B} = \bigcup_{\lambda\in \Lambda, \, W_{\lambda}\cap B\neq \varnothing}W_{\lambda}\]と定めればこれらが $A$ と $B$ を分離します正則性の証明と同様に、$a\in A$ と $W_{\lambda}\cap V\neq \varnothing$ となる $\lambda\in \Lambda$ に対して $U_{a} = U'_{a}\cap \bigcap_{k = 1}^{n_{a}}U_{b_{k}^{a}}$ と $W_{\lambda}$ は交わりません。。
パラコンパクトHausdorff空間 $X$ の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、添字を保つ局所有限な閉被覆 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が存在する。
パラコンパクトHausdorff空間の正則性から各 $x\in X$ に対してその開近傍 $V_{x}$ であって $\overline{V}_{x}\subset U_{\lambda}$ となる $\lambda\in \Lambda$ が存在するものを選びます。これにより定まる開被覆 $\{V_{x}\}_{x\in X}$ に対する局所有限な開細分 $\{W_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取ります。写像 $\varphi : M\to \Lambda$ を常に $\overline{W}_{\mu}\subset U_{\varphi(\mu)}$ を満たすように取り$W_{\mu}\subset V_{x}$ となる $x\in X$ を取り、その $x$ に対して $\overline{V}_{x}\subset U_{\lambda}$ となる $\lambda\in \Lambda$ を取り、それを $\varphi(\mu)$ とすればよいです。、$A_{\lambda} = \bigcup_{\mu\in\varphi^{-1}(\lambda)}\overline{W}_{\mu}$ と定めます。$\{\overline{W}_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が局所有限なので各 $A_{\lambda}$ は局所有限な閉集合たちの和集合であり閉集合です $($補題2.9.5$)$。また、構成より $A_{\lambda}\subset U_{\lambda}$ です。$\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が局所有限な被覆であることは補題2.9.5によります。
連結な広義の多様体ここでは指定した次元のEuclid空間の開集合に同相な開近傍を各点において持つ空でないHausdorff空間を広義の多様体と呼ぶことにしています。そして、さらに第二可算公理を課したものを単に多様体と呼んでいます。に対してパラコンパクト性と第二可算性が同値であること $($定理2.9.13$)$ を確かめます。
いくつか基本的な補題を用意します。
$X$ を位相空間とする。$X$ の局所有限な開被覆 $\{W_{\nu}\}_{\nu\in N}$ とコンパクト被覆 $\{K_{\nu}\}_{\nu\in N}$ であって任意の $\nu\in N$ に対して $K_{\nu}\subset W_{\nu}$ を満たすものが存在するならば $X$ はパラコンパクトである。
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆としてその局所有限な開細分を構成します。まず、各 $\nu\in N$ に対して $K_{\nu}$ の有限開被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M_{\nu}}$ であって条件
を満たすもの取ります各 $x\in K_{\nu}$ に対して $\lambda\in \Lambda$ であって $x\in U_{\lambda}$ となるものを固定し、$x$ の開近傍 $V_{x}$ を $V_{x}\subset U_{\lambda}\cap W_{\nu}$ であるよう取ることで $K_{\nu}$ の開被覆 $\{V_{x}\}_{x\in K_{\nu}}$ を構成すればその有限部分被覆が条件を満たす有限開被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M_{\nu}}$ になります。。$M = \bigsqcup_{\nu\in N}M_{\nu}$ とおき、$\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が局所有限な開細分になっていることを示します。まず、$X$ の開被覆であることは明らかです。各 $\mu\in M$ に対してある $\lambda\in \Lambda$ であって $V_{\mu}\subset U_{\lambda}$ となるものが存在することも構成から明らかであり、細分になっています。局所有限性は補題2.9.5から従います。以上により $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が局所有限な開細分であることが分かったので $X$ はパラコンパクトです。
局所コンパクトかつ $\sigma$ コンパクトなHausdorff空間 $X$ はパラコンパクトである。従って、第二可算公理を満たす局所コンパクトHausdorff空間はパラコンパクトである。
$X$ の $\sigma$ コンパクト性よりコンパクト部分空間による可算被覆 $\{L_{n}\}_{n\in \N}$ を固定し、次の条件を満たすコンパクト部分空間の族 $\{A_{n}\}_{n\in \N}$ を取ります$A_{0}, A_{n}$ の構成はどちらも同様なので後者のみ。$A_{n - 1}$ まで構成できているとします。$A_{n - 1}\cup L_{n}$ がコンパクトであることと $X$ の局所コンパクトHausdorff性より $A_{n - 1}\cup L_{n}$ の相対コンパクト開集合による有限開被覆を取ることができます。その被覆を構成する相対コンパクト開集合の閉包の和集合を $A_{n}$ とすればよいです。。
$A_{-2} = A_{-1} = \varnothing$ と考えたうえで $W_{n} = \Int A_{n + 1}\setminus A_{n - 2}$, $K_{n} = A_{n}\setminus \Int A_{n - 1}$ とおくことで族 $\{W_{n}\}_{n\in \N}$, $\{K_{n}\}_{n\in \N}$ を構成すればこれらは補題2.9.10の仮定を満たすので $X$ はパラコンパクトです。後半について、第二可算公理を満たす局所コンパクトHausdorff空間は $\sigma$ コンパクト $($命題2.6.28$)$ であったのでパラコンパクトです。
連結かつ局所コンパクトかつ局所第二可算なパラコンパクトHausdorff空間 $X$ は第二可算公理を満たす。
$X = \varnothing$ の場合は自明なので $X\neq \varnothing$ とします。条件により $X$ の局所有限な開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ であって各 $U_{\lambda}$ が相対コンパクトかつ第二可算公理を満たしかつ空でないものを取ることができます。以下の手順で $\Lambda$ の部分集合の増大列 $\{\Lambda_{n}\}_{n\in\N}$ を構成します。
以下のことを示します。
このことが示されれば $\Lambda$ は高々可算な添字集合であると分かり、$X$ は第二可算公理を満たす高々可算個の開集合により被覆されていることになるのでそれ自身が第二可算公理を満たすことが従います。
(i) 明らかです。
(ii) 帰納法より示します。$\Lambda_{n - 1}$ が有限集合であったときに $\Lambda_{n}$ も有限集合であることを示します。まず、各 $U_{\lambda}$ が相対コンパクトだったので $K_{n - 1} = \overline{\bigcup_{\mu\in \Lambda_{n - 1}}U_{\mu}}$ はコンパクトです。各 $x\in K_{n - 1}$ のに対して高々有限個の $U_{\lambda}$ としか交わらないような開近傍 $V_{x}$ を取ることができ、それらによる $K_{n - 1}$ の開被覆に対する有限部分被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取ります。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $U_{\lambda}\cap\bigcup_{\mu\in \Lambda_{n - 1}}U_{\mu}\neq \varnothing$ ならばある $\mu\in M$ に対して $U_{\lambda}\cap V_{\mu}\neq \varnothing$ となりますが、$\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ の構成からそのような $\lambda\in \Lambda$ は高々有限個です。よって、$\Lambda_{n}$ は有限集合です。
(iii) $\lambda\in \Lambda\setminus \bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}$ に対してある $\mu\in \bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}$ であって $U_{\lambda}\cap U_{\mu}\neq \varnothing$ となるものが存在したとすると、$\mu\in \Lambda_{n}$ となる $n$ に対して $\lambda\in \Lambda_{n + 1}$ となり矛盾するのでそのような $\mu$ は存在しません。従って、\[X = \bigcup_{\lambda\in \Lambda\setminus\bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}}U_{\lambda}\sqcup \bigcup_{\mu\in\bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}}U_{\mu}\]と $2$ つの開集合への直和分解が得られます。$X$ の連結性と $\bigcup_{\mu\in\bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}}U_{\mu}\neq \varnothing$ から $\bigcup_{\lambda\in \Lambda\setminus\bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n}}U_{\lambda} = \varnothing$ です。従って、$\bigcup_{n\in\N}\Lambda_{n} = \Lambda$ です。
では、本題の広義の多様体について。
連結な広義の多様体に対して次は同値である他にも、可分性、$\sigma$ コンパクト性、Lindelöf性のそれぞれとも同値です。。
ちなみに、前提条件から連結性を落とした場合は次の形になります。
広義の多様体に対して次は同値である。
(1) ⇒ (2) 各連結成分でパラコンパクトであり、従って、各連結成分は第二可算公理を満たします。
(2) ⇒ (1) 命題2.9.4から従います。
パラコンパクトではない連結な広義の多様体としてAlexandroff直線が知られています。$\omega_{1}$ を最小の非可算順序数として $L_{+} = (\omega_{1}\times [0, 1))\setminus \{(0, 0)\}$ とおき、これに自書式順序を与えますつまり、$(\alpha, x), (\beta, y)\in L_{+}$ に対して $\alpha < \beta$ または $\alpha = \beta$ かつ $x < y$ であることにより $(\alpha, x) < (\beta, y)$ を定義します。明らかに全順序です。。この $L_{+}$ に対して $\{t\in L_{+}\mid a < t < b\}$ の形の部分集合全体により生成する位相を与えたものがAlexandroff直線です。基本的な事実として次が成立します。証明はしません。
$L_{+}$ は(i)と(ii)より連結な広義の多様体ですが、最後の(iii)と定理2.9.13よりパラコンパクトでないことが従います。
$1$ の分割を導入します。
位相空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U} = \{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、次の条件をみたす同じ添字集合を持つ連続関数の族 $\{h_{\lambda} : X\to [0, 1]\}_{\lambda\in\Lambda}$ を開被覆 $\mathcal{U}$ に従属する $1$ の分割という。
Hausdorff空間においてはこの $1$ の分割が常に存在することとパラコンパクト性が同値になります。
Hausdorff空間 $X$ において次は同値である。
(1) ⇒ (2) $\mathcal{U} = \{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆とします。その局所有限な開細分 $\mathcal{V} = \{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取り、系2.9.9より添字を保つ閉被覆 $\mathcal{A} = \{A_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を取ります。
Urysohnの補題 $($定理2.3.26$)$ を用い、各 $\mu\in M$ に対して非負値連続関数 $k_{\mu} : X\to [0, 1]$ であって $k_{\mu}|_{A_{\mu}}\equiv 1$ かつ $\supp k_{\mu}\subset V_{\mu}$ を満たすものを取りますいったん、非負値連続関数 $k'_{\mu} : X\to [0, 1]$ を $k'_{\mu}|_{A_{\mu}}\equiv 1$ かつ $k'_{\mu}|_{V_{\mu}^{c}}\equiv 0$ であるように取り、$k_{\mu}(x) = \max\{2k'_{\mu}(x) - 1, 0\}$ とすればよいです。実際、$\supp k_{\mu}\subset {k'_{\mu}}^{-1}([1/2, 1])\subset V_{\mu}$ です。。写像 $\varphi : M\to \Lambda$ を常に $V_{\mu}\subset U_{\varphi(\mu)}$ を満たすように取り、各 $\lambda\in \Lambda$ に対して関数 $h_{\lambda} : X\to [0, 1]$ を\[h_{\lambda} = \dfrac{\sum_{\mu\in\varphi^{-1}(\lambda)}k_{\mu}}{\sum_{\mu\in M}k_{\mu}}\]により定めます。$\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が開被覆 $\mathcal{U}$ に従属する $1$ の分割であることを示します。
まず、$\{\supp k_{\mu}\}_{\mu\in M}$ の局所有限性から $h_{\lambda}$ の定義の分子 $\sum_{\mu\in\varphi^{-1}(\lambda)}k_{\mu}$ と分母 $\sum_{\mu\in M}k_{\mu}$ は局所的には連続関数の有限和であり、それぞれ連続写像として定義できています。そして、分母側は常に正値を取るので $h_{\lambda}$ は連続写像として定義できています。$\sum_{\lambda\in\Lambda}h_{\lambda}\equiv 1$ は各 $h_{\lambda}$ の定義から明らかです。続いて、$\{\supp h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の局所有限性ですが、$\{\supp k_{\mu}\}_{\mu\in M}$ が局所有限であること、そして、局所有限部分集合族に対する閉包と和の可換性 $($補題2.9.5$)$ から\[\supp h_{\lambda} = \overline{\bigcup_{\mu\in\varphi^{-1}(\lambda)}k_{\mu}^{-1}((0, 1])} = \bigcup_{\mu\in\varphi^{-1}(\lambda)}\supp k_{\mu}\]であるので補題2.9.5より従います。また、各 $\mu\in \varphi^{-1}(\lambda)$ に対して $\supp k_{\mu}\subset V_{\mu}\subset U_{\lambda}$ であるので $\supp h_{\lambda}\subset U_{\lambda}$ も分かります。以上により $\mathcal{U}$ に従属する $1$ の分割であることが分かりました。
(2) ⇒ (1) 開被覆 $\mathcal{U} = \{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、従属する $1$ の分割 $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。$\{\supp h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が局所有限なので $\{h_{\lambda}^{-1}((0, 1])\}_{\lambda\in\Lambda}$ が局所有限な開被覆を与え、これが $\mathcal{U}$ の細分であることは $\supp h_{\lambda}\subset U_{\lambda}$ から分かります。
パラコンパクトHausdorff空間において次のような台関数の族も便利な場合があります。
$X$ をパラコンパクトHausdorff空間とする。$X$ の任意の開被覆 $\mathcal{U} = \{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して同じ添字集合を持つ連続関数の族 $\{h_{\lambda} : X\to [0, 1]\}_{\lambda\in\Lambda}$ であって次の条件を満たすものが存在する。
系2.9.6より開被覆 $\mathcal{U}$ の添字を保つ局所有限な開細分 $\mathcal{V} = \{V_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取り、系2.9.9より添字を保つ閉被覆 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を取ります。各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $A_{\lambda}$ と $V_{\lambda}^{c}$ を分離する開集合 $S_{\lambda}, T_{\lambda}$ を $\overline{S_{\lambda}}\cap \overline{T_{\lambda}} = \varnothing$ であるように取り、Urysohnの補題 $($定理2.3.26$)$ から連続関数 $h_{\lambda} : X\to [0, 1]$ であって $h_{\lambda}|_{\overline{S_{\lambda}}}\equiv 1$, $h_{\lambda}|_{\overline{T_{\lambda}}}\equiv 0$ を満たすものを取ります。この $\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ が主張の条件を満たしています。
応用上は上記で導入したの台の局所有限性を課した $1$ の分割について知っていればよいですが、Hausdorff空間におけるパラコンパクト性はもう少し条件を緩めた広義の $1$ の分割広義の $1$ の分割というのはここだけの用語です。また、こちらの意味で単に $1$ の分割と呼ぶテキストもあります。の存在とも同値になるので、そのことを紹介しておきます。$($このあとのMichaelの選択定理 $($定理2.9.30$)$ の証明で使用します。$)$
位相空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U} = \{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、次の条件をみたす同じ添字集合を持つ連続関数の族 $\{h_{\lambda} : X\to [0, 1]\}_{\lambda\in\Lambda}$ を開被覆 $\mathcal{U}$ に従属する広義の $1$ の分割という。
Hausdorff空間 $X$ において次は同値である。
一つ補題を用意します。
正則空間 $X$ において次は同値である。
(1) ⇒ (2) パラコンパクト性の定義から明らかです。
(2) ⇒ (3) $X$ の正則性より開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ の開細分 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を各 $\mu\in M$ に対してある $\lambda\in \Lambda$ であって $\overline{V_{\mu}}\subset U_{\lambda}$ となるものが存在するように取ります各点 $x\in X$ に対して $x\in U_{\lambda}$ となる $\lambda\in \Lambda$ を選んだうえで正則性から $x$ と $U_{\lambda}^{c}$ を分離する開集合を取り、そのうち $x$ の開近傍であるもを $V_{x}$ としてそれら全て集めればよいです。。仮定よりこの開被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ に対して局所有限な細分 $\{A_{\nu}\}_{\nu\in N}$ を取ります。$\{\overline{A_{\nu}}\}_{\nu\in N}$ が開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ の局所有限な閉細分です。
(3) ⇒ (1) 開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ に関する局所有限な閉細分 $\{A_{\nu}\}_{\nu\in N}$ を取りここの閉であることは使わない。、さらに、$X$ の開被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を各 $V_{\mu}$ が高々有限個の $A_{\nu}$ としか交わらないように取ります。そしてさらに、$\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ の局所有限な閉細分 $\{B_{\xi}\}_{\xi\in\Xi}$ を取ります。各 $\nu\in N$ に対して $A_{\nu}$ と交わらない $B_{\xi}$ の添字を全て集めた集合を $\Xi_{\nu}$ とおき、集合 $W_{\nu}$ を\[W_{\nu} = X\setminus \bigcup_{\xi\in\Xi_{\nu}}B_{\xi}\]により定めます。
以下の流れで主張を示します。
(step 1) $\{B_{\xi}\}_{\xi\in\Xi}$ の局所有限性から各 $W_{\nu}$ は開集合であり、また、$A_{\nu}\subset W_{\nu}$ は構成から明らかです。
(step 2) $A_{\nu}\subset W_{\nu}$ なので $A_{\nu}\cap B_{\xi}\neq \varnothing$ ならば $W_{\nu}\cap B_{\xi}\neq \varnothing$ です。また、$A_{\nu}\cap B_{\xi} = \varnothing$ ならば $W_{\nu}$ の構成において $B_{\xi}$ を取り除いているので $W_{\nu}\cap B_{\xi} = \varnothing$ となり、逆も成立します。
(step 3) 開被覆 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ の取り方から各 $B_{\xi}$ は高々有限個の $A_{\nu}$ としか交わらず、(step 2)より $W_{\nu}$ とも高々有限個しか交わりません。従って、各点において高々有限個の $B_{\xi}$ としか交わらない開近傍を取ればそれが高々有限個の $W_{\nu}$ としか交わらない開近傍になっています。よって、$\{W_{\nu}\}_{\nu\in \N}$ は局所有限です。
(step 4) 構成より開細分になっており、各 $\nu\in N$ に対して $A_{\nu}\subset O_{\nu}$ なので開被覆になっています。局所有限性は各 $\nu\in N$ に対して $O_{\nu}\subset W_{\nu}$ であることと $\{W_{\nu}\}_{\nu\in N}$ の局所有限性から従います。よって、$\{O_{\nu}\}_{\nu\in N}$ は開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ の局所有限な開細分になっています。
では定理2.9.20の同値性の証明をします。
(1) ⇔ (2)は定理2.9.17で示しているし、(2) ⇒ (2)は明らかなので、あとは(3) ⇒ (3)を示せばよいです。
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆、$\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を従属する広義の $1$ の分割とします。以下の流れで示します。
(step 1) 任意に固定した $x\in X$ に対して有限個の $\Lambda$ の元 $\lambda_{1}, \dots, \lambda_{n}$ を $\sum_{k = 1}^{n}h_{\lambda_{k}}(x) > 1 - \varepsilon/2$ となるよう選びます。各 $1\leq k\leq n$ に対して $x$ の開近傍 $U_{k}$ を\[U_{k} = h_{\lambda_{k}}^{-1}((h_{\lambda_{k}}(x) - \varepsilon/2n, 1])\]により定め、$U = \bigcap_{k = 1}^{n}U_{k}$ とおきます。$U$ 上で\[\sum_{k = 1}^{n}h_{\lambda_{k}} > (1 - \varepsilon/2) - n(\varepsilon/2n) = 1 - \varepsilon\]なので、選んだ $\lambda_{1}, \dots, \lambda_{n}$ 以外の $\lambda\in \Lambda$ に対して $U\cap h_{\lambda}^{-1}((\varepsilon, 1]) = \varnothing$ です。以上により局所有限であることが分かりました。
(step 2) $x\in X$ に対して $h_{\lambda_{x}}(x) > 0$ となる $\lambda_{x}\in \Lambda$ を取り、さらに、$h_{\lambda_{x}}(x) > 1/n$ となる $n\geq 2$ を取ります。$x$ の開近傍 $h_{\lambda_{x}}^{-1}((1/n, 1])$ が各 $A_{k, \lambda}$ の構成より $k > n$ においてどの $A_{k, \lambda}$ とも交わらないことと $k\leq n$ における各 $\{A_{k, \lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ の局所有限性から $x$ の開近傍であって高々有限個の $A_{k, \lambda}$ としか交わらないものが構成されます。よって、$\{A_{n, \lambda}\}_{k\geq 2, \ \lambda\in\Lambda}$ は局所有限です。これが細分であることは構成より明らかです。
(step 3) 点 $x\in X$ と $x$ を元に持たない閉集合 $A\subset X$ を取ります。$U_{0} = \{x\}^{c}$ と $U_{1} = A^{c}$ による $X$ の開被覆に対して広義の $1$ の分割 $h_{0}, h_{1}$ を取れば $h_{1}^{-1}((1/2, 1])$ と $h_{0}^{-1}((1/2, 1])$ が $\{x\}$ と $A$ を分離する開集合として得られます。よって、$X$ は正則です。
一般にはパラコンパクト空間どうしの直積がパラコンパクトになるとは限りませんが、一方に局所コンパクトHausdorff性を仮定することで直積空間のパラコンパクト性が導かれます。
$X$ を局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間、$Y$ をパラコンパクト空間とするとき、直積空間 $X\times Y$ はパラコンパクトである。
$X$ の相対コンパクトな開被覆 $\{W_{\nu}\}_{\nu\in N}$ を取り、必要であれば系2.9.6より局所有限なもので取り換えておきます。さらに、系2.9.9よりその添字を保つ閉細分 $\{K_{\nu}\}_{\nu\in N}$ を取ります。$W_{\nu}$ が相対コンパクトなので $K_{\nu}$ はコンパクトです。
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X\times Y$ の開被覆とします。以下の流れで局所有限な開細分 $\{V_{\mu}\}_{\mu\in M}$ を構成します。
を満たすものが取れる。
(step 1) 各 $x\in K_{\nu}$ に対して $(x, y)\in X\times Y$ の開近傍 $S_{\nu, y, x}\times T_{\nu, y, x}$ を $S_{\nu, y, x}\subset W_{\nu}$ かつある $\lambda\in \Lambda$ であって $S_{\nu, y, x}\times T_{\nu, y, x}\subset U_{\lambda}$ となるものが存在するように取り、$K_{\nu}$ の開被覆 $\{S_{\nu, y, x}\}_{x\in K_{\nu}}$ の有限部分被覆 $\{S_{\nu, y, x_{k}}\}_{1\leq k\leq l_{\nu, y}}$ を取り、$T_{\nu, y} = \bigcap_{1\leq k\leq l_{\nu, y}}T_{\nu, y, x_{k}}$ とおきます。これが条件を満たすことは構成から容易であり、あとは添字を取り換えればよいです。
(step 2) 示すことはないです。
(step 3) 開被覆であることは明らかです。残りも $V_{\nu, \alpha, k}\subset S_{\nu, \varphi(\alpha), k}\times T_{\nu, \varphi(\alpha)}$ と条件(ii)からよいです。
(step 4) $\{T'_{\nu, \alpha}\}_{\alpha\in A_{\alpha}}$ が $Y$ の局所有限な部分集合族なので $\{W_{\nu}\times T'_{\nu, \alpha}\}_{\alpha\in A_{\nu}}$ は $X\times Y$ の局所有限な部分集合族です。また、各 $\alpha\in A_{\nu}$ に対して $\{V_{\nu, \alpha, k} = S_{\nu, \varphi(\alpha), k}\times T'_{\nu, \alpha}\}_{1\leq k\leq l_{\nu, \varphi(\alpha)}}$ は $W_{\nu}\times T'_{\nu, \alpha}$ の有限部分集合族であるので補題2.9.5より $\{V_{\nu, \alpha, k}\}_{\alpha\in A_{\nu}, \ 1\leq k\leq l_{\nu, \varphi(\alpha)}}$ は局所有限です。
(step 5) (step 3)より開細分です。局所有限性は $\{W_{\nu}\times Y\}_{\nu\in N}$ の局所有限性と(step 4)と補題2.9.5より従います。
次はこの結果の繰り返しより直ちに従います。
有限個の局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間の直積は局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間である。
ファイバー束 $E\to B$ (ここでは定義しない)に対し、底空間 $B$ が局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間、ファイバー $F$ がパラコンパクト空間であれば全空間 $E$ のパラコンパクト性が命題2.9.22の証明ほぼそのままに示されます。
距離空間 $X$ が必ずパラコンパクトHausdorff空間になることを確認します。ここでは $O_{r}(x)$ により $x$ を中心とする半径 $r$ の開球体を表すとします。
距離空間 $X$ はパラコンパクトHausdorff空間である。
この証明は[M. E. Rudin, A new proof that metric spaces are paracompact]によります。
$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆とします。また、添字集合 $\Lambda$ には整列順序を与えます。各 $\lambda\in \Lambda$ と正整数 $n\in \N_{+}$ に対して以下の手順で開集合 $V_{\lambda, n}$ を取ることで開集合族 $\{V_{\lambda, n}\}_{\lambda\in \Lambda, \ n\in \N}$ を構成します。
$\{V_{\lambda, n}\}_{\lambda\in \Lambda, \ n\in \N}$ が細分になっていることは容易です。局所有限性を示します。$x\in X$ に対して $x\in V_{\lambda, n}$ となる $n\in \N$ の存在する最小の $\lambda$ を取り、その上で $x\in V_{\lambda, n}$ となる $n$ を取り、さらに、$O_{2^{-m}}(x)\subset V_{\lambda, n}$ となる正整数 $m\in \N_{+}$ を固定します。次のことを示します。
(a) $k > n$ なので $X_{\mu, k}$ と $V_{\lambda, n}$ は交わらず$X_{\mu, k}$ の定義において $V_{\lambda, n}$ を除いているため。、$O_{2^{-m}}(x)\subset V_{\lambda, n}$ より $O_{2^{-m}}(x)\cap X_{\mu, k} = \varnothing$ であるため任意の $y\in X_{\mu, k}$ に対して $d(x, y)\geq 2^{-m}$ です。このことと $2^{-(n + m)} + 2^{-k}\leq 2^{-(n + m - 1)} \leq 2^{-m}$ より任意の $y\in X_{\mu, k}$ に対して $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap O_{2^{-k}}(y) = \varnothing$ となるので $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap V_{\mu, k} = \varnothing$ です。
(b) $\mu < \nu\in \Lambda$ に対して $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap V_{\mu, k}\neq \varnothing$, $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap V_{\nu, k}\neq \varnothing$ であったとして矛盾を導きます。$y\in X_{\mu, k}$ であって $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap O_{2^{-k}}(y)\neq \varnothing$ となるもの、$z\in X_{\nu, k}$ であって $O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap O_{2^{-k}}(z)\neq \varnothing$ となるものを取ります。$u\in O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap O_{2^{-k}}(y)$, $v\in O_{2^{-(n + m)}}(x)\cap O_{2^{-k}}(z)$ を取れば\[d(y, z)\leq d(y, u) + d(u, v) + d(v, z) < 2^{-k} + 2\cdot 2^{-(n + m)} + 2^{-k}\leq 3\cdot 2^{-k}\]です。いま、(i)より $U_{\mu}\cap X_{\nu} = \varnothing$ であり、(iii)より $O_{3\cdot 2^{-k}}(y)\subset U_{\mu}$ であるので $O_{3\cdot 2^{-k}}(y)\cap X_{\nu, k} = \varnothing$ です。よって、$d(y, z)\geq 3\cdot 2^{-k}$ ですが、これは $d(y, z) < 3\cdot 2^{-k}$ に矛盾です。
以上により $X$ の開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に対して局所有限な開細分 $\{V_{\lambda, n}\}_{\lambda\in \Lambda, \ n\in \N}$ が構成され、従って、距離空間 $X$ はパラコンパクトHausdorff空間です。
Michaelの選択定理と呼ばれるパラコンパクト性の特徴付けとその応用について紹介します。
まずはMichaelの選択定理を述べるために必要な集合値写像単に集合を値に取る写像のこと。ここでは集合 $X$ の各点に対して集合 $Y$ の部分集合を対応させる写像 $X\to 2^{Y}$ のみが現れます。に関する基本的な用語・事実をまとめます。
$X, Y$ を位相空間とし、$F : X\to 2^{Y}$ を集合値写像とする。
簡単な例ですが、写像 $f : X\to Y$ に対して集合値写像 $F : X\to 2^{Y}$ を $F(x) = \{f(x)\}$ により定めれば任意の $V\subset Y$ に対して $f^{-1}(V) = F^{-1}(V)$ です。特に、$f$ が連続ならば $F$ は下半連続です。
$X, Y$ を位相空間とし、下半連続な集合値写像 $F : X\to 2^{Y}$ が与えられているとする。連続写像 $g : Z\to X$ に対し、引き戻し $g^{*}F = F\circ g : Z\to 2^{Y}$ は下半連続である。特に、下半連続な集合値写像 $F$ の部分空間 $A\subset X$ への制限 $F|_{A} : A\to 2^{Y}$ は下半連続である。
$Y$ の任意の開集合 $V$ に対して $(F\circ g)^{-1}(V) = g^{-1}(F^{-1}(V))$ であり、これは $F$ の下半連続性と $g$ の連続性から $Z$ の開集合です。従って、引き戻し $g^{*}F$ は下半連続です。制限 $F|_{A}$ の下半連続性は $g$ を包含写像に取れば分かります。
$X, Y$ を位相空間とし、下半連続な集合値写像 $F : X\to 2^{Y}$ と $X$ の閉集合 $A$ における連続選択写像 $g : A\to Y$ が与えられているとする。このとき、集合値写像\[G : X\to 2^{Y} : x\mapsto \left\{\begin{array}{ll}\{g(x)\} & (x\in A) \\F(x) & (x\notin A)\end{array}\right.\]は下半連続である。
$Y$ の開集合 $V$ に対して\begin{eqnarray*}G^{-1}(V) & = & g^{-1}(V)\cup (F^{-1}(V)\cap A^{c}) \\& = & ((F^{-1}(V)\cap A)\setminus (A\setminus g^{-1}(V)))\cup (F^{-1}(V)\cap A^{c}) \\& = & F^{-1}(V)\setminus (A\setminus g^{-1}(V))\end{eqnarray*}です$2$ つ目の等号には $g^{-1}(V)\subset F^{-1}(V)\cap A$ を使う。。$F^{-1}(V)$ が $X$ の開集合、$A\setminus g^{-1}(V)$ が閉集合 $A$ における閉集合なので $G^{-1}(V)$ は開集合です。
では、Michaelの選択定理です。以下ではBanach空間 $Y$ の閉かつ凸一般に、線型空間 $V$ の部分集合 $A$ が凸であるとは、$A\neq \varnothing$ かつ任意の $a_{0}, a_{1}\in A$, $t\in [0, 1]$ に対して $(1 - t)a_{0} + ta_{1}\in A$ を満たすことをいいます。な部分集合全体からなる集合族を $\mathcal{F}(Y)$ と表すことにします。また、$Y$ の部分集合 $F$ と正実数 $r > 0$ に対して $F$ の $r$ 開近傍 $\bigcup_{y\in F}O_{r}(y)$ を $O_{r}(F)$ により表すとします。
$X$ をHausdorff空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) 以下の流れで示します。
(step 1) $g(x)\in O_{\varepsilon'}(F(x))$ より点 $y_{x}\in F(x)$ であって $\|g(x) - y_{x}\| < \varepsilon'$ となるものを取り、正実数 $\varepsilon''$ を $0 < \varepsilon '' < \min\{\varepsilon, \varepsilon' - \|g(x) - y_{x}\|\}$ であるように取ります。$F$ が下半連続であることから $F^{-1}(O_{\varepsilon''}(y_{x}))$ は $x$ の開近傍であり、また、$g$ の連続性から $g^{-1}(O_{\varepsilon''}(g(x)))$ も $x$ の開近傍です。$U_{x} = F^{-1}(O_{\varepsilon''}(y_{x}))\cap g^{-1}(O_{\varepsilon''}(g(x)))$ と $y_{x}$ が条件を満たします。実際、$x'\in U_{x}$ に対して $y_{x}\in O_{\varepsilon}(F(x'))$ であることは\[x'\in F^{-1}(O_{\varepsilon''}(y_{x}))\Rightarrow F(x')\cap O_{\varepsilon''}(y_{x})\neq \varnothing\Rightarrow y_{x}\in O_{\varepsilon''}(F(x'))\Rightarrow y_{x}\in O_{\varepsilon}(F(x'))\]からよく、$y_{x}\in O_{\varepsilon'}(g(x'))$ であることは $x'\in g^{-1}(O_{\varepsilon''}(g(x)))$ から\[\|g(x') - y_{x}\|\leq \|g(x') - g(x)\| + \|g(x) - y_{x}\| < \varepsilon'\]であるのでよいです。
(step 2) 各点 $x\in X$ に対して(step 1)の開近傍 $U_{x}$ と点 $y_{x}\in Y$ を取ります。$X$ がパラコンパクトHausdorff空間であることから開被覆 $\{U_{x}\}_{x\in X}$ に従属する $1$ の分割 $\{h_{x}\}_{x\in X}$ を取ります。写像 $f : X\to Y$ を $f(x') = \sum_{x\in X}h_{x}(x')\cdot y_{x}$ により定めれば目的の連続写像が得られます各 $h_{x}\cdot y_{x}$ の連続性は係数倍 $\cdot : \R\times Y\to Y$ の連続性と補題2.2.26から。$f$ の連続性も同様に加法 $+ : Y\times Y\to Y$ の連続性と補題2.2.26から。$h_{x}$ の構成により $f$ が局所的には連続関数 $h_{x}\cdot y_{x}$ の有限和であることに注意。あとは各 $x'\in X$ に対して $f(x')\in O_{\varepsilon}(F(x'))\cap O_{\varepsilon'}(g(x'))$ であることですが、これは $O_{\varepsilon}(F(x'))\cap O_{\varepsilon'}(g(x'))$ が凸であること、$h_{x}(x') > 0$ となる $x$ に対して $y_{x}\in O_{\varepsilon}(F(x'))\cap O_{\varepsilon'}(g(x'))$ であること、$f(x')$ が $h_{x}(x') > 0$ となる全ての $x = x_{1}, \dots, x_{n}$ により $f(x') = \sum_{k = 1}^{n}h_{x_{k}}(x')\cdot y_{x_{k}}$ と表されること、$\sum_{k = 1}^{n}h_{x_{k}}(x') = 1$ であること、一般に線型空間の凸集合 $A$ とその点 $a_{1}, \dots, a_{n}\in A$ と非負実数 $t_{1}, \dots, t_{n}$ に対して $\sum_{k = 1}^{n}t_{k} = 1\Rightarrow \sum_{k = 1}^{n}t_{k}\cdot a_{k}\in A$ であることから従います。。
(step 3) 条件を満たす連続写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ は(step 2)により帰納的に構成されます。任意の非負整数 $N\in \N$ と点 $x\in X$ に対して\[N < n\leq m\Rightarrow \|f_{n}(x) - f_{m}(x)\|\leq \sum_{k = N + 1}^{\infty}\|f_{k}(x) - f_{k + 1}(x)\|\leq 2^{-N}\]なのでこの連続写像列は一様Cauchy列であり、$Y$ の完備性よりある連続写像 $f$ に一様収束します $($命題2.8.33$)$。
あとは各 $x\in X$ に対して $f(x)\in F(x)$ であることを示せばよいです。任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して非負整数 $n\in \N$ であって $\|f(x) - f_{n}(x)\| < \varepsilon/2$ かつ $2^{-n} < \varepsilon/2$ を満たすものを取り、$y\in F(x) \cap O_{\varepsilon/2}(f_{n}(x))$ を取れば $\|f(x) - y\| < \varepsilon$ であるので $f(x)\in \overline{F(x)} = F(x)$ です。
(2) ⇒ (1) $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆として従属する広義の $1$ の分割を構成します。$Y$ を $\R^{\Lambda}$ の部分集合\[\left\{(y_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\in \R^{\Lambda}\relmid \sum_{\lambda\in\Lambda}|y_{\lambda}| < +\infty\right\}\]にノルム $\|\cdot\| : y\mapsto \sum_{\lambda\in\Lambda}|y_{\lambda}|$ を与えて得られるBanach空間とします。$Y$ の部分集合 $C$ を\[C = \left\{y\in Y\relmid {}^{\forall}\lambda\in \Lambda, \ y_{\lambda}\geq 0 \text{ and } \sum_{\lambda\in \Lambda}y_{\lambda} = 1\right\}\]により定め、各 $x\in X$ に対して $F(x)\in \mathcal{F}(Y)$ を\[F(x) = C\cap \{y\in Y\mid {}^{\forall}\lambda\in \Lambda, \ x\notin U_{\lambda}\Rightarrow y_{\lambda} = 0\}\]と定めることで集合値写像 $F : X\to \mathcal{F}(Y)$ を構成します。各 $F(x)$ が閉かつ凸であることは明らかであり、$F$ は定義できています。
この $F$ が下半連続であることを示します。任意の $x\in X$, $y = (y_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\in F(x)$, $\varepsilon > 0$ に対して $F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ が $x$ の近傍であることを示せばよいです任意の $Y$ の開集合 $V$ に対して $F^{-1}(V)$ が $X$ の開集合であることを示したいわけですが、そのためには $F^{-1}(V)$ の各点がその内点になっていることを示せばよいです。そしてそのためには $x\in F^{-1}(V)$ に対して $y\in F(x)\cap V$ とその $V$ に含まれる開近傍 $O_{\varepsilon}(y)$ を固定して $F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ が $x$ の近傍になっていることを示せばよいです。従って、任意の $x\in X$, $y\in F(x)$, $\varepsilon > 0$ に対して $F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ が $x$ の近傍であることを示せば $F$ の下半連続性が得られます。。有限個の $\lambda_{1}, \dots, \lambda_{n}\in \Lambda$ を各 $1\leq k\leq n$ に対して $x\in U_{k}$ かつ $\delta = \sum_{k = 1}^{n}y_{\lambda} > 1 - \varepsilon/2$ であるように取ります。$U = \bigcap_{k = 1}^{n}U_{k}$ とおくとき $U\in F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ となることを示します。$x'\in U$ とします。$y' = (y'_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}\in F(x')$ を\[y'_{\lambda} = \left\{\begin{array}{ll}y_{\lambda} + 1 - \delta & (\lambda = \lambda_{1}) \\y_{\lambda} & (\lambda = \lambda_{2}, \dots, \lambda_{n}) \\0 & (\text{otherwise})\end{array}\right.\]により定めれば $\|y' - y\| < 2(1 - \delta) < \varepsilon$ であるので $F(x')\cap O_{\varepsilon}(y)\neq \varnothing$ です。よって、$x'\in F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ であり、$U\subset F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ なので $F^{-1}(O_{\varepsilon}(y))$ は $x$ の近傍です。以上により $F$ は下半連続です。
仮定より $F$ の連続選択写像 $f : X\to Y$ を取ることができ、その $\lambda$ 成分を $h_{\lambda} : X\to \R$ とすれば $h_{\lambda}$ は $U_{\lambda}^{c}$ において常に $0$ を取り $\sum_{\lambda\in\Lambda}h_{\lambda}\equiv 1$ も満たします。従って、$\{h_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ は開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ に従属する広義の $1$ の分割です。よって、定理2.9.20より $X$ はパラコンパクトです。
Michaelの選択定理の直接の系として次が分かります。
$X, Y$ をパラコンパクトHausdorff空間、$A$ を $X$ の閉集合とする。連続写像 $f : A\to Y$ による等化空間 $Z = X\cup_{f}Y$ はパラコンパクトHausdorff空間である。
$Z$ のHausdorff性は命題2.7.56より従います。パラコンパクト性を示します。$B$ をBanach空間、$F : Z\to \mathcal{F}(B)$ を下半連続な集合値写像とします。まず、$Y$ のパラコンパクト性とMichaelの選択定理 $($定理2.9.30$)$ から $Y$ 上の連続選択写像 $g: Y\to B$ が得られます。引き戻し $p^{*}F : X\sqcup Y\to \mathcal{F}(B)$ は下半連続であり、$(p|_{A\sqcup Y})^{*}g$ は $p^{*}F$ に関する閉集合 $A\sqcup Y$ 上の連続選択写像です。集合値写像 $G : X\sqcup Y\to \mathcal{F}(B)$ を\[G(x) = \left\{\begin{array}{ll}\{g(p(x))\} & (x\in A\sqcup Y) \\F(p(x)) & (x\notin A\sqcup Y)\end{array}\right.\]により定義すれば命題2.9.29より下半連続です。$X\sqcup Y$ のパラコンパクト性とMichaelの選択定理からこの $G$ に対する連続選択写像 $h : X\sqcup Y\to B$ を取れば、この $h$ による誘導写像 $Z\to B$ が $F$ の連続選択写像になります。以上とMichaelの選択定理より $Z$ はパラコンパクトです。
$(X_{\bullet}, i_{\bullet\bullet})_{\N}$ を位相空間の帰納系とし、以下の条件を満たすとする。
このとき、帰納極限 $X = \underset{n}{\varinjlim}X_{n}$ はパラコンパクトHausdorff空間である。
各 $X_{n}$ は $X$ の閉集合と考えることにします。$X$ のHausdorff性は命題2.7.57より従います。パラコンパクト性を示します。$B$ をBanach空間、$F : X\to \mathcal{F}(B)$ を下半連続な集合値写像とします。連続写像の列 $\{f_{n} : X_{n}\to B\}_{n\in\N}$ であって以下の条件を満たすものを構成します。
$f_{n - 1}$ まで構成できているとき、集合値写像 $G_{n} : X_{n}\to B$ を\[G_{n}(x) = \left\{\begin{array}{ll}\{f_{n - 1}(x)\} & (x\in X_{n - 1}) \\F(x) & (x\notin X_{n - 1})\end{array}\right.\]により定め、Michaelの選択定理 $($定理2.9.30$)$ を用いてこの $G_{n}$ の連続選択写像を取り $f_{n}$ とすればよいので実際に構成されます。帰納極限 $f = \underset{n}{\varinjlim}f_{n} : X\to B$ が $F$ の連続選択写像であり、従って、Michaelの選択定理より $X$ はパラコンパクトです。
また、パラコンパクト性のさらに別の特徴付け $($命題2.9.35$)$ が確かめられます。まずは少し準備をします。
$X$ を位相空間、$\mathcal{A} = \{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ をその閉被覆とする。$X$ の任意の部分集合 $F$ について次が同値であるとき、閉被覆 $\mathcal{A}$ は $X$ を支配する[E. Michael, Countinuous selections. I]におけるdominateの直訳。という。
閉被覆 $\mathcal{A}$ が $X$ を支配しているかどうかを確かめるとき、実際には(1) ⇒ (2)は勝手に成立しているので逆のみ確かめれば十分です。$X$ を支配する閉被覆に関する事実として次を示します。
$X$ を位相空間、$\mathcal{A} = \{A_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ を支配する閉被覆とする。次が成立する。
(1) 任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $F\cap A_{\lambda}$ を閉集合とする $X$ の部分集合 $F$ が閉集合であることを示せばよいですが、これは $\mathcal{A}$ が $F$ の被覆になっていることと $\mathcal{A}$ が $X$ を支配していることからただちに従います。
(2) 部分族 $\{A_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda'}$ について、和集合 $A' = \bigcup_{\lambda\in\Lambda'}A_{\lambda}$ は任意の $\lambda\in \Lambda'$ に対して $A'\cap A_{\lambda} = A_{\lambda}$ を満たすので、$\mathcal{A}$ が $X$ を支配していることから $A'$ は閉集合です。
(3) $F$ を $Y$ の閉集合とするとき、各 $\lambda\in \Lambda'$ に対して $f^{-1}(F)\cap A_{\lambda} = (f|_{A_{\lambda}})^{-1}(F)$ は閉集合なので $\mathcal{A}$ が $X$ を支配していることと合わせて $f^{-1}(F)$ も閉集合です。よって、$f$ は連続です。
では、本題の特徴付けについてです。
$X$ をHausdorff空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) $\{X\}$ を考えればよいです。
(2) ⇒ (1) Michaelの選択定理 $($定理2.9.30$)$ より $Y$ をBanach空間、$F : X\to \mathcal{F}(Y)$ を下半連続な集合値写像として $F$ の連続選択写像 $f : X\to Y$ を構成すればパラコンパクト性が従います。$\Lambda$ の部分集合 $M$ と $\bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}$ 上で定義された連続選択写像 $g : \bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}\to Y$ の対 $(M, g)$ 全体からなる集合 $\mathcal{C}$ を考え、$\mathcal{C}$ 上の順序を $(M, g), (M', g')\in \mathcal{C}$ に対して\[(M, g)\leq (M', g')\Leftrightarrow M\subset M' \text{ and } \ g'|_{\bigcup_{\mu\in M}A_{\mu}} = g\]とすることで与えます。これは明らかに帰納的順序集合になっており$\mathcal{M}\subset \mathcal{C}$ を全順序部分集合とするとき、$M' = \bigcup_{(M, g)\in\mathcal{M}}M$ として $\bigcup_{\mu\in M'}A_{\mu}$ 上で定義された連続選択写像 $g'$ を各 $A_{\mu}$ 上で $\mu\in M$ を満たす $(M, g)\in \mathcal{M}$ の $g$ に一致するように定義すれば $\mathcal{M}$ の上界 $(M', g')$ が構成されます。実際に $g'$ が連続になることは命題2.9.34から従います。、その極大元 $(\tilde{M}, \tilde{g})$ を取ることができます。$\tilde{M} = \Lambda$ を示せば $\tilde{g}$ が $X$ 上で定義された連続選択写像となり証明が完結します。
$\tilde{M}\neq \Lambda$ として矛盾を導きます。$\lambda\in \Lambda\setminus \tilde{M}$ を取ります。$A = A_{\lambda}\cap \bigcup_{\mu\in\tilde{M}}A_{\mu}$ は閉集合なので、集合値写像 $G : A_{\lambda}\to \mathcal{F}(Y)$ を\[G(x) = \left\{\begin{array}{ll}\{\tilde{g}(x)\} & (x\in A) \\F(x) & (x\notin A)\end{array}\right.\]により定めれば命題2.9.29より下半連続であり、Michaelの選択定理より $G$ に対する連続選択写像 $h$ が存在します。写像 $\tilde{h} : \bigcup_{\mu\in \tilde{M}\sqcup\{\lambda\}}A_{\mu}\to Y$ を\[\tilde{h}(x) = \left\{\begin{array}{ll}\tilde{g}(x) & \left(x\in \bigcup_{\mu\in \tilde{M}}A_{\mu}\right) \\h(x) & (x\in A_{\lambda})\end{array}\right.\]により定めれば連続選択写像 $\tilde{g}$ の $\bigcup_{\mu\in \tilde{M}\sqcup\{\lambda\}}A_{\mu}$ への拡張になっているので\[(\tilde{M}, \tilde{g}) < (\tilde{M}\sqcup\{\lambda\}, \tilde{h})\]を満たし、$(\tilde{M}, \tilde{g})$ の極大性に矛盾します。よって、$\tilde{M} = \Lambda$ です。
Hausdorff空間におけるパラコンパクト性の特徴付けとしてここで紹介したものをまとめておきます。
$X$ をHausdorff空間とする。次は同値である。
以上です。
特になし。
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