Euclid空間 $\R^{n}$ の位相は $($集合としての $\R^{n}$ 上に$)$ 標準的に定まる距離関数\[d : \R^{n}\times \R^{n}\to \R : (x, y)\mapsto \sqrt{\sum_{k = 1}^{n}(y_{k} - x_{k})^{2}}\]に関する開球体 $O_{r}(x) := \{y\in \R^{n}\mid d(x, y) < r\}$ たちから生成される位相として与えていました。一般の集合上においても同等の性質を持つ距離関数を与えることで位相空間を構成でき、その位相的な性質にはEuclid空間と共通するものも多いです証明もEuclid空間の場合のままでよいこともありますが、ここでは繰り返し証明することにします。。
まずは、一般に距離関数とそこから定まる距離位相を定義します。
距離空間に関する基本的な事実をまとめます。
$(X, d)$ を距離空間とする。
(1) 有限個の開球体の共通部分 $U := \bigcap_{k = 1}^{n}O_{r_{k}}(x_{k})$ の各点 $x\in U$ に対して $x$ を中心とする開球体 $O_{r}(x)$ であって $O_{r}(x)\subset U$ を満たすものが存在することを示せばよく、そのためには半径 $r$ として\[r := \min\{r_{k} - d(x_{k}, x)\mid 1\leq k\leq n\}\]を取ればよいです。実際、任意の $y\in O_{r}(x)$ に対して常に\[d(x_{k}, y)\leq d(x_{k}, x) + d(x, y)\leq d(x_{k}, x) + r\leq d(x_{k}, x) + (r_{k} - d(x_{k}, x)) = r_{k}\]であることから $y\in \bigcap_{k = 1}^{n}O_{r_{k}}(x_{k})$ が成立しているので $O_{r}(x)\subset U$ です。
(2) 点 $x\in X$ の開近傍 $U$ に対し、(1)より $U$ に含まれる $x$ の開近傍として開球体 $O_{r}(x')$ を取ることができます。正整数 $n$ を $1/n < r - d(x, x')$ を満たす様に十分大きく取れば $O_{1/n}(x)\subset O_{r}(x')\subset U$ であり、基本開近傍系であることが従います。よって、距離空間 $X$ は第一可算公理を満たします。
(3) $X$ の相異なる $2$ つの点 $x\neq y$ に対し、$r := d(x, y)/2$ とおけば $O_{r}(x), O_{r}(y)$ が $x, y$ を分離する開集合になるので、距離空間 $X$ はHausdorff空間です。
集合 $X$ 上の距離関数 $d_{1}, d_{2}$ が与えられており、ある正実数 $m, M$ であって任意の $x, y\in X$ に対して\[m\cdot d_{2}(x, y)\leq d_{1}(x, y)\leq M\cdot d_{2}(x, y)\]を満たすものが取れたとします。このとき、距離関数 $d_{1}$ と $d_{2}$ は同値であるといいます実際、これは $X$ 上の距離関数全体のなす集合おける同値関係になっています。反射律は $m = M = 1$ とすればよく、対称律も\[m\cdot d_{2}\leq d_{1}\leq M\cdot d_{2}\Rightarrow M^{-1}\cdot d_{1}\leq d_{2}\leq m^{-1}\cdot d_{1}\]であることからよいでしょう。推移律は距離関数 $d_{1}, d_{2}, d_{3}$ に対して\[m\cdot d_{2}\leq d_{1}\leq M\cdot d_{2},\]\[m'\cdot d_{3}\leq d_{2}\leq M'\cdot d_{3}\]が成立しているならば\[mm'\cdot d_{3}\leq d_{1}\leq MM'\cdot d_{3},\]であるのでよいです。。
重要なのは同値な距離関数の定める距離位相が互いに一致していることです。
$d_{1}, d_{2}$ を集合 $X$ 上の互いに同値な距離関数とする。このとき、それぞれの定める距離位相 $\mathcal{O}_{1}, \mathcal{O}_{2}$ は一致する。
$\mathcal{O}_{1}, \mathcal{O}_{2}$ に関する開球体をそれぞれ $O_{r}(x), O'_{r}(x)$ と書くことにします。正実数 $m, M$ を $m\cdot d_{2}\leq d_{1}\leq M\cdot d_{2}$ であるように固定します。任意の点 $x, y\in X$ と正実数 $r > 0$ に対して\[d_{2}(x, y) < M^{-1}\cdot r\Rightarrow d_{1}(x, y) < r\]であることから常に $O'_{M^{-1}r}(x)\subset O_{r}(x)$ であり、$\mathcal{O}_{1}\leq \mathcal{O}_{2}$ が分かります。同様に、\[d_{1}(x, y) < m\cdot r\Rightarrow d_{2}(x, y) < r\]であることから常に $O_{mr}(x)\subset O'_{r}(x)$ であり、$\mathcal{O}_{2}\leq \mathcal{O}_{1}$ が分かります。
距離空間 $(X, d)$ とその部分集合 $A$ が与えられたとき、$X$ 上の距離関数 $d : X\times X\to \R$ の制限 $d_{A} : A\times A\to \R$ は容易に分かるように $A$ 上の距離関数になります。従って、$A$ には位相空間 $(X, \mathcal{O}_{d})$ の部分空間としての位相と距離空間 $(A, d_{A})$ としての位相が定まりますが、これらは一致します。$($つまり、距離空間の部分空間といったときにどちらの意味での部分空間であるかは気にする必要ありません。$)$
$(X, d)$ を距離空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。このとき、$A$ に定まる位相空間 $(X, \mathcal{O}_{d})$ における相対位相 $\mathcal{O}$ と距離関数 $d_{A}$ に関する位相 $\mathcal{O}'$ は一致する。
$X$ における距離関数 $d$ に関する開球体を $O_{r}(x)$ と書き、$A$ における距離関数 $d_{A}$ に関する開球体を $O'_{r}(x)$ と書くことにします。$\mathcal{O}$ に関する $x\in A$ の基本開近傍系として $\{O_{r}(x)\cap A\mid r\in (0, +\infty)\}$ を取ることができ、また、任意の $r > 0$ に対して $O_{r}(x)\cap A = O'_{r}(x)$ であることからこれは $\mathcal{O}'$ に関する $x$ の基本開近傍系でもあります。$A$ の各点で共通の基本開近傍系が取れるので両者は一致します。
$(X, d_{X}), (Y, d_{Y})$ を距離空間とします。写像 $f : X\to Y$ が任意の $x, x'\in X$ に対して\[d_{X}(x, x') = d_{Y}(f(x), f(x'))\]を満たすとき等長写像といいます。例えば、距離空間 $X$ とその部分距離空間 $A\subset X$ に対して包含写像 $i : A\to X$ は等長写像です。等長写像が必ず単射になることは容易です等長写像 $f : X\to Y$ に対して常に\[f(x) = f(x')\Rightarrow d_{Y}(f(x), f(x')) = 0\Rightarrow d_{X}(x, x') = 0\Rightarrow x = x'\]です。。
また、等長写像 $f$ が全単射ならば等長同型写像もしくは単に等長同型といいます。等長同型の逆写像や等長同型どうしの合成もまた等長同型です。距離空間 $X, Y$ の間に等長同型 $f : X\to Y$ が存在するとき、$X$ と $Y$ は等長同型であるといいます。
有限個の距離空間 $\{(X_{k}, d_{k})\}_{1\leq k\leq n}$ が与えられたとき、直積集合 $\prod_{1\leq k\leq n}X_{k}$ 上の距離関数 $d_{p} \ (1\leq p < +\infty)$ を各 $x = (x_{1}, \dots, x_{n})$, $y = (y_{1}, \dots, y_{n})$ に対して\[d_{p}(x, y) := \left(\sum_{k = 1}^{n}d_{k}(x_{k}, y_{k})^{p}\right)^{1/p}\]とすることで定義することができ、また、\[d_{\infty}(x, y) := \max\{d_{k}(x_{k}, y_{k})\mid 1\leq k\leq n\}\]とすることでも距離関数 $d_{\infty}$ が定まります。
そして、これら距離関数が定める距離位相はもとの距離空間たちの直積位相に一致します。
距離空間の有限族 $\{(X_{k}, d_{k})\}_{1\leq k\leq n}$ が与えられているとする。
(1) まず、$p\in [1, +\infty)$ に対して $d_{p}$ が距離関数であることについて、正値性と対称性は明らかであり、三角不等式もMinkowski不等式 $($命題1.7.7$)$ から直ちに従います。$d_{\infty}$ についても正値性と対称性は明らかであり、三角不等式は\begin{eqnarray*}\max\{d_{k}(x_{k}, z_{k})\mid 1\leq k\leq n\} & \leq & \max\{d_{k}(x_{k}, y_{k}) + d_{k}(y_{k}, z_{k})\mid 1\leq k\leq n\} \\& \leq & \max\{d_{k}(x_{k}, y_{k})\mid 1\leq k\leq n\} + \max\{d_{k}(y_{k}, z_{k})\mid 1\leq k\leq n\}\end{eqnarray*}よりよいです。
これらが互いに同値な距離関数であることは、各 $p\in [1, +\infty)$ に対して $d_{\infty}\leq d_{p}\leq n^{1/p}\cdot d_{\infty}$ であることからよいです。
(2) $X_{k}$ における開球体を $O_{r}^{k}(x_{k})$ と書くことにすると、距離関数 $d_{\infty}$ に関する点 $x = (x_{1}, \dots, x_{n})$ を中心とする半径 $r$ の開球体 $O'_{r}(x)$ は $\prod_{k = 1}^{n}O_{r}^{k}(x_{k})$ であり、これは直積位相における開集合です。よって、$\mathcal{O}'\leq \mathcal{O}$ です。
また、直積位相に関する点 $x = (x_{1}, \dots, x_{n})$ の開近傍 $U$ に対し、各 $X_{k}$ における $x_{k}$ の開近傍 $U_{k}$ たちを $\prod_{k = 1}^{n}U_{k}\subset U$ を満たすように取り、さらに正実数 $r > 0$ を全ての $1\leq k\leq n$ に対して $O_{r}(x_{k})\subset U_{k}$ を満たす様に小さく取れば $O'_{r}(x)\subset \prod_{k = 1}^{n}U_{k}\subset U$ となります。よって、$\mathcal{O}\leq \mathcal{O}'$ です。
距離空間における点列の収束性は距離関数を用いて以下のように記述することもできます。
$(X, d)$ を距離空間とする。$X$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ と点 $x\in X$ に対して次は同値である。
(1) ⇒ (2) (1)より任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある非負整数 $N\in \N$ であって $n > N\Rightarrow x_{n}\in O_{\varepsilon}(x)$ を満たすものが取れます。ここから直ちに $\underset{n\to\infty}{\lim}d(x_{n}, x) = 0$ が得られます。
(2) ⇒ (1) $U$ を $x$ の開近傍とします。ある正実数 $\varepsilon > 0$ であって $O_{\varepsilon}(x)\subset U$ となるものを取り、さらにこの $\varepsilon$ に対して(2)より非負整数 $N\in \N$ であって $n > N\Rightarrow d(x_{n}, x) < \varepsilon$ を満たすものを取ります。この $N$ に対して $n > N\Rightarrow x_{n}\in U$ です。よって、点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ は $x$ に収束します。
距離空間 $(X, d_{X})$ と $(Y, d_{Y})$ の間の写像 $f : X\to Y$ の $($各点での$)$ 連続性は距離位相以外にも距離関数を用いることで記述が可能であり、距離関数による連続性は距離位相による連続性に一致します。そのこと含め、連続性との同値条件を次の形でまとめておきます。
$(X, d_{X})$, $(Y, d_{Y})$ を距離空間とし、$f : X\to Y$ を写像とする。各点 $x\in X$ に対して次は同値である。
$X, Y$ における開球体をそれぞれ $O_{r}(x), O'_{r}(y)$ と書くことにします。
(1) ⇒ (2) 正実数 $\varepsilon > 0$ を固定します。$f(x)$ の開近傍 $O'_{\varepsilon}(f(x))$ に対して(1)より $f^{-1}(O'_{\varepsilon}(f(x)))$ は $x$ の近傍であり、正実数 $\delta > 0$ であって $O_{\delta}(x)\subset f^{-1}(O'_{\varepsilon}(f(x)))$ を満たすものが取れます。この $\delta$ に関して常に $d_{X}(x, x') < \delta\Rightarrow d_{Y}(f(x), f(x')) < \varepsilon$ を満たします。
(2) ⇒ (1) $V$ を $f(x)$ の開近傍とします。正実数 $\varepsilon > 0$ であって $O'_{\varepsilon}(f(x))\subset V$ となるものを取り、(2)より正実数 $\delta > 0$ であって常に $d_{X}(x, x') < \delta\Rightarrow d_{Y}(f(x), f(x')) < \varepsilon$ を満たすものを取れば、$f(O_{\delta}(x))\subset O'_{\varepsilon}(f(x))$ であり、$O_{\delta}(x)\subset f^{-1}(V)$ が従います。これは $f^{-1}(V)$ が $x$ の近傍であることを意味し、よって、$f$ は $x$ において連続です。
(1) ⇔ (3) $X$ が第一可算公理を満たしているので、各点での連続性と点列連続性は同値です。$($命題2.4.6$)$
(3) ⇔ (4) 命題2.8.9より明らかです。
距離空間上で定義できる基本的な関数の連続性を示しておきます。
$X$ を距離空間とする。次が成立する。
(1) 任意の $x, y\in X$ と $\varepsilon > 0$ に対して\[O_{\varepsilon/2}(x)\times O_{\varepsilon/2}(y)\subset d^{-1}((f(x, y) - \varepsilon, f(x, y) + \varepsilon))\]であるので距離関数 $d$ は連続です。
(2) 任意の $x, y\in X$ に対して\begin{eqnarray*}f(x) - f(y) & = & \inf\{d(x, a)\mid a\in A\} - \inf\{d(y, a)\mid a\in A\} \\& \leq & \inf\{d(x, y) + d(y, a)\mid a\in A\} - \inf\{d(y, a)\mid a\in A\} \\& = & d(x, y) + \inf\{d(y, a)\mid a\in A\} - \inf\{d(y, a)\mid a\in A\} \\& = & d(x, y)\end{eqnarray*}であり、同様に $f(y) - f(x)\leq d(x, y)$ なので $|f(x) - f(y)| \leq d(x, y)$ です。これにより $f_{A}$ の各点での連続性が従うので $f_{A}$ は連続です。$f_{A}^{-1}(0) = \overline{A}$ は容易です。
距離空間 $X$ は完全正規である。
距離空間ではその直径・半径を考えることができ、それらが有界値であることにより有界性を定義します。
$(X, d)$ を距離空間とする。
部分空間 $A\subset X$ に対しては距離空間としての上記の直径、半径、有界性を考えることにする。
言葉で言い換えると、直径とは $2$ 点間の距離の上限のことであり、半径とはその距離空間を $1$ つの閉球体 $D_{r}(x)$ によって覆おうとしたときに必要な半径 $r$ の下限のことです。
容易に分かるように、直径と半径には次の関係式が成立します。
$X$ を有界な距離空間とする。このとき、\[\rad X\leq \diam X\leq 2\rad X\]が成立する。
$(X, d)$ を距離空間とする。任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して $X$ を有限個の半径 $\varepsilon$ の開球体 $O_{\varepsilon}(x_{1}), \dots, O_{\varepsilon}(x_{n})$ たちによって覆うことが可能なとき、$X$ は全有界であるという。$X$ はプレコンパクトであるともいう。また、部分空間 $A\subset X$ が全有界であることをそれ自体が距離空間として全有界であることと定める。
有界性、全有界性について容易に分かることとして次が挙げられます。
$X$ を距離空間とする。
(1) $X$ が全有界であるとき、有限個の半径 $1$ の開球体 $O_{1}(x_{0}), \dots, O_{1}(x_{n})$ たちによる $X$ の被覆を取り、$r := 1 + \max\{d(x_{0}, x_{k})\mid 1\leq k\leq n\}$ とすれば $X\subset O_{r}(x_{0})$ であるので $X$ は有界です。
(2) コンパクト性から任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対して開被覆 $\{O_{\varepsilon}(x)\}_{x\in X}$ の有限部分被覆が取れるので全有界です。また、(1)より有界です有界性だけであれば距離関数 $d$ がコンパクト空間上の連続関数であることに注意して、その最大値の存在からも示されます。。
(3) 自明に見えますが少し注意が必要です。任意に正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。$X$ が全有界なので半径 $\varepsilon / 2$ の開球体 $O_{\varepsilon / 2}(x_{1}), \dots, O_{\varepsilon / 2}(x_{n})$ たちによる $X$ の被覆が取れます。添字の順番を適当に取り換え、ちょうど最初 $m$ 個の $O_{\varepsilon / 2}(x_{1}), \dots, O_{\varepsilon / 2}(x_{m})$ が $A$ と交わるとするとき、各 $1\leq k\leq m$ に対して $a_{k}\in A\cap O_{\varepsilon / 2}(x_{k})$ を固定することで\[A\subset \bigcup_{k = 1}^{m}O_{\varepsilon / 2}(x_{k})\subset \bigcup_{k = 1}^{m}O_{\varepsilon}(a_{k})\]です。以上より $A$ は全有界です。
全有界な距離空間 $X$ は第二可算公理を満たす。
各正整数 $n\in \Np$ に対して有限個の半径 $\tfrac{1}{n}$ の開球体 $O_{1/n}(x_{n, 1}), \dots, O_{1/n}(x_{n, m_{n}})$ であって $X$ を被覆するものを固定します。$\mathcal{U} := \{O_{1/n}(x_{n, k})\mid n\in \Np, 1\leq k\leq m_{n}\}$ は明らかに高々可算であり、これが開基であることを示せばよいです。$X$ の開集合 $U$ とその点 $x$ を取り、$\mathcal{U}$ に属す $x$ の開近傍であって $U$ に含まれるものが存在することを示せばよいです。まず、正実数 $r > 0$ を $O_{r}(x)\subset U$ であるように取ります。$\tfrac{1}{n} < \tfrac{r}{2}$ を満たすような $n\in \Np$ を取ります。ある $1\leq k\leq m_{n}$ が存在して $x\in O_{1/n}(x_{n, k})$ ですが、$n$ の取り方から\[O_{1/n}(x_{n, k})\subset O_{r/2}(x_{n, k})\subset O_{r}(x)\subset U\]です。この $O_{1/n}(x_{n, k})$ が欲しかった $\mathcal{U}$ の元です。
コンパクト距離空間の開被覆に対してLebesgue数と呼ばれる数の存在を示しておきます。
$X$ をコンパクト距離空間、$\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆とする。このとき、ある正実数 $\delta > 0$ であって次の条件を満たすものが存在する。
そのような $\delta$ をLebesgue数という。
有限部分被覆を取り、添字を取り換えて $U_{1}, \dots, U_{n}$ により $X$ が被覆されているとします。各 $1\leq k\leq n$ に対して連続関数 $f_{k}(x) := \min\{d(x, u)\mid u\in U_{k}^{c}\}$ を取ります。関数 $F := \max\{f_{k}\mid 1\leq k\leq n\}$ はコンパクト空間上の連続関数なので最小値をある点 $x_{0}$ において取ります。$x_{0}\in U_{k}$ とするとき、$f_{k}(x_{0}) > 0$ であるのでその最小値 $\delta$ は正値です。
この状況において、直径 $\delta$ 未満の部分集合 $A$ はある $U_{k}$ に含まれます。実際、適当に固定した点 $a\in A$ に対してある $k$ であって $f_{k}(a)\geq \delta$ となるものを取ることができ、その $k$ について $O_{\delta}(a)\subset U_{k}$ であるので $A\subset O_{\delta}(a)$ と合わせて $A\subset U_{k}$ が従います。
完備距離空間を導入します。これは次に定義するCauchy列と呼ばれる「いかにも収束していそうな点列」が実際にある点に収束することを保証された距離空間のことで、荒く言い換えれば点列の極限について非常によく振舞う空間です。
$X$ を距離空間とする。$X$ の点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ がCauchy列であるとは、任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある非負整数 $N\in \N$ が存在し、任意の非負整数 $n, m > N$ に対して $d(x_{n}, x_{m}) < \varepsilon$ を満たすことと定める。
距離空間 $X$ が完備であるとは、その任意のCauchy列が収束することと定める。
注意として、一般の距離空間において収束点列は必ずCauchy列になっており、完備距離空間とはその点列が収束することとCauchy列であることとが同値である距離空間のことです。
容易に確かめられることとして完備距離空間の閉集合はまた完備です。
完備距離空間 $X$ の閉集合 $A$ は完備である。
部分空間 $A$ のCauchy列は全空間 $X$ のCauchy列でもあるので $X$ の完備性から $X$ のある点 $x$ に収束しますが、$A$ が閉集合だったので $x\in A$ です。よって、閉集合 $A$ は完備です。
完備性は同値な距離関数において保たれる性質です。
$d_{1}, d_{2}$ を集合 $X$ 上の互いに同値な距離関数とする。距離空間 $(X, d_{1})$ が完備であることと $(X, d_{2})$ が完備であることとは同値である。
$(X, d_{1})$ が完備であったとします。$(X, d_{2})$ に関するCauchy列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ は $d_{1}, d_{2}$ の同値性から $(X, d_{1})$ のCauchy列であるので $(X, d_{1})$ において収束する点列です。$d_{1}, d_{2}$ の同値性から $(X, d_{1})$ と $(X, d_{2})$ が同相であるので $(X, d_{2})$ においても収束する点列です。よって、$(X, d_{2})$ は完備です。$(X, d_{2})$ が完備なときに $(X, d_{1})$ が完備であることも同様です。
一般に、$2$ つの距離空間が互いに同相であってもその間で完備性が保たれるとは限りません。例えば、実数体 $\R$ は完備ですが、それと同相な有界開区間 $(-1, 1)$ は完備ではないです。例えば、Cauchy列 $\{1 - 1/n\}_{n\in \N_{+}}$ は $(-1, 1)$ の点に収束しません。
言い換えると、同じ台集合上の $2$ つの距離関数が同じ位相を定めていても完備性が保たれるとは限りません。同相写像 $f : \R\to (-1, 1)$ を固定して $\R$ の距離 $d'$ を $d'(x, y) := |f(x) - f(y)|$ と定めれば、これは通常の距離の定める位相と同様の距離位相を定めながら完備ではないです。
完備距離空間どうしの直積がまた完備距離空間になることも基本的です。
$\{(X_{\lambda}, d_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ を完備距離空間の有限族とし、その直積集合上の距離関数として2.8.1.4節の $d_{p} \ (p\in [1, +\infty])$ を考える。
(1) $d_{p}$ の定め方から容易に分かります。
(2) 直積集合におけるCauchy列 $\{(x_{\lambda, n})_{\lambda\in\Lambda}\}_{n\in\N}$ に対して\[\lim_{n\to\infty}(x_{\lambda, n})_{\lambda\in\Lambda} = \left(\lim_{n\in\N}x_{\lambda, n}\right)_{\lambda\in\Lambda}\]が容易に分かります。
完備距離空間において成立する重要な定理をまず紹介します。
$X$ を完備距離空間とする。$\{U_{n}\}_{n\in\N}$ を $X$ の稠密開集合の列とするとき、共通部分 $\bigcap_{n\in\N}U_{n}$ は稠密である。
$x\in X$ とその開近傍 $V$ を任意に取り、$V\cap \left(\bigcap_{n\in\N}U_{n}\right) \neq \varnothing$ を示します。まず、以下のように閉球体の列 $\{B_{n}\}_{n\in\N}$ を構成します。
実際に構成できることですが、まず $B_{0}$ について、$U_{0}$ の稠密性から $V\cap U_{0}$ は空でない開集合であり、適当に固定した点 $x_{0}\in V\cap U_{0}$ を中心とする閉球体であって $V\cap U_{0}$ に含まれるものを取ることができるので、それを $B_{0}$ とすればよいです。以下、$B_{n}$ についても同様に取っていけばよいです。
各 $B_{n}$ の中心を $x_{n}$ とするとき、任意の $n\leq m$ に対して $x_{m}\in B_{m}\subset B_{n}$ であることから $d(x_{n}, x_{m})\leq 1/n$ が従うので点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ はCauchy列です。その収束点 $x_{\infty}$ は各 $B_{n}$ の元になっているので\[x_{\infty}\in \bigcap_{n\in\N}B_{n}\subset V\cap \bigcap_{n\in\N}U_{n}\]が従います。以上により稠密性が示されました。
$X$ を空でない距離空間、$f : X\to X$ を写像とする。さらに、ある実数 $r\in [0, 1)$ が存在して任意の $x, y\in X$ に対して\[d(f(x), f(y))\leq r\cdot d(x, y)\]が成立しているとする。このとき、点 $x_{\infty}\in X$ であって $f(x_{\infty}) = x_{\infty}$ を満たすものが一意に存在する。
任意に点 $x_{0}\in X$ を固定し、$x_{n + 1} = f(x_{n})$ として点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を構成します。$a := d(x_{0}, x_{1})$ とおくと、任意の $n\in \N$ に対して $d(x_{n}, x_{n + 1})\leq ar^{n}$ が成立します。非負整数 $N\in \N$ に対し、非負整数 $n\leq m$ が $n, m > N$ を満たせば\[d(x_{n}, x_{m})\leq \sum_{k = n}^{m - 1}d(x_{k}, x_{k + 1})\leq \sum_{k = N + 1}^{\infty}ar^{k} = \dfrac{ar^{N + 1}}{1 - r}\]であるので点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ はCauchy列です。そして、これは $X$ の完備性からある点 $x_{\infty}$ に収束し、\[d(f(x_{\infty}), x_{\infty}) = d(f(x_{\infty}), \lim_{n\to\infty}x_{n + 1}) = \lim_{n\to\infty}d(f(x_{\infty}), f(x_{n}))\leq \lim_{n\to\infty}r\cdot d(x_{\infty}, x_{n}) = 0\]であるので $f(x_{\infty}) = x_{\infty}$ です。
一意性を示します。点 $x_{\infty}, x'_{\infty}$ に対して $f(x_{\infty}) = x_{\infty}$, $f(x'_{\infty}) = x'_{\infty}$ であったとします。仮定から\[d(x_{\infty}, x'_{\infty}) = d(f(x_{\infty}), f(x'_{\infty})) \leq r\cdot d(x_{\infty}, x'_{\infty})\]であり、$0\leq r < 1$ と合わせて $d(x_{\infty}, x'_{\infty}) = 0$、つまり、$x_{\infty} = x'_{\infty}$ が従います。
$X$ を位相空間、$Y$ を距離空間とします。写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ の収束性は $Y$ に与えた距離関数により記述することができ、例えば、各点収束性については\[\lim_{n\to\infty}f_{n}(x) = y :\Leftrightarrow \lim_{n\to\infty}d(f_{n}(x), y) = 0\]であるし、一様収束性についても以下のように定義されます。
$X$ を位相空間、$Y$ を距離空間とする。写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ が写像 $f : X\to Y$ に一様収束するとは、\[\lim_{n\to\infty}\sup\{d(f_{n}(x), f(x))\mid x\in X\} = 0\]が成立することと定める。
重要な事実として、連続写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ が写像 $f : X\to Y$ に一様収束するとき、その極限 $f$ が連続写像になることが挙げられます。
$X$ を位相空間、$Y$ を距離空間とする。連続写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ が写像 $f : X\to Y$ に一様収束するならば $f$ は連続である。
$Y$ に与えた距離関数を $d$、その距離関数に関する開球体を $O_{r}(y)$ と表すことにします。
各点 $a\in X$ での $f$ の連続性を示せばよく、そのためには任意に取った正実数 $\varepsilon > 0$ に対して $f^{-1}(O_{\varepsilon}(f(a)))$ が $a$ の近傍であることを示せばよいです。$n\in \N$ を $\sup\{d(f_{n}(x), f(x))\mid x\in X\} < \varepsilon/3$ に取り、$a$ の近傍 $U := f_{n}^{-1}(O_{\varepsilon/3}(f(a)))$ を取ります。このとき、任意の $x\in U$ に対して\[d(f(x), f(a))\leq d(f(x), f_{n}(x)) + d(f_{n}(x), f_{n}(a)) + d(f_{n}(a), f(a)) < \varepsilon\]であるので $U\subset f^{-1}(O_{\varepsilon}(f(a)))$ です。よって、$f^{-1}(O_{\varepsilon}(f(a)))$ は $a$ の近傍であり、$f$ は $a\in X$ において連続です。
さて、$Y$ が完備距離空間の場合、写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ は各点ごとにCauchy列を与えていればある写像 $f$ に各点収束しますが、そのCauchy列になっているかどうかの評価を点 $x\in X$ によらず一様に可能な場合が重要です。
$X$ を位相空間、$Y$ を距離空間とし、写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ が与えられているとする。任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある非負整数 $N\in \N$ が存在し、任意の $n, m > N$ に対して\[\sup\{d(f_{n}(x), f_{m}(x))\mid x\in X\} < \varepsilon\]を満たすとする。このとき、写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ は一様Cauchy列であるという。
$X$ を位相空間、$Y$ を完備距離空間とする。連続写像列 $\{f_{n} : X\to Y\}_{n\in\N}$ が一様Cauchy列ならばある連続写像 $f$ に一様収束する。
一様Cauchy列であることから各点 $x\in X$ ごとに定まる $Y$ の点列 $\{f_{n}(x)\}_{n\in\N}$ はCauchy列になっており、$Y$ の完備性からある点 $f(x)$ に収束します。これより定まる写像 $f : X\to Y$ に一様収束することを示します。正実数 $\varepsilon > 0$ を取ります。非負整数 $N\in \N$ であって任意の $n, m > N$ に対して\[\sup\{d(f_{n}(x), f_{m}(x))\mid x\in X\} < \varepsilon\]となるものを取ります。このとき、任意の $n > N$, $x\in X$ に対して\[d(f_{n}(x), f(x)) = \lim_{m\to\infty}d(f_{n}(x), f_{m}(x))\leq \varepsilon\]であることから任意の $n > N$ に対して $\sup\{d(f_{n}(x), f(x))\mid x\in X\}\leq \varepsilon$ です。これは連続写像列の一様収束性を意味し、その一様収束極限である $f$ は命題2.8.31より連続です。
ノルム空間 $(V, \|\cdot\|)$ にはそのノルム $\|\cdot\|$ を用いて距離関数 $d$ を $d(u, v) = \|u - v\|$ と定めていたため距離空間としての完備性が意味を持ち、そして、完備なノルム空間は通常Banach空間と呼ばれています。
ノルム空間 $(V, \|\cdot\|)$ が完備であるとは、そのノルム $\|\cdot\|$ の定める距離関数による距離空間として完備であることと定める。完備ノルム空間をBanach空間ともいう。
注意として、$V$ の点列 $\{u_{n}\}_{n\in\N}$ が点 $u\in V$ に収束するということは\[\lim_{n\to\infty}\|u_{n} - u\| = 0\]を満たすことと言い換えることができ、また、$V$ の点列 $\{u_{n}\}_{n\in\N}$ がCauchy列であるということも、任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある非負整数 $N\in \N$ が存在し、任意の $n, m > N$ に対して $\|u_{n} - u_{m}\| < \varepsilon$ が成立することと言い換えられます。従って、ノルム空間が完備であるということは距離関数を経由せずとも与えられたノルムにより直接定義することが可能ですここでは距離空間の話のついでにノルム空間の話をしているため、距離空間の完備性を経由してノルム空間の完備性を導入する格好になっていますが、ノルム空間自体を関心事項とする場合にはそもそものCauchy列をこの言い換え後の形で定義し、その意味でのCauchy列が必ず収束することとして完備性を定義することが多いかと思います。(もちろん、本質的な違いはないので気にするほどのことではないですが。)。
位相空間 $X$ 上定義された有界連続関数による空間 $C_{b}(X, \R)$ は一様ノルム $\|\cdot\|_{\infty}$ に関してBanach空間になります。ノルム空間になっていることは補足2.2.33で説明しているので、あとは完備性を確かめればよいです。$C_{b}(X, \R)$ における点列としてのCauchy列 $\{f_{n}\}_{n\in\N}$ は関数列としては一様Cauchy列であるので、命題2.8.33よりある連続関数 $f$ に一様収束します。この一様収束性 $\underset{n\to\infty}{\lim}\|f_{n} - f\|_{\infty} = 0$ は一様ノルムに関する点列収束と同じ意味であり、ノルム空間の点列として $f$ に収束しています。以上により完備性も確認できました。
位相空間 $X$ 上定義された連続関数 $f\in C(X, \R)$ に対して\[\supp f := \overline{\{x\in X\mid f(x)\neq 0\}}\]を台 $($support$)$ といいます。台 $\supp f$ がコンパクト集合になるとき、$f$ はコンパクト台を持つといいます。ここでは $X$ 上のコンパクト台を持つ連続写像全体からなる空間を $C_{0}(X, \R)$ や単に $C_{0}(X)$ で表すとします。コンパクト集合上の実連続関数は有界関数であったので\[C_{0}(X, \R)\subset C_{b}(X, \R)\subset C(X, \R)\]となります。もしも $X$ がコンパクトならばこれらは全て一致します。
また、$C_{0}(X, \R)$ が実線型空間になることも容易に確かめられ、一様ノルム $\|\cdot \|_{\infty}$ に関してノルム空間になります。しかし、これは完備になるとは限りません。実際、$X = \R$ の場合、連続関数\[h(x) := \max \{1 - |x|, 0\}\]を用いてCauchy列 $\{f_{n}(x) := \sum_{k\leq n} 2^{-k}h(k^{-1}x)\}_{n\in\Np}$ を定めればこれは $C_{0}(X)$ の中で収束しません。
距離空間を完備距離空間の $($稠密な$)$ 部分距離空間として実現することを完備化といいます。まず、任意の距離空間に対して完備化が可能であることを証明します。
$(X, d_{X})$ を距離空間とする。ある完備距離空間 $(Y, d_{Y})$ と写像 $\iota : X\to Y$ であって以下の条件を満たすものが存在する。
さらに、これらの条件を満たすような距離空間と等長写像の対 $(Y, \iota)$, $(Y', \iota')$ が与えられたとき、ある等長同型 $\varphi : Y\to Y'$ であって $\iota' = \varphi\circ \iota$ を満たすものが一意に存在する。従って、この等長同型による同一視のもと、条件を満たす $Y, \iota$ は一意である。通常 $\iota$ を包含写像と考えることで $X$ を $Y$ の部分距離空間とみなし、$Y$ を距離空間 $X$ の完備化という。
$X$ のCauchy列全体からなる集合 $\mathcal{C}$ に対して同値関係 $\sim$ を\[\{x_{n}\}_{n\in\N}\sim \{x'_{n}\}_{n\in\N} :\Leftrightarrow \lim_{n\to \infty}d_{X}(x'_{n}, x_{n}) = 0\]により与えます。この同値関係による商集合を $Y$、距離関数 $d_{Y}$ を\[d_{Y}([\{x_{n}\}_{n\in\N}], [\{x'_{n}\}_{n\in\N}]) := \lim_{n\to \infty}d_{X}(x_{n}, x'_{n})\]により定義し、そして、写像 $\iota : X\to Y$ を\[\iota(x) := [\{x_{n} := x\}_{n\in\N}]\]により定義すれば主張の条件を満たす $Y, d_{Y}, \iota$ になります。このことと最後の一意性を以下の流れで示します。
また、点 $x\in X$ に対してCauchy列 $\{x_{n} := x\}_{n\in\N}$ の代表する $Y$ の元を単に $[x]$ と書くことにします。
(step 1) 実数列 $\{d_{X}(x_{n}, x'_{n})\}_{n\in\N}$ がCauchy列であることを示せば実数体の完備性より従います。正実数 $\varepsilon > 0$ に対して非負整数 $N\in \N$ を任意の $n, m > N$ に対して\[d_{X}(x_{n}, x_{m}), d_{X}(x'_{n}, x'_{m}) < \varepsilon / 2\]を満たすように取るとき、$n, m > N$ に対して常に\[d_{X}(x_{n}, x'_{n})\leq d_{X}(x_{n}, x_{m}) + d_{X}(x_{m}, x'_{m}) + d_{X}(x'_{m}, x'_{n}) < d_{X}(x_{m}, x'_{m}) + \varepsilon,\]\[d_{X}(x_{m}, x'_{m})\leq d_{X}(x_{m}, x_{n}) + d_{X}(x_{n}, x'_{n}) + d_{X}(x'_{n}, x'_{m}) < d_{X}(x_{n}, x'_{n}) + \varepsilon\]であるので\[|d_{X}(x_{n}, x'_{n}) - d_{X}(x_{m}, x'_{m})| < \varepsilon\]が成立します。よって、実数列 $\{d_{X}(x_{n}, x'_{n})\}_{n\in\N}$ はCauchy列です。
(step 2) $d_{Y}$ が代表元の取り方によらないことを示します。$\{x_{n}\}_{n\in\N}\sim \{\bar{x}_{n}\}_{n\in\N}$, $\{x'_{n}\}_{n\in\N}\sim \{\bar{x}'_{n}\}_{n\in\N}$ とします。正実数 $\varepsilon > 0$ に対して非負整数 $N\in \N$ であって任意の $n > N$ に対して\[d_{X}(x_{n}, \bar{x}_{n}), d_{X}(x'_{n}, \bar{x}'_{n}) < \varepsilon / 2\]を満たすものを取ることができ、このとき、$n > N$ において\[d_{X}(x_{n}, x'_{n})\leq d_{X}(x_{n}, \bar{x}_{n}) + d_{X}(\bar{x}_{n}, \bar{x}'_{n}) + d_{X}(\bar{x}'_{n}, x'_{n}) < d_{X}(\bar{x}_{n}, \bar{x}'_{n}) + \varepsilon\]が成立します。従って、\[\lim_{n\to\infty}d_{X}(x_{n}, x'_{n})\leq \lim_{n\to\infty}d_{X}(\bar{x}_{n}, \bar{x}'_{n}) + \varepsilon\]であり、$\varepsilon > 0$ が任意なので\[\lim_{n\to\infty}d_{X}(x_{n}, x'_{n})\leq \lim_{n\to\infty}d_{X}(\bar{x}_{n}, \bar{x}'_{n})\]が成立します。逆の不等式も同様に示され、$d_{Y}$ がwell-definedであることが従いました。
$d_{Y}$ が距離関数であることを示します。任意の $[\{x_{n}\}_{n\in\N}], [\{x'_{n}\}_{n\in\N}]\in Y$ に対して $d_{Y}([\{x_{n}\}_{n\in\N}], [\{x'_{n}\}_{n\in\N}])\geq 0$ であることは常に $d_{X}(x_{n}, x'_{n})\geq 0$ であることから従い、もし $d_{Y}([\{x_{n}\}_{n\in\N}], [\{x'_{n}\}_{n\in\N}]) = 0$ ならば $\mathcal{C}$ に定めた同値関係の定義により $\{x_{n}\}_{n\in\N}\sim \{x'_{n}\}_{n\in\N}$ であるので $[\{x_{n}\}_{n\in\N}] = [\{x'_{n}\}_{n\in\N}]$ となります。よって、正値性を満たします。対称性は明らかです。三角不等式は任意の $[\{x_{n}\}_{n\in\N}], [\{x'_{n}\}_{n\in\N}], [\{x''_{n}\}_{n\in\N}]\in Y$ に対して常に\[d_{X}(x_{n}, x''_{n})\leq d_{X}(x_{n}, x'_{n}) + d_{X}(x'_{n}, x''_{n})\]であることからその両辺の極限よりただちに従います。
(step 3) $\{y_{m}\}_{m\in\N}$ を $Y$ におけるCauchy列とします。$y_{m}$ の代表元を固定し $\{x_{m, n}\}_{n\in \N}$ と表すことにします。各 $m\in \N$ に対して非負整数 $N_{m}$ であって任意の $n, n' > N_{m}$ に対して $d_{X}(x_{m, n}, x_{m, n'}) < 2^{-m}$ を満たすものをとり、非負整数 $l_{m} > N_{m}$ を固定します。このとき、任意の $m\in \N$ に対して\[d_{Y}([x_{m, l_{m}}], y_{m}) = \lim_{n\to\infty}d_{X}(x_{m, l_{m}}, x_{m, n})\leq 2^{-m}\]です。$X$ の点列 $\{x_{m, l_{m}}\}_{m\in\N}$ を取ります。正実数 $\varepsilon > 0$ に対して非負整数 $M\in \N$ であって $m, m' > M$ ならば $d_{Y}(y_{m}, y_{m'}) < \varepsilon / 3$ を満たしかつ $2^{-M} < \varepsilon / 3$ であるものを取れば、任意の $m, m' > M$ に対して\begin{eqnarray*}d_{X}(x_{m, l_{m}}, x_{m', l_{m'}}) & = & d_{Y}([x_{m, l_{m}}], [x_{m', l_{m'}}]) \\& \leq & d_{Y}([x_{m, l_{m}}], y_{m}) + d_{Y}(y_{m}, y_{m'}) + d_{Y}(y_{m'}, [x_{m', l_{m'}}]) < \varepsilon\end{eqnarray*}であるのでこの点列 $\{x_{m, l_{m}}\}_{m\in\N}$ はCauchy列です。いま、正実数 $\varepsilon > 0$ に対して非負整数 $M$ を $m, m' > M$ ならば $d_{X}(x_{m, l_{m}}, x_{m', l_{m'}}) < \varepsilon / 2$ を満たしかつ $2^{-M} < \varepsilon / 2$ となるように取れば、任意の $m' > M$ に対して\begin{eqnarray*}d_{Y}([\{x_{m, l_{m}}\}_{m\in\N}], y_{m'}) & = & \lim_{m\to\infty}d_{X}(x_{m, l_{m}}, x_{m', m}) \\& \leq & \lim_{m\to\infty}(d_{X}(x_{m, l_{m}}, x_{m', l_{m'}}) + d_{X}(x_{m', l_{m'}}, x_{m', m}))\leq \varepsilon / 2 + 2^{-m'} < \varepsilon\end{eqnarray*}であるので点列 $\{y_{m}\}_{m\in\N}$ は $[\{x_{m, l_{m}}\}_{m\in\N}]$ に収束します。よって、$Y$ は完備です。
(step 4) 写像 $\iota : X\to Y : x\mapsto [x]$ が等長であることは $d_{Y}$ の定義より明らかです。$y\in Y$ に対してその代表元 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を取れば、(step 3)の議論により $Y$ の点列 $\{\iota(x_{n}) := [x_{n}]\}_{n\in\N}$ は $y$ に収束するので $y\in \overline{\Img\iota}$ です。従って、$\Img \iota$ は $Y$ の稠密部分集合です。
(step 5) 写像 $\varphi : Y\to Y'$ を各 $y\in Y$ に対して $y$ に収束する $\Img\iota$ の点列 $\{y_{n}\}_{n\in\N}$ を用いて\[\varphi(y) := \lim_{n\to\infty}\iota'(\iota^{-1}(y_{n}))\]とすることで定めます。実際に定義できていることですが、$\{y_{n}\}_{n\in\N}$ がCauchy列であることと $\iota, \iota'$ が等長写像であることから $\{\iota'(\iota^{-1}(y_{n}))\}_{n\in\N}$ は $Y'$ におけるCauchy列であり極限は存在し、$y$ に収束する別の点列 $\{\bar{y}_{n}\}_{n\in\N}$ に対しても\[d_{Y'}\left(\underset{n\to\infty}{\lim}\iota'(\iota^{-1}(y_{n})), \underset{n\to\infty}{\lim}\iota'(\iota^{-1}(\bar{y}_{n}))\right) = \underset{n\to\infty}{\lim}d_{Y'}(\iota'(\iota^{-1}(y_{n})), \iota'(\iota^{-1}(\bar{y}_{n}))) = \underset{n\to\infty}{\lim}d_{Y}(y_{n}, \bar{y}_{n}) = 0\]であり最初と最後の等式は距離関数 $d_{Y'}, d_{Y}$ の連続性によります。、収束点は同じであるので $\varphi$ はwell-definedです。
続いて、$\varphi$ が等長写像かつ全単射であることを示します。まず、等長写像であることは $y, \bar{y}\in Y$ に対してそれぞれに収束する $\Img \iota$ の点列 $\{y_{n}\}_{n\in\N}$, $\{\bar{y}_{n}\}_{n\in\N}$ 念のため、これらは $Y$ が第一可算公理を満たすことと $\Img \iota$ の稠密性から取れます。より直接的に、$y_{n}\in \Img \iota$ を $d_{Y}(y_{n}, y) < 1/(n + 1)$ であるように取ってもいいです。を経由して\[d_{Y'}(\varphi(y), \varphi(\bar{y})) = \lim_{n\to\infty}d_{Y'}(\iota'(\iota^{-1}(y_{n})), \iota'(\iota^{-1}(\bar{y}_{n}))) = \lim_{n\to\infty} d_{Y}(y_{n}, \bar{y}_{n}) = d_{Y}(y, \bar{y})\]であるのでよいです。単射性は $\varphi$ の等長性から従います。全射性を示します。$y'\in Y'$ を取ります。$y'$ に収束する $\Img \iota'$ の点列 $\{y'_{n}\}_{n\in\N}$ を取り、$y := \underset{n\to\infty}{\lim}\iota(\iota'^{-1}(y'_{n}))$ とおけば $\varphi(y) = y'$ なので $\varphi$ は全射です。
最後にこのような $\varphi$ の一意性を示します。$\varphi, \psi : Y\to Y'$ を条件を満たす等長同型とします。各 $y\in Y$ に対し、$y$ に収束する $\Img\iota$ の点列 $\{y_{n}\}_{n\in\N}$ を用いることで\[d_{Y'}(\varphi(y), \psi(y)) = \lim_{n\to\infty}d_{Y'}(\varphi(y_{n}), \psi(y_{n})) = \lim_{n\to\infty}d_{Y}(y_{n}, y_{n}) = 0\]なので $\varphi(y) = \psi(y)$ であり、よって、$\varphi = \psi$ です。
その他、完備化において基本的なこととして。
$X$ を完備距離空間とするとき、その完備化は $X$ 自身である。
恒等写像 $\Id_{X} : X\to X$ は等長写像かつその像 $X$ は当然 $X$ の稠密部分集合なので $X$ 自身が $X$ の完備化です。
$X_{1}, X_{2}$ を距離空間とし、$Y_{1}, Y_{2}$ をそれぞれの完備化とする。直積距離空間 $X_{1}\times X_{2}$ の完備化は $Y_{1}, Y_{2}$ の直積距離空間です。ただし、直積集合上の距離関数としては2.8.1.4節の距離関数 $d_{p} \ (p\in [1, +\infty])$ のうちいずれかを固定して考えることにする。
命題2.8.27より $Y_{1}\times Y_{2}$ は完備距離空間です。包含写像 $\iota_{1} : X_{1}\to Y_{1}$, $\iota_{2} : X_{2}\to Y_{2}$ の直積 $\iota_{1}\times \iota_{2} : X_{1}\times X_{2}\to Y_{1}\times Y_{2}$ は等長写像かつその像は $Y_{1}\times Y_{2}$ の稠密部分集合なので $Y_{1}\times Y_{2}$ が $X_{1}\times X_{2}$ の完備化になります。
距離空間において、コンパクト性の同値条件として次が知られています。
$X$ を距離空間とする。次は同値である。
(1) ⇒ (2) 点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を取ります。全有界であることから各正整数 $k > 0$ に対して有限個の点 $x_{k, 1}, \dots, x_{k, m_{k}}\in X$ を $\bigcup_{i = 1}^{m_{k}}O_{2^{-k}}(x_{k, i}) = X$ となるように選びます。各 $k$ に対して $1\leq l_{k}\leq m_{k}$ を以下の条件を満たす様に取ります。$($実際に取れることは簡単。$)$
部分列 $\{x_{n_{k}}\}_{k\in\N}$ を常に $x_{n_{k}}\in O_{2^{-k}}(x_{k, l_{k}})$ であるように取ります。この部分列がCauchy列であることを示せば完備性よりある点に収束し、つまり、点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ に収束部分列が存在すること、$X$ の点列コンパクト性が従います。そしてこれは、任意の $k < k'$ に対して\begin{eqnarray*}d(x_{n_{k}}, x_{n_{k'}}) & \leq & d(x_{n_{k}}, x_{k, l_{k}}) + d(x_{n_{k'}}, x_{k', l_{k'}}) + \sum_{i = k}^{k' - 1}d(x_{i, l_{i}}, x_{i + 1, l_{i + 1}}) \\& \leq & 2^{-k} + 2^{-k'} + \sum_{i = k}^{k' - 1}3\cdot 2^{-(i + 1)} < 5\cdot 2^{-k}\end{eqnarray*}と評価できるのでよいです。
(2) ⇒ (1) まずは点列コンパクトならば完備であることを示します。$X$ におけるCauchy列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を取ります。点列コンパクト性からその部分列 $\{x_{n_{k}}\}_{k\in\N}$ であってある点 $x_{\infty}$ に収束するものが取れます。任意の正実数 $\varepsilon > 0$ に対してある非負整数 $N\in \N$ であって\[n, m > N\Rightarrow d(x_{n}, x_{m}) < \varepsilon / 2\]を満たすものを取り、必要であればさらに大きく取り直して $n_{k} > N$ ならば $d(x_{n_{k}}, x_{\infty}) < \varepsilon / 2$ となるようにします。このとき、$n > N$ に対して適当に $n_{k} > N$ となる $k$ を取ることで\[d(x_{n}, x_{\infty})\leq d(x_{n}, x_{n_{k}}) + d(x_{n_{k}}, x_{\infty}) < \varepsilon\]が従い、これより点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ が $x_{\infty}$ に収束することが分かります。
続いて、点列コンパクトならば全有界であることを背理法により示します。$X$ は全有界でないとします。正実数 $\varepsilon > 0$ であって有限個の半径 $\varepsilon$ の開球体によって $X$ を被覆できないものを固定します。点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ を以下のように構成します。
点列コンパクト性よりこの点列に対してある点 $x_{\infty}$ に収束する部分列 $\{x_{n_{k}}\}_{k\in\N}$ が存在しますが、$k\neq l\in \N$ を $d(x_{n_{k}}, x_{\infty}), d(x_{n_{l}}, x_{\infty}) < \varepsilon / 2$ となるように取ると\[d(x_{n_{k}}, x_{n_{l}})\leq d(x_{n_{k}}, x_{\infty}) + d(x_{n_{l}}, x_{\infty}) < \varepsilon\]となり、点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N}$ の取り方に矛盾します。
(1) ⇒ (3) $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の開被覆とします。正実数 $\varepsilon > 0$ であって条件
を満たすものが存在するとき、全有界性から半径 $\varepsilon$ の開球体 $O_{\varepsilon}(x_{1}), \dots, O_{\varepsilon}(x_{n})$ による開被覆を取り、さらにこの条件から各 $1\leq k\leq n$ に対して $O_{\varepsilon}(x_{k})\subset U_{\lambda_{k}}$ となる $\lambda_{k}\in \Lambda$ を取ることで開被覆 $\{U_{\lambda}\}_{\lambda\in\Lambda}$ の有限部分被覆が構成されます。従って、条件を満たすような $\varepsilon$ が存在しないとして矛盾を導けばよいです。
正整数 $n\in \N_{+}$ に対して部分集合 $X_{n}\subset X$ を\[X_{n} := \{x\in X\mid {}^{\forall}\lambda\in \Lambda, \ O_{1/n}(x)\not\subset U_{\lambda}\}\]により定めます。仮定より $X_{n}\neq \varnothing$ であり、点列 $\{x_{n}\}_{n\in\N_{+}}$ であって常に $x_{n}\in X_{n}$ であるものが取れます。いま、$X$ は点列コンパクトなのでその部分列 $\{x_{n_{k}}\}_{k\in \N}$ であってある点 $x_{\infty}$ に収束する部分列が取れます。$x_{\infty}\in U_{\lambda'}$ となる $\lambda'\in \Lambda$ を取り、さらに、$O_{\varepsilon'}(x_{\infty})\subset U_{\lambda'}$ となる正実数 $\varepsilon'$ を取ります。$1/n_{k} < \varepsilon' / 2$ かつ $d(x_{n_{k}}, x_{\infty}) < \varepsilon' / 2$ であるように $k$ を取るとき、$O_{1/n_{k}}(x_{n_{k}})\subset O_{\varepsilon'}(x_{\infty})\subset U_{\lambda'}$ となるので、これは $x_{n_{k}}\in X_{n_{k}}$ に矛盾です。
(3) ⇒ (2) 距離空間は第一可算公理を満たしており、そのとき、コンパクトならば点列コンパクトでした $($命題2.6.18$)$。
最初に距離関数が位相空間を定めることを説明しましたが、逆に、与えられた位相空間に対してその位相を与えるような距離関数が存在するか $($距離化可能か$)$ という「距離化問題」があります。
まずは高々可算個の距離化可能な空間の直積が再び距離化可能であることを確認します命題2.8.8は有限個の直積であればそうということを意味します。また、非可算無限個では $($$2$ 元以上持つものが高々可算個であったり空集合が含まれていたりしない限りは$)$ 第一可算公理を満たさず距離化可能ではありません。。
距離空間 $(X, d)$ と広義単調増加な上凸連続関数 $f : [0, +\infty)\to [0, +\infty)$ であって $f^{-1}(0) = \{0\}$ であるものが与えられたとする。対 $(X, f\circ d)$ は距離空間であり、$(X, d)$ と同じ距離位相を定める。
$f\circ d$ が正値性と対称性を満たすことは自明です。任意の $a, b\in [0, +\infty)$ に対して $f(a) + f(b)\leq f(a + b)$ なので、任意の $x, y, z\in X$ に対して\[f(d(x, y)) + f(d(y, z))\leq f(d(x, y) + d(y, z))\leq f(d(x, z))\]であり、三角不等式も満たし、よって、$f\circ d$ は距離関数です。
$(X, d)$ と $(X, f\circ d)$ の定める距離位相が一致することを示します。点 $x\in X$ における $r$ 開近傍をそれぞれ $O_{r}(x), O'_{r}(x)$ で表すとします。正実数 $r > 0$ に対して正実数 $0 < s < f(r)$ を取れば $O'_{s}(x)\subset O'_{f(r)}(x)\subset O_{r}(x)$ です。また、正実数 $r > 0$ に対して $0 < s < \min f^{-1}(r)$ を取れば $O_{s}(x)\subset O_{\min f^{-1}(r)}(x) = O'_{r}(x)$ です。よって、命題2.1.22より両者の定める距離位相は一致します。
距離化可能な位相空間の列 $\{X_{i}\}_{i\in\N}$ に対して直積空間 $X := \prod_{i\in\N}X_{i}$ は距離化可能である。
各 $X_{i}$ を距離関数 $d_{i}$ により距離化します。ただし、補題2.8.41の関数 $f$ を $f(x) := \min \{x, 1\}$ に取って $d_{i}$ を $f\circ d_{i}$ で置き換え、各 $(X_{i}, d_{i})$ は最初から直径 $1$ 以下としておきます。写像 $d : X\times X\to [0, +\infty)$ を\[d(x, y) := \sum_{i\in\N}2^{-i}d_{i}(x_{i}, y_{i})\]と定めます。これが距離関数であることは明らかです。この距離関数 $d$ の定める距離位相と直積位相について以下を示せばよいです。
(i) 点 $x\in X$ を固定し、その点の直積位相に関する開近傍 $U$ を取ります。ある正実数 $r > 0$ と非負整数 $n\in \N$ が存在して $\prod_{0\leq i\leq n}O_{r}(x_{i})\times \prod_{i > n}X_{i}\subset U$ です。このとき、$O_{2^{-n}r}(x)\subset \prod_{0\leq i\leq n}O_{r}(x_{i})\times \prod_{i > n}X_{i}$ です。よって、距離位相は直積位相より強いです。
(ii) 点 $x\in X$ と正実数 $r > 0$ を固定します。$2^{-n} < r$ となる非負整数 $n\in \N$ と正実数 $\delta := \tfrac{r - 2^{-n}}{n + 1}$ を取ります。このとき $\prod_{0\leq i\leq n}O_{\delta}(x_{i})\times \prod_{i > n}X_{i}\subset O_{r}(x)$ です。よって、直積位相は距離位相より強いです。
Urysohnの距離化定理と呼ばれるものを紹介しておきます。
第二可算公理を満たす正則空間 $X$ は距離化可能である。
$X$ の高々可算な開基 $\mathcal{A}$ を固定します。対 $(U, V)\subset \mathcal{A}\times \mathcal{A}$ であって $\overline{U}\subset V$ を満たすもの全体を適当に添字付けした族 $\{(U_{\lambda}, V_{\lambda})\}_{\lambda\in\Lambda}$ を考えます。
第二可算公理を満たす正則空間は正規であり $($命題2.4.17$)$、Urysohnの補題 $($定理2.3.26$)$ より各 $\lambda\in \Lambda$ に対して連続関数 $f_{\lambda} : X\to [0, 1]$ であって $V^{c}\subset f_{\lambda}^{-1}(0)$ かつ $\overline{U}\subset f_{\lambda}^{-1}(1)$ を満たすものを取ります。連続写像 $f := (f_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda} : X\to [0, 1]^{\Lambda}$ を取り、これが埋め込みであることを示します。
まずは $f$ の単射性を示します。相異なる $2$ 点 $x, y\in X$ を取ります。$x$ の開近傍 $V$ を $V\in \mathcal{A}$ かつ $y\notin V$ に取ります。$X$ の正規性から $x$ の閉近傍 $F$ を $F\subset V$ に取り、さらに開近傍 $U$ を $U\in \mathcal{A}$ かつ $U\subset F$ に取ります。対 $(U, V)$ は $\overline{U}\subset V$ を満たし、これはある $\lambda\in \Lambda$ に対する $(U_{\lambda}, V_{\lambda})$ です。この $\lambda$ に対して $f_{\lambda}(x) = 1$ かつ $f_{\lambda}(y) = 0$ であり、$f(x)\neq f(y)$ です。よって、$f$ は単射です。
埋め込みであることを示すため、あとは開集合 $U\subset X$ と点 $a\in f(U)$ に対して $[0, 1]^{\Lambda}$ における $a$ の開近傍 $V$ であって $f(U)\subset V\cap \Img f$ をみたすものを構成すればよいですが、それには $f^{-1}(a)\in \overline{U_{\lambda}}\subset V_{\lambda}\subset U$ となる $\lambda\in \Lambda$ を取って $V := \{y\in [0, 1]^{\Lambda}\mid y_{\lambda} > 0\}$ とすればよいです。
命題2.8.42より $[0, 1]^{\Lambda}$ は距離化可能であり、そこに埋め込める $X$ も距離化可能です。
以上です。
[児玉 永見 位相空間論]にあるような、より一般的な距離化定理についても紹介くらいはしたいかも。
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