被覆空間と基本群の関係や基本群の計算に有効なvan Kampenの定理についてまとめます。ここでは、位相空間 における連続曲線であって部分空間 の点を始点、部分空間 の点を終点とするもの全体からなる集合 を と書き、そのhomotopy集合を と書きます。, であれば , と書き、その元は両端点を固定することを強調して道および道のhomotopy類と呼ぶことにしますこの使い分けは単に私の気分の問題で、厳密に使い分けるわけでもないし、特にそういう慣習があるわけでもないので注意。。また、道 と の積は の順で表します。
まずは被覆空間を定義します。
ファイバーが有限集合の場合は有限被覆空間といったり、具体的に 元からなることが分かっている場合は 重被覆空間といいます。また、全空間が連結な被覆空間は連結被覆空間と呼びます。
被覆空間に関する性質には基本群を用いて定式化されるものも多く、底空間と全空間をともに基点付き空間と考える状況が多く現れますが、その際の規約として被覆写像が基点を保つことを課します。基点は特に断らなければ のように表します。
被覆空間 が与えられたとき、被覆写像 が局所同相写像連続写像 が局所同相写像であるとは、任意の点 に対し、その開近傍 であって が の開集合かつ制限 が同相写像となるものが存在すること。であることから底空間側が第一可算性や局所弧状連結性などの局所的な性質を持てば全空間側もそれらの性質を持つことが分かります。従って、局所弧状連結空間上の連結被覆空間が弧状連結空間になることが分かります局所弧状連結空間においては連結性と弧状連結性は同値でした 予備知識 命題2.5.28。。また、Hausdorff空間上の被覆空間がまたHausdorff空間になることも基本的です被覆空間の相異なる 点について、底空間成分について分離できなければ同じファイバーに乗っていることになりますが、その場合、ファイバーに離散位相を考えているので分離可能です。。
被覆空間の例は3.4.1.6節の最後でいくつか挙げます。
被覆空間の最も基本的な性質として連続曲線の 始点を指定した リフトの一意存在が挙げられます。
証明
まずは存在を示します。 の自明化近傍による開被覆 を固定し、単位区間 の開被覆 に関するLebesgue数 を取ります 予備知識 補題2.8.20。そして、正整数 を であるように取ります。単位区間を 個の小区間に等分し、 側の小区間から順にリフト を構成します。具体的には、
(i)
リフト を において と定める。
(ii)
リフト が まで構成できているとき、 を満たす 上の局所自明化 を固定し、 の 成分を とおき、 を 上 として定める。
なので連続に拡張できており、リフトになっていることも明らかです。もちろん、(ii)の手続きを 回完了した段階で欲しかったリフト が得られます。
一意性を示します。 をともに を始点とする のリフトとします。 とおき、これが開かつ閉であることを示せば と の連結性から 、つまり、 が従います。
を取ります。 の自明化開近傍 と局所自明化 を取り、 の属す の連結成分を とします。点 の 成分をそれぞれ とおくと、 の連結性と の離散性から の 成分はそれぞれ を値に取る定値写像です。従って、 ならば であり、 ならば です。 は任意なので が開かつ閉です。
より一般に、連続曲線が位相空間でパラメータ付けされていても初期条件を連続に与えておけばリフトが取れるというのが次です。
定理3.4.3
(被覆空間のhomotopyリフト性質)
これらの系として、次が分かります。
を基点付き空間、 を基点付き被覆空間とする。道の集合について、押し出しは全単射である。これは道のhomotopy集合について全単射を誘導する。
証明
押し出し が全単射であることは、道 に対して基点 を始点とするリフト 命題3.4.2より一意に存在 を対応させる写像がその逆写像になることから従います。
道のhomotopy集合について、写像 がwell-definedであることは道 に対して を につなぐhomotopy の押し出し が を につなぐhomotopyになるのことからよいです。全射性は明らかなので、あとは単射性を示せばよいです。 となる道のhomotopy類 , を取り、代表元について を示せばよいです。代表元の押し出し , はhomotopicなのでそのhomotopy が取れます。道のhomotopyなので制限 と はいずれも定値写像です。homotopyリフト性質 定理3.4.3 から のリフト であって 上で を値に取るものが取れます。 かつ であり、制限 は離散空間 への連続写像なので の連結性から定値写像です。このことから は を につなぐ道のhomotopyです。以上により の単射性も確認できました。
を基点付き空間、 を基点付き被覆空間とする。基本群の間の誘導準同型は単射である。
また、次も明らかでしょう。
を位相空間、 を被覆空間とし、点 を取る。互いにhomotopicな道 と点 に対し、それぞれの を始点とするリフト は互いにhomotopicである。特に終点は一致する。
よって、道のhomotopy類 について、 の点ごとにその点を基点とする の代表元のリフトの終点として の点をwell-definedに対応させることができます。これはファイバーの間に写像を誘導し、次のことが容易に分かります。
命題3.4.7
(ファイバー間に誘導される写像の関手性)
道のhomotopy類 , がファイバーに誘導する写像についてが成立する。また、定値写像の代表する道のhomotopy類 の誘導写像について が成立する。
つまり、被覆空間 が与えられると底空間の基本亜群 から各点上のファイバーを対応させる集合の圏への共変関手 局所系詳しくは3.1.2節を参照。 が定まります。道のhomotopy類 が同型射であることからその誘導写像 が全単射になることには注意します。また、始点と終点を同じ点 に取ることで各 に対してファイバーの自己全単射 が定まり、この対応から準同型 が定まります。これを被覆空間 の点 におけるmonodromy表現と呼びます。そして、これを群作用で言い換えたものはmonodromy作用と呼ばれます。
より一般的な連続写像に対するリフトの存在には基本群が障害となります。
を基点付き空間、 を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き被覆空間とする。基点を保つ連続写像 について次は同値である。
(1)
基点を保つ連続写像 であって を満たすもの 基点を保つリフト が一意に存在する。
(2)
の誘導する基本群の間の誘導準同型 について包含関係 が成立する。
証明
(1) ⇒ (2) 明らかです。
(2) ⇒ (1) 各 に対して道のhomotopy類 を固定し、写像 を により定義します。次を示せばよいです。
(i)
の構成がwell-definedであること。
(ii)
が連続であること。
(iii)
一意であること。
(i) とします。同値変形が成立しますが、 と仮定の包含関係から最後が成立し、従って、最初も成立します。これが がwell-definedであることを意味します。
(ii) 各 の周りでの の連続性を確かめればよいです。 の自明化開近傍 を取り、 の弧状連結な開近傍 を に含まれるように取ります。また、局所自明化 を固定します。各 に対して のファイバー成分が同じであることを示せば の連続性、従って、 における の連続性が従います。道のhomotopy類 , を取り、 とおきます。このとき、です。 の代表元 を取り、 の連続曲線 の を始点とするリフトを とすれば、 です。ここで、単位区間の連結性から の連続曲線 のファイバー成分は一定なので のファイバー成分は同じです。以上により は各 の周りで連続、従って、それ自身連続です。
(iii) を の基点を保つリフトとします。各 ついて、道 を取るとき、 と はともに を始点とする連続曲線 のリフトであり、その一意性から であり、特に です。よって、 です。
の局所弧状連結性は外せません。 を の部分空間として定め、被覆空間 の への制限として被覆空間 を構成し、, とすると、基点の取り方によらずリフトは 連続に 取れません。
また、ここで作った被覆空間 は弧状連結空間の連結被覆空間が必ずしも弧状連結にならない例になっています。
位相空間 上の被覆空間 から への射を被覆写像 であって を満たすものとして定め、被覆空間の同型を可逆な射が存在することにより定めます。被覆空間を基点付きで考える場合には基点を保つことを要求します。
まず、基点付きの場合に射が存在するための条件として次を確かめます。
命題3.4.10
(基点付き連結被覆空間の間の射の存在条件)
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、, を基点付き連結被覆空間とする。包含関係 が成立するとき、基点を保つ射 が一意に存在する。
証明
定理3.4.8からより基点を保つリフトとして連続写像 が一意に取れます。この が被覆写像であることを示せばよいです。
(i)
各 に対し、そのある開近傍において の局所自明化が存在する。
(ii)
各 に対し、 の濃度は一定である。
(i) 点 を取り、そのある開近傍における の局所自明化を構成します。 の弧状連結な開近傍 であって の両方について自明化可能なものを取ります。 の属する の弧状連結成分を とします。 の弧状連結成分 に対し、 ならば制限 が定まり同相写像でありまず、 ならば の弧状連結性から であり、制限 が定まります。連続写像の列を考えるとき、 と は同相写像であり、よって、 は同相写像です。、よって、制限 は離散空間をファイバーとする自明束です。
(ii) の各点において局所自明化が取れるので、ファイバーの同相類 離散空間に限れば濃度 は各点の近傍で一意です。 の連結性から全体でも一意です。
系として直ちに同型条件が得られます。
系3.4.11
(基点付き連結被覆空間どうしの同型条件)
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、, を基点付き連結被覆空間とする。次は同値である。
(1)
基点付き被覆空間として は同型である。
(2)
が成立する。
基点付き被覆空間 について、その基本群の押し出しの像 はmonodromy作用に関する基点 の固定化群です。
また、基点を考慮しない場合の同型条件は次の主張から直ちに従います。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き連結被覆空間とする。任意の道のhomotopy類 に対してが成立する。特に、 に対して基点 を同じファイバー上の点 で取り換えることで基本群の押し出しの像は による共役だけ変わる。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、, を基点付き連結被覆空間とする。次は同値である。
(1)
基点を考慮しない被覆空間として は同型である。
(2)
と は互いに共役である。
証明
(1) ⇒ (2) 同型射 と道のhomotopy類 を取り、 とおけば命題3.4.13よりです。
(2) ⇒ (1) ある が存在してです。 の基点を に取り直せば系3.4.11より基点を保って同型 が成立します。
被覆空間 に対して自身への同型射 を被覆変換と呼び、被覆変換全体に合成による積を与えて得られる群を被覆変換群と呼びます。被覆変換群は などで表すことにします。この被覆変換群は基本群を用いて表すことができ、ここではそれを与えます。
少し補題を準備します。また、以下では群 の部分群 の正規化群 を で表すことにします。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き連結被覆空間とする。各 に対して次は同値である。
(1)
.
(2)
被覆変換 であって を に移すものが一意に存在する。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き連結被覆空間とする。各 に対して を に移す一意な被覆変換 を対応させることで全射反準同型が定まる。そして、被覆空間 には右 作用が により定まる。
補足3.4.17
(正規化群からの右作用の言い換え)
補題3.4.16で考えた正規化群 からの右作用は点 と に対して を
(i)
道のhomotopy類 を任意に取り、 とおき
(ii)
と定める
ことでも得られます。実際、 の代表元 を取り とおくとき、 であることと が を始点とする のリフトであることからであり、これは両者の一致を意味します。
では、被覆変換群の表示について。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き連結被覆空間とする。補題3.4.16の全射反準同型は反同型を誘導する。
補足3.4.19
(基点を取り換えたときの被覆変換群との対応)
正規化群からの右作用は系3.4.18の剰余群からの自由な右作用を誘導しますが、被覆空間に次に定義する正規性がある場合にはその作用により主束構造が定まります。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き連結被覆空間とする。基本群の押し出しの像 が の正規部分群であるとき、これを正規被覆空間という。
命題3.4.21
(基点付き正規被覆空間の主束構造)
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き正規被覆空間とする。任意の に対して を に移す被覆変換 が一意に定まり、 への右 作用がにより定まる。そして、この右 作用は剰余群 からの右作用を誘導する。この剰余群からの右作用はファイバーごとに自由かつ推移的であり、主 束の構造を定める。
ここでは正規被覆空間の定義を基点付きで与えましたが、補足3.4.19から正規被覆空間になるかどうかは基点の取り方によらない性質なので基点を考慮しない場合にも意味を持ちます。
逆に、主束構造を持てば正規被覆空間であることが分かります。
命題3.4.23
(主束構造を持つ連結被覆空間の正規性)
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を主 束の構造を持つ基点付き連結被覆空間とする。このとき、この被覆空間は正規であり、同型が成立する。
正規被覆空間には主束の構造が入り、その群作用による商写像が被覆写像を与えていると考えることができますが、逆に、位相空間に性質のよい群作用を与えることで正規被覆空間が得られます。
を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とし、離散群 が に右から自由かつ固有不連続に作用しているとする。このとき、商写像 は被覆写像であり正規被覆空間の構造を定める。また、同型 が成立する。
特に、作用を与えた位相空間が単連結な場合に商空間の基本群が作用群に同型であることが非常に重要であり、ここではそのことを用いていくつかの具体的な位相多様体についてその基本群を求めてみます。ただし、位相多様体の自由かつ固有不連続な右作用による商空間が再び位相多様体になることは命題3.4.50で確認します。
円周 は実直線 への 作用による商空間として表されますが、この作用が自由かつ固有不連続であることから同型が従います。
とします。 次元実射影空間 は 次元単位球面 への 作用による商空間として表されますが、この作用が自由かつ固有不連続であることから同型が従います。
互いに素な正整数 に対して複素数 は乗法に関して に同型な群を生成します。 次元単位球面 を の部分空間と考えれば からの作用をにより与えることができます。この作用は自由かつ固有不連続なので商空間として位相多様体が定まります。これを 型のレンズ空間といい で表します。そして、その基本群について同型が従います。
普遍被覆空間を定義します。
を位相空間とする。被覆空間 であって全空間 が単連結であるものを普遍被覆空間という。
多少条件が付きますが、普遍被覆空間は次の意味で普遍性を持ちます。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き普遍被覆空間とする。任意の基点付き連結被覆空間 に対して基点を保つ被覆写像の射 が一意に存在する。
また、基点付き普遍被覆空間 は正規なので命題3.4.21より主 束の構造、つまり、ファイバーごとの自由かつ推移的な右 作用が定まります。
を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、 を基点付き普遍被覆空間とする。これは補題3.4.16により定まる右 作用によって主 束になる。
補足3.4.33
(普遍被覆空間の道のhomotopy集合との同変な同一視)
弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間 上の基点付き普遍被覆空間 が与えられているとします。 の単連結性から各 に対して道のhomotopy集合 は唯一の元からなるので全単射が定まります。そして、系3.4.4の全単射との合成によって全単射 が得られますが、これは両辺に定まる右 作用について同変になります。実際、 に対して対応する唯一の道のhomotopy類を を取り、 とおけばです。
空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間における普遍被覆空間の存在は次に定義する半局所単連結性と同値であり、これにより位相多様体やCW複体が必ず普遍被覆空間を持つことが従います。
を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。 が半局所単連結 semi-locally simply connected であるとは、任意の点 に対してその弧状連結開近傍 であって包含写像 の誘導する準同型が自明であることをいう。
定理3.4.35
(普遍被覆空間が存在するための必要十分条件)
を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は同値である。
(1)
は半局所単連結である。
(2)
普遍被覆空間 が存在する。
証明
(1) ⇒ (2) 道のhomotopy集合の直和 を とおき、写像 が普遍被覆空間となるように の位相を与えます補足3.4.33から一般に普遍被覆空間は と同一視されるので、天下り的に、最初から存在の確かな をベースに普遍被覆空間を作れないかと考えているのですが、半局所単連結性があればそれができるというわけです。。 の開被覆 を次の条件を満たす様に取ります。
•
は弧状連結。
•
包含写像 による誘導準同型 は自明。
さらに、各 に対して点 と道のhomotopy類 を固定し、以下の流れで普遍被覆空間の構造を与えます。
(step 1)
各 と点 に対して 内の道のhomotopy類 を固定することで、各 について の取り方にはよらない自明化が得られる。つまり、この は全単射かつ を満たす。ただし、 は第1成分への射影とする。
(step 2)
この自明化から定まる変換関数 は局所定値かつコサイクル条件を満たす。そして、この変換関数により には被覆空間の構造が定まる。
(step 3)
におけるhomotopy に対して写像は連続曲線 の を始点とするリフトになる。
(step 4)
この は単連結であり、普遍被覆空間を与えている。
(step 1) まず、 の取り方によらないことは、任意の に対して準同型 が自明であることから が単位元となる、つまり、 となるのでよいです。全単射性も写像が逆写像を与えるのでよいです。 は明らかです。
(step 2) 変換関数 を書き下すとです。この表示からコサイクル条件を満たすことは明らかです。 が局所定数であることを確認します。そのためには点 に対してその弧状連結な開近傍 を に含まれるように取ったとき、この 上で が定値であることを示せばよいです。各 に対して道のhomotopy類 を固定します。常に , が成立するのでです。従って、 上で は定値です。以上により の開被覆とコサイクル条件を満たす変換関数が構成されたので は離散空間をファイバーとするファイバー束、つまり、被覆空間になります。
(step 3) 確認すべきことは写像 の連続性のみです。連続曲線 を とおき、各 に対して道 を により定めます。 が成立します。 を取り、その開近傍における連続性を示します。 を であるように取り、 を の の属す連結成分とします。各 に対して道 を により定めるとであり、 の第 成分は定値です。これは が の開近傍 上で連続であることを意味し、よって、 は連続です。
(step 4) の基点 を の単位元に固定し、任意に取った連続閉曲線 が 点にhomotopicであることを示します。 とおき、各 に対して の代表元を として取ります。実際、(step 3)より写像 は を始点とする のリフトなのでその一意性からもとの に一致しており、 です。特に、 は単位元なので を定値写像 につなぐhomotopy が取れます。homotopyリフト性質 定理3.4.3 からこのhomotopy のリフト を取れば、それが を定値写像 につなぐhomotopyです。
(2) ⇒ (1) に対し、その自明化開近傍 を取れば が成立します。実際 に対し、局所自明化の存在から代表元 のリフトが連続閉曲線 に取れ、単連結性からこの を 点につぶす 基点 を保つ homotopy を取れば が を 点につぶすhomotopyを与え、つまり、これは を意味します。
は弧状連結かつ局所弧状連結ですが、半局所単連結ではないので普遍被覆空間を持ちません。
被覆空間が与えられるとそこからmonodromy表現 集合上の表現 が定まりましたが、普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間についてはこの集合上の表現の同値類によってその被覆空間が分類可能です。
いくつか集合上の表現についての言葉を準備します線形表現で用いられる言葉をそのまま流用します。。まず、群 の集合 上の表現を から の自己全単射全体からなる群 への群準同型 と定め、群 の集合上の表現 , が同値であるとを、ある全単射 が存在して誘導準同型と表現 の間に関係式 が成立することと定めます。群 の集合 上の表現 の部分表現を の部分集合 上の表現 であって任意の に対して を満たすものとして定めます。部分集合 として 自身もしくは空集合 を考えることで直ちに部分表現が得られますが、これらを自明な部分表現といい、非自明な部分表現を持たない表現を既約表現と呼びます。
また、上記は左作用の言葉で言い換えることができます。群 の集合 上の表現 が与えられたとき、集合 上の左 作用 が により定まり、逆に、集合 上の左 作用から同じ関係式によって直ちに群 の集合 上の表現が得られます。つまり、表現と左作用はこの手続きにより一対一に対応します。そして、表現の同値は左 集合としての同型、部分表現は部分左 集合、既約表現は推移的な作用を与えられた左 集合として言い換えられます。
まず、集合上の表現が与えられたときにその表現をmonodromy表現として持つ被覆空間が同伴束として構成できることを見ます。
を普遍被覆空間 を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。
(1)
空でない集合 上の表現 に対して射影 は商空間からの連続写像 を誘導し、これは 上の被覆空間を与える。この被覆空間のmonodromy表現は に同値である。
(2)
被覆空間 とそのmonodromy表現 について同型が成立する。
(3)
互いに同値な空でない集合上の表現 , に対して同型が成立する。
証明
(1) 全空間 は直積空間 に左 作用をで与えたときの軌道空間であると考えます。まず、射影 が連続写像 が誘導されるのは商写像の普遍性から分かります。
普遍被覆空間の 同変な局所自明化 を固定するとき、被覆空間 の 同変な局所自明化が得られ、これが同相写像を誘導します。また、連続写像は同相写像 を誘導し連続写像を誘導することは商写像の普遍性から。同相写像であることは切断 連続な完全代表系 が対応 により取れることから。、これにより局所自明化 が得られます。以上により は被覆空間です。
この被覆空間 のmonodromy表現について調べます。 から基点 におけるファイバー への全単射 を取ります。このとき、 に対して は を代表する道 の を始点とするリフト を用いて で与えられますが、この は被覆空間 に対する を始点とするリフト を商空間 に押し出したものであるのでが成立します。従って、全単射 が表現 と被覆空間のmonodromy表現の同値を与えます。
(2) 連続写像 の被覆空間 に関するリフト を各 に対して点 を点 に移すように取ります。次のことを示します。(ii)から直ちに連続全単射 が誘導され、主張の同型が従います。
(i) 明らかにであり、あとは定義より であることを合わて従います。
(ii) まず、 とします。ある が存在してであり、適当な の道のhomotopy類 により と表せばです。よって、(i)を使ってです。
続いて、 とします。適当な の道のhomotopy類 により , と表せばであり、 とおけば です。また、であるのでです。以上により(ii)の同値性が確かめられました。
(3) と の同値を与える全単射 を取ります。これは 空間の同型 を定め、被覆空間としての同型 が誘導されます。
を普遍被覆空間 を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。被覆空間 , とその基点におけるmonodromy表現 に対して次は同値である。
(1)
基点を考慮しない被覆空間として は同型である。
(2)
monodromy表現 は同値である。
証明
(1) ⇒ (2) 同型のファイバーへの制限 がmonodromy表現 と の間の同値を与えます。
(2) ⇒ (1) 補題3.4.37よりです。
従って、以下の形の分類定理が得られます。
を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。
(1)
上の被覆空間の同型類
(2)
空でない左 集合の同型類
(3)
の空でない集合上の表現の同値類
ただし、(1)から(3)の対応は被覆空間の同型類に対してmonodromy表現の同値類を対応させるもの、(2)から(3)の対応は単に作用を表現で言い換える対応とする。
を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。
(1)
上の連結被覆空間の同型類
(2)
の部分群の共役類
(3)
の空でない集合上の既約表現の同値類
ただし、(1)から(2)の対応は連結被覆空間の同型類に対して基本群の押し出しの像の共役類を対応させるもの、(1)から(3)の対応は連結被覆空間の同型類に対してmonodromy表現の同値類を対応させるものとする。
を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。次は互いに一対一対応する。
(1)
上の基点付き連結被覆空間の同型類
(2)
の部分群
ただし、(1)から(2)の対応は基点付き連結被覆空間の同型類に対して基本群の押し出しの像を対応させるものとする。
を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。
(1)
上の正規被覆空間の同型類
(2)
の正規部分群
より一般に、ファイバーに付加構造を持つ被覆空間についても上記のような分類定理を考えることができます。例えば、可換環 上の加群 をファイバーとする被覆空間を被覆空間 であって条件
•
ファイバーごとに に同型な 加群の構造が与えられている。
•
の各点 に対してその開近傍 における局所自明化 であってファイバーごとに 加群の同型となるものが存在する。
を満たすものと考えると、この被覆空間のmonodromy作用は の各元に対して 加群 の自己同型を定め、そのmonodromy表現は 加群 上の表現 と考えられます。そして逆に、 加群 上の表現が与えられると同伴束として をファイバーとする被覆空間が得られます。このことにより次の形の分類定理が示されます。
定理3.4.43
( 加群をファイバーとする被覆空間の分類)
を可換環とし、 を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。
(1)
加群をファイバーに持つ 上の被覆空間の同型類
(2)
の 加群上の表現の同値類
位相多様体 境界があってもよい の被覆空間について成立する事実をいくつか確かめておきます。ここでは、各点に上半空間 の開集合に同相な開近傍が存在する空でないHausdorff空間を広義の位相多様体、広義の位相多様体にパラコンパクト性を課したものをパラコンパクト位相多様体、第二可算公理を課したものを単に位相多様体と呼ぶことにします。
まず、基本的な事実として普遍被覆空間の存在があります。
連結な広義の位相多様体に対して常に普遍被覆空間が存在する。
被覆空間が各々の意味で再び多様体になるかについて、次が確かめられます。
(1)
広義の位相多様体 に対してその被覆空間 は広義の位相多様体である。
(2)
パラコンパクト位相多様体 に対してその被覆空間 はパラコンパクト位相多様体である。
証明
(1) 局所Euclid性は明らか。Hausdorff性も容易です。
(2) 底空間が局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間かつファイバーがパラコンパクト空間であるファイバー束の全空間はパラコンパクトでした 予備知識 補足2.9.24。従って、 はパラコンパクト空間なのでパラコンパクト位相多様体になります。
しかし、第二可算公理を課す意味での位相多様体についてはファイバーの濃度に制限がかかります。
位相多様体 とその被覆空間 について、次は同値である。
(1)
は位相多様体。
(2)
ファイバーの濃度は高々可算。
証明
(1) ⇒ (2) ファイバーが非可算濃度の場合、局所自明化から非可算個の互いに非交叉な開集合が取れるので第二可算公理を満たしません。
(2) ⇒ (1) の自明化近傍による高々可算な開被覆 から直ちに の第二可算公理を満たす高々可算個の開集合による被覆を構成できるので は第二可算公理を満たす、つまり、位相多様体です。
また、連結性を課してもよいです。
連結位相多様体 の連結被覆空間 は連結位相多様体である。
系として、連結位相多様体の基本群の濃度について次が確認できます。
被覆空間と基本群の濃度の関係については次のことも重要なのでついでに書いておきます。
を弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。 がコンパクトな普遍被覆空間 を持てば の基本群の濃度は高々有限である。
自由かつ固有不連続な作用が与えられたとき、商空間が再び位相多様体になることは重要です。
を位相多様体とし、離散群 が に右から自由かつ固有不連続な作用しているとする。このとき、商空間 は位相多様体である。
可微分多様体の被覆空間には被覆写像を 級写像とするような 級座標近傍系が同値の違いを除いて一意に定まります。実際、底空間側の 級座標近傍系のリフトとして全空間側の 級座標近傍系が構成され、一意性も局所 級同相性から確認できます。
位相群の基本群や被覆空間についても少し触れておきます。ここではその単位元は などで表すことにして、これを基点として扱うことにします。まず重要なのがその基本群の可換性です。
続いて、適当な条件のもとで位相群の被覆空間に再び位相群の構造が定まること、特に、連結Lie群の連結被覆空間に再び連結Lie群の構造が定まることを確かめます。
命題3.4.53
(位相群の被覆空間に定まる位相群の構造)
を弧状連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な位相群、 を連結被覆空間とする。ただし、 の基点を に固定する。このとき、 には次の条件を満たす群構造が一意に存在する。
(i)
基点 を単位元とする。
(ii)
被覆写像 を準同型とする。
(iii)
は位相群になる。
証明
を積演算、 を各元にその逆元を対応させる写像とします。次の図式を考えます。 は の基点を保つ一意なリフト、 は の基点を保つ一意なリフトです。
以下の流れで二項演算 が主張の一意な群構造を与えることを確認します。
(step 1)
は実際にリフトとして一意に取れる。
(step 2)
は実際にリフトとして一意に取れる。
(step 3)
について は単位元である。
(step 4)
は結合則を満たす。
(step 5)
は各元に に関する逆元を対応させる写像である。
(step 6)
が主張の条件を満たす群構造を与え、また、主張の条件を満たす群構造はこの に限る。
(step 1) 自然な同型による直和分解のもと、成分ごとにであるのでです。よって、定理3.4.8より基点を保つリフト が一意に存在します。
(step 2) 合成による誘導準同型は常に単位元を値に取るので、任意の に対して です。従って、誘導準同型 は各元にその逆元を対応させます。よって、であり、定理3.4.8より基点を保つリフト が一意に存在します。
(step 3) の および への制限が に一致することから の および への制限は恒等写像です。よって、 は単位元です。
(step 4) 次の図式において、内側の つの四角形が可換なので一番外側の四角形も可換です。これが結合則を満たすことを意味します。
(step 5) 次の図式は可換です。
よって、 は の基点を保つリフトですが、後者が常に単位元 を値に取るためリフトの一意性より前者も常に単位元 を値に取ります。これは任意の に対して を意味します。同様に、任意の に対して であり、常に は の逆元です。
(step 6) これまでの議論から は の群構造を与えます。 の定義に用いた図式の可換性が被覆写像 が準同型であることを意味します。また、構成から は連続であり、この により は位相群になります。一意性について、一般に主張の条件を満たす群構造 は被覆写像 を準同型とするという条件から の定義に用いた図式の を で置き換えたものを可換にするので、リフトの一意性から に一致します。
系3.4.54
(連結Lie群の連結被覆空間は連結Lie群)
を連結Lie群、 を連結被覆空間とする。ただし、 の基点を に固定する。このとき、 には次の条件を満たす群構造と微分構造がそれぞれ一意に存在する。
(i)
基点 を単位元とする。
(ii)
被覆写像 を滑らかな準同型とする。
(iii)
はLie群になる。
基本亜群についてのvan Kampenの定理を紹介しますSeifert-van Kampenの定理とも呼ばれます。[R. Brown, Groupoids and Van Kampen's Theorem]を参考にしています。そちらではもう少し一般的な状況で証明しています。。ここでは、位相空間 の基本亜群 の対象を部分空間 へ制限して得られる充満部分圏 亜群 を で表すとします。 が基点 のみからなれば です。
まず、その主張を述べるために亜群対象全体が集合をなしかつ射が全て同型射である圏のこと。また、亜群の間の共変関手を亜群の準同型と定めます。の押し出しについて 一般の圏で考えるのと全く同じですが 説明します。 を亜群、, を準同型とします。亜群 と準同型 , の組 が準同型の対 の押し出しであるとは、 を満たし、かつ任意の亜群 と準同型 , の組 であって を満たすものに対して次の図式を可換にする準同型 が一意に存在することをいいます。
単に図式
が押し出し図式であるとも言います。
定理3.4.55
(基本亜群についてのvan Kampenの定理)
を弧状連結空間、 を の部分空間、 を の部分空間とし、以下の条件が成立しているとする。
このとき、次の押し出し図式が得られる。
ただし、 は包含写像の誘導する準同型である。
証明
亜群 と準同型 , の組 であって を満たすものが与えられたとします。準同型 であって , を満たすものを構成し、その一意性を示します。ただし、 は省略し、例えば、 は において であることと考えることにします。
まず、各点 に対して の点 と道のhomotopy類 を以下のように取ります。
•
に対しては に取り、 は に値を取る定値写像 の代表する道のhomotopy類 とする。
•
に対しては を における と同じ弧状連結成分に属すように取り、 は に取る。
•
に対しては を における と同じ弧状連結成分に属すように取り、 は に取る。
•
に対してに を における と同じ弧状連結成分に属すように取り、 は に取る。
準同型 を点 に対しては と定め より です。、 の点どうしをつなぐ道のhomotopy類 に対しては以下の手順で を取ります。
要するに、 を , における道のhomotopy類の積 に分解し から , であることに注意すれば確かに です。、それぞれを で送った積として を定義するということです。確認するべきことは以下の通りです。
(i)
各 がwell-defiendであること。
(ii)
が代表元 の分割の取り方によらないこと。
(iii)
が代表元 の取り方によらないこと。
(iv)
が 上で を満たしかつ 上で を満たす準同型であること。
(v)
条件を見たす準同型 が一意であること。
(i) の場合、各 の取り方から であり、 において であるのでwell-definedです。
(ii) 単位区間の分割 から を取り、その細分 から を取ったとき、 が成立することを示します。まず、細分であることから狭義単調増加な非負整数列 であって常に を満たすものが取れます。このとき、各 は と分割されています。 が の道であれば もそうであり、 かつ が成立し、 が準同型であることから が成立します。 が の道である場合も同様に です。よって、 です。
一般の つの分割に対しては共通細分を経由することで同じ を定めることが従います。
(iii) の代表元 を取ります。 を につなぐ道のhomotopy を固定し、 の開被覆 に関するLebesgue数 を取り、正整数 を に取ります。 の への制限を とし、 への制限を とします。さらに、, とおきます。そして、 から を定義したのと同様に から を定義します。
任意の に対して であることを示します。まず、 の取り方から は のどちらかには含まれます。 に含まれる場合、 における道のhomotopy類として が成立するので であり、 が準同型であることから です。 に含まれる場合も同様に成立し、よって、いずれにせよ成立します。
が によらず に値を取る定値写像であることから が における単位元であることに注意し、上記結果の繰り返し適用することでが得られます。これは で同じ を定めることを意味します。
(iv) 上で を満たしかつ 上で を満たすことは明らかです。準同型であることの確認で非自明なのは任意の , に対して であることですが、これはそれぞれを , の道のhomotopy類の積に分解すれば分かります。
(v) を条件を満たす準同型とします。各 に対して であることは明らかです。各 に対して であることを示します。 を , における道のhomotopy類の積 に分解します。 において であること、 において であることからどの についても です。そして、 が準同型であることから です。以上により であり、条件を満たす準同型は一意です。
定理3.4.55の特別な場合として、 が弧状連結かつ が に取った基点 のみからなる場合が通常のvan Kampenの定理です。(押し出し群については準備できていないですが、知っている前提で進めます。)
を基点付き弧状連結空間、 を の部分空間であって条件
を満たすものとする。このとき、次の押し出し図式が得られる。
つまり、基本群について同型が成立する。
通常のvan Kampenの定理 定理3.4.56 は位相多様体やCW複体の基本群の計算に有効です。まず典型的なのが位相多様体の境界での貼り合わせです。
命題3.4.57
(境界で貼り合わせて得られる位相多様体の基本群)
を境界を持つ連結位相多様体とする。境界 のある連結成分 の間の同相写像 が与えられたとき、 により を貼り合わせて得られる連結位相多様体 の基本群について同型が成立する。
系として、連結和の基本群がもとの位相多様体の基本群の自由積に同型であることが分かります。
とし、 を 次元連結位相多様体とする。その連結和 の基本群について同型が成立する。
連結CW複体については次の形の同型が成立します。
命題3.4.59
(CW複体に対するvan Kampenの定理)
を基点付き連結CW複体、 を の部分複体であって条件
を満たすものとする。このとき、基本群について同型が成立する。
系として、商複体の基本群について次が成立します。ただし、群 においてその部分群 の正規閉包を で表すとします。
を基点付きCW対とし、 は連結とする。このとき、基本群について同型が成立する。
また、一般に次も成立します。
空でない弧状連結空間 と連続写像 が与えられているとする。写像錐 の基本群について同型が成立する。
より具体的な応用として、基点付き連結CW複体の基本群の表示を与えます。そのためにまず重要なのは、基点付き連結CW複体の基本群が 骨格のみで決まることです。より一般に、 次homotopy群がその 骨格のみで決まることを示しますCW複体の連結性がその 骨格の連結性で特徴づけられたこと 系2.4.60 の一般化でもあります。。
を基点付きCW複体とする。任意の に対して包含写像 は 次homotopy群の間の同型を誘導する。
続いて、補題として 骨格の基本群を計算しますが、これは次のwedge和の基本群に関する同型から分かります。
を基点付き連結CW複体の族とする。wedge和 の基本群について同型が成立する。
を基点付き連結CW複体とし、 を 骨格 の極大な木とする。 骨格の基本群 は に含まれない 胞体全体からなる集合 により生成する自由群 に同型である。特に、集合 で添字付けられた基点付き円周の族 のwedge和の基本群は で生成する自由群 に同型である。
骨格の基本群を計算します。
を基点付き連結CW複体とし、以下の設定を行う。
•
骨格 の極大な木 を取る。
•
を に含まれない 胞体全体からなる集合とする。
•
を 胞体全体に対応する添字集合とする。
•
次元閉球体 の基点 を境界 上に固定する。
•
各 に対して胞体写像 と道 を取る。
•
各 に対して同一視 のもとでループ の代表する の元を とおき、 と定める。
このとき、同型が成立する。特に、有限な基点付き連結CW複体の基本群は有限表示可能である。
逆に、任意の群の表示に対して対応する基点付き連結CW複体が構成できます。実際、生成系 と関係系 が与えられたとき、 で添字付けられた基点付き円周の族 からwedge和 を取り、そこに各関係を代表するループに従って 胞体を貼り合わて基点付き連結CW複体を構成すれば、その基本群は に同型です。
生成系 と関係系 により表示される群 に対し、それと同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体であって、唯一の 胞体を持ち、 胞体全体が により添字付けられ、 胞体全体が により添字付けられているものが上記のようにして構成される。特に、有限表示群に対し、それと同型な基本群を持つ有限な基点付き連結CW複体が存在する。
系として、任意の群 に対してそれと同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体が存在することが分かります。
任意の群 に対して に同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体 が存在する。
この結果を用いて再度Kleinの壺の基本群を求めてみます。
Kleinの壺 は正方形 の下辺 と上辺 を恒等的に、左辺 と右辺 を上下逆さまに等化したものでした。単位区間 に唯一の 胞体を持つCW複体の構造を与えているとすれば、 の 骨格は つの円周のwedge和であり、一方が上下の辺、もう一方が左右の辺に対応します。それぞれを順に とおいて基本群の生成元と思えば、唯一の 胞体の貼り合わせは関係 を定めます。よって、基本群について同型が成立します。
以上です。
Eilenberg-MacLane空間についてもちょっと書いてよさそうだけど、これ以上はさすがに詰め込みすぎなのでこれはまた別で書きたいです。せっかくvan Kampenの定理を基本亜群版で示したので、それを使って円周 の基本群を求めてみるというのもありかも。気が向いたら追加します。
参考文献
[1]
加藤十吉 位相幾何学 裳華房 (1988)
記号や用語は結構参考にしています。van Kampenの定理の解説のため、自由積や押し出し群について丁寧に導入されています。
[2]
服部晶夫 位相幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ 岩波書店 (1977-1979)
[3]
R. Brown, Groupoids and Van Kampen's Theorem, Proc. Lond. Math. Soc. s3-17 (1967), pp. 385–401.
更新履歴