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数学ノートについて
3.4 被覆空間と基本群

被覆空間と基本群の関係や基本群の計算に有効なvan Kampenの定理についてまとめます。ここでは、位相空間 X における連続曲線であって部分空間 A の点を始点、部分空間 B の点を終点とするもの全体からなる集合 C((I,0,1),(X,A,B))P(X;A,B) と書き、そのhomotopy集合を Π(X;A,B) と書きます。A={x0}, B={x1} であれば P(X;x0,x1), Π(X;x0,x1) と書き、その元は両端点を固定することを強調して道および道のhomotopy類と呼ぶことにしますこの使い分けは単に私の気分の問題で、厳密に使い分けるわけでもないし、特にそういう慣習があるわけでもないので注意。。また、道 uP(X;x0,x1)vP(X;x1,x2) の積は vu の順で表します。

3.4.1 被覆空間
被覆空間とその位相

まずは被覆空間を定義します。

定義3.4.1
(被覆空間)

X を位相空間とする。X を底空間とするファイバーが離散的なファイバー束 π:X^XX の被覆空間 (covering space) という細かいことですが、ファイバーは空ではなく、その代表する同相類は底空間の点のによらない (この場合は濃度が等しい) とします。。単に X^ とも書き、全空間 X^ のことも同じく被覆空間という。射影 π を被覆写像 (covering map) という。

ファイバーが有限集合の場合は有限被覆空間といったり、具体的に n 元からなることが分かっている場合は n 重被覆空間といいます。また、全空間が連結な被覆空間は連結被覆空間と呼びます。

被覆空間に関する性質には基本群を用いて定式化されるものも多く、底空間と全空間をともに基点付き空間と考える状況が多く現れますが、その際の規約として被覆写像が基点を保つことを課します。基点は特に断らなければ x0,x^0 のように表します。

被覆空間 π:X^X が与えられたとき、被覆写像 π が局所同相写像連続写像 f:XY が局所同相写像であるとは、任意の点 xX に対し、その開近傍 U であって f(U)Y の開集合かつ制限 f|U:Uf(U) が同相写像となるものが存在すること。であることから底空間側が第一可算性や局所弧状連結性などの局所的な性質を持てば全空間側もそれらの性質を持つことが分かります。従って、局所弧状連結空間上の連結被覆空間が弧状連結空間になることが分かります局所弧状連結空間においては連結性と弧状連結性は同値でした (予備知識 命題2.5.28)。また、Hausdorff空間上の被覆空間がまたHausdorff空間になることも基本的です被覆空間の相異なる 2 点について、底空間成分について分離できなければ同じファイバーに乗っていることになりますが、その場合、ファイバーに離散位相を考えているので分離可能です。

被覆空間の例は3.4.1.6節の最後でいくつか挙げます。

連続曲線のリフト

被覆空間の最も基本的な性質として連続曲線の (始点を指定した) リフトの一意存在が挙げられます。

命題3.4.2
(連続曲線のリフトの一意存在)

X を位相空間、π:X^X を被覆空間とする。任意の連続曲線 u:IX と点 x^0π1(u(0)) に対し、連続曲線 u^:IX^ であって u^(0)=x^0 かつ u=πu^ を満たすもの (x^0 を始点とするリフト) が一意に存在する最初から x0=u(0),x^0X,X^ の基点と思えば、0 を基点として与えた単位区間 I からの基点を保つ連続写像に対して基点を保つリフトが一意に存在するという主張に同じです。

証明

まずは存在を示します。X の自明化近傍による開被覆 {Uλ}λΛ を固定し、単位区間 I の開被覆 {u1(Uλ)}λΛ に関するLebesgue数 δ>0 を取ります (予備知識 補題2.8.20)。そして、正整数 nN+n1<δ であるように取ります。単位区間を n 個の小区間に等分し、0I 側の小区間から順にリフト u^ を構成します。具体的には、

(i) リフト u^t=0 において u^(0)=x^0 と定める。
(ii) リフト u^[0,kn] まで構成できているとき、u([kn,k+1n])Uλ を満たす Uλ 上の局所自明化 φλ:π1(Uλ)Uλ×F を固定し、φλ(u^(kn))Uλ×FF 成分を a とおき、u^[kn,k+1n]u^(t)=φλ1(u(t),a) として定める。

φλ1(u(kn),a)=u^(kn) なので連続に拡張できており、リフトになっていることも明らかです。もちろん、(ii)の手続きを n 回完了した段階で欲しかったリフト u^ が得られます。

一意性を示します。u^,u^ をともに x^0 を始点とする u のリフトとします。A={tIu^(t)=u^(t)} とおき、これが開かつ閉であることを示せば 0AI の連結性から A=I、つまり、u^=u^ が従います。

t0I を取ります。u(t0)X の自明化開近傍 U と局所自明化 φ:π1(U)U×F を取り、t0 の属す u1(U) の連結成分を J とします。点 (φu^)(t0),(φu^)(t0)U×FF 成分をそれぞれ a,b とおくと、J の連結性と F の離散性から φ(u^|J),φ(u^|J)F 成分はそれぞれ a,b を値に取る定値写像です。従って、t0A ならば JA であり、t0Ac ならば JAc です。t0 は任意なので A が開かつ閉です。

より一般に、連続曲線が位相空間でパラメータ付けされていても初期条件を連続に与えておけばリフトが取れるというのが次です。

定理3.4.3
(被覆空間のhomotopyリフト性質)

X,Y を位相空間、π:X^X を被覆空間とする。homotopy H:Y×IX とその Y×{0} におけるリフト H^0:Y×{0}X^ が与えられているとする。つまり、H0=πH^0 とするhomotopy H が時刻 t において定める連続写像を Ht で表している。。このとき、H^0H のリフト H^:Y×IX^ へ一意に拡張する。

証明

まず、被覆空間がファイバー束として自明な場合、自明化 φ:X~X×F を固定することで両辺を同一視することにすれば、リフト H^ をファイバー成分への射影 pr2:X×FF を用いてH^(y,t)=(H(y,t),(pr2H^0)(y))とすることで構成でき、その一意性は各点 yY についての連続曲線 H|{y}×I のリフトの一意性から従います。

一般に示します。各 yY ごと H{y}×I におけるリフト h^y:IX^h^y(0)=H^0(y) に取り、その直和 yYh^y として写像 H^ を定めます。まずはこの H^ の連続性を示しますが、そのためには各 y に対してその開近傍 V であって H^|V×I が連続であるものを構成できればよいです。

yY を固定します。X の自明化近傍による開被覆 {Uλ}λΛ を取ります。{y}×IY×I における有限開被覆 {Vμ×Wμ}μM を各 μM に対して Vμ×WμH1(Uλ) となる λΛ が存在するように取ります{H1(Uλ)}λΛY×I の開被覆です。そこで、各 tI に対して (y,t)H1(Uλ) となる λΛ を固定したのち (y,t) の直積形の開近傍 Vt×WtH1(Uλ) に含まれるよう小さく取ります。これにより {y}×I の開被覆が得られますが、その有限部分被覆を取ればよいです。V=μMVλ とおき、H^V×I において連続であることを示します。I の開被覆 {Wμ}μM に関するLebesgue数 δ>0 を取り、正整数 nN+n1<δ であるように取ります。V×[0,kn] における連続性が分かっているとき、V×[kn,k+1n]H1(Uλ) となる λUλ を固定すれば、Uλ における自明性と最初の自明束の場合の結果から H^V×[kn,k+1n] 上の連続性が従います自明化による同一視のもと、最初の自明束の場合に構成した具体的な連続拡張は、こちらで連続曲線ごとのリフトとして構成したものと一致しています。ただし、もちろんスケールは揃える必要があり、実際に一致していることは各 yY ごと定まる連続曲線のリフトの一意性からの帰結です。。仮定から V×{0} における連続性が与えられているので帰納法により V×I 上での連続性が従います。以上により、この H^ は連続です。一意性は各点 yY についての連続曲線 H|{y}×I のリフトの一意性から従います。

これらの系として、次が分かります。

系3.4.4

X を基点付き空間、π:X^X を基点付き被覆空間とする。道の集合について、押し出しπ:x^X^P(X^;x^0,x^)xXP(X;x0,x):u^πu^は全単射である。これは道のhomotopy集合について全単射Π:x^X^Π(X^;x^0,x^)xXΠ(X;x0,x):[u^][πu^]を誘導する。

証明

押し出し π が全単射であることは、道 u(X;x0,x) に対して基点 x^0 を始点とするリフト (命題3.4.2より一意に存在) を対応させる写像がその逆写像になることから従います。

道のhomotopy集合について、写像 Π がwell-definedであることは道 u^v^P(X^;x^0,x^) に対して u^v^ につなぐhomotopy H^ の押し出し πH^πu^πv^ につなぐhomotopyになるのことからよいです。全射性は明らかなので、あとは単射性を示せばよいです。Π([u^])=Π([v^]) となる道のhomotopy類 [u^]Π(X^;x^0,x^), [v^]Π(X^;x^0,x^) を取り、代表元について u^v^ を示せばよいです。代表元の押し出し πu^, πv^ はhomotopicなのでそのhomotopy H:I×IX が取れます。道のhomotopyなので制限 H|{0}×IH|{1}×I はいずれも定値写像です。homotopyリフト性質 (定理3.4.3) から H のリフト H^:I×IX^ であって {0}×I 上で x^0 を値に取るものが取れます。u^=H^|I×{0} かつ v^=H^|I×{1} であり、制限 H^|{1}×I は離散空間 π1(π(x^)) への連続写像なので I の連結性から定値写像です。このことから H^u^v^ につなぐ道のhomotopyです。以上により Π の単射性も確認できました。

系3.4.5

X を基点付き空間、π:X^X を基点付き被覆空間とする。基本群の間の誘導準同型π:π1(X^,x^0)π1(X,x0)は単射である。

証明

写像 Π(X^;x^0,x^0)Π(X;x0,x0) が単射なのでそうです。

また、次も明らかでしょう。

系3.4.6

X を位相空間、π:X^X を被覆空間とし、点 x0,x1X を取る。互いにhomotopicな道 uvP(X;x0,x1) と点 x^0π1(x0) に対し、それぞれの x^0 を始点とするリフト u^,v^ は互いにhomotopicである。特に終点は一致する。

よって、道のhomotopy類 γΠ(X;x0,x1) について、π1(x0) の点ごとにその点を基点とする γ の代表元のリフトの終点として π1(x1) の点をwell-definedに対応させることができます。これはファイバーの間に写像γ:π1(x0)π1(x1)を誘導し、次のことが容易に分かります。

命題3.4.7
(ファイバー間に誘導される写像の関手性)

道のhomotopy類 αΠ(X;x0,x1), βΠ(X;x1,x2) がファイバーに誘導する写像について(βα)=βα:π1(x0)π1(x2)が成立する。また、定値写像の代表する道のhomotopy類 εΠ(X;x0,x0) の誘導写像について ε=Idπ1(x0) が成立する。

証明

代表元とそのリフトを考えることで直ちに確かめられます。

つまり、被覆空間 π:X^X が与えられると底空間の基本亜群 Π(X) から各点上のファイバーを対応させる集合の圏への共変関手 (局所系詳しくは3.1.2節を参照。) が定まります。道のhomotopy類 γΠ(X;x0,x1) が同型射であることからその誘導写像 γ:π1(x0)π1(x1) が全単射になることには注意します。また、始点と終点を同じ点 x0 に取ることで各 απ1(X,x0)=Π(X;x0,x0) に対してファイバーの自己全単射 αBij(π1(x0)) が定まり、この対応から準同型 π1(X,x0)Bij(π1(x0)):αα が定まります。これを被覆空間 X^ の点 x0 におけるmonodromy表現と呼びます。そして、これを群作用π1(X,x0)×π1(x0)π1(x0):(α,x^0)α(x^0)で言い換えたものはmonodromy作用と呼ばれます。

連続写像のリフト

より一般的な連続写像に対するリフトの存在には基本群が障害となります。

定理3.4.8
(リフトが存在するための条件)

X を基点付き空間、Y を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き被覆空間とする。基点を保つ連続写像 f:YX について次は同値である。

(1) 基点を保つ連続写像 f^:YX^ であって f=πf^ を満たすもの (基点を保つリフト) が一意に存在する。
(2) π,f の誘導する基本群の間の誘導準同型 π,f について包含関係 f(π1(Y,y0))π(π1(X^,x^0)) が成立する。
証明

(1) ⇒ (2) 明らかです。

(2) ⇒ (1) 各 yY に対して道のhomotopy類 γyΠ(Y;y0,y) を固定し、写像 f^:YX^f^(y)=(fγy)(x^0) により定義します。次を示せばよいです。

(i) f^ の構成がwell-definedであること。
(ii) f^ が連続であること。
(iii) 一意であること。

(i) γy,γyΠ(Y;y0,y) とします。同値変形(fγy)(x^0)=(fγy)(x^0)((fγy)1(fγy))(x^0)=x^0(f(γyγy))(x^0)=x^0f(γyγy)π(π1(X^,x^0))が成立しますが、γyγyπ1(Y,y0) と仮定の包含関係から最後が成立し、従って、最初も成立します。これが f^(y) がwell-definedであることを意味します。

(ii) 各 yY の周りでの f^ の連続性を確かめればよいです。f(y)X の自明化開近傍 U を取り、yY の弧状連結な開近傍 Vf1(U) に含まれるように取ります。また、局所自明化 φ:π1(U)U×F を固定します。各 yV に対して φ(f^(y)),φ(f^(y))U×F のファイバー成分が同じであることを示せば φ(f^|V) の連続性、従って、V における f^ の連続性が従います。道のhomotopy類 γyΠ(Y;y0,y), δΠ(V;y,y) を取り、γy=δγy とおきます。このとき、f^(y)=(fγy)(x^0)=(f(δγy))(x^0)=((fδ)(fγy))(x^0)=(fδ)(f^(y))です。δ の代表元 vP(V;y,y) を取り、X の連続曲線 fvf^(y)X^ を始点とするリフトを w^ とすれば、f^(y)=w^(1) です。ここで、単位区間の連結性から U×F の連続曲線 φw^ のファイバー成分は一定なので φ(f^(y)),φ(f^(y)) のファイバー成分は同じです。以上により f^ は各 yY の周りで連続、従って、それ自身連続です。

(iii) f^,f^f の基点を保つリフトとします。各 yY ついて、道 vP(Y;y0,y) を取るとき、f^vf^v はともに x^0 を始点とする連続曲線 fv のリフトであり、その一意性から f^v=f^v であり、特に f^(y)=f^(v(1))=f^(v(1))=f^(y) です。よって、f^=f^ です。

補足3.4.9

Y の局所弧状連結性は外せません。XC の部分空間X={1}×[1,1][1,2]×{1,+1}{2}×[1,12]([1,2)Q)×[12,1]として定め、被覆空間 z2:C×C×:zz2X^:=π1(X) への制限として被覆空間 π:X^X を構成し、Y=X, f=IdX とすると、基点の取り方によらずリフトは (連続に) 取れません。

また、ここで作った被覆空間 π:X^X は弧状連結空間の連結被覆空間が必ずしも弧状連結にならない例になっています。

被覆空間の間の射と同型

位相空間 X 上の被覆空間 π:X^X から π:X^X への射を被覆写像 p:X^X^ であって π=πp を満たすものとして定め、被覆空間の同型を可逆な射が存在することにより定めます。被覆空間を基点付きで考える場合には基点を保つことを要求します。

まず、基点付きの場合に射が存在するための条件として次を確かめます。

命題3.4.10
(基点付き連結被覆空間の間の射の存在条件)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X, π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。包含関係 π(π1(X^,x^0))π(π1(X^,x^0)) が成立するとき、基点を保つ射 p:X^X^ が一意に存在する。

証明

定理3.4.8からより基点を保つリフトとして連続写像 p:X^X^ が一意に取れます。この p が被覆写像であることを示せばよいです。

(i) x^X^ に対し、そのある開近傍において p:X^X^ の局所自明化が存在する。
(ii) x^X^ に対し、p1(x^) の濃度は一定である。

(i) 点 x^X^ を取り、そのある開近傍における p:X^X^ の局所自明化を構成します。π(x^)X の弧状連結な開近傍 U であって π,π の両方について自明化可能なものを取ります。x^ の属する π1(U) の弧状連結成分を V とします。π1(U) の弧状連結成分 W に対し、p(W)V ならば制限 p|W:WV が定まり同相写像でありまず、p(W)V ならば W の弧状連結性から p(W)V であり、制限 p|W:WV が定まります。連続写像の列Wp|WVπ|VUを考えるとき、π|W=(π|V)(p|W)π|V は同相写像であり、よって、p|W=(π|V)1(π|W) は同相写像です。、よって、制限 p|p1(V):p1(V)V は離散空間をファイバーとする自明束です。

(ii) X^ の各点において局所自明化が取れるので、ファイバーの同相類 (離散空間に限れば濃度) は各点の近傍で一意です。X^ の連結性から全体でも一意です。

系として直ちに同型条件が得られます。

系3.4.11
(基点付き連結被覆空間どうしの同型条件)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X, π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。次は同値である。

(1) 基点付き被覆空間として X^,X^ は同型である。
(2) π(π1(X^,x^0))=π(π1(X^,x^0)) が成立する。
補足3.4.12

基点付き被覆空間 π:X^X について、その基本群の押し出しの像 π(π1(X^,x^0)) はmonodromy作用に関する基点 x^0 の固定化群です。

また、基点を考慮しない場合の同型条件は次の主張から直ちに従います。

命題3.4.13
(基点の取り換えと共役)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。任意の道のhomotopy類 γΠ(X;x0,x1) に対してπ(π1(X^,γ(x^0)))=γπ(π1(X^,x^0))γが成立する。特に、απ1(X,x0) に対して基点 x^0 を同じファイバー上の点 α(x^0) で取り換えることで基本群の押し出しの像は α による共役だけ変わる。

証明

道のhomotopy類 γ^Π(X^;x^0,γ(x^0))γ=πγ^ を満たすように取りますγ の代表する道の基点 x^0 を始点とするリフトの代表する道のhomotopy類です。。基本群の間の同型π1(X^,x^0)π1(X^,γ(x^0)):β^γ^β^γ^から直ちに主張が従います。

系3.4.14
(連結被覆空間どうしの同型条件)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X, π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。次は同値である。

(1) 基点を考慮しない被覆空間として X^,X^ は同型である。
(2) π(π1(X^,x^0))π(π1(X^,x^0)) は互いに共役である。
証明

(1) ⇒ (2) 同型射 p:X^X^ と道のhomotopy類 α^Π(X^;x^0,p(x^0)) を取り、απα^π1(X,x0) とおけば命題3.4.13よりπ(π1(X^,x^0))=π(π1(X^,α(x^0)))=απ(π1(X^,x^0))α1です。

(2) ⇒ (1) ある απ1(X,x0) が存在してπ(π1(X^,x^0))=απ(π1(X^,x^0))α1=π(π1(X^,α(x^0)))です。X^ の基点を α(x^0) に取り直せば系3.4.11より基点を保って同型 X^X^ が成立します。

被覆変換群と被覆空間への作用

被覆空間 π:X^X に対して自身への同型射 X^X^ を被覆変換と呼び、被覆変換全体に合成による積を与えて得られる群を被覆変換群と呼びます。被覆変換群は Aut(X^) などで表すことにします。この被覆変換群は基本群を用いて表すことができ、ここではそれを与えます。

少し補題を準備します。また、以下では群 G の部分群 H の正規化群 {gGH=gHg1}NG(H) で表すことにします。

補題3.4.15

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。各 απ1(X,x0) に対して次は同値である。

(1) αNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))).
(2) 被覆変換 pα:X^X^ であって x^0α(x^0) に移すものが一意に存在する。
証明

正規化群の定義と命題3.4.13系3.4.11から従います。

補題3.4.16
(正規化群からの右作用)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。各 απ1(X,x0) に対して x^0α(x^0) に移す一意な被覆変換 pα:X^X^ を対応させることで全射反準同型Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))Aut(X^):αpαが定まる。そして、被覆空間 X^ には右 Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) 作用が x^α=pα(x^) により定まる。

証明

α,βNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) とします。x^0α(x^0) につなぐ道 u^ を固定します。u^(1)=pα(x^0) です。pβu^β(x^0) を始点、(pβpα)(x^0) を終点とする道であり、これは (pβpα)(x^0)=αβ(x^0)=pαβ(x^0) を意味し、主張の反準同型が従います。全射性は補題3.4.15から直ちに従います。被覆変換群自体は明らかに左作用を定め、反準同型との合成より主張の右 Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) 作用が定まります。

補足3.4.17
(正規化群からの右作用の言い換え)

補題3.4.16で考えた正規化群 Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) からの右作用は点 x^X^αNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) に対して x^α

(i) 道のhomotopy類 γ^Π(X^;x^0,x^) を任意に取り、γ=πγ^Π(X;x0,x) とおき
(ii) x^α=(γαγ)(x^) と定める

ことでも得られます。実際、γ^ の代表元 v^ を取り v=πv^ とおくとき、pα(x^)=(pαv^)(1) であることと pαv^pα(x^0)=α(x^0) を始点とする v のリフトであることからpα(x^)=(pαv^)(1)=γ(α(x^0))=(γαγ)(x^)であり、これは両者の一致を意味します。

では、被覆変換群の表示について。

系3.4.18
(被覆変換群の表示)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。補題3.4.16の全射反準同型は反同型Aut(X^)Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))/π(π1(X^,x^0))を誘導する。

証明

全射反準同型Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))Aut(X^):αpαの核は x^0 の固定化群 π(π1(X^,x^0)) です。

補足3.4.19
(基点を取り換えたときの被覆変換群との対応)

弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間 X 上の基点付き連結被覆空間 π:X^X が与えられているとします。道のhomotopy類 γΠ(X;x0,x1) を用いて γ(x^0)X^ で表される点 x^1 を基点として考えた場合との比較をします。系3.4.18の反同型から同型Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))/π(π1(X^,x^0))Nπ1(X,x1)(π(π1(X^,x^1)))/π(π1(X^,x^1))が得られますが、この対応は具体的には道のhomotopy類 γ に従って基本群の基点を取り換えるときの同型γ:π1(X,x0)π1(X,x1):αγαγから誘導されます。まず、任意の αNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) に対して補足3.4.17よりpα(x^1)=x^1α=(γαγ)(x^1)であり、次の図式は可換です。

これが直ちに目的の同型を誘導します。特に、γNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) とした場合、点 x^1=γ(x^0) はもとの基点 x^0 と同じファイバーにあり、Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))=Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^1)))ですがγ の取り方から π(π1(X^,x^0))=π(π1(X^,x^1)) なので両辺の正規化群は一致します。、この基点の点 x^1 への取り換えによって系3.4.18の反同型は [γ]Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))/π(π1(X^,x^0)) による共役だけ変化します。

正規被覆空間と主束構造

正規化群からの右作用は系3.4.18の剰余群からの自由な右作用を誘導しますが、被覆空間に次に定義する正規性がある場合にはその作用により主束構造が定まります。

定義3.4.20
(正規被覆空間)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き連結被覆空間とする。基本群の押し出しの像 π(π1(X^,x^0))π1(X,x0) の正規部分群であるとき、これを正規被覆空間という。

命題3.4.21
(基点付き正規被覆空間の主束構造)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を基点付き正規被覆空間とする。任意の απ1(X,x0) に対して x^0α(x^0) に移す被覆変換 pα:X^X^ が一意に定まり、X^ への右 π1(X,x0) 作用がx^α=pα(x^)により定まる。そして、この右 π1(X,x0) 作用は剰余群 π1(X,x0)/π(π1(X^,x^0)) からの右作用を誘導する。この剰余群からの右作用はファイバーごとに自由かつ推移的であり、主 π1(X,x0)/π(π1(X^,x^0)) 束の構造を定める。

証明

この場合 Nπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0)))=π1(X,x0) なので補題3.4.16より π1(X,x0) からの右作用が定まり、系3.4.18より π1(X,x0)/π(π1(X^,x^0)) からの自由な右作用を誘導します。ファイバーごとに推移的であることは補題3.4.15より従います。以上により主 π1(X,x0)/π(π1(X^,x^0)) 束の構造が確かめられました。

補足3.4.22
(正規被覆空間の定義について)

ここでは正規被覆空間の定義を基点付きで与えましたが、補足3.4.19から正規被覆空間になるかどうかは基点の取り方によらない性質なので基点を考慮しない場合にも意味を持ちます。

逆に、主束構造を持てば正規被覆空間であることが分かります。

命題3.4.23
(主束構造を持つ連結被覆空間の正規性)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π:X^X を主 G 束の構造を持つ基点付き連結被覆空間とする。このとき、この被覆空間は正規であり、同型Gπ1(X,x0)/π(π1(X^,x^0))が成立する。

証明

任意の απ1(X,x0) に対して αNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) であることを示します。右 G 作用のファイバーごとの推移性から gG であって x^0g=α(x^0) を満たすもを取ります。右 G 作用 X^×GX^X^×{g} への制限により基点 x^0α(x^0) に移す被覆変換が定まるので系3.4.11よりπ(π1(X^,α(x^0)))=π(π1(X^,x^0))です。また、命題3.4.13よりπ(π1(X^,α(x^0)))απ(π1(X^,x^0))αであり、これら同型を合わせて αNπ1(X,x0)(π(π1(X^,x^0))) が従います。よって、正規被覆空間です。主張の同型は反同型GAut(X^):g(x^x^g)系3.4.18の反同型との合成から得られます。

正規被覆空間には主束の構造が入り、その群作用による商写像が被覆写像を与えていると考えることができますが、逆に、位相空間に性質のよい群作用を与えることで正規被覆空間が得られます。

定義3.4.24
(自由かつ固有不連続な右作用)

位相空間 X^ と離散群 G から X^ への連続な右作用が与えられているとする。任意の点 x^X^ に対し、x^ のある開近傍 U^ であって任意の gG{1} に対して U^U^g= を満たすものが存在するとき、この右 G 作用は自由かつ固有不連続 (properly discontinuous) であるという[A. Hatcher, Algebraic Topology]の72ページの記述によると、ここで課した各点に適切な開近傍が存在するという条件を表す一般的に受け入れられている用語は無さそうとのこと。ここでは[服部 位相幾何学]の自由な固有不連続変換群という用語を参考に名付けています。

命題3.4.25

X^ を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とし、離散群 GX^ に右から自由かつ固有不連続に作用しているとする。このとき、商写像 π:X^X^/G は被覆写像であり正規被覆空間の構造を定める。また、同型 Gπ1(X^/G,x0)/π(π1(X^,x^0)) が成立する。

証明

xX^/G に対して π1(x) の点 x^ を取り、その開近傍 U^ であって任意の gG{1} に対して U^U^g= を満たすものを取るとき、π1(π(U^))=gGU^g から π(U^)x の開近傍であり、π(U^) 上の (G 同変な) 局所自明化がπ(U^)×GU^×Gπ1(π(U^)):(u,g)ugから得られます。従って、商写像 π は被覆写像です。残りは命題3.4.23から従います。

特に、作用を与えた位相空間が単連結な場合に商空間の基本群が作用群に同型であることが非常に重要であり、ここではそのことを用いていくつかの具体的な位相多様体についてその基本群を求めてみます。ただし、位相多様体の自由かつ固有不連続な右作用による商空間が再び位相多様体になることは命題3.4.50で確認します。

例3.4.26
(円周の基本群)

円周 S1 は実直線 R への Z 作用R×ZR:(r,n)r+nによる商空間として表されますが、この作用が自由かつ固有不連続であることから同型π1(S1)Zが従います。

例3.4.27
(実射影空間の基本群)

n2 とします。n 次元実射影空間 RPnn 次元単位球面 Sn への Z×={1,+1} 作用Sn×Z×Sn:(x,p)pxによる商空間として表されますが、この作用が自由かつ固有不連続であることから同型π1(RPn)Z×Z2が従います。

例3.4.28
(レンズ空間の基本群)

互いに素な正整数 p,q に対して複素数 ζpq:=e2πiq/p は乗法に関して Zp に同型な群を生成します。3 次元単位球面 S3C2 の部分空間と考えれば Zp からの作用をS3×ZpS3:(x,k)ζpkqxにより与えることができます。この作用は自由かつ固有不連続なので商空間として位相多様体が定まります。これを (p,q) 型のレンズ空間といい L(p,q) で表します。そして、その基本群について同型π1(L(p,q))Zpが従います。

例3.4.29
(Kleinの壺の基本群)

Kleinの壺 K の基本群を求めてみます。一意な全射準同型 ρ:ZAut(Z)Z× による半直積 ZρZ から R2 への右作用をR2×(ZρZ)R2:(x,y,n,m)((1)m(x+n),y+m)により与えます。この右作用は自由かつ固有不連続であり、商空間はKleinの壺 K に同相です。まず、きちんと右作用になっていることは半直積 ZρZ の積演算が(n1,m1)(n2,m2)=(n1+(1)m1n2,m1+m2)により定まっていることに注意して、((x,y)(n1,m1))(n2,m2)=((1)m1(x+n1),y+m1)(n2,m2)=((1)m1+m2(x+n1)+(1)m2n2,y+m1+m2)=((1)m1+m2(x+n1+(1)m1n2),y+m1+m2)=(x,y)(n1+(1)m1n2,m1+m2)=(x,y)((n1,m1)(n2,m2))であることから確かめられます。自由かつ固有不連続であることは容易各点に対してその点を中心とする半径 12 の開球体を取ればよいです。です。商空間がKleinの壺に同相であることは、商写像 R2R2/(ZρZ) の正方形 I×I への制限が商写像コンパクト空間からHausdorff空間への連続全射は商写像でした (予備知識 命題2.7.24)であることと、この制限においてちょうど下辺 I×{0} と上辺 I×{1} を恒等的に、左辺 {0}×I と右辺 {1}×I を上下逆さまに等化されていることを見れば分かります。従って、Kleinの壺 K の基本群について同型π1(K)ZρZが従います。

3.4.2 普遍被覆空間と分類定理
普遍被覆空間

普遍被覆空間を定義します。

定義3.4.30
(普遍被覆空間)

X を位相空間とする。被覆空間 π~:X~X であって全空間 X~ が単連結であるものを普遍被覆空間という。

多少条件が付きますが、普遍被覆空間は次の意味で普遍性を持ちます。

命題3.4.31
(普遍被覆空間の普遍性)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π~:X~X を基点付き普遍被覆空間とする。任意の基点付き連結被覆空間 π:X^X に対して基点を保つ被覆写像の射 p:X~X^ が一意に存在する。

証明

命題3.4.10から直ちに従います。

また、基点付き普遍被覆空間 π~:X~X は正規なので命題3.4.21より主 π1(X,x0) 束の構造、つまり、ファイバーごとの自由かつ推移的な右 π1(X,x0) 作用が定まります。

系3.4.32
(基点付き普遍被覆空間の主束構造)

X を弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間、π~:X~X を基点付き普遍被覆空間とする。これは補題3.4.16により定まる右 π1(X,x0) 作用によって主 π1(X,x0) 束になる。

補足3.4.33
(普遍被覆空間の道のhomotopy集合との同変な同一視)

弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間 X 上の基点付き普遍被覆空間 π~:X~X が与えられているとします。X~ の単連結性から各 x~X~ に対して道のhomotopy集合 Π(X~;x~0,x~) は唯一の元からなるので全単射X~x~X~Π(X~;x~0,x~)が定まります。そして、系3.4.4の全単射Π:Π(X~;x~0,x~)Π(X;x0,x)との合成によって全単射 Θ:X~xXΠ(X;x0,x) が得られますが、これは両辺に定まる右 π1(X,x0) 作用について同変になります。実際、x~X~ に対して対応する唯一の道のhomotopy類を γ~ を取り、γ=πγ~ とおけばΘ(x~α)=Θ((γαγ)(x~))=Θ((γα)(x~0))=γα=Θ(x~)αです。

普遍被覆空間の存在条件

空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間における普遍被覆空間の存在は次に定義する半局所単連結性と同値であり、これにより位相多様体やCW複体が必ず普遍被覆空間を持つことが従います。

定義3.4.34
(半局所単連結)

X を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。X が半局所単連結 (semi-locally simply connected) であるとは、任意の点 xX に対してその弧状連結開近傍 U であって包含写像 i:UX の誘導する準同型i:π1(U,x)π1(X,x)が自明であることをいう。

定理3.4.35
(普遍被覆空間が存在するための必要十分条件)

X を空でない弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は同値である。

(1) X は半局所単連結である。
(2) 普遍被覆空間 π~:X~X が存在する。
証明

(1) ⇒ (2) 道のhomotopy集合の直和 xXΠ(X;x0,x)X~ とおき、写像 π~:X~X:[u]u(1) が普遍被覆空間となるように X~ の位相を与えます補足3.4.33から一般に普遍被覆空間は xXΠ(X;x0,x) と同一視されるので、天下り的に、最初から存在の確かな xXΠ(X;x0,x) をベースに普遍被覆空間を作れないかと考えているのですが、半局所単連結性があればそれができるというわけです。X の開被覆 {Uλ}λΛ を次の条件を満たす様に取ります。

Uλ は弧状連結。
包含写像 iλ:UλX による誘導準同型 (iλ):π1(Uλ)π1(X) は自明。

さらに、各 λΛ に対して点 xλUλ と道のhomotopy類 γλΠ(X;x0,xλ) を固定し、以下の流れで普遍被覆空間の構造を与えます。

(step 1) λΛ と点 xUλ に対して Uλ 内の道のhomotopy類 δλ,xΠ(Uλ;xλ,x) を固定することで、各 λΛ について δλ,x の取り方にはよらない自明化φλ:xUλΠ(X;x0,x)Uλ×π1(X,x0):γ(π~(γ),γλ(iλ)δλ,π~(γ)γ)が得られる。つまり、この φλ は全単射かつ π~=prλ,1φλ を満たす。ただし、prλ,1:Uλ×π1(X,x0)Uλ は第1成分への射影とする。
(step 2) この自明化から定まる変換関数 gμλ:Uλμ:=UλUμBij(π1(X,x0)) は局所定値かつコサイクル条件を満たす。そして、この変換関数により π~:X~X には被覆空間の構造が定まる。
(step 3) P(X;x0,X) におけるhomotopy H:I×IX に対して写像H~:IX~:t[HI×{t}]Π(X;x0,H(1,t))は連続曲線 H|{1}×I[HI×{0}] を始点とするリフトになる。
(step 4) この X~ は単連結であり、普遍被覆空間を与えている。

(step 1) まず、δλ,x の取り方によらないことは、任意の δλ,x,δλ,xΠ(Uλ;xλ,x) に対して準同型 (iλ):π1(Uλ,xλ)π1(X,xλ) が自明であることから (iλ)(δλ,xδλ,x)π1(X;xλ) が単位元となる、つまり、(iλ)δλ,x=(iλ)δλ,x となるのでよいです。全単射性も写像ψλ:Uλ×π1(X,x0)xUλΠ(X;x0,x):(x,α)(iλ)δλ,xγλαが逆写像を与えるのでよいです。π~=prλ,1φλ は明らかです。

(step 2) 変換関数 gμλ を書き下すとgμλ(x)=prμ,2(φμ|π~1(x))(ψλ|pr1,λ1(x))=(αγμ(iμ)δμ,x(iλ)δλ,xγλα)Bij(π1(X,x0))です。この表示からコサイクル条件を満たすことは明らかです。gμλ が局所定数であることを確認します。そのためには点 x1Uλμ に対してその弧状連結な開近傍 VUλμ に含まれるように取ったとき、この V 上で gμλ が定値であることを示せばよいです。各 xV に対して道のhomotopy類 θxΠ(V;x1,x) を固定します。常に (iλ)δλ,x=(iλ)(θxδλ,x1), (iμ)δμ,x=(iμ)(θxδμ,x1) が成立するのでgμλ(x)=(αγμ(iμ)δμ,x(iλ)δλ,xγλα)=(αγμ(iμ)δμ,x1(iμ)θx(iλ)θx(iλ)δλ,x1γλα)=(αγμ(iμ)δμ,x1(iλ)δλ,x1γλα)=gμλ(x1)です。従って、V 上で gμλ は定値です。以上により X の開被覆とコサイクル条件を満たす変換関数が構成されたので π~:X~X は離散空間をファイバーとするファイバー束、つまり、被覆空間になります。

(step 3) 確認すべきことは写像 H~:IX~ の連続性のみです。連続曲線 H|{1}×Iv とおき、各 tI に対して道 vtP(X;v(0),v(t))vt(s)=v(st) により定めます。[HI×{t}]=[vtHI×{0}] が成立します。t0I を取り、その開近傍における連続性を示します。λΛv(t0)Uλ であるように取り、Jv1(Uλ)t0 の属す連結成分とします。各 tJ に対して道 wtP(Uλ;v(t0),v(t))wt(s)=v((1s)t0+st) により定めるとprλ,2(φλ(H~(t)))=γλ(iλ)δλ,v(t)[H|I×{t}]=γλ(iλ)δλ,v(t)[vtH|I×{0}]=γλ(iλ)δλ,v(t)[(iλwt)vt0H|I×{0}]=γλ(iλ)(δλ,v(t)[wt])[vt0H|I×{0}]=γλ(iλ)δλ,v(t0)[H|I×{t0}]=prλ,2(φλ(H~(t0)))であり、φλ(H~|J) の第 2 成分は定値です。これは H~t0 の開近傍 J 上で連続であることを意味し、よって、H~ は連続です。

(step 4) X~ の基点 x~0π1(X,x0)=Π(X;x0,x0) の単位元に固定し、任意に取った連続閉曲線 u~P(X~;x~0,x~0)1 点にhomotopicであることを示します。u=π~u~P(X;x0,x0) とおき、各 tI に対して u~(t) の代表元を ut:su(st) として取ります。実際、(step 3)より写像 u~:t[ut]x~0 を始点とする u のリフトなのでその一意性からもとの u~ に一致しており、u~(t)=[ut] です。特に、[u]=[u1]=u~(1) は単位元なので u を定値写像 ex0 につなぐhomotopy H:I×IX が取れます。homotopyリフト性質 (定理3.4.3) からこのhomotopy H のリフト H~ を取れば、それが u~ を定値写像 ex~0 につなぐhomotopyです。

(2) ⇒ (1) xX に対し、その自明化開近傍 U を取れば i(π1(U,x))={1}π1(X,x) が成立します。実際 [u]π1(U,x) に対し、局所自明化の存在から代表元 u のリフトが連続閉曲線 u~P(X~;x~,x~) に取れ、単連結性からこの u~1 点につぶす (基点 x~ を保つ) homotopy H~ を取れば H:=π~H~u1 点につぶすhomotopyを与え、つまり、これは i([u])=1π1(X,x) を意味します。

補足3.4.36

R2Q2 は弧状連結かつ局所弧状連結ですが、半局所単連結ではないので普遍被覆空間を持ちません。

被覆空間の分類定理

被覆空間が与えられるとそこからmonodromy表現 (集合上の表現) が定まりましたが、普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間についてはこの集合上の表現の同値類によってその被覆空間が分類可能です。

いくつか集合上の表現についての言葉を準備します線形表現で用いられる言葉をそのまま流用します。。まず、群 G の集合 A 上の表現を G から A の自己全単射全体からなる群 Bij(A) への群準同型 ρ:GBij(A) と定め、群 G の集合上の表現 ρ:GBij(A), ρ:GBij(B) が同値であるとを、ある全単射 φ:AB が存在して誘導準同型φ:Bij(A)Bij(B):fφfφ1と表現 ρ,ρ の間に関係式 ρ=φρ が成立することと定めます。群 G の集合 A 上の表現 ρ:GBij(A) の部分表現を A の部分集合 B 上の表現 ρ:GBij(B) であって任意の gG に対して ρ(g)=ρ(g)|B を満たすものとして定めます。部分集合 B として A 自身もしくは空集合 を考えることで直ちに部分表現が得られますが、これらを自明な部分表現といい、非自明な部分表現を持たない表現を既約表現と呼びます。

また、上記は左作用の言葉で言い換えることができます。群 G の集合 A 上の表現 ρ:GBij(A) が与えられたとき、集合 A 上の左 G 作用 μ:G×AAμ(g,a)=ρ(g)(a) により定まり、逆に、集合 A 上の左 G 作用から同じ関係式によって直ちに群 G の集合 A 上の表現が得られます。つまり、表現と左作用はこの手続きにより一対一に対応します。そして、表現の同値は左 G 集合としての同型、部分表現は部分左 G 集合、既約表現は推移的な作用を与えられた左 G 集合として言い換えられます。

まず、集合上の表現が与えられたときにその表現をmonodromy表現として持つ被覆空間が同伴束として構成できることを見ます。

補題3.4.37
(同伴束として得られる被覆空間)

X を普遍被覆空間 π~:X~X を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。

(1) 空でない集合 A 上の表現 ρ:π1(X,x0)Bij(A) に対して射影 π~pr1:X~×AX は商空間X~×ρA:=(X~×A)/((x~α,a)(x~,αa):απ1(X,x0))からの連続写像 π~ρ:X~×ρAX を誘導し、これは X 上の被覆空間を与える。この被覆空間のmonodromy表現は ρ に同値である。
(2) 被覆空間 π:X^X とそのmonodromy表現 ρ:π1(X,x0)Bij(π1(x0)) について同型X^X~×ρπ1(x0)が成立する。
(3) 互いに同値な空でない集合上の表現 ρ:π1(X,x0)Bij(A), ρ:π1(X,x0)Bij(A) に対して同型X~×ρAX~×ρAが成立する。
証明

(1) 全空間 X~×ρA は直積空間 X~×A に左 π1(X,x0) 作用をα(x~,a)=(x~α1,αa)で与えたときの軌道空間であると考えます。まず、射影 π~pr1 が連続写像 π~ρ:X~×ρAX が誘導されるのは商写像の普遍性から分かります。

普遍被覆空間の π1(X,x0) 同変な局所自明化 φ:π~1(U)U×π1(X,x0) を固定するとき、被覆空間 π~pr1:X~×AXπ1(X,x0) 同変な局所自明化φ×IdA:π~1(U)×AU×π1(X,x0)×Aが得られ、これが同相写像Φ:π~1(U)×ρA(U×π1(X,x0))×ρAを誘導します。また、連続写像ψ:U×π1(X,x0)×AU×A:(x,α,a)(x,αa)は同相写像 Ψ:(U×π1(X,x0))×ρAU×A を誘導し連続写像を誘導することは商写像の普遍性から。同相写像であることは切断 (連続な完全代表系) が対応 (x,a)(x,ε,a) により取れることから。、これにより局所自明化 φρ:=ΨΦ:π~ρ1(U)U×A が得られます。以上により π~ρ:X~×ρAX は被覆空間です。

この被覆空間 X~×ρA のmonodromy表現について調べます。A から基点 x0 におけるファイバー π~ρ1(x0)=π~1(x0)×ρA への全単射 ξ:Aπ~1(x0)×ρA:a[x~0,a] を取ります。このとき、απ1(X,x0) に対して α(ξ(a))α を代表する道 uP(X;x0,x0)ξ(a)X~×ρA を始点とするリフト u~ρ を用いて u~ρ(1) で与えられますが、この u~ρ は被覆空間 π~pr1:X~×AX に対する (x~0,a) を始点とするリフト u~ を商空間 X~×ρA に押し出したものであるのでξ1(α(ξ(a)))=ξ1([u~(1)])=ξ1([α(x~0),a])=ξ1([x~0α,a])=ξ1([x~0,αa])=αaが成立します。従って、全単射 ξ が表現 ρ と被覆空間のmonodromy表現の同値を与えます。

(2) 連続写像 π~pr1:X~×π1(x0)X の被覆空間 π:X^X に関するリフト p:X~×π1(x0)X^ を各 x^π1(x0) に対して点 (x~0,x^) を点 x^ に移すように取ります。次のことを示します。(ii)から直ちに連続全単射 X~×ρπ1(x0)X^ が誘導され、主張の同型が従います。

(i) 任意の道のhomotopy類 γΠ(X;x0,x) と点 x^π1(x0) に対して p(γ(x~0),x^)=γ(x^) が成立する同じ記号で書いてますが、左辺の γX~ について、右辺の γX^ についてです。
(ii) 任意の点 (x~,x^),(x~,x^)X~×π1(x0) に対し、(x~,x^)(x~,x^)p(x~,x^)=p(x~,x^) とは同値である。

(i) 明らかにp(γ(x~0),x^)=p(γ(x~0,x^))=γ(p(x~0,x^))であり、あとは定義より p(x~0,x^)=x^ であることを合わて従います。

(ii) まず、(x~,x^)(x~,x^) とします。ある απ1(X,x0) が存在して(x~,x^)=(x~α1,αx^)=(x~α1,α(x^))であり、適当な X の道のhomotopy類 γ により x~=γ(x~0) と表せば(x~,x^)=((γα)(x~0),α(x^))です。よって、(i)を使ってp(x~,x^)=p((γα)(x~0),α(x^))=(γαα)(x^)=γ(x^)=p(x~,x^)です。

続いて、p(x~,x^)=p(x~,x^) とします。適当な X の道のhomotopy類 γ,γ により x~=γ(x~0), x~=γ(x~0) と表せばγ(x^)=p(γ(x~0),x^)=p(x~,x^)=p(x~,x^)=p(γ(x~0),x^)=γ(x^)であり、α=γγ とおけば x^=α(x^)=αx^ です。また、x~=(γγ)(x~)=(γαγ)(x~)=x~α1であるので(x~,x^)=(x~α1,αx^)(x~,x^)です。以上により(ii)の同値性が確かめられました。

(3) ρρ の同値を与える全単射 φ:AA を取ります。これは G 空間の同型 IdX~×φ:X~×AX~×A を定め、被覆空間としての同型 X~×ρAX~×ρA が誘導されます。

系3.4.38

X を普遍被覆空間 π~:X~X を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。被覆空間 π:X^X, π:X^X とその基点におけるmonodromy表現 ρ,ρ に対して次は同値である。

(1) 基点を考慮しない被覆空間として X^,X^ は同型である。
(2) monodromy表現 ρ,ρ は同値である。
証明

(1) ⇒ (2) 同型のファイバーへの制限 π1(x0)π1(x0) がmonodromy表現 ρρ の間の同値を与えます。

(2) ⇒ (1) 補題3.4.37よりX^X~×ρπ1(x0)X~×ρπ1(x0)X^です。

従って、以下の形の分類定理が得られます。

定理3.4.39
(被覆空間の分類)

X を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。

(1) X 上の被覆空間の同型類
(2) 空でない左 π1(X,x0) 集合の同型類
(3) π1(X,x0) の空でない集合上の表現の同値類

ただし、(1)から(3)の対応は被覆空間の同型類に対してmonodromy表現の同値類を対応させるもの、(2)から(3)の対応は単に作用を表現で言い換える対応とする。

証明

(1)から(3)の対応は系3.4.38よりwell-definedであり、(3)から(1)の対応として空でない集合上の表現の同値類に対して同伴束の同型類を対応させるものが補題3.4.37よりwell-definedに定まります。これらは明らかに互いに逆を与えており、(1)と(3)の一対一対応が従います。(2)と(3)の一対一対応は明らかです。

定理3.4.40
(連結被覆空間の分類)

X を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。

(1) X 上の連結被覆空間の同型類
(2) π1(X,x0) の部分群の共役類
(3) π1(X,x0) の空でない集合上の既約表現の同値類

ただし、(1)から(2)の対応は連結被覆空間の同型類に対して基本群の押し出しの像の共役類を対応させるもの、(1)から(3)の対応は連結被覆空間の同型類に対してmonodromy表現の同値類を対応させるものとする。

証明

(1)と(3)の対応について、連結被覆空間に対してそのmonodromy表現が既約であること、既約表現から得られる同伴束が連結被覆空間であることと定理3.4.39から一対一対応であることが従います。

(1)から(2)の対応は系3.4.14よりwell-definedかつ相異なる同型類に相異なる共役類を対応させるものです。よって、あとは任意の共役類に対してそれを与える連結被覆空間を構成すればよいですが、そのためには補足3.4.12より適当に固定した π1(X,x0) の部分群 H に対して基点付き連結被覆空間であってmonodromy作用による基点の固定化群が H であるものを構成すればよいです。

左剰余集合 A:=π1(X,x0)/H を左 π1(X,x0) 集合と考え、対応する表現 ρ を取り、その同伴束 X~×ρA と基点 [x~0,H] を考えます。左剰余集合 A への左 π1(X,x0) 作用は推移的なので同伴束は連結被覆空間です。そして、基点の固定化群は任意の απ1(X,x0) に対してα([x~0,H])=[α(x~0),H]=[x~0,αH]であることから H です最初の等号については商を取る前の X~×A において α(x~0,H)=(α(x~0),H) であることから従い、後ろの等号は X~×A に与えた作用の定義から従います。。以上により(1)と(2)の一対一対応が確かめられました(2)と(3)の一対一対応は一般の群で成立します。実際、群 G の空でない集合上の既約表現の同値類と空でない推移的な左 G 集合の同型類の一対一対応がその随伴関係から定まり、そして、空でない推移的な左 G 集合の同型類と G の部分群の共役類との一対一対応が左 G 集合に対して適当な点に関する固定化群を取る対応から誘導されます (群作用についての基本的事実)

定理3.4.41
(基点付き連結被覆空間の分類)

X を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な基点付き空間とする。次は互いに一対一対応する。

(1) X 上の基点付き連結被覆空間の同型類
(2) π1(X,x0) の部分群

ただし、(1)から(2)の対応は基点付き連結被覆空間の同型類に対して基本群の押し出しの像を対応させるものとする。

証明

(1)から(2)の対応は系3.4.11よりwell-definedかつ相異なる同型類に相異なる部分群を対応させるものです。よって、あとは任意の部分群に対してそれを与える基点付き連結被覆空間を構成すればよいですが、それは定理3.4.40の証明で構成済みです。

定理3.4.42
(正規被覆空間の分類)

X を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。

(1) X 上の正規被覆空間の同型類
(2) π1(X,x0) の正規部分群
証明

定理3.4.40から正規被覆空間の同型類と π1(X,x0) の正規部分群は一対一対応します。

より一般に、ファイバーに付加構造を持つ被覆空間についても上記のような分類定理を考えることができます。例えば、可換環 R 上の加群 M をファイバーとする被覆空間を被覆空間 π:X^X であって条件

ファイバーごとに M に同型な R 加群の構造が与えられている。
X の各点 x に対してその開近傍 U における局所自明化 π1(U)U×M であってファイバーごとに R 加群の同型となるものが存在する。

を満たすものと考えると、この被覆空間のmonodromy作用は π1(X,x0) の各元に対して R 加群 π1(x0)M の自己同型を定め、そのmonodromy表現は R 加群 M 上の表現 π1(X,x0)Aut(M) と考えられます。そして逆に、R 加群 M 上の表現が与えられると同伴束として M をファイバーとする被覆空間が得られます。このことにより次の形の分類定理が示されます。

定理3.4.43
(R 加群をファイバーとする被覆空間の分類)

R を可換環とし、X を普遍被覆空間を持つ弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。次は互いに一対一対応する。

(1) R 加群をファイバーに持つ X 上の被覆空間の同型類
(2) π1(X,x0)R 加群上の表現の同値類
3.4.3 多様体の被覆空間と基本群
位相多様体の被覆空間

位相多様体 (境界があってもよい) の被覆空間について成立する事実をいくつか確かめておきます。ここでは、各点に上半空間 R+n={(x1,,xn)Rnxn0} の開集合に同相な開近傍が存在する空でないHausdorff空間を広義の位相多様体、広義の位相多様体にパラコンパクト性を課したものをパラコンパクト位相多様体、第二可算公理を課したものを単に位相多様体と呼ぶことにします。

まず、基本的な事実として普遍被覆空間の存在があります。

命題3.4.44

連結な広義の位相多様体に対して常に普遍被覆空間が存在する。

証明

局所Euclid性から局所弧状連結かつ半局所単連結なので定理3.4.35より存在します。

被覆空間が各々の意味で再び多様体になるかについて、次が確かめられます。

命題3.4.45

(1) 広義の位相多様体 X に対してその被覆空間 X^ は広義の位相多様体である。
(2) パラコンパクト位相多様体 X に対してその被覆空間 X^ はパラコンパクト位相多様体である。
証明

(1) 局所Euclid性は明らか。Hausdorff性も容易です。

(2) 底空間が局所コンパクトHausdorffなパラコンパクト空間かつファイバーがパラコンパクト空間であるファイバー束の全空間はパラコンパクトでした (予備知識 補足2.9.24)。従って、X^ はパラコンパクト空間なのでパラコンパクト位相多様体になります。

しかし、第二可算公理を課す意味での位相多様体についてはファイバーの濃度に制限がかかります。

命題3.4.46

位相多様体 X とその被覆空間 X^ について、次は同値である。

(1) X^ は位相多様体。
(2) ファイバーの濃度は高々可算。
証明

(1) ⇒ (2) ファイバーが非可算濃度の場合、局所自明化から非可算個の互いに非交叉な開集合が取れるので第二可算公理を満たしません。

(2) ⇒ (1) X の自明化近傍による高々可算な開被覆 {Uλ}λΛ から直ちに X^ の第二可算公理を満たす高々可算個の開集合による被覆を構成できるので X^ は第二可算公理を満たす、つまり、位相多様体です。

また、連結性を課してもよいです。

系3.4.47

連結位相多様体 X の連結被覆空間 X^ は連結位相多様体である。

証明

連結位相多様体 X は連結パラコンパクト多様体でもあるので、その連結被覆空間 X^ は連結パラコンパクト位相多様体です。広義の多様体は連結かつパラコンパクトならば第二可算公理を満たす (予備知識 定理2.9.13) ので X^ は位相多様体です。

系として、連結位相多様体の基本群の濃度について次が確認できます。

系3.4.48

連結位相多様体 X の基本群の濃度は高々可算である。

証明

系3.4.47より普遍被覆空間は位相多様体です。命題3.4.46よりファイバーは高々可算であり、これは X の基本群の濃度が高々可算であることを意味します。

被覆空間と基本群の濃度の関係については次のことも重要なのでついでに書いておきます。

命題3.4.49

X を弧状連結かつ局所弧状連結な位相空間とする。X がコンパクトな普遍被覆空間 π~:X~X を持てば X の基本群の濃度は高々有限である。

証明

X の弧状連結な自明化近傍による開被覆 {Uλ}λΛ を取ります。各 λΛ に対して π~1(Uλ) の弧状連結成分 U~λ を固定します。X~ の開被覆 U~={U~λα}λΛ, απ1(X,x0) について、各 U~λα は固定したファイバー π~1(x0) の点のうち高々 1 点しか元に持ちえないため、X~ のコンパクト性から U~ の有限部分被覆を取ったとき、その有限部分被覆の濃度でファイバーの濃度は上から抑えられ、つまり、X~ のファイバーの濃度は高々有限です。これは X の基本群の濃度が高々有限であることを意味します。

自由かつ固有不連続な作用が与えられたとき、商空間が再び位相多様体になることは重要です。

命題3.4.50

X^ を位相多様体とし、離散群 GX^ に右から自由かつ固有不連続な作用しているとする。このとき、商空間 X^/G は位相多様体である。

証明

商写像が被覆写像であることは命題3.4.25から、商空間 X^/G の局所Euclid性は明らかです。第二可算公理を満たすことは X^ の第二可算性と被覆写像が開写像であることと一般に開基の全射開写像による押し出しが開基を定めることから分かります。Hausdorff性を示します。xxX^/G を取ります。x の自明化開近傍 U であってEuclid空間の開集合に同相であるものを取り、U に含まれるコンパクト近傍 KxK に取ります。π1(K)X^ の閉集合なので K は閉集合です。IntKKcx,x を分離し、よって、X^/G はHausdorff空間です。以上により X^/G は位相多様体です。

補足3.4.51
(可微分多様体の被覆空間)

可微分多様体の被覆空間には被覆写像を C 級写像とするような C 級座標近傍系が同値の違いを除いて一意に定まります。実際、底空間側の C 級座標近傍系のリフトとして全空間側の C 級座標近傍系が構成され、一意性も局所 C 級同相性から確認できます。

位相群の被覆空間

位相群の基本群や被覆空間についても少し触れておきます。ここではその単位元は e などで表すことにして、これを基点として扱うことにします。まず重要なのがその基本群の可換性です。

命題3.4.52
(位相群の基本群の可換性)

位相群 G の基本群は可換である。

証明

任意のループ u,vP(G;e,e) に対して uvuv を単位元 e に値を取る定値写像 cste につなぐhomotopyを構成すればよいです。連続写像K:I×IG:(s,t)u(s)v(t)を考えます連続写像の合成I×Iu×vG×GGなので連続です。KI×{0} および I×{1} への制限は u に一致し、{0}×I および {1}×I への制限は v に一致します。そこで、homotopy H:(I×I)×IGH(s,t,r)=K(rs,rt)に取れば、これが uvuv を定値写像 cste につなぐhomotopyです。

続いて、適当な条件のもとで位相群の被覆空間に再び位相群の構造が定まること、特に、連結Lie群の連結被覆空間に再び連結Lie群の構造が定まることを確かめます。

命題3.4.53
(位相群の被覆空間に定まる位相群の構造)

G を弧状連結かつ局所弧状連結かつ半局所単連結な位相群、π:G^G を連結被覆空間とする。ただし、G^ の基点を e^π1(e) に固定する。このとき、G^ には次の条件を満たす群構造が一意に存在する。

(i) 基点 e^ を単位元とする。
(ii) 被覆写像 π を準同型とする。
(iii) G^ は位相群になる。
証明

μ:G×GG を積演算、ρ:GG を各元にその逆元を対応させる写像とします。次の図式を考えます。μ^:G^×G^G^μ(π×π) の基点を保つ一意なリフト、ρ^ρπ の基点を保つ一意なリフトです。

以下の流れで二項演算 μ^ が主張の一意な群構造を与えることを確認します。

(step 1) μ^ は実際にリフトとして一意に取れる。
(step 2) ρ^ は実際にリフトとして一意に取れる。
(step 3) μ^ について e^ は単位元である。
(step 4) μ^ は結合則を満たす。
(step 5) ρ^ は各元に μ^ に関する逆元を対応させる写像である。
(step 6) μ^ が主張の条件を満たす群構造を与え、また、主張の条件を満たす群構造はこの μ^ に限る。

(step 1) 自然な同型π1(G^×G^,(e^,e^))π1(G^×{e^},(e^,e^))×π1({e^}×G^,(e^,e^))による直和分解のもと、成分ごとに(μ(π×π))(π1(G^×{e^},(e^,e^)))=π(π1(G^,e^)),(μ(π×π))(π1({e^}×G^,(e^,e^)))=π(π1(G^,e^))であるので(μ(π×π))(π1(G^×G^,(e^,e^)))=π(π1(G^,e^))です。よって、定理3.4.8より基点を保つリフト μ^ が一意に存在します。

(step 2) 合成μ(IdG,ρ):GG:ggρ(g)=eによる誘導準同型(μ(IdG,ρ)):π1(G,e)π1(G,e)×π1(G,e)π1(G,e)は常に単位元を値に取るので、任意の απ1(G,e) に対して αρ(α)=(μ(IdG,ρ))(α)=e です。従って、誘導準同型 ρ:π1(G,e)π1(G,e) は各元にその逆元を対応させます。よって、(ρπ)(π1(G^,e))=π(π1(G^,e))であり、定理3.4.8より基点を保つリフト ρ^ が一意に存在します。

(step 3) μ(π×π)G^×{e^} および {e^}×G^ への制限が π に一致することから μ^G^×{e^} および {e^}×G^ への制限は恒等写像です。よって、e^ は単位元です。

(step 4) 次の図式において、内側の 5 つの四角形が可換なので一番外側の四角形も可換です。これが結合則を満たすことを意味します。

(step 5) 次の図式は可換です。

よって、μ^(IdG^,ρ^):G^G^μ(IdG,ρ)π:G^G の基点を保つリフトですが、後者が常に単位元 e を値に取るためリフトの一意性より前者も常に単位元 e^ を値に取ります。これは任意の g^G^ に対して μ^(g^,ρ^(g^))=e^ を意味します。同様に、任意の g^G^ に対して μ^(ρ^(g^),g^)=e^ であり、常に ρ^(g^)g^ の逆元です。

(step 6) これまでの議論から μ^G^ の群構造を与えます。μ^ の定義に用いた図式の可換性が被覆写像 π が準同型であることを意味します。また、構成から μ^,ρ^ は連続であり、この μ^ により G^ は位相群になります。一意性について、一般に主張の条件を満たす群構造 μ^ は被覆写像 π を準同型とするという条件から μ^ の定義に用いた図式の μ^μ^ で置き換えたものを可換にするので、リフトの一意性から μ^ に一致します。

系3.4.54
(連結Lie群の連結被覆空間は連結Lie群)

G を連結Lie群、π:G^G を連結被覆空間とする。ただし、G^ の基点を e^π1(e) に固定する。このとき、G^ には次の条件を満たす群構造と微分構造がそれぞれ一意に存在する。

(i) 基点 e^ を単位元とする。
(ii) 被覆写像 π を滑らかな準同型とする。
(iii) G^ はLie群になる。
3.4.4 van Kampenの定理
van Kampenの定理

基本亜群についてのvan Kampenの定理を紹介しますSeifert-van Kampenの定理とも呼ばれます。[R. Brown, Groupoids and Van Kampen's Theorem]を参考にしています。そちらではもう少し一般的な状況で証明しています。。ここでは、位相空間 X の基本亜群 Π(X) の対象を部分空間 A へ制限して得られる充満部分圏 (亜群)Π(X)|A で表すとします。A が基点 x0 のみからなれば Π(X)|x0=π1(X,x0) です。

まず、その主張を述べるために亜群対象全体が集合をなしかつ射が全て同型射である圏のこと。また、亜群の間の共変関手を亜群の準同型と定めます。の押し出しについて (一般の圏で考えるのと全く同じですが) 説明します。A,B1,B2 を亜群、i1:AB1, i2:AB2 を準同型とします。亜群 C と準同型 f1:B1C, f2:B2C の組 (C,f1,f2) が準同型の対 (i1,i2) の押し出しであるとは、f1i1=f2i2 を満たし、かつ任意の亜群 D と準同型 g1:B1D, g2:B2D の組 (D,g1,g2) であって g1i1=g2i2 を満たすものに対して次の図式を可換にする準同型 h が一意に存在することをいいます。

単に図式

が押し出し図式であるとも言います。

定理3.4.55
(基本亜群についてのvan Kampenの定理)

X を弧状連結空間、Y,ZX の部分空間、AYZ の部分空間とし、以下の条件が成立しているとする。

X=IntYIntZ
YZ の各弧状連結成分と A は共通部分を持つ。

このとき、次の押し出し図式が得られる。

ただし、iY,iZ,jY,jZ は包含写像の誘導する準同型である。

証明

亜群 G と準同型 gY:Π(Y)|AG, gZ:Π(Z)|AG の組 (G,gY,gZ) であって gYiY=gZiZ を満たすものが与えられたとします。準同型 h:Π(X)|AG であって gY=hjY, gZ=hjZ を満たすものを構成し、その一意性を示します。ただし、iY,iZ,jY,jZ は省略し、例えば、gY=hjYΠ(Y)|A において gY=h であることと考えることにします。

まず、各点 xX に対して A の点 r(x) と道のhomotopy類 γxΠ(X;r(x),x) を以下のように取ります。

xA に対しては r(x)=x に取り、γxx に値を取る定値写像 ex の代表する道のhomotopy類 εx とする。
xYZ に対しては r(x)AYZ における x と同じ弧状連結成分に属すように取り、γxΠ(YZ;r(x),x) に取る。
xYZ に対しては r(x)AY における x と同じ弧状連結成分に属すように取り、γxΠ(Y;r(x),x) に取る。
xZY に対してに r(x)AZ における x と同じ弧状連結成分に属すように取り、γxΠ(Z;r(x),x) に取る。

準同型 h:Π(X)|AG を点 xA に対しては h(x)=gY(x) と定めgYiY=gZiZ より h(x)=gY(x)=gZ(x) です。A の点どうしをつなぐ道のhomotopy類 αΠ(X;a0,a1) に対しては以下の手順で h(α)HomG(h(a0),h(a1)) を取ります。

α の代表元 uP(X;a0,a1) を固定し、単位区間 I の適当な分割を取ることで u を道の積 unun1u1 であって各 ukY もしくは Z の道になるものに分割する開被覆 {u1(IntY),u1(IntZ)} に関するLebesgue数 δ>0 を取り、I を長さ δ 未満の小区間に分割すればよいです。
1kn に対して αk=γuk(1)[uk]γuk(0) とおき、βkHomG(h(uk(0)),h(uk(1)))βk={gY(αk)(ukP(Y;uk(0),uk(1)))gZ(αk)(ukP(Z;uk(0),uk(1)))により定め、h(α)=βnβn1β1 と定める。

要するに、αΠ(X;a0,a1)Π(Y)|A, Π(Z)|A における道のhomotopy類の積 αnαn1α1 に分解しu1(0),un(1)A から γu1(0)=εu(0), γun(1)=εu(1) であることに注意すれば確かに α=αnαn1α1 です。、それぞれを gY,gZ で送った積として h(α) を定義するということです。確認するべきことは以下の通りです。

(i) βk がwell-defiendであること。
(ii) h(α) が代表元 u の分割の取り方によらないこと。
(iii) h(α) が代表元 u の取り方によらないこと。
(iv) hΠ(Y)|A 上で gY=h を満たしかつ Π(Z)|A 上で gZ=h を満たす準同型であること。
(v) 条件を見たす準同型 h が一意であること。

(i) ukP(YZ;uk(0),uk(1)) の場合、各 γx の取り方から αk=γuk(1)[uk]γuk(0)Π(YZ;r(uk(0)),r(uk(1))) であり、Π(YZ)|A において gY=gZ であるのでwell-definedです。

(ii) 単位区間の分割 0=t0<t1<<tn=1 から uk,αk,βk を取り、その細分 0=t0<t1<<tm=1 から uk,αk,βk を取ったとき、βnβn1β1=βmβm1β1 が成立することを示します。まず、細分であることから狭義単調増加な非負整数列 l0<<ln であって常に tk=tlk を満たすものが取れます。このとき、各 ukulkulk1ulk1+1 と分割されています。ukY の道であれば ulk1+1,,ulk1,ulk もそうであり、αk,αlk1+1,,αlk1,αlkΠ(Y)|A かつ αk=αlkαlk1αlk1+1 が成立し、gY が準同型であることから βk=βlkβlk1βlk1+1 が成立します。ukZ の道である場合も同様に βk=βlkβlk1βlk1+1 です。よって、βnβn1β1=βmβm1β1 です。

一般の 2 つの分割に対しては共通細分を経由することで同じ h(α) を定めることが従います。

(iii) α の代表元 uu を取ります。uu につなぐ道のhomotopy H:I×IX を固定し、I×I の開被覆 {H1(IntY),H1(IntZ)} に関するLebesgue数 δ>0 を取り、正整数 nn1<δ/2 に取ります。H[k1n,kn]×{ln} への制限を vk,l とし、{kn}×[l1n,ln] への制限を wk,l とします。さらに、ξk,l=γvk,l(1)[vk,l]γvk,l(0), ηk,l=γwk,l(1)[wk,l]γwk,l(0) とおきます。そして、αk から βk を定義したのと同様に ξk,l,ηk,l から σk,l,τk,l を定義します。

任意の 1k,ln に対して τk,lσk,l1=σk,lτk1,l であることを示します。まず、n の取り方から H([k1n,kn]×[l1n,ln])Y,Z のどちらかには含まれます。Y に含まれる場合、Y における道のhomotopy類として [wk,l][vk,l1]=[vk,l][wk1,l] が成立するので ηk,lξk,l1=ξk,lηk1,l であり、gY が準同型であることから τk,lσk,l1=σk,lτk1,l です。Z に含まれる場合も同様に成立し、よって、いずれにせよ成立します。

w0,l,wn,ll によらず a0,a1 に値を取る定値写像であることから τ0,l,τn,lh(a0),h(a1) における単位元であることに注意し、上記結果の繰り返し適用することでσn,0σ2,0σ1,0=τn,nτn,2τn,1σn,0σ2,0σ1,0=σn,nσ2,nσ1,nτn,0τ2,0τ1,0=σn,nσ2,nσ1,nが得られます。これは u,u で同じ h(α) を定めることを意味します。

(iv) Π(Y)|A 上で gY=h を満たしかつ Π(Z)|A 上で gZ=h を満たすことは明らかです。準同型であることの確認で非自明なのは任意の αΠ(X;a0,a1), αΠ(X;a1,a2) に対して h(αα)=h(α)h(α) であることですが、これはそれぞれを Π(Y)|A, Π(Z)|A の道のhomotopy類の積に分解すれば分かります。

(v) h,h を条件を満たす準同型とします。各 xA に対して h(x)=h(x) であることは明らかです。各 αΠ(X;a0,a1) に対して h(α)=h(α) であることを示します。αΠ(Y)|A, Π(Z)|A における道のhomotopy類の積 αnαn1α1 に分解します。Π(Y)|A において h=gY=h であること、Π(Z)|A において h=gZ=h であることからどの αk についても h(αk)=h(αk) です。そして、h,h が準同型であることから h(α)=h(α) です。以上により h=h であり、条件を満たす準同型は一意です。

定理3.4.55の特別な場合として、YZ が弧状連結かつ AYZ に取った基点 x0 のみからなる場合が通常のvan Kampenの定理です。(押し出し群については準備できていないですが、知っている前提で進めます。)

定理3.4.56
(van Kampenの定理)

X を基点付き弧状連結空間、Y,ZX の部分空間であって条件

X=IntYIntZ
YZ は弧状連結
x0YZ

を満たすものとする。このとき、次の押し出し図式が得られる。

つまり、基本群について同型π1(X,x0)π1(Y,x0)π1(YZ,x0)π1(Z,x0)が成立する。

van Kampenの定理の応用

通常のvan Kampenの定理 (定理3.4.56) は位相多様体やCW複体の基本群の計算に有効です。まず典型的なのが位相多様体の境界での貼り合わせです。

命題3.4.57
(境界で貼り合わせて得られる位相多様体の基本群)

Y,Z を境界を持つ連結位相多様体とする。境界 Y,Z のある連結成分 B,C の間の同相写像 f:BC が与えられたとき、f により Y,Z を貼り合わせて得られる連結位相多様体 X:=YfZ の基本群について同型π1(X)π1(Y)π1(B)π1(Z)が成立する。

証明

BY の開カラー近傍 UCZ の開カラー近傍 V を取ります開カラー近傍の存在についてはその他 定理C.2.3を参照。X の開被覆 YfV,UfZ と基点 x0BX についてvan Kampenの定理 (定理3.4.56) を適用して同型π1(X,x0)π1(YfV,x0)π1(UfV,x0)π1(UfZ,x0)得られます。homotopy同値 YYfV, ZUfZ, BUfV から主張の同型が従います。

系として、連結和の基本群がもとの位相多様体の基本群の自由積に同型であることが分かります。

系3.4.58
(位相多様体の連結和の基本群)

n3 とし、X,Yn 次元連結位相多様体とする。その連結和 XY の基本群について同型π1(XY)π1(X)π1(Y)が成立する。

証明

位相多様体の連結和 XY とは、X,Y のそれぞれの内部に局所平坦ここでは定義は書きませんが、球体の内部を取り除いた後の空間が位相多様体になるための必要十分条件です。実際、Alexanderの角付き球面と呼ばれる 3 次元球面の中の野性的な 2 次元球面を境界にもつ閉球体が存在するのでこの条件は外せません。な閉球体 D を取り、その内部を取り除いて得られる XIntDYIntD を閉球体の境界 D で貼り合わせて得られる位相多様体 (XIntD)D(YIntD) のことですが、次元に関する条件から π1(D) が自明であるので同型π1(X)π1(XIntD)π1(D)π1(D)=π1(XIntD),π1(Y)π1(YIntD)π1(D)π1(D)=π1(YIntD)が成立しており、あとは命題3.4.57から主張の同型が従います。

連結CW複体については次の形の同型が成立します。

命題3.4.59
(CW複体に対するvan Kampenの定理)

X を基点付き連結CW複体、Y,ZX の部分複体であって条件

X=YZ
YZ は連結
x0YZ

を満たすものとする。このとき、基本群について同型π1(X)π1(Y)π1(YZ)π1(Z)が成立する。

証明

CW複体の部分複体はそれを強変位レトラクトとする開近傍を持つ (命題2.4.50) ので、そのような開近傍 U,VY,Z に対して取ります。van Kampenの定理 (定理3.4.56) から同型π1(X,x0)π1(U,x0)π1(UV,x0)π1(V,x0)得られます。homotopy同値 YU, ZV, YZUV から主張の同型が従います。

系として、商複体の基本群について次が成立します。ただし、群 G においてその部分群 H の正規閉包を ncl(H) で表すとします。

系3.4.60

(X,A) を基点付きCW対とし、X,A は連結とする。このとき、基本群について同型π1(X/A)π1(X)/ncl(π1(A))が成立する。

証明

A 上の錐 CA の貼り合わせについて命題3.4.59を適用することで同型π1(XACA)π1(X)π1(A)π1(CA)が成立します。CA が可縮であることからhomotopy同値 XACAX/A が成立し (補題2.4.62)、また、π1(CA) は自明なので同型π1(X/A)π1(X)/ncl(π1(A))が成立します。

また、一般に次も成立します。

命題3.4.61
(写像錐の基本群)

空でない弧状連結空間 X,Y と連続写像 f:XY が与えられているとする。写像錐 Cf の基本群について同型π1(Cf)π1(Y)/ncl(f(π1(X)))が成立する。

証明

明かな方法で写像錐 Cf が写像柱 Mf と錐 CX により被覆されていると思ってvan Kampenの定理を適用すれば分かります。

CW複体の基本群の表示

より具体的な応用として、基点付き連結CW複体の基本群の表示を与えます。そのためにまず重要なのは、基点付き連結CW複体の基本群が 2 骨格のみで決まることです。より一般に、n 次homotopy群がその n+1 骨格のみで決まることを示しますCW複体の連結性がその 1 骨格の連結性で特徴づけられたこと (系2.4.60) の一般化でもあります。

命題3.4.62

X を基点付きCW複体とする。任意の n0 に対して包含写像 i:Xn+1Xn 次homotopy群の間の同型i:πn(Xn+1)πn(X)を誘導する。

証明

基点付き空間対 (X,Xn+1) のhomotopy完全系列 (定理3.1.20)πn+1(X,Xn+1)πn(Xn+1)iπn(X)πn(X,Xn+1)の部分において、πn+1(X,Xn+1)πn(X,Xn+1) は胞体近似定理 (定理2.4.57) から自明であるので中の同型が従います。

続いて、補題として 1 骨格の基本群を計算しますが、これは次のwedge和の基本群に関する同型から分かります。

命題3.4.63
(wedge和の基本群)

{Xλ}λΛ を基点付き連結CW複体の族とする。wedge和 λΛXλ の基本群について同型π1(λΛXλ)λΛπ1(Xλ)が成立する。

証明

添字集合 Λ が有限集合の場合は命題3.4.59の繰り返し適用により確かめられます。そして、一般にはπ1(λΛXλ)limMΛ, #M<+π1(μMXμ)limMΛ, #M<+μMπ1(Xμ)λΛπ1(Xλ)です1 つ目の同型は λΛXλ における連続閉曲線が高々有限個の Xλ としか交わらないことから (補題2.4.14)2 つめの同型は Λ が有限の場合の結果から、3 つ目の同型は自由積が有限の長さの語からなるモノイドの商として構成されることから従います。

系3.4.64

X を基点付き連結CW複体とし、T1 骨格 X1 の極大な木とする。1 骨格の基本群 π1(X1)T に含まれない 1 胞体全体からなる集合 S により生成する自由群 FS に同型である。特に、集合 S で添字付けられた基点付き円周の族 {Se1}eS のwedge和の基本群は S で生成する自由群 FS に同型である。

証明

T は強可縮 (補題2.4.61) なので、それを 1 点に等化した空間とのhomotopy同値X1X1/TeSSe1が成立します (補題2.4.62)。よって、同型π1(X1)π1(eSSe1)eSπ1(Se1)eSZFSが成立します。

2 骨格の基本群を計算します。

定理3.4.65
(CW複体の基本群の表示)

(X,{eλ}λΛ) を基点付き連結CW複体とし、以下の設定を行う。

1 骨格 X1 の極大な木 T を取る。
ST に含まれない 1 胞体全体からなる集合とする。
Λ22 胞体全体に対応する添字集合とする。
2 次元閉球体 D2 の基点 p を境界 D2=S1 上に固定する。
λΛ2 に対して胞体写像 φλ:D2eλ と道 uλP(X1;x0,φλ(p)) を取る。
λΛ2 に対して同一視 π(X1)FS のもとでループ uλφλuλ の代表する FS の元を rλ とおき、R:={rλλΛ2} と定める。

このとき、同型π1(X)FS/ncl(R)が成立する。特に、有限な基点付き連結CW複体の基本群は有限表示可能である。

証明

ちょっと無理やり示します。

単位区間 I2 次元閉球体 D21IpD2 で等化して得られる空間を J とおき、同様に ID2 を等化して得られる空間を J とおきます。J,J の基点は 0I に取ります。そして、これら Λ2 個のコピーのwedge和 K=λΛ2Jλ, K=λΛ2Jλ を取ります。連続写像 f:KX2Iλ 上では uλ に、Dλ2 上では φλ に一致するように取り、その制限として連続写像 f:KX1 を取ります。このとき、homotopy同値X2MfCfCfが成立しますX2Mf は一般の写像柱について成立すること、MfCfK×{1}K×I のおける強可縮な部分CW複体とみなせることから、CfCfC(K)CK における強変位レトラクトであることから分かります。写像錐 Cf はあくまでも fX1 への連続写像と思って考えた写像錐であることには注意。。よって、命題3.4.61より同型π1(X2)π1(X1)/ncl((f)(π1(K)))が成立します。そして、(f)(π1(K)) が部分群として R により生成することから同型π1(X1)/ncl((f)(π1(K)))π1(X1)/ncl(R)が従います。あとは命題3.4.62系3.4.64から主張の同型が従います。

逆に、任意の群の表示に対して対応する基点付き連結CW複体が構成できます。実際、生成系 S と関係系 R が与えられたとき、S で添字付けられた基点付き円周の族 {Se1}eS からwedge和 eSSe1 を取り、そこに各関係を代表するループに従って 2 胞体を貼り合わて基点付き連結CW複体を構成すれば、その基本群は FS/ncl(R) に同型です。

命題3.4.66
(群の表示に対応するCW複体)

生成系 S と関係系 R により表示される群 G=FS/ncl(R) に対し、それと同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体であって、唯一の 0 胞体を持ち、1 胞体全体が S により添字付けられ、2 胞体全体が R により添字付けられているものが上記のようにして構成される。特に、有限表示群に対し、それと同型な基本群を持つ有限な基点付き連結CW複体が存在する。

系として、任意の群 G に対してそれと同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体が存在することが分かります。

系3.4.67
(任意の群は基本群として実現可能)

任意の群 G に対して G に同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体 X が存在する。

証明

ここでは群 G を集合として扱うことをはっきりさせたい場合に Gset で表すとします。Gset で生成する自由群 FG から G への準同型 φ:FGG を恒等写像 Id:GsetG から普遍性により誘導されるものとして定めます。これは明らかに全射であり、同型 GFG/Kerφ が成立します。GFG/ncl(Kerφ) であるので G に同型な基本群を持つ基点付き連結CW複体 X命題3.4.66より得られます。

この結果を用いて再度Kleinの壺の基本群を求めてみます。

例3.4.68
(Kleinの壺の基本群の表示)

Kleinの壺 K は正方形 I×I の下辺 I×{0} と上辺 I×{1} を恒等的に、左辺 {0}×I と右辺 {1}×I を上下逆さまに等化したものでした。単位区間 I に唯一の 1 胞体を持つCW複体の構造を与えているとすれば、K1 骨格は 2 つの円周のwedge和であり、一方が上下の辺、もう一方が左右の辺に対応します。それぞれを順に x,y とおいて基本群の生成元と思えば、唯一の 2 胞体の貼り合わせは関係 xyx1y=e を定めます。よって、基本群について同型π1(K)x,yxyx1yが成立します。

以上です。

メモ

Eilenberg-MacLane空間についてもちょっと書いてよさそうだけど、これ以上はさすがに詰め込みすぎなのでこれはまた別で書きたいです。せっかくvan Kampenの定理を基本亜群版で示したので、それを使って円周 S1 の基本群を求めてみるというのもありかも。気が向いたら追加します。

参考文献

[1] 加藤十吉 位相幾何学 裳華房 (1988)
記号や用語は結構参考にしています。van Kampenの定理の解説のため、自由積や押し出し群について丁寧に導入されています。
[2] 服部晶夫 位相幾何学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ 岩波書店 (1977-1979)
[3] R. Brown, Groupoids and Van Kampen's Theorem, Proc. Lond. Math. Soc. s3-17 (1967), pp. 385–401.

更新履歴

2023/01/02
新規追加
2023/02/02
注釈を追加。